2018年04月16日

田嶋さん、あなたは何のためにリスクを背負ったのか

 四十余年、サッカーと言う玩具を堪能してきたが、今回のハリルホジッチ氏更迭騒動ほど、理解できない事態は初めてだ。本当に驚いている。

 ここで私が「理解できない」と言うのは、この更迭が「サッカー的に不適切だ」と言う意味にとどまらない。つまり、ワールドカップで勝つために最適なのか、あるいは、将来日本がワールドカップを制覇するステップとして適切なのか、と言う「サッカー的に」重要な視点から、「理解できない」のではない。
 非サッカー的、つまり政治的な思惑とか、スポンサなどサッカー外からの圧力などを考慮しても、田嶋会長の今回の意思決定の理屈、根拠、判断基準が、まったく「理解できない」のだ。サッカー的な妥当性にも理解できないのはのみならず、それ以外の事情を考慮しても理解できず、ただただ愚かしい意思決定に思えてならないのだ。世の中には、色々な事情と言うものが存在し、サッカー的是非だけからは物事は判断できないとか、記者会見では正直にすべてを語れない、と言うことを考慮しても。
 冒頭に明言しておくが、私はハリルホジッチ氏のチーム作りを評価しており、ここまでの日本代表での成果も上々で、氏が率いる日本代表がロシアで相応に好成績を挙げてくれるのではないかと期待していた(詳細は別途まとめたいと思っている)。だから、今回の更迭劇には失望している。けれども、それはそれだ。田嶋会長のの意思決定の背景を理解できない話は別である。

 過去も日本サッカー界には、サッカー的に不適切な意思決定はいくつかあった。ただ、それぞれにおいて、サッカー的に納得はいかず非常に不愉快な思いは相当だったものの、それ以外の事情は推定可能だった。そしてその推定要因が、非常に残念だったからこそ、不愉快だったのだが。
 たとえば、加茂氏留任時の「腐ったミカン」事件、今回と類似の代表監督選択劇だった。これは、当時の意思決定者とネルシーニョ氏の在籍クラブの権益争いを考えると、それなりに背景は想像できた。でも、ネルシーニョ氏が率いる日本代表でフランスを目指したかった事は間違いなかったけれど。
 たとえば、フリューゲルス消滅。これは、当時の意思決定者が、出資企業の暴論との交渉に屈したことによる。いま考えても、あのすばらしいクラブが消滅したことは、ただただ悲しいだけだけれど。
 たとえば、我那覇選手の冤罪事件。これは、当初の誤った判断を、Jリーグ当局がその誤りが明確になったにもかかわらず認めなかったことによる。認めなかった理由は、面子のためなのか、かばいだてのためなのかは不明だが、そのような不公正な判断をする意思決定者が存在することは現実だったのだろう。繰り返すが、とてもとても残念なことであり、今回の代表監督人事以上にひどい話ではあったが。
 このように、過去サッカー的にはとても残念な意思決定はあったが、非サッカー的な基準で意思決定されたと考えると、その背景を理解できないこともなった。しつこく繰り返すが、とても残念だったけれども。
 
 けれども、繰り返すが、今回の代表監督人事については、意思決定者である田嶋会長の判断の背景が理解できないのだ。

 まず、サッカー的見地から考えてみる。上記の通り私はハリルホジッチ氏の手腕は高く評価している。しかし、異なる意見もあるだろう。

 まず、氏と選手たちの溝が大きく修復不能と言う、田嶋会長が記者会見で述べた説明通りのトラブルが発生しており、これにより会長が更迭を決断したと考えてみよう。ところが、落ち着いて整理してみると、この説明は、あまりに説得力が乏しいのだ。
 まず誰か中心選手が、ハリルホジッチ氏と意見が合わず、この人の下では勝てないと主張したとしよう。まあ80年代くらいまでは、クライフ御大を筆頭に「俺はこの監督の下ではプレイしない」と言う方々もいらしたが、ここ最近世界のトップ選手も、金満クラブへの集約が進み、ベンチで待機することにも慣れているから、この手の騒動は、ほとんど聞かなくなったが。
 そして残念ながら、いまの日本にはメッシやネイマール(いやレバンドフスキとかマネでもよいですが)のように、その選手がいるといないとではチームの戦闘能力がまったく違う水準になるようなタレントが、そもそもいない。したがって、もしハリルホジッチ氏と修復不能の関係の選手がいたのならば、その選手を外せば済むことだ。もし、いまの日本代表の誰かがそんなことを発言し、その選手の言い分を聞いて、監督を切ったとしたら、これほど愚かなことはない。
 では集団で選手が「この監督ではやれない」と、考えているとしたらどうか。現実的にはそのような事態が起こったとしたら、マスコミ関係者が必ず前兆を報道するだろうから、現実的には考えづらい。また、そこまで情けない代表チームたちだとも思っていないけれども。とは言え、万が一そのような事態になり修復不能の事態になったと言うならば、、最も責任が重いのは技術委員長だった西野氏と、日本人コーチとして入閣していた手倉森氏である。そして、そこまで事態が混乱していれば、たとえハリルホジッチ氏を更迭したとしても、すべての選手たちがこの2人を信頼していくとは思えない。したがって、西野氏を後任とする人事は、極めて愚かしい選択となる。

 それでは、協会がハリルホジッチ氏の監督としての能力を疑問視し、上記した選手との溝とは別に、「氏では本大会に勝つのは難しい」と判断し、田嶋会長が更迭を決断したとしよう。私は意見が異なるが、現実的に韓国に大敗したり、準備試合で思うような成績を挙げられていないのだから、そう考える人がいても、おかしくはないだろう。
 ただし、そうなると、問題はタイミングだ、
 後任の監督が準備する時間を作るために、更迭は早い方がよいに決まっている。ところが、ここまで引っ張った。そうなると、考えられる一つ目のケースは、ずっと前から、更迭したいと考え、後任を探したが見つからず、ここまで引っ張ってしまい、頼めるのが西野氏だけだったと言うことになる。後任を見つけられない協会会長の責任は限りなく重い。西野氏に任せるならばもっと早く決断できたはずだ。
 次に考えられるケースは、本当にマリ戦、ウクライナ戦で決断し、他の監督を探す時間がなかったと言う状況だ。一部の評論家は「ハリルホジッチ氏でなければ誰でもよい」と語っているようだが、協会としてそのような判断を下すのはないとは言えないのかもしれない。相当珍しい状況とは思うけれど。しかし、それを記者会見で「氏と選手たちの溝」と言う、偽りでしかも後から一層物議をかもすような理由を説明したのだから、これはこれで愚かとしか言いようがなくなる。

 以上、サッカー的な見地から、田嶋会長の決断、発言に合理性は見られないことを整理してきた。
 では、非サッカー的見地から、今回の決断を理解できるだろうか。

 たとえば、最近日本代表のテレビ視聴率が下がっているから視聴率が稼げる監督が必要だと、広告代理店が圧力をかけたとの説がある。しかし、西野氏で視聴率が上がるとはとても思えない。もし、カズなり中田英寿氏、あるいは大技で松木安太郎氏を監督に抜擢すれば、状況は好転するかもしれないが(もちろん、「そうした方がよい」と言っているわけではないので、誤解しないでくださいねw)。

 たとえば、adidas殿が自社と契約している香川を代表に選ばないから圧力をかけたとの説がある。しかし、同社と契約しているのは香川だけではない。必要ならば、ハリルホジッチ氏が選考した選手をプロモートすればすむことだ。現実的にこのような噂が広がることが、香川にとって気の毒な事態であり、西野氏の選択の幅をせばめかねない。何より、多額のキャッシュを提供してくれているスポンサに失礼だよね。余談ながら、私は、ハリルホジッチ氏は香川への期待は相当大きかったと見ている。香川があまりよいプレイを見せなくとも、しつこく香川の起用を継続していた時があったからだ。香川が選考されなくなった以降代表の状態があまりよくないこともあり、ハリルホジッチ氏が留任した方が、香川が選考される可能性は高かったようにすら思っている。

 結局のところ、広告代理店の意図がどうしたとか、スポンサの意図がどうしたとか、皆が色々言うけれど、皆の意向は日本代表が勝つことに尽きるのだ。

 たとえば、田嶋会長が政敵の成果をなくしてしまいたかったとの説がある。具体的には、ハリルホジッチ氏を日本に連れてきたのは、田嶋氏と会長の座を争った原氏、あるいは原氏と近い霜田氏であり、田嶋会長としては、彼らの功績となることを、とにかく消し去りたかったという説だ。しかし、落ち着いて考えれば、ハリルホジッチ氏がワールドカップで好成績を収めれば、田嶋会長は横でニコニコして「本当によくやってくれた」と言ってさえいれば、皆に尊敬されたことだろう。一方、西野氏が不成績に終われば、帰国後重苦しい記者会見でハリルホジッチ氏を更迭した責任を問われる。いや、残りの人生の間、常にロシアワールドカップを滅茶苦茶にした男と呼ばれ続けるのだ。今の田嶋会長がそこまでやる理由にはならない。

 以上、非サッカー的な見地からも、今回の田嶋会長の意思決定の背景が理解できないと述べてきた。さらに言えば、今回の決断で、田嶋氏がトクをすることなど何もないように思うのだ。唯一、西野氏がロシアで見事な成績を収めても、称賛されるのは西野氏だ。「見事な決断」と田嶋会長を評価する向きはあろうが、必ず「ハリルホジッチ氏を留任させても、よかったのではないか」との意見が付随する。
 そう考えると、田嶋会長が、心底サッカー的発想で日本サッカーのために行動する男だと考えても、酸いも甘いも嚙み分けた剛腕の男だと考えても、周りに気を使いながら調整する小心な男だと考えても、合理的な理解ができないのだ。いったい、田嶋さんは何を考えて、ハリルホジッチ氏をこのタイミングで更迭し、西野氏に日本代表を託したのだろうか。

 もちろん、陰謀論を深めれば、いくらでも邪説は考えられる。誰かが田嶋会長を追い落とそうとしているのでないかなどと。
 たとえば、田嶋氏の以前の上司が、最近自分の言うことを聞かなくなったから切ろうとして不適切な助言を行い、田嶋会長はそれと知らず言うことを聞いてしまったとか。たとえば、田嶋会長には、西野氏とは別な意中の人物がいたが、その人は田嶋会長と心中する気はなく、会長がハリルホジッチ氏に更迭を伝達後に代表監督就任を拒絶したとか。たとえば、最近大きな成果を挙げ田嶋会長の次をねらえる人に、会長が乗せられてしまったとか。
 まあ、考え過ぎでしょうが。

 私が選手田嶋幸三を認識したのは、今でも忘れもしない75-76年の高校選手権の決勝戦だ。浦和南の主将田嶋は、静岡工業の石神良訓の執拗なマークをかいくぐり、ビューティフルゴールを2発決めた。久々に登場した技巧も優れた大型ストライカ、近い将来日本代表の中軸になるのではないかと、期待は大きかった。筑波大時代に代表にも選ばれ、名門古河に加入。ところが早々に「自分は指導者を目指す」と引退してしまった。
 その後、指導者として明確な成果を挙げることはできなかったが、日本協会では中枢の立場をとり続け、着々と地位を上げ、満を持して会長に就任した田嶋氏。おそらく、我々には理解しがたい判断基準があるのだろう。
 今となっては、その意思決定が、ロシアと将来の我々の歓喜につながることを、祈るのみである。
posted by 武藤文雄 at 00:45| Comment(6) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

ベガルタ開幕2連勝

 ベガルタは、開幕から2連勝。まことにめでたい。
 
 昨日のFC東京戦にせよ、先週のレイソル戦にせよ、似た流れのウノゼロの勝利だった。
 いずれの試合でも、前半は内容が悪く、危ない場面も多かった。しかし、GK関の完璧な位置どりと、大岩の献身的なカバーリングで、何とか無失点でしのぐ。そうこうしているうちに、前半半ば過ぎから、次第に狙い通りボールが回るようになり、ベガルタペースに。そして後半に先制、その後はチームとしてボールキープが機能し、守り切った

 まずレイソル戦。
 前半は非常に難しい試合となった。左サイドの永戸が前進するスペースを、レイソルの右バックの小池に埋められてしまい、思うように左サイドに展開できなかったからだ。にもかかわらず、多くの選手が右サイドでのプレイを選択し、いよいよ永戸が孤立。結果として、チームのバランスが崩れ、幾度かクリスティアーノや伊東に、よい体勢でボールを受ける形を作られ、幾度か決定機を許すことになった。レイソルの中盤後方の金甫Qと大谷が厳しい寄せで、ベガルタの中盤にサイドチェンジを許さなかったも大きかった。
 後半に入り、板倉が積極的に押し上げるようになると共に、阿部が左サイドに寄り永戸をサポートするようになり、状況は改善された。そして、後半序盤に、CK崩れのスローインからの古林のクロスに、前線に残っていた板倉が打点の高いヘッドで決めて先制。レイソル守備陣の集中がわずかに切れた幸運と、後方に戻らなかった板倉の強気の判断が重なったことによる得点だった。
 レイソルも、ACLの疲労もあるだろうし、新加入選手の使いどころが固まっていないチーム事情もあるのだろう。以降はベガルタはバランスよくボールを回せるようになり、ペースを渡さない。終盤に入り、奥埜の疲労が目立ち始めたところで、攻勢を許すことになったが、レイソルCBの中山が、石原の老獪なドリブルを引っかけ、2度目の警告で退場となったところで勝負あり。
 試合終了後の記者会見で、渡邉監督が自画自賛していた、3-1-4-2で敵ボランチをつぶしに行くやり方が、十分に機能したかどうかは微妙だったが、後半のバランス修正で、この強敵を押し切れたのだから、結構なことである。

 そしてFC東京戦。
 FC東京は、中盤をダイヤモンドに組み、序盤から昨シーズンとは見違えるような、前線から厳しいチェックを仕掛けてきた。結果として、ベガルタは大森、米本、東の3枚の中盤を抜け出せず、再三低い位置でボールを奪われ、トップ下の高萩に自在に細工され、ディエゴオリベイラと前田の2トップに好機を作られた。
 ただ、東京の厳しい前線守備が、段々とゆるくなった前半半ばからは、それなりに中盤を抜け出せるようになる。しかし、CBの張賢秀の的確な読みと鋭い出足が見事で、好機を作るにはいたらず前半終了。
 後半、さらに両翼からの圧力を強めたベガルタはとうとう先制に成功する。右サイドでボールキープした小林を、阿部が追い越しフリーでボールを受け、体幹の強さを活かしたドリブルで中に切り込み強いクロスをいれる。東京DFがヘッドでクリアしたボールを逆サイドから進出した永戸が拾い丁寧にプルバック。石原が合わせたボールはGK林を抜き、両側のポストに当たりゴールラインを越えた。石原のボレーキックはアウトサイドにかかったもので、飛んだコースも上記の通り最高。他の選手ならば「偶然ではないか」と思うけれど、石原だと「いかにも彼らしい相違工夫に富んだ妙技」と言う気がしてくる。
 ここで東京は、久保を投入してくる。さすがに驚いた。久保のドリブルは正しく脅威、ベガルタの守備者たちがボールをまったく奪えない。奪えないのみならず、コース取りが絶品。大岩は一度身体を入れたと思ったら、再度入れ替わられゴールラインをえぐられる。石原が抜かれた後方から自信をもってアプローチした富田は、スッとボールを動かされてファウルをとられる。奥埜と古林で囲んだと思ったら、ヒールキックで中央のフリーの選手にパスを通される。
 投入直後の約10分は幾度も危ない場面を作られたが、ベガルタ各選手とも次第に対応ができてくる。一つは久保へのパスの出所を厳しく押さえること。今一つは、ワンタッチ目でゴールを向かせないこと。久保自身がいわゆる一軍に合流したのも、長谷川監督が就任したのも、比較的最近であり、チームとして、まだ久保の使い方も、久保による使われ方も、十分に確立していないことが幸いした。この早熟の若者が、一層の、いや過去にない光彩を放ってくれることを期待したい。ベガルタ戦以外で。
 久保への対応が落ち着いた以降は、再びベガルタペースになる。前節見られた選手のガス切れもなく、そのまま押し切り、開幕2連勝。いや、えがった。

 この2試合、相手が新戦力を十分に消化しきれておらず、チームとしての成熟度で、当方が明らかに上回ったのが幸いした。また、いずれの試合も序盤ペースをつかめない時間帯に先制された可能性もあり、安定感と言う意味ではまだまだ。さらに、後半先制した以降ベガルタの意図通りにボールを回している時間帯は長かったものの追加点を奪えなかった。
 まあ贅沢は禁物だし、ここは開幕2連勝を喜ぶことにしよう。と考えると、「いや去年も2連勝した後は…」などと、どんどん悪いことを考えるのも、サポータ冥利と言うものか。
 一つ言えるのは、上記した通り、チームとしての成熟度は相当高まっていること。攻撃用タレントとして控えに入っている茂木、ラファルエソン、ジャーメインはまだ活躍の機会を得られていない。コンディションが整えば、椎橋、庄司、中野も登場してくることだろう。私は素直に今シーズンの飛躍を期待している。
posted by 武藤文雄 at 22:45| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月25日

Jリーグ2018年開幕

 さあ、Jリーグだ。

 我がベガルタの開幕戦が日曜日と言うこともあり、この土曜日は居住地近辺の平塚BMWスタジアム。ベルマーレ対Vファーレンを、ベルマーレを必死に応援するコーチ仲間の横で、似非サポータとして堪能した。
 ベルマーレは、持ち前のチーム全体の、豊富な運動量と前に出る勇気がしっかりと継続。それに加え、松田天馬の鋭いドリブルと、新韓国人ストライカ李廷記の受けのうまさと、強力な前線の武器が加わった感がある。一方のVファーレンは、高杉を軸にした守備に徳永が加わり一層の堅牢さを増し、ファンマを軸にした速攻は効果的。終盤セットプレイから得点したベルマーレが2対1で振り切ったが、おもしろい試合だった。
 やはり、生観戦は堪えらえない。

 と言うことで、26年目の開幕。いまは、明日のベガルタ対レイソルのDAZN観戦に思いをはせているわけだ。
 今シーズンのベガルタへの期待はおいおい語っていくこととして、26年目のJリーグへの思いを語りたい。

 いつもいつも語っているが、もう最近の日本サッカー界は、いま57歳の私にとって、20代の頃まで夢にすら思わなかった世界だ。毎週末、日本の主要都市で、多くのサポータが応援する中で、リーグ戦が行われる。それも、多くのクラブが、日本人好みの中盤を大事にしたサッカーを狙っている。そして、日本代表は、当たり前のようにワールドカップに連続出場している。
 夢にも思わなかった世界が実現してはいるが、まだまだ私にも欲はある。今以上に、日本代表がもっと強くなって欲しいし、一層充実したリーグ戦を楽しみたい。
 ところが、欧州のトップリーグの各クラブには、(制度上にも道義面にも幾多の疑問にも幾多の疑問はあるものの)ばかばかしいくらいのキャッシュが集まり、Jリーグ各クラブの予算規模との差は開くばかりだ。そのような現状で、我々はどこを目指せばよいのか。

 私にとって、その答えは明確だ。
 ブラジルやアルゼンチンを目指せばよいのだ。
 どんなに、よい選手が欧州に買われて行っても、ブラジルやアルゼンチンのように、それを上回る勢いで、よい選手が供給されればよいのだ。そうなれば、両国の国内リーグのように、常に充実した試合を毎週楽しむことができる。そして、ワールドカップで、もっともっとよい成績も収められるはずだ。
 ブラジルやアルゼンチンを目指すことそのものが、大変な努力を必要とするのは言うまでもないけれど。

 で。グランパスの、ガブリエル・シャビエルを見ていると、その大変な努力が、具体的に可視化されると思うのだ。
 オスカール、もちろんジーコ、レオナルド、ジョルジーニョ、ジーニョ、セサル・サンパイオ、そしてドゥンガ。このようなセレソンの名手ならば、すごいプレイを見せてくれるのは、理解の範疇内だ。また、セレソンまで行かずとも、多数のブラジル人の名手が、これまでのJをいかに実り豊かにしてくれたことか。
 しかし、ガブリエルの魅力は超越している。昨シーズンJ2でガブリエルが見せてくれた様々な好プレイ、技巧と判断の妙、「こんなことができるのか!」と言う魅力の数々。「恐れ入りました」としか言いようがなかった。ちょっと似た記憶として、90年代半ばに、サンフレッチェでプレイした中盤選手のサントスも、そのような魅力があったかなと。
 「どうやったら日本から、このような素敵な選手を輩出できるだろうか」と、ガブリエルの魅力あふれるプレイを見る度に考えてしまうのだ。正に、ガブリエルは、ブラジルと日本のサッカー力を分けている典型的存在なのだ。

 などと考えてながら、今シーズンのJに思いをはせる。
 久保建英(開幕戦でもプレイしたと聞いたが、)は、どのレベルまで行くことができるのか。一方で、久保のようなまだ若いタレントに過大な期待をすることに否定的な考えも少なくない。ただ、ペレとディエゴ・マラドーナはもちろん、ミシェル・プラティニやネイマールのようなタレントは、10代後半から、ほかの選手とはまったく異なる個性の冴えを見せていたのだが。
 そして、このシーズンオフに、我がベガルタに岐阜から移籍したMF,庄司悦大。エスパルスジュニアユース、清水商業と言った若年層育成組織の名門出身のこのタレントは、専修大学、町田、山口、岐阜と、J2、J3のクラブで着実に実力を蓄え、とうとう28歳となった今シーズン、J1に挑戦の機会を得た。
 この2人は、早熟、晩熟、それぞれの典型的なタレントだ。そして、このような、育成の多様性の実現こそ、ブラジルやアルゼンチンに追いつく道だと思うのだ。そして、このような丹念な強化を継続すれば、いつか我々は、ガブリエル・シャビエルを生み出すことができるのではないか。
 それが我々が目指すべき道だと思うのは、私だけだろうか。
posted by 武藤文雄 at 02:05| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月29日

平山相太引退

 平山相太の引退が発表された。オフに契約更新をしていたにもかかわらず、キャンプ中の発表、さすがに驚いた。度重なる負傷に悩まされた選手人生を象徴する引退発表となった。

 昨シーズン開幕戦、ユアテックでコンサドーレと対したlベガルタは押し気味に試合を進めるが崩しきれず、試合終盤を迎えた。渡邉監督は、この場面でベンチにいた平山を石原と交代させることを決意した。ところが、平山がピッチに入ろうとタッチライン沿いで待機していたところで、ベガルタは三田の強シュートのこぼれを石原が押し込み先制に成功。渡邉氏は、交代選手をストライカの平山から、DFの増島に切り替え、守備固めを選択した。
 そして、その翌日のサテライトの試合、平山は重傷を負い、チームからの離脱を余儀なくされた。
 今回の引退発表。その負傷の回復が順調でなかったと言うことだろう。残念極まりない。

 平山が格段の素質に恵まれていたことに異論を唱える人は、ほとんどいないだろう。ただ、残念なのは、その格段の素質の内容を見誤った指導者が、当時の若年層日本代表を率いていたことだったと思っている。そして、その監督がその後FC東京でも、平山の上司となった。
 もちろん、平山の魅力の1つに、190cmの上背があったことは確かだ。しかし、彼の格段の能力は、その上背ではなく、正確なボール扱いと、足でのシュートのうまさにあった。国見高校時代の幾多の得点が、落ち着いたインステップキックのグラウンダのシュートだったことは重要だ。また、その技巧を活かしたターンのうまさも相当だった。
 長身を活かした空中戦も悪くはなかったが、細身なこともあり、後方からの高いボールを受けるのは、あまりうまくなかった(一方で低い足下へのボールを収める上手だったが)。しかし、横に動いてマーカを振り切ってからのヘディングシュートの威力は中々だった。
 だから、そのような使い方をしてほしかったのだ。ああ、それなのに

 もちろん、負傷が多かったと言う不運も大きかった。また、オランダでのホームシックに代表される、精神面の課題もあったのかもしれない。けれども、あれだけの大柄な身体でありながら、あれだけ柔らかなボール扱いの上、あれだけ弾道の低いシュートを打てる技術を身に着けた男が、努力を惜しむ性格だったとは思えない。
 だからこそ、その格段の素質を活かしたチームでプレイすればとの思いは消えなかった。そして、ようやく、ようやくのこと、その機会は、やって来たのに。渡邉氏の指導の下、丁寧にボールを回し、両翼に人数をかけ、時に前線に速いパスを入れるベガルタ。ザ・リアル・ストライカの平山が、その格段の能力を発揮できるチームに、ようやく、ようやく出会えたのに。
 度重なった負傷を呪うしかないのか。

 それはそれとして。
 幾多の素敵な場面を見せてくれた平山に、改めて感謝したい。中でも、インタネットのカクカク画像で堪能したこの試合は、忘れられない。また、似非FC東京サポータとしてゴール裏に侵入し平山の消える動きを堪能したこの試合も。

 結びに戯言を。よく、「平山相太に、岡崎慎司のハートがあれば」と言う人がいる。でも、私の意見は違う。「平山相太が、岡崎慎司の上背しかなければ」と思うのだ。そうだとすれば、平山は、優雅で技巧的なストライカとして、誤った使われ方をせずに、もっともっと、その個性を活かせたのではないか。

 幾多の美しい得点に多謝。
posted by 武藤文雄 at 00:13| Comment(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月22日

水沼宏太への期待

 少々旧聞になるが、天皇杯決勝、そして決勝点を決めた水沼宏太について。
 決勝戦のヒーローとなった水沼宏太と、御父上の水沼貴史氏が、史上初めての親子で天皇杯を制したことは結構な話題ともなった。その周辺のことをきっちり講釈を垂れておきたいな、と考えた次第。

 セレッソ対マリノスの決勝戦と言うと、83-84年シーズンの決勝戦以来、34年振り。当時はもちろん、ヤンマー対日産でしたが。そして、この34年前の決勝戦は、以下2つの意味で、日本サッカー史にとって非常に重要な試合だったのだ。
 まず、この試合は、釜本邦茂が出場した最後の公式戦である。監督兼任だった釜本は、この試合0対2とリードを許した状況で、ピッチに登場。右サイド最前線でプレイをして、巧みなボールの引き出しや突破の妙を見せてはくれたが、中盤から有効なボールがほとんど出ず、有終の美を飾ることはできなかった。
 試合はそのまま2対0で日産の完勝、初めてのタイトル獲得となる。日産は70年代から強化を開始した比較的新興のチームだったが、この数年前から、金田喜稔、木村和司と言った日本代表に定着していた大学生選手を精力的に獲得していた。これは、優秀な選手に好条件を提示し、他のチームに先駆けて事実上のプロ化を進めていたことによる。そして、この83-84年シーズンは、柱谷幸一、越田剛史、そして水沼貴史らの有力選手を大量に獲得し、チーム力は格段に向上。JSLでは2位に獲得し、ついに天皇杯を制し初タイトルを獲得することとなった。以降、日産は、同シーズンにJSLを制覇した読売と共に日本サッカー界を牽引することとなる。敗れたヤンマーは釜本を軸に70年代を席捲してきたチーム、まさに時代の変化を感じさせる試合だった。

 以降、日産は水沼貴史と共に多数のタイトルを獲得する。
 そして、ご子息の水沼宏太は、父がプレイ活躍していたマリノス(日産)の若年層組織で成長、幾度も若年層日本代表にも選考され、2008年マリノスでプロ契約を行う。しかし、中々定位置をつかむことができず、栃木SCへのレンタルなどもはさみながら、サガン鳥栖で定位置を確保。16年シーズンにはFC東京に移籍するものの、出場機会が限定されたこともあり、17年シーズンよりセレッソにレンタルされ、今日に至った。
 水沼親子は、最も得意なポジションは、ともに右サイドの攻撃的MF。しかしながら、そのプレイスタイルは異なる。親父殿は、正確なボール扱いと独特の抑揚のドリブルを軸に、サイドを巧みに突破したり、スルーパスを通すのを得意としていた。一方、倅殿は長駆を繰り返すことのできる豊富な運動量が持ち味。親父殿はいわやる主役タイプだったのに対し、倅殿はチームを支える立場なのも異なる。余談ながら、顔つきにしても、個別のパーツは似ているものの、優男だった親父殿と比べ、倅殿は相当精悍な顔つきである。
 ただし、よく似ていることもある。2人とも、動いているボールをとらえるのが、格段にうまいことだ。89年イタリアワールドカップ予選のホーム北朝鮮戦で親父殿が決めたスーパーボレーシュートは、30年近い歳月が経った今でも記憶によみがえる一撃だった。そして、この天皇杯準決勝、アディショナルタイムにに失点し苦境に追い込まれていたセレッソを救った、倅殿のボレーシュートの際の、何とも言えないミートのうまさに、親父殿を思い出したのは私だけだったろうか。
 そして、この決勝戦を見て、もう1つ「親父殿に似てきたな」と思ったことがある。それは、何とも言えない勝負強さだ。マリノスに先制を許し、老獪な中澤を軸とするしつこい守備の前に、なかなか有効な攻撃を見せられなかったセレッソ。その沈滞ムードを破った同点弾のきっかけは、倅殿が意表を突いて放った強烈なミドルシュートだった。そして、決勝点、マリノスGKのポジションミスを冷静に見て取り、無人のゴールにヘディングシュートを流し込む冷静さ。85年のメキシコワールドカップ予選のホーム香港戦のとどめの3点目、親父殿のクールなボールタッチを思い出した。

 親子選手を応援できると言うのは、サポータにとっては、きっと素敵な経験となのだろう。日産時代からのマリノスサポータの方々はその快感を味わったことになる。ただし、上記のとおり、水沼宏太はマリノスの若年層組織で育ったものの、マリノス結果的には芽が出きらず、他クラブでトッププレイヤとなった。そして、よりによって、このマリノスと戦ったビッグゲームで、マリノスに引導を渡すことになったのだから、上記古手のマリノスサポータの方々には何とも複雑な思いがあったに違いない。こんなほろ苦さを味わえるなんて、羨望としか言いようがないではないか。
 私も何十年も日本代表を応援してきた身として、一度でよいから、親子選手を応援したいものだと思っている。マルディニとかヴェロンとか、うらやましいではないですか。そして、水沼宏太は、苦労に苦労を重ね、セレッソと言う日本のトップクラブの中心選手まで駆け上がってきた。とうとう、A代表まで、あと一息のところに到達したのだ。しかし、もう27歳、正直言ってその可能性はもう決して高くはないかもしれない、でもこの準決勝と決勝の色鮮やかな活躍を見ると、オールドファンとして、あきらめずに期待を寄せてもバチは当たらないと思うのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:24| Comment(1) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月31日

2017年10大ニュース

 ここ数ヶ月、本業の忙しさを言い訳にすっかりブログの更新をサボっていました。
 以前より述べていますが、ブログでサッカーの講釈を垂れるのは、単なる自己満足に過ぎません。その自己満足すら果たせないのですから、何か自分が情けない気持ちがしています。
 一方で、これだけ間を空けてしまうと、以前より愉しんでくださった方々に、申し訳ない思いもあります。2018年は、もう少しちゃんと書いていきたいと思っています。

 ここ数年の傾向として、バブルと言う単語を使うしかないような大量のキャッシュが、欧州を中心に中東や中国のサッカーシーンにまで入り込み、日本サッカー界との経済力差が顕著になってきたことが挙げられます。一方で後述しますが、DAZNマネーの流入があった2017年は、1つの変革の年となるのかもしれません。
 ただ、日本代表は当たり前のようにワールドカップ出場を決め、レッズが堂々とアジアを制覇し、軽く二桁を越える選手が欧州のクラブで定位置を獲得している。日本サッカー界は、過去と比較しても、格段の成果を挙げた年だったように思います。
 そして、ロシア。ハリルホジッチ氏のチームは、存分に伸び代を残しており、あと半年の強化を的確に行えば、「史上最強」のチームを作り、「史上最高」の成績を収めることも可能だと思っています。GK、DF、MF、FW、ここまで穴が少なく経験豊富なチームを所有するのは初めてだと思っているので。
 もちろん、多くの選手が欧州でプレイしていることもあり、2010年以前のように、他国よりも体調をそろえるは容易ではないのは確かです。また、科学的なトレーニング技術が各国に展開され、同じグループのポーランド、コロンビア、セネガルも合理的な準備な準備を進めてくるでしょう。
 だからこそ、今回は勝ちたい。勝ちたいではありませんか。

1.中村憲剛の歓喜
 正直、あのルヴァン決勝を見たときは、もうこの人に栄冠は訪れないのか、サッカーの神様は何てひどいことをするのだ、と思った。とにかく、よかった。
 憲剛のプレイを見たのは2004年だった、当時からスタイルはまったく変わっていない。中盤後方でボールを受け、ゆっくりボールをさばきながら、突然加速し、前線に高精度のパスを通す。あれから13年、スタイルは変わっていない。ただし、精度と緩急は格段に向上したが。
 この稀代のスーパースタアともにフロンターレと言うクラブは大きくなってきた。そしてとうとう、このスーパースタアが元気なうちに、栄冠をつかんだ。これだけのスーパースタアと共にクラブが成長し、苦労を重ねてタイトル獲得。
 素直に羨望する。こんな素敵なドラマを、憲剛と共に演じられるなんて。おめでとう、フロンターレサポータの皆さん。
 でもね、1つだけ、フロンターレサポータの方々には味わえない事があるのです。それは「憲剛の恐怖」を味わうこと。ほかのJ1クラブのサポータは毎シーズン、それを2試合ずつ愉しむことができるのですよ。
 1つ大きな心配がある。「お願いですから、優勝したからと言ってやめないでくれ。」と言うことだ。憲剛よ、まずはロシアワールドカップを目指してくれ。

2.浦和レッズアジア再制覇
 おめでとうございます。そして、ありがとうございます。
 日本のクラブでは、古河(現ジェフ)、読売(現ヴェルディ)、ガンバ、レッズの4クラブが、前身のアジアチャンピオンズカップを含めて、このアジア最高峰のタイトルを獲得していた。この日本いやアジアいや世界屈指の人気クラブが、日本のクラブとしては、初めての2度目の戴冠となる。これは、とても、とても重要なことだ。
 私達別クラブのサポータは、このような目標を持てることの幸せを感じることができる。

3.ワールドカップ予選、豪州に完勝し6回連続出場
 出場権を獲得できたこともめでたい。しかし、重要なことは、埼玉で豪州との「勝負の戦い」で完勝できたことだ。
 いいですか。1993年ドーハで韓国に勝った以降、我々は同格の難敵に、いずれかが出場権獲得前に戦い、勝ち切ったことはなかった。97年、ソウルで韓国に勝ったのは先方が出場権を獲得した後だった。ジョホールバルで、イランには90分では勝てなかった。05年、イランにテヘランでは負け、横浜で勝ったのはお互いが出場権を獲得した後だった。09年と13年、豪州にはホームでも敵地でも勝てなかった。
 あの埼玉での、浅野と井手口の得点(しかも、2人ともリオ五輪代表、売出し中の若手だった!)で勝利した試合がいかに貴重だったことか。
 私は単純な人間なのでね、あの勝利だけで、ハリルホジッチ氏を評価するよ。

4.ワールドユース、堂安律と冨安健洋の登場
 久々に出場権を獲得したワールドユース(U20ワールドカップ)。
 まあ、色々あるけれどさ、堂安律と冨安健洋が、イタリアやウルグアイ相手に、個人能力で格段に輝いたことが嬉しい。この年代の選手への要求は色々あるさ、でもこの2人がこの両古豪のいずれの選手よりも、この時点で魅力ある選手だったのは間違いない。
 彼らの将来はわからない。中山も三好も初瀬も、いやほかの選手もみなすばらしいタレントだ。みな、格段のタレントに成長してくれることを。

5.岡野俊一郎氏逝去
 我々は帰れるところを失った。これまで日本のサッカー界が実り豊かな世界になったことに、ただ、ただ、感謝。ありがとうございました。
 木之本興三氏も、2017年に逝去された。私達にはJリーグがある。ありがとうございました。

6.サンフレッチェ塩谷が中東に移籍
 塩谷が「キャッシュをサンフレッチェに残せる」と語った言葉は重い。
 中東も中国も、悔しいけれど、我々には管理できないキャッシュを扱えるのだ。
 これが、初めてとなるのだろうか。
 
7.DAZNマネーをどう使うべきなのか
 私は中下位クラブのサポータだから、ちょっと嫉妬しているのだけれども。
 成績に応じての配賦は、危険なのだよね。リターンを期待して投資して、はずれたときのリスクが大きいから。まあ、FC東京さんもヴィッセル神戸さんも、親会社やスポンサがしっかりしているから、大丈夫かもしれませんが。
 
8.田島会長、小者振りが輝く
 すべて否定されている、夏開幕、夏閉幕シーズンへの拘泥は何なのだろうか。
 筑波大在学時に代表に選考され、古河に加入しながら、「私は指導者になります」と言って引退してから40年近くが経過した。
 協会ご用達の指導者として若年層指導の失敗、「エリートプログラム」の挫折、幾多の失敗を重ねて、まあ協会会長かよ。
 川渕氏と比較して、明らかに小物であるがゆえ、叩きがいもないのだけれど、頼むから「邪魔をしないでくれ」

9.長崎Vファーレン、J1昇格
 松本山雅に続き、2000年代になった以降強化を初めたクラブが着々と成功を収めている。
 既存のクラブにとって、どんどん厳しい時代が来ているのだ。過酷な競争、日本のサッカー界の発展の礎は着実に築かれている。

10.名波浩と中村俊輔、17年ぶりの再会
 あの、2000年アジアカップは、本当にすばらしかった。それ以来の2人の再会。天才の邂逅。
posted by 武藤文雄 at 23:49| Comment(1) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年ベストイレブン

さて、恒例のベストイレブンです。

GK 川島永嗣(メス)
 2017年に入っての最初のワールドカップ予選、敵地UAE戦でハリルホジッチ氏はGKに川島を起用した。この試合、前半早々に日本が久保の個人能力で先制した直後、DFの不用意な対応から許した1対1の決定的ピンチを、川島が防いだ場面は記憶に新しい。さらに続く埼玉タイ戦では、終盤のPKを、川島は見事に防ぐ。これらの川島の好守もあり、日本は得失点差を含め予選グループのトップに立つことができた。以降も代表で安定したプレイを披露、予選突破の立役者の1人となったのは、ご存知の通り。あのUAE戦まで、自クラブでもほとんど出場機会がなかったと聞くが、難しい環境にもかかわらず、体調を含めた能力を維持し続けた川島自身の努力、それをしっかりと観察し起用したハリルホジッチ氏(正確には、ハリルホジッチ氏のチームと言うべきか)の慧眼と合わせ、正に今回のワールドカップ予選の1つのハイライトだった。

DF 酒井宏樹(マルセイユ)
 距離が出るクロスを蹴ることができて180cmを超える長身と言う特長があるサイドバックが、ようやく本物になった感がある。中でも長足の進歩は、その粘り強い守備。フランスリーグでも親善試合でも、ネイマールと堂々の丁々発止を演じてくれるまでに成長したわけだ。酒井宏樹とネイマールと言えば、この試合を思い出すわけだが、この6年間で酒井は着実にネイマールとの差を詰めてきたことがわかる。これは嬉しい。もちろん、レイソルでプレイしてきた時から有効だったクロスは、これからもっともっと猛威を振るってくれるはず。まずは、大迫、原口、岡崎らとの連携強化を期待したい。

DF 吉田麻也(サウサンプトン)
 吉田麻也も、このワールドカップ予選中に大化けしてくれた。ザッケローニ氏が率いたときから代表の定位置をつかみ、プレミアリーグでも相応の活躍をしながら、敵との1対1の際に(自らの鈍足を考えすぎるのか)慌てる悪癖があった。しかし、16年の敵地豪州戦以降、格段に落ち着きが増し、何かしらの風格も漂うようになってきた。この成長に、ハリルホジッチ氏が相当な関与をしたと考えるのは、私だけだろうか(敵地豪州戦直前の、埼玉イラク戦では、麻也は相変わらず、落ち着きのないプレイを見せていた、この2試合の間の「何か」が麻也を変えたように思うのだ)。だいたい、世界を代表する名DFたちだって、テュラムやカンナバーロやマスケラーノと言った「超人」を除けば、足が遅いとか、後ろを突かれると弱いとか、百点満点の選手は少ないのだから。29歳でロシアに向かう麻也に、期待したいのは、かつて井原正巳や中澤佑二が見せてくれた、格段の予測能力。頼むぞ。

DF 阿部勇樹(浦和レッズ)
 ACL制覇は、結局この男に帰する。ペトロビッチ氏の崩壊の後、指揮権を任された堀氏のヒットは、阿部を中央にした4DFで後方を固めたことだろう。さすがに、往時の強さと速さは失われたが、格段の読みと位置取りは未だ健在、もちろんロングボールの弾道の美しさも全盛期とは変わりない。
 実はこのポジションは、リーグ制覇に強さで貢献した谷口彰悟や、リーグ戦フル出場し天皇杯決勝に進出した中澤佑二と、迷ったのだが、やはりあのACL終盤の超然とした守備を思い出すと、やはり阿部だなと。

MF 槙野智章(浦和レッズ)
 嫌いな選手だった。いわゆる守備の1対1の応対のうまさは国内屈指の能力を持つにもかかわらず、肝心の場面で敵のマークを見失うことが再三。さらには、リードされた試合で、強引に前に位置取りし、チームのバランスを崩す場面を幾度も見せられてきたから。しかし、17年後半から、それらの悪癖が消え、センタバックとしても、左サイドバックとしても、見事なプレイを見せてくれた。不用意な判断ミスががなくなれば、周囲を叱咤激励する発信力の強さもポジティブにはたらく。サンフレッチェ時代から、槙野を甘やかし、上記のミスを犯しても許し続けてきた、ペトロビッチ氏が去ったことも、槙野には幸運だったのだろう。もちろん、槙野が今日の能力を築くためには、ペトロビッチ氏の教育は重要だっただろうが、ここに来ての氏との別離が、この逸材をようやく本物にしてくれつつあると期待したい。

MF 山口蛍(セレッソ大阪)
 ブラジル大会でも準レギュラとして活躍し、将来を嘱望されていた蛍も、ようやく真価を発揮しつつある。元々、球際の強さ、ボール奪取力、常識的だが丁寧な展開、などいわゆる守備的MFとしての能力は折り紙つきだった。何よりすばらしいのは、そのスタミナだ。90分間、最後の最後まで、戦い続けることのできる能力は、必ずやロシアで我々に歓喜を提供してくれることだろう。

MF 井手口陽介(ガンバ大阪)
 底知れぬ潜在力。そのボール奪取力は明神智和のデビュー時をを髣髴させるし、埼玉豪州戦の決勝点に代表される長駆後の継続性は2002年当時の稲本潤一を思い起こさせるし、正確なパスやドリブルは(そのふてぶてしさを含め)J2からJ1に殴り込みをかけてきた当時の中村憲剛の印象すら与えてくれる。もしかしたら、日本サッカー界が生んだ最高の素材ではないか。我々のロシアでの歓喜は、もはや井手口抜きには考えられないが、何かしらそれに留まらない期待を抱かせてくれる。一部に欧州の2部リーグへ移籍すると噂もあるが、才能の安売りだけは避けて欲しいのだが。
 
MF 中村憲剛(川崎フロンターレ)
 詳細は10大ニュースで。

MF 堂安律(FCフローニンゲン)
 あのワールドユース(U20ワールドカップ)での、イタリア戦。ヨハン・クライフの74年ブラジル戦のような1点目、ディエゴ・マラドーナの86年イングランド戦のような2点目。ロシアに間に合って欲しい。

FW 小林悠(川崎フロンターレ)
 縦に飛び出す際のボールの置き方と、敵DFとの間合いの取り方が巧みな、このストライカ。大久保嘉人が去ったクラブで、中村憲剛から腕章を受け継ぎ、Jリーグを初制覇し、得点王となった。そして、主軸のほとんどを欠いた東アジア選手権でも、技巧のみならずエースとしての自覚を発揮、上々のプレイを見せた。好素材が完成に近づきつつある。すばらしいシーズンだった。けれども、小林悠がロシアの23人に残るためには、大迫勇也、岡崎慎司、久保裕也、浅野拓磨、杉本健勇、武藤嘉紀、場合によっては本田圭佑との争いに勝たなければならない。選手層の分厚さは結構なことだが、何とも厳しいものだ。

FW 大迫勇也(1FCケルン)
 大迫はいわゆる万能型のセンタフォワード。格段のキープ力で日本代表の攻撃の中軸を担い、予選突破の立役者の1人となった。ハリルホジッチ氏のチームの攻撃は、大迫の格段のキープ力を軸にしている。そして、先日のブラジル戦でもベルギー戦でも、このやり方はそれなりに通用した。紛れもなく、大迫は日本最高のフォワードになりつつある。しかし、残念ながら、このままでは日本最高のストライカになれるかどうはわからない。ハリルホジッチ氏に要求されているボールキープは重要だが、もう少しシュートに余力を残しておけないものか。この課題をクリアしてくれれば、我々は格段のストライカをも入手できるのだが。1968年に日本がメキシコ五輪で銅メダルを獲得した際、日本には背番号15の万能型ストライカがいた。あれから50年が経った。同じ背番号でプレイする大迫が、どこまで釜本の域に近づけるか。
posted by 武藤文雄 at 21:54| Comment(4) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月18日

苦闘続くベガルタに、中野嘉大の勇気

 ベガルタ1-0サンフレッチェ。
 私にとっては、久々のユアテック詣でのこの試合、ベガルタは8試合ぶりの勝ち点3を獲得した。
 前半は残念な内容だったが、ハーフタイムの修正が絶品(詳細は後述)。後半は完全にペースを確保し、51分に奥埜が先制。以降は、再三すばやい速攻から分厚い攻めを見せ、好機をつかんだのだが追加点は奪えず。終盤、サンフレッチェのパワープレイに苦しめられたが、何とか守り切った。
 いや、1点差でリードし、終盤危うい場面に絶叫し、選手と共に戦い抜くのは、サポータ冥利の1つ。中々生観戦しない不良サポータが、このような快感を味わえたのだから、ありがたいことだ。

 前半のベガルタは攻守ともに機能しなかった。
 出場停止の平岡に代わり中央のDFに入った大岩が、判断よくラインを上げるのだが、左DF増嶋と左MF中野の反応が鈍く、オフサイドラインが上がらない。ために、サンフレッチェのワントップのパトリックに幾度もよい体制でボールを受けられて、難しい状況を作られた。チームとして、分厚い守備的なサッカーをねらっているのではないのだから、ラインを上げる勇気は必須なのだが。
 さらに悪いことに、攻めに転じたところで、左サイドでボールを受けた中野が前を向いて仕掛けようとせずに、内側を向いてボールを受ける。そのため、せっかくボールを確保して前に出ようとした他の選手の前進が止まってしまう。そうなると、せっかくタッチライン沿いでキープしたボールを、ピッチ中央に戻すことになり、敵MFにカットされ、いわゆるショートカウンタを食らうリスクも高まる。中野のような個人技で敵を抜き去る能力が高い選手は、前に出ようとするだけで、敵を警戒させ後方に押し下げることが可能になるのだが。やれるはずのタレントが、消極的なプレイに終始したのが、もどかしかった。

 しかし、後半状況は劇的に改善された。
 中野が勇気を発揮し、前を向いてボールを受け、前進するようになったのだ。そうすれば同サイドの増嶋も、ラインを上げられるようになる。すると、センタの大岩も一層前に出ることができる。結果として、中野の対面の丹羽は中野の突破を怖れて後方に下がり、戻りの遅いパトリックとアンデルソンロペスを孤立させることに成功、以降は完全にベガルタペースで試合は進む。51分の先制点も、動きがよくなった中野の前進から、西村が強シュート、GK中林がはじいたボールを、詰めていた奥埜が決めて先制したものだった。
 その後も試合はベガルタペースで続く。大岩を軸とした最終ラインの押し上げが効果的で、おもしろいように、中野、三田、富田、古林の4MFがルーズボールを拾い、左右のDF増嶋と椎橋がそこに加わり、効果的なボールが前線に入る。石原のいやらしいキープと、西村と奥埜の長駆も効果的で、ベガルタは幾度も好機をつかむ。しかし、どうしても2点目が奪えない。
 問題はこれだけ攻勢をとりながら、追加点を奪えなかったこと。まあ、こう言ってしまうと、身も蓋もないのだが、各選手のシュート力に課題があるのだ。特に、中野、古林、(古林に代わった)蜂須賀らが、アウトサイドから中央に切れ込んで、ほぼフリーでミドルシュートを狙うのだが決めきれない。どうしてもカットインしてのシュートと言うものは、敵GKからはシュートコースを見極められやすいものだから、GKのタイミングを外すなり、読まれづらいコースを狙うなりの工夫が欲しい。
 また、シャドーを務める西村だが、相手を抜ききる前にもっとシュートを狙う意識を高められないものか。強引な持ち出しは、ここ2〜3か月、ますます凄みを増している。そこに加えて、持ち上がろうとする時点で、どこに持ち出し、どこでシュートを打ち、どこに決めるのか、もっともっと意識を高めて欲しい。今シーズン着実に上昇する西村だからこそ、要求が贅沢になってくる。もちろん、シュート力と言う意味では最高のクリスランがいる。しかし、クリスランは、ボールを収める力が弱いだけに、フルタイム使うのが難しい。そうこう考えると、西村の一層の向上と工夫に期待したくなる。頼むぞ。
 余談ながら、元サンフレッチェの石原と、かつてのチームメートの千葉と水本との丁々発止は、何ともおもしろいものだった。お互い長所短所や、プレイイングディスタンスを知りぬいているのだろう。絵に描いたような、騙し騙されの攻防は、実に見どころが多かった。さらに余談、石原のボールの受け方、ターン、身体の入れ方などを集めた映像を、どなたか作ってもらえないだろうか。サッカーの難しさがわかってきた小学校上学年や中学生に、恰好の教材となると思うのだが。
 最後の10分、サンフレッチェはパワープレイに転じる。パトリック、アンデルソンロペスに工藤が並ぶFW陣は、中々強力ゆえ、ほうりこまれるとさすがに劣勢となる。こういう時こそ、ラインを高くして、パワープレイをさせないように中盤を機能させたいところだったが、うまくいかず最後は押し込まれるままとなってしまった。それでも、各選手の献身的努力と、シュミットのファインプレイで何とか零封に成功、何とか勝ちきることができた。やれやれである。
 このあたりは、ボランチの運動量確保に課題があるように思う。渡邊監督の、主将富田とゲームメーカ三田への信頼は絶大で、(それは結構なことなのだが)2人が少々疲弊しても、交代しない。しかし、このように単純な方策で押し込まれてしまう欠点の改善は必須だ。2人をどうしてもピッチに残したいのならば、三田を一列上げて、梁や藤村をボランチに起用し運動量を確保する手段もあると思うのだが。

 ベガルタにとっては、本当に貴重な勝ち点3確保となった。結果も嬉しかったが、試合内容、特に後半の内容がよかったからだ。
 6月後半から7月上旬にかけてのホームでのセレッソ戦、ガンバ戦は、かなり質の高い攻撃ができたのは確かだったが、守備はガタガタだった。さらに、続くヴィッセル戦では、名将ネルシーニョ氏に両翼を的確に抑えられ有効な攻撃はできず、守備面の弱点も執拗に狙われ完敗し、中断期間を迎えた。さすがに渡邊監督も、まずいと思ったのだろう、中断期間は守備の修正に多くの時間を割いた模様で、レイソル戦以降、守備はかなり改善された。ところが、その背反か、攻撃はほとんど機能しなくなっていた。
 レイソル戦の終了間際の同点弾は、どう考えても幸運の賜物。続くアントラーズ戦は、濃霧と言う不運はあったものの、シュートは僅か1本。そして、連戦で行われたジュビロ戦は、敵の組織的なフォアチェックを抜け出せず、「よくもまあ失点しなかったものだ」と言う超幸運な0対0だった。
 そうこう考えると、後半完全にペースをつかみ、幾度も好機をつかみ勝ち取ったこの勝利は本当に重要だ。しかも、守備面で大きな破綻もなかったのだし。

 今シーズン、従来のいわゆる4-4-2から、3-4-3に配置を切り替え、両サイドを前面に押し出すやり方を採用したベガルタ。その前面への押し上げが奏功し、相手の監督から、お褒めの言葉を頂戴した試合もあった。しかし、落ち着いて振り返ってみると、明確な成果を発揮した試合は案外と少ない。守備面で大きな破綻がなく、良好な攻撃ができた試合は、敵地で3-0と快勝したエスパルス戦と、同じく敵地で押し込みながら1-1の引き分けに終わったマリノス戦くらいではなかったか。
 今後、このサンフレッチェ戦のように、守備面の課題を丁寧につぶした上で、いかにマイボールを大事にして人数をかけた攻撃をしっかりやり遂げることができるか。ベガルタが、上位進出を目指すためには、サッカーの質を上げていくしかないのだ。
 続くのは敵地での、アルビレックス戦、コンサドーレ戦。共に今シーズンは苦闘しているクラブだが、試合内容は悪くなく、選手の個人能力も我が軍とは、ほぼ互角と関げてよいだろう。彼我の戦闘能力差、残留争いの星勘定、そして敵にとってホームゲームであることを考えれば、両クラブともベガルタから勝ち点3を獲得することを目指してくるのは自明だ。
 その難敵を相手とするときに重要なのは、試合内容の充実に尽きる。ようやく獲得しつつある攻守のバランス、両翼の勇気、シュートの改善、終盤までの運動力の確保。これらを、しっかりと行うことが、今後の上位進出はもちろん、この2試合でのより多くの勝ち点獲得にも重要なはずだ。
 よい成果を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 20:26| Comment(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月04日

石川直樹との別れ

 石川直樹が、コンサドーレに完全移籍した。
 今シーズンに入り、スタメンの座を奪われていた石川。したがって、他クラブからオファーがあれば、石川が移籍の決断をするのは不思議ではない。ベガルタにとっては貴重な控え選手ゆえ、戦闘能力と言う意味でも痛いし、何より石川がいなくなると考えると寂しい。しかし、ここは快く送り出すしかない。そして、新たな環境での活躍を期待したい。ベガルタ戦以外でだが。
 それにしても、この4年半の貢献には感謝しても感謝しきれない。特に2014年シーズンに、我々がJ1に残留できたのは、石川の八面六臂の活躍があってのこと。あの難しい時期のベガルタを支えてくれた石川のプレイ振りを、私は忘れることができない。

 石川は、ベガルタにACLに出場したの2013年シーズンに、ベガルタに加入した。
 当時のベガルタは、菅井、梁、関口、富田と言った2000年代前半に加入した生え抜き選手に加え、J1再昇格の2010年シーズン前後に獲得した、林、鎌田、角田、太田、赤嶺、そしてウイルソン、さらには朴柱成と言った、移籍で獲得したタレントの個人能力を存分に発揮させることで輝いたチームだった。こう言ったピンポイントの移籍選手獲得の格段のうまさと、手倉森監督の格段の手腕により、我々はACL出場の栄冠をつかむことができた。
 けれども、そこには背反があった。それぞれの選手たちは、みな己の選手としてのピークを迎える年齢、つまり20代後半にベガルタにやってきた。そのため、2014年シーズンには一気に反動が来た。チームの老齢化が隠しようがなくなったのだ。
 その2014年シーズンに常時出場し、チームを支えたのが、石川だった。石川はベガルタの一番難しい時期を支えた存在だったのだ。そして、翌2015年シーズンより、ベガルタは奥埜に代表される自前の若手選手を次々に登場させ、新たなステージに移ることができた。

 石川はセンタバックもサイドバックもこなし、左足のキックが魅力。その左足は、センタバックでは高精度のロングフィードに、サイドバックでは好クロスに活かされる。左利きで、いずれの位置もこなせるタレントは日本では珍しい。私的には、日本のマルディーニなのだ。
 守備においては、いわゆるスピードは今一歩だが、敵の攻撃を読む能力に秀でている。ただし、昨シーズンあたりから、年齢的なこともあるだろうが、単純なスピード不足で敵のサイドプレイヤに突破を許す頻度が増えてきて、「そろそろサイドバックは難しいかな」と言う印象だった。
 そして、ベガルタが今シーズン3DFを採用したこともあり、石川はいわゆる左のセンタバックで起用された。ところが、そうなると局面によっては、サイドでの守備が必要となり、上記したスピード不足の課題を露呈することもあった。そのため、敵FWへの応対が丁寧な増嶋に定位置を奪われた格好となっていた。
 それでも、石川はルヴァンカップでは主将を務め、2次ラウンド進出を支え、ベガルタにとっては、貴重な貴重な控えの守備者った。そして、勤勉な石川のことだ。丁寧に自分の長所短所を整理し、レギュラ奪回を狙っていたはずだ。その奪回劇を堪能させてもらう前に、コンサドーレからのオファーが届いたと言うことだろう。

 石川の移籍が発表された日に行われたレイソル戦。同じポジションに椎橋慧也が抜擢された。椎橋は、落ち着いたポジション修正、敵の縦パスへのはね返し、正確なフィードを見せてくれた。そして見事なドリブルの攻め上がりから、石原に決定的なラストパスも通した。もちろん、加速したクリスティアーノや伊東に、後方を突かれるなど、肝心の守備はまだまだ課題は多い。それでも、椎橋のプレイは我々に大きな期待を抱かせるものだった。石川が去ることにより、椎橋は機会を得た。そして、椎橋と同年齢の小島や常田に機会が訪れる可能性があるだろう。さらには、3日には新しいブラジル人CBのヴィシニウスの獲得が発表された。去る者があれば、来る者もいるのだ。

 改めて、4年半の間、ベガルタのために粉骨砕身してくれた石川直樹に感謝したい。ありがとうございました。
posted by 武藤文雄 at 01:23| Comment(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月31日

蜂須賀孝治の充実と課題

 J1第19節、ベガルタ1-1レイソル。

 中断前3試合で、毎試合のように大量失点をして3連敗していたベガルタ。さすがに、この試合では守備を相当意識した試合を行った。蜂須賀と中野の両サイドMFが、素早く最終ラインに入り、3-4-3と言うよりは、5-4-1と言う並び。もちろん、ボールをしっかりとキープする狙いは変わっていないから、蜂須賀と中野は幾度も上下動を繰り返す必要があり、負担は非常に重い。
 そして、ベガルタの守備は非常によく機能。石原と西村が長い距離を走る逆襲速攻、蜂須賀の強引な右サイド持ち出しに大岩と西村がからむ右サイドからの崩しなど、上々の展開で後半半ばまで試合は進む。
 しかし後半半ば過ぎ、ベガルタはCKから先制を許す。その後、ベガルタは中々有効な攻め込みができない。クリスランと石原が、レイソルの中谷、中山の若きCBに押さえられ、結果両翼に起点を作れなかったのだ。中でも、シーズン当初より上半身が明らかにたくましくなった中谷は、忌々しい事この上なく、カバーリングの妙と、体幹の強さを存分に発揮されてしまった。
 それでも、アディショナルタイム、クリスランが狡猾な動きから、中野のスルーパスを呼び込み、左から抜け出し鋭く低いクロス、石原が見事なスクリーンプレイからボールを落とし、中野が叩き込んで同点。
 まずはやれやれである。この勝ち点1は、ベガルタにとっては、本当に貴重なものとなった。

 ともあれ。CKから奪われた失点は、ほろ苦いものだった。
 レイソルに分厚い攻めを仕掛けられたが、ベガルタ守備陣も丹念に対応。富田が実に見事なボール奪取を見せたものの、蜂須賀がクリアすればよいものの中途半端につなぎを狙い拾われ、シュートまで持ち込まれたのをブロックして許したCKからだった。
 そして、キッカーのクリスティアーノがファーサイドを狙ったボールに、見事な出足で飛び出した伊東に、蜂須賀の前でヘディングを許し、決められてしまった。
 つまり、蜂須賀が提供したCKの対応を、蜂須賀が誤まり、失点してしまったのだ。

 つらいことだが、中断前の3連敗、失点場面に幾度も蜂須賀はからんでいた。ガンバに許した決勝点は、ガンバのFKに一番ファーサイドにいた蜂須賀が対応できず、ファビオにヘディングシュートを許したものだった。ヴィッセルに許した先制点は、蜂須賀が不用意につなごうとしたボールを奪われたものだった。
 この日のレイソル戦の失点は、蜂須賀はつい最近行ったミスを再度犯してしまったために、許したものだったのだ。

 蜂須賀は2013年シーズン、仙台大から特別指定選手を経てベガルタに加入したサイドプレイヤ。180pの体躯、利き足は右だが左でもしっかりとクロスを蹴ることができ、縦への疾走を繰り返すことができる。しかし、中々定位置をつかむことができずに5シーズン目を迎えた。
 蜂須賀がレギュラに定着できなかった要因はいくつかある。元々、ベガルタの右サイドバックには、クラブのレジェンドでもある菅井直樹がいたこともあった。蜂須賀自身が、ベガルタ加入以降複数回下半身の大怪我をしたこともあった。ただ、それらに加えて、時々びっくりするようなミスをする悪癖があったのだ。中盤でパスをつないでいるときに、簡単な横パスを提供してしまう。逆サイドから攻め込まれているときに、敵に揺さぶられているわけものないのに、ボールウォッチャになってしまうなど。
 それでも今シーズンの蜂須賀は格段に成長している。幾度も上下動を行える脚力を活かし、いずれの試合でもスプリント数は格段の回数を誇る。縦に出た右クロスも、切り返した左クロスも、精度が向上した。敵サイドプレイヤに対する守備応対も随分と粘り強くなった。中盤でのつなぎも、逆サイドへの展開を含め、間違いなく上達した。
 渡邉監督が目指すサッカーでは、サイドMFの充実が何より重要。そして、左サイドで高い評価を得ていた新人永戸の負傷離脱はあまりに残念。しかし、その他のサイドMFとしては、ようやく負傷が癒えた中野、グランパスから獲得した古林、ベテランの菅井、若手の茂木、小島など候補選手は多い。しかし、蜂須賀には彼らライバルにはない、体格の強さ、空中戦の強さ、そして何より上下動をいとわない脚力がある。
 そして、我がクラブは、少々欠点がある選手を見捨てる贅沢は許されない。蜂須賀が己の長所を活かし、短所を改善することで、格段のサイドプレイヤに成長すること。それが、今シーズンの上位進出のカギを握るのだ。

 頑張ってくれ、蜂須賀よ。 
posted by 武藤文雄 at 00:12| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする