ベスト4でも1次リーグ突破でも何でもよいが、南アフリカでよい成績を収める事、いや
「日本サッカーの全てを出し尽くした」と言うサッカーをしてもらうために、まず何より固めるべきは守備の充実。したがって、この南アフリカ戦で何より確認すべきは、オランダ戦、ガーナ戦で顕在化した守備の課題が解決だった。
そしてこの南アフリカ戦、その課題が複数の面で解決されたのが大きな収穫だった。
1つ目。まず前半、敵にペースを掴まれても危ない場面を作られなかった事。
スタメンに稲本、遠藤、長谷部の3枚ボランチ。一層の守備強化へのトライは納得できる。試合後に岡田氏も発言していたようだが、俊輔の体調が今ひとつだった事も、このトライの要因になったようだ。前半序盤こそ長谷部の前進と岡崎の受けの巧さでペースを掴んだ、しかし、30分くらいに本田の前線でのプレスと後方のリズムが合わず、南アフリカDFに好フィードを出されて8番のツァバララにミドルシュートを食らった場面(川島が好セーブでCKに逃げる)以降、南アフリカのプレスを全く突破できなくなった。本田と大久保が巧く引き出せないために、この2人と長谷部、遠藤の間が間延びしてしまったためだ。
アジア予選までの日本の場合、このようにリズムが悪くなるとどうしても最終ラインまで持ち込まれ、中澤なり楢崎に活躍いただく場面が多かった。(少々失礼な言い方だが)この問題は、完全に格下のカタール、バーレーンなどとの対戦でも顕在化していた。しかし、前半の日本は中盤の劣勢にもかかわらず、上記のツァバララのシュートを除くと危ない場面をほとんど作らせなかった。岡崎と大久保の広範な動き、遠藤と稲本の冷静さ、本田も粘り強く守備をしていたし、もちろん長谷部もしつこく守っていた。さすがに最後の5分は、最終ラインで中澤と闘莉王が奮闘していたが、崩されたのを身体を張って防ぐまでには至らなかった。
前半終盤の約15分間、悪いリズムの試合でここまで組織守備を機能させられたのは大きい。
2つ目。後半の修正後、一切南アフリカペースの時間を作らなかった事。
もちろん、前半リズムが悪かったのだから、修正は当然。私は後半立ち上がりから長谷部を後方に下げたように見えたが、報道によると前半終盤からだったようだ。後半俊輔起用後は、遠藤をボランチに下げる本来の布陣に戻す事で、一層リズムはよくなった。
そして、その修正後は終始日本ペースで試合を進める事ができた。このクラスの相手に、しかも敵地で、45分間一切危ない場面を作らせなかったのはすばらしい。もちろん、パレイラ氏就任直後と言う事だろうか、南アフリカは、徹底して日本のサイド攻撃をつぶす守備を狙う守備を重視した試合を狙っており、攻撃まで手が回らなかったようにも思えた。けれども、だからと言って、あそこまで危ない場面がなかったのだから、素直に喜びたいと思う。
この2種類、異なった守備が機能した事が、この試合の最大の成果だろう。とにかく「世界を驚かす」ためには、まず守備を固める事なのだ。
以降、気がついた事を雑記風に。
いわゆるトレスボランチについて。
どうせ試すならば、個人的には、遠藤を守備ラインの前に置き、稲本ではなく今野を起用する布陣を期待していた。しかし、欧州でプレイする選手を試しやすい試合だっただけに、稲本のテストも重要だったと言う事だろうか。今回のテストについては色々な見方があるだろうが、私は遠藤を4DFの前に置く布陣が適切だと確認されたと言う事だと思う。遠藤は敵の強力なトップ下の選手を厳しくマークするタイプでは決してないが、何よりも読みがよくチームを落ち着ける事ができる。中盤守備を厳しくするならば、遠藤の前のタレントを工夫する事が、(遠藤の能力をフルに活かすと言う意味では)今の日本には最適なのではないか。
俊輔について。
エスパニョールで中々起用されない難しい状態が続いている。けれども、この日は後半起用されるや否や、長いパスで中盤を作り存在感を見せつけた。さらに、サイドで俊輔が敵を引きつける事で、長谷部が前進するスペースもできた。この日はスペインでの試合との間隔が短かったためのベンチスタートだったのだろうが、前半はチームとして守備的に戦い、後半の勝負どころに起用すると言う選択肢もあるかもしれない。
本田について。
相変わらず、引き出しの工夫のなさと、身体の向きが悪い。だから最初のタッチが雑になり、思うようにキープができない。ただし、そこからフィジカルの強さで強引に持ち出そうとするのは、それはそれで魅力的。前半15分過ぎか、右から強引に切れ込み倒され「PKか!」と言う場面があったが、最初のボールコントロールをミスしたものの、強引に身体で持ち出してペナルティエリアに切れ込んだもの。以前も述べたが「本田が全て解決してくれる」的な一部世論はこの選手を逆に苦しめかねない。他の選手にない単純な強さとシュート力を持つだけに、来年6月まで我慢して使い続ければよい。
大久保、松井、興梠について。
大久保は前半から、よく動いて守備もしていたし、精力的にボールを持ち出そうともしていた。しかし、長谷部や遠藤とリズムが合っていなかった。中でも前半30分過ぎか、長谷部が巧みに持ち出したパスを受け、ペナルティエリア内でスピードに乗った突破を狙うも、ドリブルが大きくなり過ぎた場面は痛かった。動き出しが決まらないと言うか、何かしら体調が悪いようにも見えた。普段のヴィッセルでのシゴトよりもややこしい事が要求されているのはわかるのだが。
松井は起用されるや、意欲的に前進。この選手しては珍しく(?)強引な前進を狙ったり、敵陣前に再三飛び出したのだが。ただし、持ち味が少々スローテンポなドリブルな事もあり、中盤で高速パスを回そうとすると、どうしてもリズムを崩してしまう。自チームでの持ち味は長いドリブルなのはわかるが、代表では最後の突破にその能力を活かして欲しいところなのだが。
興梠は独特の持ち出しで、いわゆるショートカウンタを狙っていたのはよかった。ただ、アフリカ選手に対する経験不足か、Jで見せる強引さが見受けられなかった。持ち出して精度の高いシュートを狙える特長をもっと前面に押し出して欲しいのだが。
このポジション(中盤の一番前で、最前線でプレスをかけながら、岡崎の後方から組み立てと突破が要求される)は憲剛がいる。さらにポジションが異なるが、トップでボールを収める能力の高い前田がいるし、負傷からの回復次第だが、ドリブルで突破し、さらにその後のシュートがある石川直宏と田中達也も控える。この3人はよほど長所を押し出さないと、23人に残れるかどうかも微妙な状態になっているのだが。
そして岡崎。
いよいよ能力を発揮し出したのが嬉しい。前半序盤の左サイド突破からのシュート(僅かにポスト外)、後半徳永のアーリークロスからの振り向きざまの一撃(GKがフィスティングでCKに逃げる)は、どちらも上々。また後方からの高いボールに対しても、動き出しと位置取りのよさで、落下地点に入り込む事で、勝てないまでも敵ボールにもしなかったのも大きかった。完全に攻撃の中心、エースとしての立場を確保しつつある。
攻撃全体としては、サイドバックが敵ゴールラインの進出に消極的だったのが不満。確かに南アフリカの守備陣は、日本のサイドアタックを相当警戒して、ドイスボランチのサイドのカバーは厳重だった。しかし、内田にしても駒野にしても、加速してあと20mくらいのところに走り込む場面は幾度かあったのだから、ゴールラインぎりぎりまで前進しラストパスを狙って欲しかったのだが。特に内田は再三守備の課題が取沙汰されるが、どんどん右サイドを崩しての内田だともっと自覚して欲しいところだ。(相手が弱かったとは言え)10月シリーズで、あれだけ見せてくれたサイドアタックの頻度と思い切りが少なかったのには、やはり不満が残った。
もっとも、憲剛、長友、森本、前田が不在だったのだ(前田だけは岡田氏が能動的に選考しなかったのだが)。彼らが入れば攻撃の間口は一層広がる。上記した通り、達也と石川の復調も待ち遠しい。こう言ったタレントが入れば、逆にサイドバックへのケアがゆるくなるので、もっとサイドアタックが機能する可能性も高い。
ともあれ、この本大会地元国との試合をたっぷり堪能する事ができた。繰り返すが、守備が機能した事はとても嬉しい。
引き続きテレビ桟敷では、ブラジルーイングランド、アルゼンチンースペインを愉しむ事ができた。当たり前と言えば当たり前だが、上を見るとキリがない。来年6月まで、(ここまでの強豪中の強豪とまでは言わないが)難しい相手との強化試合の機会を少しでも増やし、持てる能力を精一杯引き出したチームで本大会に臨みたいものだ。