2017年01月03日

監督采配の差

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。すっかり更新頻度が落ちていますが、書ける範囲であれこれ書き続けたいと思っています。と言うことで、まずは天皇杯決勝戦から、今年の講釈を始めます。新年早々、イヤミを色々書きますが、よい試合でした。でも、憲剛の戴冠を見たかった...


 アントラーズ2-1(延長)フロンターレ。
 両チームが中盤で厳しく当たり合い、攻撃でも持ち味を出し合い、最終ラインも粘り強く守る好試合だった。何か終わってみれば、伝統と実績を誇るアントラーズがタイトルの数を増やし、勝ち切れないフロンターレが無冠を継続したような結果となった。けれども、私の見たところ、勝敗を分けたのは、歴史や伝統の相違でも、試合運びの巧拙でもなく、監督采配の差だった。このような大試合で、ここまで監督が無策で自滅するのは珍しい。

 後半半ば、アントラーズは非常に厳しい状況に追い込まれていた。
 前半終了間際にCKから先制したものの、ハーフタイムに、左DFの山本を負傷で黄錫鎬に交代。ところが、後半開始早々に、その黄錫鎬が小林悠に出し抜かれて同点弾を許す。その後も、三好、小林の両翼攻撃に押し込まれていた。たまらず、鈴木優磨を起用して押し返して小康状態としたものの、既に残りの攻撃カードは1枚のみ。元々12月は連戦に次ぐ連戦で各選手に疲労の色が濃いのに加え、スタミナに不安がある小笠原、体調不十分の西、遠藤を抱えていたのだから。一方のフロンターレは日程的には格段に有利だったし、交代カードは2枚残っていた。
 それでも石井氏は決断し、88分には小笠原に代えてファブリシオに代えた。後半終了間際に決定的な失点を防ぐとともに、延長の序盤から勝負をかける意図だったのだろう。他の選手が動けなくなってしまったら、その時はその時だ。結果的に、このリスク覚悟の果断が奏功したことになる。
 対して、風間氏は何もしなかった。延長序盤もフロンターレは漫然と入ってしまい、アントラーズに押し込まれる。CKからのニアに飛び込んだ西(に見えたのだが)のヘッドはバーに救われたが、そのクリアにDFラインが集中を欠いて上がれず、永木(に見えたのだが)のヘッドで流したボールのこぼれを、ファブリシオに押し込まれ、リードを許した。繰り返すが、アントラーズが延長序盤出てくるのは、見え見えだったのだが。
 リードを許した風間氏の采配は、さらに疑問。中盤を活性化させるための森谷起用は理解できるが、チームのバランスを保つためには欠かせない田坂との交代には驚いた。ボランチに森谷と大島を並べ、憲剛をトップ下に入れるが、リードして完全に後方に引いたアントラーズ、肝心の憲剛にボールが入らなくなり、延長前半はほとんど有効な攻撃ができず終了。
 延長後半、大島に代えて森本を起用。憲剛をボランチに戻す。しかし、この時間帯となると、大久保も小林悠も疲労困憊になっており、森本を含む3トップが前線待機状態となり、一層アントラーズゴール前は密集地域となりスペースがなくなる。、さらに焦るエウシーニョと車屋も前に張り出すもサポートが得られず、両翼をえぐれない。結果として、フロンターレのパスは、アントラーズの守備網に簡単に引っかかり、幾度もアントラーズの逆襲を許す。その度に、憲剛が最終ラインまで戻り、献身的にボール奪取のための努力を行い消耗していく本末転倒。延長後半もフロンターレがつかんだ好機は数えるほどだった。
 両チームの選手は、死力を尽くし、知恵の限りを尽くして戦った。しかしながら、監督采配でここまで差が出てしまうと、フロンターレの選手たちだけでは、どうしようもなかった。繰り返すが、勝負を分けたのは、風間氏の自滅だったのだ。

 石井正忠氏は現役時代、ジーコ、サントス、アルシンドらのパスワークに的確に参加する位置取り、落ち着いたシュートなど、知性あふれるものだった。チャンピオンシップ以降の采配振りは、試合への準備、選手起用の柔軟性、リスク覚悟の決断、いずれも知性あふれるなもので、現役時代を彷彿させた。

 風間氏は退任すると言う。
 まずは、中村憲剛と大久保嘉人と言う最高級のスタアが、本当に楽しそうにプレイする環境を揃えた風間氏の手腕を称えたい。また、小林悠と大島と言うタレントも存分に力を発揮するようになった(もっとも、風間氏就任初年度、ご子息2人を重要視し、J屈指の若手ストライカだった小林悠を起用しなかったのは不思議だったが)。また、そこに三好のような、さらに若いタレントまで機能させた。
 けれども、最後得点をとるところは各選手の感性に任せてしまっているように思えた。もちろん、多くの試合では、格段の能力を誇る選手たちが次々と得点を決めていた。しかし、この決勝のような厳しい試合になると、最後の最後で連携が合わないように思えたのだが。
 守備も同様で、鄭成龍、エドゥアルド、谷口、エドゥアルド・ネットと言ったタレントの対応能力、田坂や憲剛の判断力で守っているが、組織敵には几帳面さが不足していた。この決勝、前半終了間際、延長開始直後と言った重要な時間帯のコーナキックでの守備対応の甘さは、几帳面さの不足が如実にあらわされた場面だった。
 憲剛や大久保の能力を存分に発揮させながら、最後点をとるところの連係や、守備の几帳面さを、もっと作り込む采配は、もっと並立可能ではないかと思うのだが、それは贅沢と言うものなのだろうか。

 結びに余談。いつもいつも言っているが、天皇杯決勝を元日にやるのはやめた方がよい。最大の理由は、トーナメント戦の決勝をシーズン最後にすると、オフに入るタイミングがチームごとに異なり、に日程破綻が継続することにある。Jのクラブが、ACLで勝てない最大の要因は、日程の破綻にあるのは、過去から幾度も指摘してきた。その日程破綻の要因の1つが、天皇杯決勝の元日開催なのだ。
 それに加えて、年末年始の長期休暇は帰省する人が多くサッカー観戦にはあまり向かない(しかも組合せが決まるのが直前で予定が立てづらい)、元日はテレビは特別番組が多く優勝チームの露出が小さい、などの副次的問題も大きい。
 伝統だからとか、元日にこたつに入りながらテレビを見るのが楽しみだとか、と言う理由で元日決勝を継続することが、日本サッカーの発展を阻害してしまうと思うのだが。
posted by 武藤文雄 at 00:06| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月31日

2016年10大ニュース

(「ワールドカップ予選のホーム敗戦がいつ以来か」と言う基本的議論を間違っていました。反省の意を込めて、字消し線での修正とします)

 何のかの言って、この2016年は「やはり日本サッカーは、十分強いんだ」と、再確認した年だと思っている。

 確かに、14年のブラジルでの早期敗退、15年豪州アジアカップのでPK負け、自信がなくなる状況はあった。また今年は9月のUAE戦で、ワールドカップ予選としては89年のイタリア大会予選97年のフランス大会予選以来のホーム敗戦を食らったのも確かだ。
 しかし、あまりに状況を悲観的にとらえ過ぎてはいないか。悲観的に語る方が「売れる」と言う現状もあろう。また、マスコミ諸兄からすれば、日本サッカーの状況が悪くなれば、「自分の生活が危うくなる」との焦りもわかるのだが。
 ハリルホジッチ氏が目を覚ました以降、豪州戦もサウジ戦も圧倒的な戦闘能力を見せつけている(細かな詰めを過るあたりは、この監督らしいのだが)。どう考えても、俺たちが一番強いではないか。
 五輪代表が手倉森采配で鮮やかにアジア制覇した時も、「もはや、日本はポゼッションで優位に立てない」など、敢えて悲観的な報道をする向きが多かった。U20がアジア制覇した折も、決勝でサウジに幾度も好機を許したことに、揚げ足をとるかのうように、同様な批判が渦巻いた。
 冗談ではない。圧倒的なボール保持でアジアを制したのは、00年アジアカップくらいだ。それ以外のワールドカップ予選も、アジアカップも、丁寧に冷静に戦い抜いたことを忘れてしまったのだろうか。

 岡崎と本田の輝きがまばゆかったこともあり、代表の若返りが遅れかけたことは確かだ。しかし、原口が、大迫が、そして昌子が出てきた。五輪代表でも、矢島も、大島も、植田も、遠藤航も、中村航輔も、着実に地位を築こうとしている。いたずらな楽観をするつもりはない。でも、落ち着いて考えれば、我々は相変わらずアジア最強国なのだ。そして、わずかなる幸運があれば、レアル・マドリードを追い込むこともできるのだ。

1.アントラーズ、レアル・マドリードを追い込む
 あの遠藤のシュートが決まっていれば...

2.ペトロビッチ氏、最後の10分間で崩壊
 レッズが通年で最高成績を収めていたのも確かだ。それに続くフロンターレが通年ですばらしいサッカーを見せてくれたのも間違いない。でも、レギュレーションはレギュレーション。レッズはチャンピオンシップに勝たなければならなかった。
 しかし、だからと言って、あそこで追いつかれたからと言って、あの錯乱はないだろう。しかも、今シーズンについては、レッズは終了間際まで、独特のパスワークで攻め込み、敵の疲労を誘い、崩し切っていたののに。
 あの10分間、ペトロビッチ氏に何が起こったのだろうか。

3.ワールドカップ予選、ホームでUAEに苦杯
 「たまに、このようなことがある」と、我々は自覚すべきなのだ。

4.手倉森氏、完璧なアジア予選、やっちゃった本大会
 手倉森氏の、五輪予選の完璧な戦い方は素晴らしかった。ローテーションを駆使した選手起用。トーナメントに入ってからは、120分間を見据え、敵の疲労を誘いながら、少しでも勝つ確率を高めるやり方。イランにもイラクにも、10回やっても、相当回数は日本が勝っただろうと言う印象だった。
 まあ、本大会は、恐れていた通り、策士が策におぼれた感があったけれども。それにしても、ナイジェリア戦のハーフタイムに修正できなかったことが残念だ。

5.U20、アジア初制覇
 ここ最近ワールドユースに出場し損ねた日本だが、堂々の出場権獲得。さらにアジア大会初優勝まで遂げてくれた。従来の日本のよさだった技巧的な中盤タレントの三好、堂安がいたが、いつも悩みのCBに中山、富安、ストライカに小川、岩崎とタレントが揃っていたのもよかった。
 そして、彼らが久々のワールドユース出場を決めた後、丁寧に戦い、決勝でサウジをPKで振り切ったのは本当にうれしかった。あれを見たら、常識的には「未来は明るい」と考えるが普通と思うのですが。

6.JリーグのDAZNとの10年超長期放映契約
 10年契約、2000億円と言われても、中々ピンと来ないが、巨額契約が成立したことは素直に喜びたい。ただ、これだけ不確定な世の中で、これだけ長期高額の契約の詳細はどうなっているのだろうか。ここは、今後に渡り、Jリーグ当局も的確な発信を、マスコミには正確な報道を期待したい。

7.女子代表五輪出場逃す
 こちらに書いたが、このチームは疲労ですり減ってしまったのだ。しかし、彼女たちが残してくれた成果は限りないものがあり、感謝の言葉しかない。高倉新監督に率いられた新しいチームには、次々と若手が登場している。若年層の世界大会での好成績も悪くない。今後に期待したい。

8.田島氏日本協会会長就任
 田島幸三氏にはちょっと複雑な思いがある。
 浦和南高校で全国優勝した高校サッカーのスタアで、筑波大学在学時代に日本代表にも選考された選手が、古河に加入し早々に引退し、中途半端にドイツに留学し指導者を目指した。指導者としても明確な実績はなく、氏が中心となった活動も、エリートプログラムやJFAアカデミーなど、ピント外れのものが多いような気がする。
 確かに、ここ20年来日本協会の中枢にいたのは間違いないのだが。

9.グランパス自滅
 元々、リーグ戦開始前から、多くの評論家がJ2落ちを予測していた。その通りになっただけだ。
 ちなみに、監督解任が遅かったとは思うけれど、少々早かったから残留できていたと言う考えも危険だと思う。復帰した直後の闘莉王はすばらしかったが、復帰数試合後はスタミナも切れてしまったようで、神通力も切れていたのだから。
 来シーズン、まったく新しいメンバでの再出発を狙っているようだが、過去の歴史を考えると、非常に危険なねらいだと思う。まあ、キャッシュは豊富なクラブですから、どうなることか。

10.日程問題いいかげんにしませんか
 ACLでどうしても勝てないのが、Jの日程問題にあることは再三議論されてきている。それでも、Jリーグ当局は何も手を打たない、どころ、かチャンピオンシップを導入した。ようやく、その制度をやめたと思ったら、夏期にインタバルを設けると言う。また、日程問題の課題の最大の1つである天皇杯決勝の元日開催をやめとうともしない。
 もう選手を消耗品として扱うのはやめにしましょう。選手は私たちの資産なのです。
posted by 武藤文雄 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年ベストイレブン


さて、恒例のベストイレブンです。

GK 西川周作(浦和レッズ)
 今年のJリーグは、チャンピオンズシップ以降、訳のわからない状態になってしまった。でも、やはり通期のリーグ戦をレッズが勝ち抜いたことは、しっかり記憶していくべきだろう。そして、今シーズンのレッズは過去と比較し、格段に守備が向上したが、西川の貢献はすばらしかった。また、ワールドカップ予選、敵地タイ戦でのファインプレイは、後年「日本の運命を左右したプレイ」と評価されるかもしれない。

DF 中澤佑二(横浜Fマリノス)
 スピードはなくなったし、90分間戦い抜くのは相当厳しそうだ。けれども、今シーズンはフル出場。相変わらず日本最高の守備者として君臨している。敵のプレイを丹念に研究しているのだろう、どのような場面でも彼我のスピード差を考えながら、敵のシュートポイントを押さえる。今なお、すべての日本人守備者が目指すべき存在。

DF 阿部勇樹(浦和レッズ)
 通期でJリーグを勝ち抜いたレッズの大黒柱はやはりこの人。サイドチェンジや前線へのフィードの美しさ、中盤での刈り取り、後方に引いてのバランスの確保。この選手のプレイを見るのは本当に楽しい。今シーズンは遠藤航の加入により、最終ラインまで下がることは少なくなったが、チーム事情?でDFとさせてもらいました。

DF 昌子源(鹿島アントラーズ)
 今シーズン最高の発見。今シーズン終盤から着実に向上し、チャンピオンシップ、クラブワールドカップの1試合ずつでさらに成長した。レアル・マドリード戦の後半、クリスチャン・ロナウドを止めた場面には興奮した。この選手の確立は、ロシアワールドカップのベスト8以上を目指す私たちにとって、とても重要だ。

MF 西大伍(鹿島アントラーズ)
 このポジションは、ドイツで奮闘する両酒井(2人とも欧州では相当な評価を受けているようなのだが、どうして日本代表に帰ってくるとおバカをするのだろうか)、小林祐三などと迷ったが、やはりクラブワールドカップでのプレイを思い出し、西を選考した。あのレアル戦での上下動、落ち着いたボールさばき、粘り強い守備。あれだけやってくれれば、代表復帰も十分に考えられる。

MF 矢島慎也(ファジアーノ岡山)
 岡山の攻撃リーダとして、J1昇格まで後一歩までチームを引っ張った若きスタア候補。あのセレッソ戦、劣勢の中盤で一人冷静に配球したプレイはすばらしかったのだが。五輪でも、攻守のバランスをとり、難しい状況下のチームを支えた。J2にレンタルされ、チームの中核を担うことが若いタレントの成長に重要だと言うことを示したことも意味がある。レッズに戻る来シーズンどこまで成長してくれるか。

MF 中村憲剛(川崎フロンターレ)
 やはりこの人はすばらしかった。長短のパスを自在に操り、全軍をリードする。終盤戦で負傷しなければ、フロンターレが通期で最高成績を収めた可能性もあったかもしれない。

MF 原口元気(ヘルタ・ベルリン)
 現在、日本最高の名手と言っても過言ではないだろう。レッズでプレイしていた終盤は、すっかりたくましくなっていたが、ドイツに行きさらに成長した。何より、持ち前の技巧に強さがついたのがすばらしい。歴史的にも、日本に本格的なウィングが登場したのは、60年代の大杉山、70年代の大永井以来ではないか。ロシアの上位進出に向けて、最も重要な選手となった。

FW 大久保嘉人(川崎フロンターレ)
 幾度も書いたが、このFWが得点に専念するポジションで、中村憲剛と同じチームにいてくれたことに感謝したい。いわゆる瞬発力は、全盛期からは落ちてしまったかもしれないが、点をとれる場所に入り込むタイミングと、ゴール前での冷静さは、相変わらず格段。

FW 岡崎慎司(レスター)
 プレミアで優勝。いずれの試合を思い起こしても、岡崎抜きでその栄光がなかったことは間違いない。その献身的なプレイスタイルは、誰からも尊敬されるもの。それにしても、ハリルホジッチ氏が、この日本でも最も頼りになるストライカを軽んじて、自分で自分の首を絞めているのは不思議で仕方がない。

FW 大迫勇也(1FCケルン)
 強さと技術を併せ持つ本格ストライカとして期待され続けてきたこの大器が、ようやく本領を発揮してきた。もっと周囲に「自分が点をとるから、ここにボールを寄こせ」と言う要求をしてほしい。代表での背番号が15と言うのもすばらしい、かつての釜本と同じではないか。ライバルは多いが、大迫が最前線で光り輝けば、ロシアへの期待は多いに高まる。
posted by 武藤文雄 at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヨハン・クライフと中村憲剛&大久保嘉人

 今年3月24日に、ヨハン・クライフが逝去。
 来年1月1日に、中村憲剛と大久保嘉人は、同じチームで最後の戦いに挑む。
 今年終盤の戯言として、クライフの偉業を懐かしみながら、本ブログ最後で上記2文を結合させます。

 今年も、世界サッカー界には、色々なことがあった。欧州選手権なりコパアメリカなど大きなタイトルマッチには興奮したし、チャンピオンズリーグ決勝でのマドリードダービーも中々だったし、五輪のネイマールの涙も感動的だったし、いや先日のクラブワールドカップ決勝も悔しかった。ビデオ判定やら、ワールドカップ本大会出場チーム数増など、怪しげな動きもあった。
 そんなこんな色々あった1年だったが、私にとって今年は、クライフが死んだ年として記憶することになる。とにかく、私の世代のサッカー狂にとって、クライフと言う選手は特別な存在なのだ。私が中学校2年生の時に行われた74年のワールドカップで、オランダ代表が見せたサッカーの美しさと、それを率いたクライフのリーダシップは格段のものだったから。これは純粋に年代的なもの、ある意味一番多感な中学生時代に、あこがれたスタアに対する思いは格段のものがある。私にとって、ちょっとペレは早すぎたし、マラドーナは同級生だ。
 クライフが肺ガンで状況が芳しくないとの情報は耳にしていたので、、ある程度覚悟はしていた。また、ちょうどその報せを聞いたのが、ワールドカップ予選のアフガニスタン戦直後、親しいサッカー仲間と一緒の時だったこともあり、様々なことを話すことで、気がまぎれた。帰宅して、深夜の複数のテレビスポーツニュースで流れたのはいくつかの名場面。74年ワールドカップ、決勝の開始早々のPK奪取、2次ラウンドブラジル戦のジャンプボレー、アルゼンチン戦のGKを抜き去るドリブルシュート、そして1次ラウンドスウェーデン戦のクライフターン。40年以上前になるが、これら4場面は今でも鮮明な記憶となっている。悲しい酒だった。

 言うまでもなく、クライフ氏が監督としても絶品だった。そして、監督としてのクライフ氏の評価は、いくつかビッグタイトルを取ったと言うことに止まらない。
 監督としてのクライフ氏の貢献は、第一に、クライフ氏が作り上げた攻撃的サッカーが実に見事だったことだ。判断力がよく技術の高い選手を集め、高速パスを回して敵を崩し切る。80年代以降、世界のトップレベルのサッカーの守備力は格段に向上した。これは、選手のフィジカルトレーニングが充実してきたこと、ビデオ素材などの充実で大柄な選手の育成術が発達したこと、戦術の進歩で(退行とも言うのかもしれないが)中盤を分厚くする守備方式が確立したことなどによるものだ。それでも、80年代はプラティニとかマラドーナとかファン・バステンなどのスーパースタアがいれば、それを突破することはできていた。けれども、90年や94年のワールドカップでは、分厚い中盤に加えて、後方をブロックで固める守備方式が登場し、いよいよ点をとるのが難しい状況となった。それに対する有力な回答の1つが、クライフ氏の「判断力がよく技術の高い選手による高速パス」だったのだ。
 2つ目の貢献は、バルセロナと言うクラブがまったく異なる存在となったことだ。このクライフイズム浸透以降のバルセロナは、常に判断と技巧に優れた高速パスで世界から尊敬される存在となり、幾度もスペイン制覇したのみならず欧州チャンピオンにもなり、00年代には複数回世界一となった。若い方には信じられないかもしれないが、バルセロナと言うクラブは、80年代までは、クライフやマラドーナのようなスーパースタアを高額で買ってきては、レアルやアトレティコのマドリード勢やバスクのクラブの後塵を拝する、まあそのような楽しいクラブだったのだ。大体、60年代から80年代にかけてバルセロナは、2回しかスペインリーグを制覇していなかったのだ(うち1回は選手クライフがいた73-74年シーズン)。
 そして、3番目の貢献、これはバルセロナのいわゆるクライフイズムが、スペイン代表にも広がり、とうとうこの国が欧州選手権はもちろん、ワールドカップまで制したことだ。90年代いや00年代前半までのスペイン代表チームは、レアル・マドリードなりバルセロナの高額スタアが揃い、大会前は「今回こそ優勝候補」と言われながら、本大会に入り勝負どころで確実に負ける存在だった。ワールドカップを制した2010年の決勝の相手が、クライフの母国オランダだったのは皮肉だったが。当時クライフ氏が、スペインを応援したのには笑わせていただいたが。

 ただ、考えてみると、最近のバルセロナやスペイン代表チームのプレイ振りが、クライフ全盛時のアヤックスやオランダ代表に似ているかと言うと、ちょっと違う。で、その最大の違いは、結局選手クライフがいない、と言うことに突き当たる。
 よく若い友人に「クライフって、どのような選手だったのだろうか、今で言うと誰に似ているのか」と問われることがある。
 クライフのプレイそのものの説明はそれほど難しくない。一応トップのポジションにいるがバックラインまで引いてきてプレイを開始する。周囲の味方とパスを回していて、隙を見つけると突然加速して、高速ドリブルを開始する。突破のドリブルは、左右の揺さ振りではなく、加減速を用いる。急加速もすばらしいが、急減速による攻撃の変化は非常に効果的。そして、敵のチェックが甘ければ、そのままペナルティエリアに進出する。あるいは、ドリブルした姿勢のまま、長短自在のパスを操る。時に、それは味方へのラストパスとなる。あるいは、そのパスを受けた味方が最前線にラストパスを入れる。そして、それに飛び込んで難易度の高い得点を決める。
 ただ、クライフにスタイルが似ている選手となると、中々難しい。フィニッシュも突破も組み立ても、すべてこなせるスタアはそうは存在しない。特に最近のサッカーは中盤のプレスが非常に厳しくなっているので、シャビやイニエスタやピルロやモドリッチのように中盤後方で組み立ての妙を見せるタレントと、メッシやクリスチャン・ロナウドやネイマールやベイルのように突破し点をとるタレントに分化する傾向がある。
 そうなると、ペレ、マラドーナまでさかのぼることになるが、この2人はゴール前の破壊力が凄すぎて、最前線での魅力が強すぎる。プラティニはややクライフに近いが、「緩」は絶妙だったが、「急」はクライフより落ちるか。まあ、肝心のところで、熱くなって我を忘れてしまい、西ドイツにやられるところは、この2人の共通点かもしれないが。
 話を戻すが、監督としてのクライフ氏は、自分のような万能型攻撃兵器の存在が難しい時代に合わせた美しい攻撃的サッカーを作り上げたと言うことなのではないだろうか。

 と言うことで、クライフを今の選手に喩えるのはとても難しいのだ。クライフの死後、そんなことを考えながら、Jリーグの試合を観ていた時に、ハッとひらめいたことがある。
 もし、中村憲剛と大久保嘉人のプレイを同じ1人の人間が演じることができたら、それがクライフではなかろうかと。憲剛による組み立ての妙、緩急の変化あふれる鮮やかなラストパス。大久保の強引で効果的な突破、そしてきめ細かな得点力。それらが総合されたタレント、クライフとはそのような選手だったのだ。
 
 クライフのような現人神はさておき、私たちは中村憲剛と大久保嘉人を所有している。いつもいつも語っているが、この2人がこの4年間同じクラブで戦うのを見ることができたのは、幸せな事だと思っている。この2人が絡む攻撃を見るのは本当に楽しかった。ベガルタ戦以外では。
 そして、明日は天皇杯決勝。アントラーズ対フロンターレ。中村憲剛と大久保嘉人が同じチームで戦う、おそらく最後の試合となる。そして、憲剛も大久保も輝かしい経歴を誇り、日本サッカー史で燦然と輝く経歴が語られるべきタレントだ。しかし、この2人はタイトルに恵まれた事はない。明日の決勝戦に向けて、2人の思いは格段なものだろう。
 私はフロンターレサポータでも何でもない。けれども、憲剛が最高の笑顔でカップを上げる姿は見てみたい。
posted by 武藤文雄 at 21:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大魚を逸したアントラーズ

 後半半ばに、クリスチャン・ロナウドのドリブル突破を、昌子が冷静な対応で止めたとき、「これは、もしかしたら」と思い始めた。そして、アディショナルタイム、左サイドからのクロスが裏に抜け、遠藤がフリーでシュートした瞬間。もしかしたら、あれは「私達日本人が世界一に最も近づいた」と後世に語られる瞬間だったのかもしれない。もちろん、そうならないことを望んではいるのだが。
 いや待て。俺たちはもう世界一の経験があるのだったっけな。

 アントラーズの奮闘は、単にアジアのクラブ、日本のクラブが決勝に進出し、欧州のトップクラブをあと一歩まで追い込んだことに止まらない。
 ビッグゲームで、延長戦となり、歴史的なスーパースタアが圧倒的な個人能力を見せて勝負を決める決勝戦など、そう滅多にお目にかかれるものではないのだ。クリスチャン・ロナウドの3点目は、まだ植田が昌子に合わせてラインをそろえられなかったと言う守備側のミスもあった。けれども、4点目はあり得ない、味方のシュートが偶然に自分の前に飛んできて、それをとっさに完璧な場所にトラップし、落ち着いてシュートを決めるなんて。この選手のストライカとしての能力は一体どう考えたらよいのだろうか。クリスチャン・ロナウドは、いわゆるストライカとして、ゲルト・ミュラー、ファン・バステン、ロナウド(ブラジルのね)の域に達する名手に至ったと、考えるべきだろう。そして、その名手に延長でやられる経験が味わえるなんて。

 クラブワールドカップで日本勢が準決勝まで進んだのは5回目となる。。
 07年、レッズがミランに0対1、よく守り、ワシントンを軸に逆襲を成功させかけた場面もあったが、きっちりと0対1でやられた試合。戦闘能力差は明らかだったが、最後まで1点差で戦い抜いたのは見事だった。サッカーと言う競技は、とにかく1点差でとどめておけば、何が起こるかわからないのだから。ただ、この時のレッズは負傷でポンテと田中達也を欠いており、さらにACLを含めたシーズン終盤の過密日程でボロボロだった。もう少しよいコンディションで戦えばもっと健闘できた可能性もあったと思う。
 08年、ガンバがユナイテッドに3対5、終盤攻め合いとなり、遠藤を起点とした攻撃でユナイテッドから複数点をとったこともあり検討した雰囲気もあった。けれども、前半ギグスのCKからヴィディッチとクリスティアン・ロナウドに決められ、2点差とされてしまったので、勝負と言う意味ではどうしようもなかった。ただ、この年のガンバも、ACL制覇を含めた過密日程で、二川や佐々木も使えず、ボロボロだった。
 11年、レイソルはJリーグチャンピオンとして地元枠での登場。苦戦しながらも準決勝に進出したものの、準決勝の相手サントスには、ネイマールと言う化物がいた。1対3の完敗。化物の存在が、いかにサッカーにとって重要かを認識する試合だった。
 そして昨年、サンフレッチェがリーベルプレートに0対1、互角の攻防でサンフレッチェにも好機があったものの、GK林のミスから失点(これはベガルタサポータからすると、「ああ、またやっちゃった!」と微妙な感動もあったのだが)。その後の20分間、しっかりとボールを回してきたリーベルに抵抗できなかったのが印象的だった。ちなみに、サンフレッチェは3位決定戦で広州恒大を破ったが、広州恒大の各選手の疲労振りが顕著だった。上記のレッズやガンバも同様だったが、ACLを制した直後のクラブが、このクラブワールドカップを戦うのは、日程的に非常に厳しい挑戦と言うことなのだろう。

 そして、アントラーズは、準決勝でナショナル・メデジンを振り切り、決勝でレアル・マドリードに最大限の抵抗を見せてくれた。

 ナシオナル・メデジンは非常に戦闘能力の高いチームだった。
 驚いたのはメデジンの攻撃的姿勢。よほどのスタア軍団だった場合を除き、南米のトップチームは「まず守ってくる」と言う先入観がくつがえされた。中盤で速いパスで左右に揺さぶり、短く低く強いパスをトップにぶつけ、FWがしっかりキープし起点を作り、そこから再三ペナルティエリア内に進出してくる。中盤でのパスコースは多彩、前線でのキープは格段で、アントラーズは幾度も好機を許した。
 一方で、攻撃に多くの選手をかけてくるので、一度アントラーズがボールを奪い、第一波のプレスをかわすのに成功すると、 中盤は薄い。その結果、結構アントラーズも好機を作ることに成功した。ただし、中盤は薄いが、最終ラインの強さと判断力は見事。アントラーズのラストパスをギリギリのところで押さえ込む。一度、後方から走り込んだ柴崎が鮮やかな技巧でDFラインの裏を突いたが、GKの見事な飛び出しに防がれた。
 勝負を分けたのは、ほんの少しアントラーズが幸運だったこと。全盛期の好調ぶりを思い出したかのような曽ヶ端と、大会に入り成長し続ける昌子を軸に、幸運も手伝って丹念に守り続けたアントラーズ。ビデオ判定によるPK奪取と、終盤攻め疲れたメデジンのプレスが甘くなったところでの速攻からの2発。
 繰り返すが相当幸運だったことは間違いない。特に前半終盤、後半半ば、メデジンがいわゆる強度を上げてきた時間帯は、アントラーズは最終ラインから持ち出すことができず、幾度も決定機を許してしまったのだから。また、現実的に戦闘能力差があったのは間違いないから、メデジンに厚く守備を引かれ、ロースコアで上回る試合を狙われたら、一層難しい試合になっていたことだろう。現に、ブラジルワールドカップでも、リオ五輪でも、そのようなスタイルのコロンビアの速攻にやられたのは記憶に新しい。おそらくメデジンは、決勝のレアル戦を見据え、90分で勝負をつけてしまう展開を狙ったのだろう。上記2試合の日本はどうしても勝ち点3が欲しかったが、アントラーズは我慢して120分勝負に持ち込む選択肢もあったところが違ったから。もちろん、メデジンが見て愉しい攻撃的サッカーを展開し、それで日本のチームの勝つ確率が高まったのだから、文句を言う筋合いはないのだが。

 そしてレアル・マドリード。
 欧州チャンピオンズカップ黎明期のディ・ステファノ、プスカシュ時代から、この純白の衣をまとう名門クラブは、各ポジションに絢爛豪華なタレントを並べ、他を圧するのを得意としている。そして、今回もクリスチャン・ロナウド、モドリッチ、セルヒオ・ラモスらがズラリ。過密日程の欧州トップクラブゆえ、各選手の体調は今一歩で、それがアントラーズの健闘につながったわけだが。
 このレアルに対し、なぜアントラーズがあそこまで健闘できたのか。答えは比較的簡単で、アントラーズにいくばくかの幸運が訪れれば、接戦になる程度の差しかなかったからだ。言い換えると、Jリーグのトップクラブの戦闘能力は、世界の超トップレベルとそのくらいの差だと言うことだ。上記で振り返った過去のクラブワールドカップの敗戦も、相応には接戦に持ち込んでいたの。また、ワールドカップでも、コンディション調整に失敗した06年と14年を除けば、98年のアルゼンチン戦や10年のオランダ戦で代表されるように、それなりの試合はできてきた。
 一方で、今回のアントラーズを含めて、毎回毎回近づけば近づくほど、その差が具体的に見えてきて、道が遠いことも痛感させられる。そして、その決定的な差とは、「スーパースタアの得点能力」と言う見も蓋もない結論になってしまうのだが。クリスチャン・ロナウドのようなスーパースタアを日本から輩出するにはどうしたらよういのか。これを語り出すとキリがない。
 ただ、今回のアントラーズは、レアルのような世界最強級クラブに対し、とにかくリードを奪ったこと、幸運ではなく能動的な崩しで2得点したことがすばらしかった。特に柴崎の2点目は、技巧で複数の敵選手を打ち破った見事なものだった。いわゆるインテンシティとかデュエルを発揮した一撃だったが、これらを支えるのは単なるフィジカルではなく、技巧そして的確な判断力であることを示してくれたも痛快だった。柴崎は日本のエリート選手で、代表にも選ばれるほどのタレントだが、欧州でのプレイ経験はない。そのような選手でも、あれだけのプレイができることが、Jリーグの充実を示している。少なくともこの日、柴崎はモドリッチより輝いたプレイを見せてくれた。果たして、柴崎は、どのような厳しい試合でもモドリッチのようなプレイができる選手に育ってくれるだろうか。
 柴崎だけではない。昌子のプレイは、ロシア五輪に向けた守備の中核となることを存分に期待させるものだったし、曽ヶ端と小笠原の両ベテランはさすがだったし、金崎、永木、西、山本、遠藤と言った中堅どころも試合ごとに成長を見せレアルの選手と対等近くわたりあった。
 そして、選手の能力を存分に引き出した石井監督の采配を評価しないわけにはいかない。石井氏は、Jリーグ終盤戦から、プレイオフそれに勝利のクラブワールドカップまで視野に入れ周到に準備をしたのだろう。さらに、プレイオフ以降の連戦を考慮し、ローテーション的な選手起用も見事だった。与えられた環境で最善の成績を目指すと言う監督の使命をほぼ完璧に果たしたのだ。そして、もし冒頭に述べたあの遠藤のシュートが入っていれば、「ほぼ」が必要ないところだったのだが。

 アントラーズ選手たちの、試合終了直後の大魚を逸した悔しさにあふれた表情は、すばらしかった。そう、彼らは大魚を逸したのだ。そして、このような機会をまた確保することの難しさを想像すると...


 余談を2つ。

 アントラーズには東北出身選手が多い。小笠原は岩手県出身、柴崎は青森県出身。そして遠藤は塩釜FC、宮城県出身だ。元々、アントラーズの前身の住友金属の中軸だった鈴木満(現GM)、80年代エースとして得点力あるウィングとして活躍した茂木一浩も宮城県出身だ(ちなみに、茂木は自分と同世代 で、高校時代散々痛い目にあったのです)。さらに、遠藤を育てた塩釜FCは、言うまでもなくあの加藤久が育ったクラブ。宮城県育ちの私としては、やはり嬉しい。

 ナシオナルメデジンが、トヨタカップで来日したのは89年。敵はACミラン、フランコ・バレーシ、アンチェロッティ、ドナドニ、若きマルディニと言ったイタリア代表選手に、ファン・バステン、ライカールトのオランダのトッププレイヤが加わった強力メンバだった。しかし、メデジンは知性あふれるCBエスコバル(故人、USAワールドカップ後に非業の死)、怪GKイギータを軸に、見事な守備を見せる。延長終盤まで0対0で進んだ試合は、ミランのエヴァニが直接FKを沈め決着。メデジンは惜敗した。長きに渡るトヨタカップでも、このメデジンの抵抗振りは歴史に残るもの。そのメデジンが、もしかしたら最後の日本開催となるクラブワールドカップに再臨し、日本のクラブと手合わせしたことの感慨は大きかった。
posted by 武藤文雄 at 12:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月05日

2016年シーズン、年間チャンピオンシップの罠

 まずは、アントラーズを称えたい。大会前から決められたレギュレーションにのっとり、見事な勝利を収めたのだから。今シーズンのチャンピオンはアントラーズだ。小笠原とその仲間たちに祝福の言葉を贈るとともに、敬意を表したい。

 ただ、私はこのレッズの敗戦には考え込んでしまった。ただの不運とか、理不尽とかとは別なものを感じたのだ。

 今シーズン、ペトロビッチ氏が率いるレッズは化けた感があった。試合終了間際まで、丁寧に攻撃的サッカーを継続し、粘り強く勝ち点を拾う。往々にして試合終盤の詰めを過つ傾向がなくなったのだ。結果として、長期のリーグ戦で最後の詰めを過る過去から訣別した感があった。遠藤航の補強が奏功し、後方を遠藤に託すことができるようになった阿部が本来の持ち味である中盤での刈り取りを行うことで、敵速攻への対応が改善したことも大きかった。そして何より、敵が守備を厚く固めて来ても、ペトロビッチ氏が粗忽に動かず、執拗に両翼から攻め込み続けるようにもなったのも重要だった。
 結果として、ナビスコカップをPK戦で制した試合も見事だったし、フロンターレと一騎打ちになったリーグ戦を勝ち切ったのも鮮やかだった。 そして、このチャンピオンシップ、鹿島での初戦も、西川、遠藤、阿部の中央の強さを活かし、PKの1点を守り切った試合ぶりも大したものだった。
 この第2戦も、前半開始早々、スローインからアントラーズの僅かな隙を突き、関根の高速突破から、興梠が先制。完璧な立ち上がりだった。その後も、前に出てくるアントラーズの裏を突き、武藤が幾度も好機をつかむ(が、決められない。何かなあ、武藤雄樹、持ってないなあ、がんばれよ)。
 ここまでは完璧だったのだ。

 ところが、前半終盤、宇賀神が遠藤康に出し抜かれ、さらにカバーに入った槙野の詰めが甘く、簡単に狙い済ましたクロスを許し、金崎に同点弾を食らったあたりから、おかしくなってくる。
 アントラーズに「勢い」が出たこともある。また、アウェイゴールルールがあるため、結果的に興梠の先制点があってもなくても、同じになってしまうレギュレーションが、微妙なプレッシャとなったのだろうか。そのような流れの中で、ペトロビッチ氏が、昨シーズンまでのペトロビッチ氏に戻ってしまう。
 高木に代えての青木起用は、少々守備的に戦う狙いと考えればわからなくもなかった。しかし、続く関根と駒井の交代はよくわからない。関根は先制点のアシストを含め、幾度も好機にからみ、豊富な運動量による上下動で守備にも貢献していた。まだまだスタミナも残っているように見えたのだが。そして、何か慌てるように、興梠に代えてズラタン。前線で溜めを作れる興梠は、守備にも攻撃にも有用なのだが。
 そうこうしているうちに、槙野がやらかしてしまった。アントラーズの速攻に対し、鈴木優磨のフリーランに気がつかず突破を許す。この失態のみならず、あろうことか軽率なファウルでPKを提供。我慢して身体を寄せ、初戦も好捕を見せた西川に託すべきだったのではないか。余談ながら、槙野はキッカーの金崎に対し、恫喝まで行ったのは失望した。
 しかし、それでも、アントラーズが逆転した後も試合は10分以上残っていた。けれども、ペトロビッチ氏が切れてしまった。槙野を最前線に上げ、バランスを崩した時点で、試合は事実上終了してしまった。最前線に槙野が残っても、空中戦で圧倒できる訳でも、格段のシュート力を持っているわけではない。槙野は昌子に子供扱いされ、レッズは完全に攻めあぐむ。実際、一部報道によると、レッズベンチ内にはペトロビッチ氏に異論を唱える向きもおり、ベンチは大混乱だったと言う話もある。一方で、阿部と柏木が何とか状況を打開しようとする姿は美しかったのだが。
 ペトロビッチ氏が丹精込めて作り上げ、シーズンを通じて見事なサッカーを見せていたレッズは、最後に崩壊してしまった。それも、ペトロビッチ氏が自らの手で。

 先週、フロンターレがアントラーズに、山雅がファジアーノに、それぞれ苦杯した。この2つの試合から、改めて、長期のリーグ戦の結果が、一発勝負でくつがえる恐ろしさ、理不尽さを感じることとなった。それでも、これらの試合の敗者2クラブは、負けはしたものの、相応の強さを見せてくれた。
 しかし、レッズは違った。逆転された後、10分以上の時間があったのに、監督の判断ミスで、敵に恐怖すら与えることなく自滅してしまったのだ。互角どころか、敵を圧する戦闘能力を持っていたにもかかわらずだ。

 冒頭に述べたように、通期勝ち点が少なかったアントラーズがチャンピオンになったことは、それがレギュレーションと言うもの。シーズン前に決まっていたルールにのっとったのだから、「お見事」と語るしかない。
 しかし、最後の10分のレッズの崩壊劇は、やはりよくわからない。少なくとも、レギュラーシーズン中のペトロビッチ氏は、昨シーズンまでとは異なり、丁寧に慌てることのない采配を振るっていたのだ。いったい、あの瞬間、ペトロビッチ氏に何が起こったのだろうか。単純な前後期制でなく、中途半端に通期成績が重視されるレギュレーションの罠にはまってしまったと言うことなのだろうか。

 これもサッカーと言うことなのか。
 いずれにしても、私たちにできることはある。今シーズン、レギュラーシーズンでフロンターレとの競り合いを制したレッズ(そして敗れたフロンターレ)の見事なサッカー、チャンピオンシップで鮮やかな勝ち方を見せたアントラーズのしたたかなサッカー、それぞれを、しっかりと記憶していくことだ。
posted by 武藤文雄 at 00:30| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月01日

シャペコエンセ

 何ともやりきれない。このような事故がまた起こるなんて。
 生存した方々の早期の回復を祈り、亡くなった方々のご冥福をお祈りし、ご家族や親しい方々にお悔やみを申し上げます。

 中学生の折、サッカーをかじり始めた当初から、トリノのスペルガの丘、ユナイテッドのミュンヘン空港、それぞれの悲劇を学んだ。そして、リアルタイムに体験した、アリアンサ・リマとザンビア代表。
 今回は、カイオ・ジュニオール氏やケンペスたち、身近で触れ合う機会が多かった方々が悲劇に見舞われた。さらに、スルガ銀行カップと言うつながりもある大会。うまい言葉が見つからない。昨日来、悲劇に見舞われた彼らと、共にプレイしてきたJリーガやサポータの方々の悲嘆を目にするにつけ、何とも言えない気分になる。

 まずは、自分と家族が、こうやって日々安穏と愉しく暮らせることに改めて感謝したい。
 そして、このような事故の再発を何とか防ぎたい。言い方は悪いが、事故と言うものの発生確率をゼロにするのは不可能だ。またゼロに近づけるためには膨大なコストがかかる。けれども、丁寧に物事を分析し、正しい対策を積み上げれば、常識的なコストで、ゼロを目指すことはできる。
 私は航空機事故を減らすことはできない。でも、少なくとも職業人として30年余働いてきた、自分の範疇でゼロを目指すことはできる。

 やれることはやる。それが、サッカー狂の私が、カイオ・ジュニオール氏たちのためにできる、数少ないことだ。
 繰り返します。生存した方々の早期の回復を祈り、亡くなった方々のご冥福をお祈りし、ご家族や親しい方々にお悔やみを申し上げます。
posted by 武藤文雄 at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月29日

プレイオフはやめよう

 J1昇格決定戦。準決勝の時点で2試合ともすばらしいドラマを見せていただいた。
 映像観戦は、セレッソ対サンガを選択。経営規模も比較的大きなクラブだけに、両チームにJ1レベルのスタアも多く、とてもおもしろい試合となった。
 柿谷の妙技からセレッソが先制。ソウザのミドルシュートを、サンガの名手菅野がキャッチしきれず、そこを鋭く詰めた得点だったが、飛び出しが格段の菅野の上を行くロブの鮮やかなこと。その後の時間帯も、蛍、ソウザの鋭い押し上げから、両翼の清原と杉本が精力的な上下動と個人技を発揮し、セレッソペースで試合は進む。しかし、終盤チームはガス切れ、これは柿谷の負傷などもあり、1年間をかけたチーム作りがうまく進まず、存分な組織力を持つまで強化できなかったと言うことだろう。本来であれば独走で首位を走ってもおかしくない戦闘能力を誇る(いや、そもそもJ1陥落そのものが考えづらい)クラブなのだが、監督のめぐり合わせが悪いのか、チームとしての強化が進まない。もっとも、終盤戦に向けて連勝し、このJ1昇格プレイオフにあわせてきたのはさすが。考えてみれば、昨シーズンもベテラン選手を組み合わせ、アビスパとすばらしい試合を演じてくれたっけな。ただ、チーム全体の組織力が不十分なだけに、どうしてもこのような消耗戦では、終盤エネルギー切れを起こしてしまう。ただ、このクラブには山口蛍がいた。この強力なMFの帰国には、様々な論評が渦巻くが、90分間を通し、「なるほど、代表の定位置を確保している選手は違うものだ」と、感心したものだ。
 サンガの不運は、堀米をスタメンから使えなかったことだろう(体調不良とのことだが)。ために、エスクデロが1人最前線で奮闘するが、山下、藤本のベテランCBコンビに抑えられてしまう。しかし、後半堀米が起用され、再三左サイドから見事なえぐりを見せると、エスクデロへのマークも分散。幾度も好機をつかんだが、その度にセレッソの守護神金鎭鉉が立ち塞がった。それでも、最終盤にパワープレイから1点を奪い、「あわや」と言う場面も作ったがここまで。パワープレイそのものの選択は否定しないが、もう少し堀米、エスクデロの個人技を活かす算段をすべきにも思ったのだが。

 こうして「いや、よいものを見せていただきました」と感心していたのだが、「裏番組」ではとんでもないことが起こっていた。アディショナルタイムに、ファジアーノが赤嶺の一撃で、山雅を振り切ったというのだから。繰り返すが、赤嶺の一撃で。
 山雅は、今シーズン常時安定した成績で、終盤まで2位をキープし続けてきた。首位を走るコンサドーレが失速しかけたため、じりじりと差をつめ、一時は逆転優勝でJ1昇格に花を添えるのではないかとすら思われた。ところが、終盤、ゼルビアに苦杯。名将小林伸二氏が、すさまじい勢いとチーム完成度で仕上げてきたエスパルスにひっくり返されての3位に終わり、プレイオフに回ることになった。しかし、安定した戦い振りと、反町氏の用意周到な采配を考えると、最後のJ1昇格チケットを獲得するのは、山雅が本命と考えていたのだが。
 繰り返すが、正にストライカとしか言いようのない赤嶺の一撃。名将反町氏の憮然とした表情。そして、両軍サポータの天国と地獄。この表裏一体となったドラマは今年始まったわけではない。過去も幾度幾度も堪能させていただいた。

 熊田達規氏の「マネーフットボール」、主人公が自らの将来と恋人との幸せを賭け、プレイオフ出場権を目指すストーリは感動的だった。このマンガは大好きだし、リアルな世界でも上記のように様々な講釈を垂れたように幾度も興奮させていただいた。そして、この2試合もすばらしい経験となった。


 けれども。 

 やはり、J1昇格プレイオフはやめるべきだと思う。


 長期のリーグ戦の成績をあまりに無視し過ぎているからだ。幾度も触れるが赤嶺の一撃は最高だ。けれども、サッカーと言う競技は、1試合で評価するには、あまりに偶然が左右し、理不尽なのだ。理不尽が故に最高の愉しさを提供してくれるサッカーではある。そして、その理不尽さを回避するために、長期のリーグ戦が必要なのだ。それなのに、上位リーグへの昇格を理不尽にゆだねてよいものだろうか。

 チャンピオンシップが不適切なことは過去述べたとおりだ。しかし、金儲けのためと考えれば、それはそれで1つの理屈である。
 今シーズンのJ1。レッズの粘り強さが、フロンターレを上回った。技巧的でよいチームを作る能力には疑いないペトロビッチ氏が、過去の弱点と言われた、詰めの甘さ、リードされると慌てる悪癖をよく修正。さらに、遠藤航の獲得による守備の安定もあり、とうとう年間のリーグ戦を制したシーズンだった。一方で、中村堅剛と大久保嘉人が、小林悠と大島僚太と言う配下を得て見せてくれた技巧的なサッカーも中々だった。もちろん、前期シーズンを制したアントラーズの集中力も見事だった。
 明日から始まるレッズとアントラーズの戦いは愉しみだし、どのような結果になるかはわからない。しかし、どのような結果になろうとも、今シーズンは上記の記憶を愉しむシーズンとなるのだ。アントラーズがチャンピオンズシップを制したとしても、今シーズンのレッズとフロンターレの輝きが、損なわれるものではない。繰り替えすが、今シーズンのリーグ戦を制したのは浦和レッズだ。チャンピオンシップの結果がどうあれ、これは変わらない。皆がその記憶を語り合っていけばよいのだ。

 しかしだ。
 J1昇格決定戦は違う。たとえ、山雅が長期のリーグで3位を獲得しても、そしてその戦い振りを記憶しようとしても、そこには涙しかない。より上位リーグでの戦いを目指す人々にとっては、記憶は何のなぐさめにもならない。結果がすべてなのだ。
 確かにプレイオフはおもしろい。何度でも語るが、赤嶺の一撃は最高だ。上記したように過去幾度も興奮させていただいた。しかし、そのような刺激が、いかにおもしろいとは言え、劇薬に頼るエンタティンメントが健全ではない。エンタティンメントを求めるならば、入替戦を復活させればよいだろう。中位クラブに、終盤まで上位進出の希望を持たせるために、長期リーグの結果を軽視するのは、本末転倒なのは言うまでもない。
 上位リーグとの入替は、年間の通算勝ち点で評価するべきなのだ。
posted by 武藤文雄 at 01:30| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月13日

サウジ戦、そんなに心配はしてないけれど

 いわゆるAマッチデイにワールドカップ予選がなかったがために準備されたオマーン戦。久々に代表復帰した大迫が前半に2得点し、4対0で快勝した。まずは、15日火曜のサウジ戦に向けた準備と言う視点で、いくつか考えたことを。

 スタメンで起用された大迫、齋藤学、清武のできが上々だった。しかし、これは当たり前と言えば当たり前のこと。3人とも能力は折り紙付きのタレントでブラジルワールドカップのメンバ。そして、大迫と学はチームの大黒柱として好調ぶりを発揮しているし、清武はレベルの高いクラブで定位置確保に苦労しているようだが、起用されればよいプレイを見せている。
 既に完全に定位置を確保し代表の中心選手となりつつある原口と合わせ、彼らが代表の攻撃の中心を担うのは当然のことなのだ。ただ、原口を含めた彼らはみなそれほど若いわけではなく、20代半ば過ぎ。チームとしては極端な若返りでも何でもなく、今まで起用機会が少なかった実力ある選手達が、当然のごとく起用され始めたと解釈すべきだろう。
 こう言ったタレントたちが、中々代表で定位置を確保できずにいたのは、ハリルホジッチ氏が気弱の性格のためか、1次予選で岡崎や本田など既存の経験豊富な選手の起用にこだわったため。もっとも、この2人の輝きが格段だったことも確かで、ハリルホジッチ氏を責めるのは気の毒からもしれないが。
 さて、そうなると気になるのは岡崎と本田。岡崎はレスターで一時定位置を失っていたが、ここに来て取り戻しつつある。オマーン戦でも、得点こそなかったが、前線での存在感は格段。そもそもUAE戦にしても、イラク戦にしても苦戦の要因は、岡崎を勝負どころの後半半ばに交代させてしまったことにあった。サウジ戦でも頼りになることだろう。
 一方の本田は、オマーン戦ではスタメン起用。決して悪い内容ではなく、清武に前を向くスペースを提供し、よいクロスには大迫とタイミングをずらして飛び込むなど、よく機能してはいた。ただ、かつての体幹を活かした格段のボール保持力は失われ気味。これは年齢的な問題もあり、プレイスタイルの変更を考える時期に来ていると言うことなのではないか。そんなバランスの崩れが、豪州戦の前半、原口が作った決定機を外したことにもつながったようにも思える。さらに9、10月の試合では後半半ばに明らかなスタミナ切れを見せていた。ミランで「干されてる」のは、プレイスタイルの問題があるのだろう。そして、干されているが故にスタミナに課題が出てきているのだろう。いわゆる悪循環である。しかし、これだけの実績を残した男である、このまま衰えていくとはとても思えない。この苦しみの中から、新しい本田圭佑が登場することを期待したい。

 などと考えると、このオマーン戦はもう少し戦い方に工夫ができたのではないかと思えてくる。
 たとえば、サウジ戦で予想される中盤より前のスタメンは、長谷部、蛍、本田、清武、原口、大迫、と言うところか(私ならば、本田ではなく岡崎をスタメンとするが)。どうしても点をとりたければ、岡崎(または本田)、学、浅野を随時投入することになる。ただ、ここで、誰をどう並べるのかが、整理できているのだろうか。
 たとえば、リードしている状況以外で、原口を外すことは考えられないが、そうなると学をどう使うのか。2人を両翼に並べるとしても、2人とも左サイドから挙動を開始するのを得意としているのを、どう整理するのか。それをオマーン戦で試すべきだったのではないか。
 たとえば、大迫と岡崎を並べて起用する時間帯が必ずあると思うが、どのように並べるのか。岡崎を右サイドに置くのか、いわゆる2トップにするのか、大迫をトップ下にするのか(その場合の清武の起用法をどうするか)。こう言ったことこそ、もオマーン戦で試すべきだったのではないか。
 たとえば、ワントップの布陣を基本にしているのにかかわらず、岡崎、大迫、浅野、久保と、いわゆるトップで起用すると機能する選手を4人呼んで、どう並べ、使い分けるつもりなのか。特にオマーン戦の終盤、岡崎、浅野、久保を並べたわけだが、その3人の位置関係が不明確だった。オマーンが精神的に切れてしまい、日本継続猛攻状態になっていたから、いい加減な配置で問題は起こらなかったが、日本からすれば貴重な準備試合の時間を無駄にしたことになる。また、いわゆるストライカタイプの選手は足りているのだから、異なるタイプの選手を招集しなくてよかったのか。
 さらに言えば、リードをしたときのクロージングのやり方が見えてこない。タイ戦でも1対0でリードして、各選手が消耗した時間帯、ハリルホジッチ氏はぎりぎりまで選手交代を使わず、終盤ピンチを招いたのは記憶に新しい。香川にいたっては自分が得点できない焦りから、チームのリズムを崩すプレイを連続していたのに。豪州戦でも、守備組織はよく機能していたが、香川や本田が前線でキープもできなくなっており、交通事故のリスクが出始めたのに、氏の動きは遅かった。今のメンバを見ても、永木や井手口など、中盤守備で貢献できそうな選手はいるが、彼らをどのように起用するのか、よくわからない。岡崎や本田や香川がベンチに控えていれば、彼らを「守備を期待して」起用する選択肢もあるのかもしれないが。
 昨年、1次予選でシンガポールと埼玉で引き分けたあの凡戦。直前の準備試合のイラク戦で、大勝に浮かれたのか、香川の交代選手の確認などを怠ったことを思い出したりするのだ。

 そうは言っても。
 チームは着実に前進している。特に、春先のシリア戦以降、情けない限りだった守備面が、先日の豪州戦では格段に改善された。「やれるのだから、もっと早くやってくれ」との思いもあったけれど。さらには、豪州戦にしても、このオマーン戦にしても、麻也が落ち着いて守備の中核をどうどうと担ってくれたのは頼もしい限り。一時のおバカがなくなってくれれば、これほど嬉しいことはない。
 実際、オマーン戦では、前半日本のCK崩れのあと、蛍や丸山が対応を誤り持ち出された場面は感心しなかったが、組織守備は機能していた。いくら何でも、このサウジ戦の守備は期待できるだろう。
 攻撃にしても、冒頭から述べているように、働き盛りの多くの名手が、爪を研いでいる。色々迷走気味だったハリルホジッチ氏さが、さすがに的確なメンバを選考してくるだろう。
 何のかの言っても、ハリルホジッチ氏は着実にチームを前進させているのは、間違いない。そうこう考えると、過剰にサウジを警戒するのは、かえって逆効果かもしれない。むしろ、しっかりとスカウティングされた敵の長所、短所を把握したうえで(ハリルホジッチ氏のスタッフは、そのようなシゴトはしっかりしているはずだ)、当方のよさを前面に出す戦いが適切なようにも思える。
 サウジ戦、しっかりと組織化された試合で、確実に勝ち点3を獲得することを期待したい。
posted by 武藤文雄 at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月06日

レジェンドへの処遇

 マリノスが、中澤に大幅な減俸を提示したと言う。あくまでも、この報道が事実としてだが、何とも複雑な思いにとらわれる。

 まず今シーズンの中澤は、マリノスのまごうことなき大黒柱だった。いや、今シーズンに限らず、ここ10数年ずっとですが。ともあれ、今シーズンのマリノスが、中澤の格段の守備能力に支えられていたのは間違いない。
 そして、敵にするとこれほど忌々しい男もいない。先日のユアテックで0対1でベガルタがやられた試合。栗原のミスを拾ったウイルソンが落ち着いてフリーのハモンにラストパス、しかしハモンはドタドタと寄せる中澤に魅入られたかのように左外に持ち出し過ぎ、シュートはあえなく枠を外れた。中澤の寄せのタイミング、位置取りのうまさ、事前研究によるハモンのドリブルとシュートの癖の理解、いずれも完璧な守備ぶりだった。中澤とハモンを比較し、「格の違い」と言ってしまえばそれまでかもしれないが、あの中澤の守備は本当にすばらしかった。考えてみれば、この悔しさを味わえないのだから、マリノスのサポータの方々はお気の毒だな(と、負け犬の遠吠え)。
 南アフリカでのカメルーン戦、試合終盤に、闘莉王のおバカにより「うわあぁぁぁぁぁあ」と悲鳴を上げた直後に、中澤が例のドタドタ寄せで見事にカバーリングしてくれた場面を思い出した。38歳になった今でもなお、その守備能力は、衰えを見せていないのだ。しかも、中澤は、この3シーズンフル出場だと言う。CBでのこの偉業は、万全な体調維持、警告を食らわない読みの深さによるものだ。大したものである。

 これだけの減俸を提示すると言うことは、マリノスフロントは「来シーズン、中澤は不要」と判断していることとなる。とすれば、その後継者候補を見つける自信があるのかもしれない。確かに、マリノスには、資金潤沢の出資団体がいるらしいので。確かに世界に目を広げれば、中澤よりすぐれたセンタバックはいるだろう。ただし、そのような選手は、皆欧州の超一流クラブに雇用されており、今シーズンの中澤と同等の年俸で雇えるとはとても思えないのだが。 
 もちろん、マリノスには朴正洙、ファビオなどのよいタレントがいるので、周辺のポジションでよい選手を補強して、強力な守備網を構築する構想があるのかもしれない。このあたりは、毎試合マリノスの試合を追いかけているわけではない野次馬には、わかりかねるところがある。しかし、マリノスは、J屈指の右サイドバックである小林祐三と契約更新しないことが、公表されており、謎は深まるばかりである。
 少なくとも、野次馬が見る限り、中澤と小林が2人ともマリノスを去るとすれば、マリノスは来シーズン、まったく新しいチームとして再構築が必要になるように思う。これは、随分思い切った判断に思える。

 もっとも。
 マリノスと言うクラブは、中澤のほかに、同じ38歳の中村俊輔と言う、超弩級のレジェンドを抱えている(一部報道によると、その俊輔にも他クラブからの強力なオファーがあるとのことだが)。そして、2人のプレイが格段であるだけに、チームの若返りが難しいと言う状況がある。さらに、この2人には相当レベルの高給が支払われていることだろう。そして、どんなに節制を重ねても、30代半ば以降、多くの選手は負傷のリスクを抱えることになる。実際、今年、中澤はフル出場したが、俊輔は負傷がちのシーズンを送った。高給で年長の選手は、その選手がどれほど偉大な存在でも、クラブにとって、リスクとなり得るものだ。まして、こう言ったレジェンドに対するサポータの崇拝は格段のものがある。このような選手への待遇は、とても微妙なものなのだ。
 そもそも、マリノスと言うクラブは、歴史的にも、。中澤、俊輔以前にも、木村和司と井原正巳と言う、日本サッカー史に輝くレジェンドを輩出している。そういう意味では、レジェンドの扱いの経験は豊富なはずなのだが、何かねえ、木村も井原も、このクラブとは微妙な別れ方をしている印象が強いのですよね。
 ともあれ、レジェンドを所有できるのは、クラブにとって、とても幸せなことだ。しかし、そのレジェンドたちを適切に処遇するのは、案外に難しい。そして、同世代のレジェンドを2人抱えるマリノスフロントの悩みは、わからなくもない。

 まあ、そんなこんなを考えても、マリノスの今回の中澤への対応は、あまり上手とは言えない。
 個人的には賛成しかねるが、この大ベテランを戦力外と判断するにしても、高給を負担しても雇いたいと考えるクラブが他にもあるはず。そのようなクラブへの移籍を花道として準備する手段もあったはず。
 それとも、まさかこの偉大な選手を、ディスカウントで雇用しようとは思っていないですよね。
posted by 武藤文雄 at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする