2009年11月08日

J1昇格を決めて

 ここ2ヶ月くらい、昇格したその日に書く事をずっと考えてきた(数週間ではなくて6年間だったような気もするが)。もちろん、昇格するには様々なパタンが考えられるから、そのパタンに応じて、勝ち点勘定が苦しくなってからの逆転時の感動版、完全に楽勝で昇格した場合のオチャラケ版、当方が敗れたがライバルも勝ち点を落としての昇格の場合のイヤミ版、読者の意表を突いた完全冷静版など。昇格の瞬間に立ち会い損ねた場合の間抜け反省版ももちろん考えていた。しかし、ここ3週間で「歓喜当日」何を書くかだけは完全に固まっていた。今日はそれについて、淡々と講釈を述べるのみである。

 ただ、願望が実現した今、何とも言えぬ様々な感情が訪れている。
 もちろん嬉しくて嬉しく仕方がないのも確かだ。あっけなく決まってしまって少々気が抜けているのも確かだ。現地に行きそびれた間抜けさを呪っているのも確かだ。現地で戦った友人達に羨望しているのも確かだ。セレッソより3時間早く一番乗りできた事にシメシメと思っているのも確かだ。来週末の少年団の練習でベルマーレサポータの友人達と顔を合わせ、「いやあロスタイムに追いついてよかったねえ」と語るのが愉しみで仕方のないのも確かだ。各方面から寄せていただいている祝辞に感謝の言葉もないのも確かだ。来期J1の列強達がユアテックに来襲するのを想像するだけで嬉しくなってしまうのも確かだ。東北のクラブ同士が国内のトップリーグでダービーマッチを行える事(たぶん、大丈夫だよな、待っててくれよ!)の感動が言葉にならないのも確かだ(私の青春の全ては宮城県のいや東北地方のサッカー界にあったのだ)。実は私が確保している情報は全て夢の中の話で、目が覚めたらまだまだリーグ半ばでライバル達とたごまっているのではないかと幾度も思い返したのも確かだ。試合終了直後、現地にいる友人に電話し、現地の「べがるた!せんだい!」コールを電話から耳にして50前後の大人同士絶句してしまったのは秘密だ。この写真を見る度に目頭が熱くなるのももっと秘密だ。もちろん、私の戦士達のコメントを読むと、もう涙が止まらなくなるのは何があっても秘密だ。
 千葉のコメントを抜粋しよう。
前回の昇格に比べ、今の方がしっかりと気持ちを持っていますね。あの時には一緒になって喜んでいた自分の姿を思い出します。今は、やっとスタートラインにたてるという思いが強いです。本当に皆さんに感謝してします。梁をはじめ、今年の当初には(仙台でサッカーを続けるか)まよっていた選手たちが一緒に残ってくれて、もう一度上を目指してくれたことは、すごく心強かったですし、そこで何か達成できなければ意味がなかったので。形として出るまではしっかりと前を向いて戦っていこうと話はしていましたが、今回こういう形で決まったことは、選手たちにも非常に自信になったと思います。
 そう、以前もしつこく述べたが、この歓喜の分岐点となったのは、千葉直樹のあの鮮やかな得点だった。私はチームがどん底だった時期のあの苦しい試合を、このベガルタのシンボルと言うべきベテランの献身で勝利した時、シーズン末での歓喜を確信した。

 そして、もう1つ語りたい事。
 勝ち点勘定的にベガルタがほぼ抜け出しを確定したのは45節のサガン戦だった。このサガン戦、前節までフル出場していた渡辺広大が警告累積で出場停止(44試合フル出場して4枚の警告、これは十分に合格点だ)、そこで広大の代わりにピッチに立ったのは木谷公亮だった。木谷がベガルタに移籍して来たのは05年シーズン、J2に陥落して2期目の事だった。以降、木谷はベガルタの守備陣の中核として常に君臨してきた。同シーズンに名門市立船橋の主将として、多くの期待を受けて加入した新人渡辺広大は、常に木谷の大きな壁にはね返され中々出場機会を得る事ができなかった。
 広大が完全にポジションを確保できたのは、5期目にあたる今期が初めてだったのだ。ただし、この木谷の分厚い壁を打ち破ったからこそ、広大はベガルタのレギュラを確保すると同時に、J2最高のCBとなる事もできた。木谷の壁はそれだけ厚かったのだ。そして、定位置を確保した広大は、今期ただの1試合もその座を譲る事がなかった、このサガン戦まで。
 その広大に代って登場したのは木谷だった。今期のリーグは初出場。しかし、木谷はまるで昨期と同じように知的に激しくプレイ。今期たった1試合のプレイなのに、堂々たるプレイでチームを引き締め、サガンを振り落とす引き分け獲得に貢献した。広大に定位置を奪われながらも、木谷はしっかりと体調を整え、最も難しい試合に準備していたのだ。広大欠場は、木谷の存在でベガルタにとっては苦境にはならなかった。この木谷のプレイこそ、今期のベガルタの強さの証だったのだ。

 来シーズン、ユアテックには、中澤佑二が、田中マルクス闘莉王が、長友佑都が、遠藤保仁が、中村憲剛が、岡崎慎司が、そして佐藤寿人が来襲する。私は千葉直樹と木谷公亮と共に、彼らを迎え撃ち、打ち破りたい。
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2009年11月07日

浦項のアジア制覇

 ACL決勝。浦項2ー1アル・イテハド。
 世界で最も嫌いなサッカーの代表チームはどこかと問われると「韓国とサウジ」と答える自分がいる(もちろん中国は論外)。しかし、このアジアのライバルと言える2国だが、「嫌い」の次元が正反対に異なる。
 韓国は02年の狼藉に目をつむれば、それ以外の「嫌い」には尊敬が入っている。実際この隣国の過去の名手達は、皆忌々しい連中だったが、後年管理職になって再会すると何かしらのうれしさを感じるし(だからこそ、02年の狼藉はこの国のサッカー界にとっては、大暗黒と語るべき汚点であろう)。でも嫌いだ。
 一方でサウジに常に感じるのは志の低さ。技術的にも肉体能力的にも優れたタレントを揃えながら、駆け引きばかり考えるスタイル。戦闘能力的に明らかに劣る他国に対しても、守備的に戦うのはイタリアだってウルグアイだって変わりない。けれども、彼らは能動的に敵を引き寄せて逆襲を狙う。その鮮やかさは実に愉しい。対してサウジの逆襲は常に受動的で、爽快感を感じない。アジアのタイトルマッチでも、常にそのような戦い振りで勝ち上がってくる。だから世界大会に進んでもインパクトある戦いができない。

 で、両国トップクラブがよりによって国立で決勝を戦うのだから不愉快な決勝戦だった。そして、上記の偏見通りの試合を味わう事となった。悔しいがおもしろい試合だったしな。

 戦闘能力では明らかにアル・イテハドが優位だった。しかし、先制点を取り切れずにいるうちに、交通事故のようなセットプレイから先に2失点。そのままズルズルと時間を費やし、アブシェルアヌやムールの煌めくような個人技をほとんど見せる事なく、一敗地に伏す事となった。
 1点差とする得点など実に見事だったではないか。短いパスの連続で、アブシェルアヌを左サイドでフリーにする。アブシェルアヌは、逆サイド一番遠いところにいるチェルミティに正にピタリと合わせるピンポイントのクロス。チェルミティのヘディングはGK申和容に見事に防がれたが、こぼれたところをムールが鮮やかに決める。あのような攻撃の頻度を増やす努力をすればよかったのだが。
 しかし、1点差として残り15分以上あるにもかかわらず、またも浦項に合わせてしまったかのようなプレイを継続してしまった。ロスタイムに入っての攻め込みにしても、我々野次馬に訴えてくる必死さが感じられなかった。

 一方で浦項は、序盤無謀とも思える攻撃的姿勢で攻勢を取る。4ー1ー2ー3的なフォーメーションで、ワンボランチの辛炯[王民]が引き気味のトップに位置するムールに着くので、5ー2ー3的な形になり、いわゆるバイタルエリアを空けてしまい再三カウンタから危ない場面を作られる。
 しかし、最終ラインの奮闘でしのいでいるうちに(退場になってもおかしくないプロフェショナルファウルや、PKではないかと言う微妙な交錯を交えながら)、2点を奪ってしまった。その2得点にしても、1点目の盧炳俊の直接FKは壁がよけたかのような間隙を通ったもの、2点目のヘディングはCB金亨鎰が競り勝ったのは確かだが側頭部に当たったボールがGKのタイミングを全く外してネットを揺らしたものだった。
 そして、リードした以降もアラブのトップスター達の個人能力にひるむ事なく戦い続け、とうとう押し切ってしまった。特にすばらしかったのは、右サイドバックの崔孝鎭。アル・イテハド選手に近いところにこぼればルーズボールも、動き出しの早さと判断のよさで再三再四確保に成功。さらにボール獲得後も、時に突破し、時に好クロスを入れ、時にキープし、時に好展開。正にこの日のMVPと言う活躍振りだった。
 「勝つ」と言う目的のために、リスクも冒し、ぎりぎりの反則も見せ、最終ラインで粘り、幸運も引き寄せ、粘り強く勝ってしまう。何とも腹の立つ勝ち方を眼前で見せられたものだ。

 現時的には、増川がインフルエンザで倒れた時に、アル・イテハドはUAE行きのチケットを確保したも同然だったのだ。しかし、この試合は「アル・イテハドがこの国の欠点をさらけ出し、入手同然だったチケットをみすみす失った試合」と言えるのではないか。
 浦項は1次ラウンドでフロンターレが苦戦した相手、今期の韓国のクラブでは最強と言える戦闘能力は持っていたかもしれない。しかし、この決勝戦の試合内容にしても、個々の選手の個人能力にしても、Jのトップレベルのチームなら互角以上に戦える戦闘能力のチームだ。その浦項が、我々の眼前でアジア王者となった事を存分に悔しがるとしようか。

 ともあれ。
 岡山、おめでとう。
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2009年11月06日

ベガルタ終盤戦近付く、支離滅裂な私

 ベガルタは8日ホーリーホックと敵地で対戦。
 4試合残して、4位との勝ち点差は6の2位。しかも、3位のヴァンフォーレとベルマーレは直接対決を残していているだけに、慎重この上ない発言を繰り返す私ではあるが(笑)、J1昇格に関しては相当有利になった事は認めざるを得ない。また、セレッソとの直接対決を制すれば、自力優勝の可能性も十分に確保しているのもまた結構な事だ。

 さて、先週はJはお休みで天皇杯。中1週間なのでカップ戦にも全力を注げる事もあり、J1のアルディージャを延長で振り切る事ができた。試合内容も上々だったとの事で、よい状態でホーリーホック戦に臨む事ができそうだ。
 一方のホーリーホック。この試合が新競技場のお披露目と言う事で、この試合に向けてしっかりと調整してきているだろう。さらにホーリーホックは、天皇杯は 初戦で苦杯を喫したために、このベガルタ戦が2週間空いた試合。正にこの試合に合わせやすい日程となっていた。そもそもJ2屈指の2トップ荒田と吉原を前線に置く(これに絡む高崎は負傷で離脱らしいとか、中盤の中軸選手が欠けるのではないかとか、ベガルタにとってはありがたい情報もあるが)このクラブとの敵地戦が、楽なものになる訳がないのも言うまでもない。
 もっとも天皇杯日程との絡みに関しては、逆の見方もできる。過密日程ならば、試合間隔は空いた方が有利だが、2週空きと1週空きならば、むしろ試合勘を考慮すれば当方が有利と考えられなくもないか。

 いや悪く考えれば、いくらでも悪く考えられるな。
 ザスパ戦での平瀬に加え、コンサドーレ戦では朴が負傷退場。終盤苦しい時期に負傷者が続いている。また、ここまで警告、退場が非常に少なく出場停止選手が少なかった訳だが、警告3枚でリーチがかかった選手も多く、これから本当のプレッシャがかかる終盤戦で、警告を食らう選手が続出しベストメンバを組めないリスクも低くない。
 また、昇格が上位4クラブに絞られた以上、ライバルの3クラブは直接対決を除いては全勝すると考えるべき。もしホーリーホックに敗れると、次節はホームとは言えセレッソとの直接対決。精神的には相当苦しくなる怖れもある。
 だいたい、前回の昇格時など3節残して「あとほんの少し」と迫りながら、ヴァンフォーレとサガンに2連敗を喫し、最終節に自力昇格権を無くしながら、奇跡的なロスタイムの昇格劇だった。最後の最後で歯車が狂うと立て直すには本当に苦労するのだ。
 悪く考えれば、いくらでも悪く考えられるものだ。

 ここは冷静にリアリズムを重視すべきだろう。勝ち点勘定からは、今96のベガルタは101取れば確定、100でも得失点差からはほぼ決定となる。
 それを前提に、ホーリーホック戦に臨めばよい。しっかりと後方を固め、堅実に戦う。悪い取られ方からのカウンタをさせず、敵ペースの時は我慢する。このような当たり前の試合を残り4試合演じれば、勝ち点はついてくるはずなのだから。「早く決めたい」と言う気持ちはあるが、それ以上に丁寧に戦い続けると言う姿勢を重視すべきだろう。

 悔しい事に、ホーリーホック戦はよんどころない事情で関東の試合だと言うのに観戦不能。複数の友人達から「一緒に行こう!」と誘ってもらったのだけれども。次々節のセレッソ戦は帰省して観戦する計画なのだが。
 うん、歓喜の瞬間など生観戦できなくても全然構いません。明日決めてくださいよ。ヴァンフォーレさんもベルマーレさんも勝ち点落としてよ。早く楽になりたいからさ。
 と、ホンネをゲロして支離滅裂な講釈を終えたいと思います。
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2009年11月05日

スーパースタアの名前に

 「木村和司氏がマリノス監督就任?」との報道が飛び交っている模様だ。今のところ、スポーツ新聞などが報道しているだけなので、あくまでも噂の範疇なのかもしれない。そうなのかもしれないが、何とも気になる報道だ。

 若い方々も、この現在は偏屈で感性を重んじる解説者が、「メキシコの青い空」でも有名なあの「ボールが曲がる、ボールが落ちる」の直接FKに代表される80年代のスーパースタアである事はご存知だと思う。
 もう少し補足させていただくと、木村は釜本邦茂以降久々に登場した正真正銘アジアのトッププレイヤと言って過言ではないスタア選手だったのだ。しかも、その武器がスキルフルな変化あるドリブル、判断よく精度の高いパス、そしてシュートの巧さ、と言うわかりやすいスタアだった。もちろん直接FKもすばらしかったし、代表チームで逆サイドから走り込む原博実の最高打点にピタリと合わせるクロスも完璧だった。しかし私にとって一番印象的なのはスルーパスの美しさだった。1歳年上の高校時代からの僚友金田喜稔、2歳年下の天才肌の水沼貴史らに再三通した完璧なラストパスの見事だった事。
 80年代に入り、日本からもそれなりに優秀な選手が出始めてはいた。しかし、決定的なスタア選手は中々登場しなかった。好技の右ウィングだった木村は得点能力も高く、正確なクロスも中々で、明治大学在学時代から代表のレギュラ選手だった。そして日産に加入して3期目の83年シーズン、当時の加茂監督がMFにコンバートする事で、一気にその才能が開花。木村和司の確立により、我々は「アジアで勝つ」と言う目標を現実的なものとする事ができたのだ(もっとも「安定して勝てる」ようになるまでには、まだまだ長い時間がかかったのだが)。
 だからこそ、日本サッカー史においても、とてもとても重要な選手なのだ。

 残念ながらJリーグ開幕時には少々お年を召していたので、派手な活躍はできなかった。それでも初年度に、木村がラモン・ディアスと共に見せてくれたあの美しいパス交換は、今なお忘れる事ができない名場面だ。

 本当に監督に就任するのかどうかはさておき、あるいは就任したらどうなるとかの野暮もさておき、この人の名前を聞くだけで、私などはワクワクしてくる。スタアと言う存在は、その存在だけで人をときめかせてくれるものなのだ。
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2009年11月04日

播戸がガンバを去る

 播戸竜二が、自らのブログでガンバを去る決断を明らかにした。   
 まぎれもない国内最高クラスの実績を持つストライカが、強豪クラブに所属するがゆえに、ほとんど出場機会がないのだから、この決断は当然の事だろう。しかもチーム事情もあったのだろうが、レアンドロがチームを去るや否や、ペドロ・ジュニオールを獲得する事そのものも、この異能の点取り屋のプライドを相当傷付けた事もあったのかもしれない。西野氏に「お前よりはあいつが上だ」と判断される事は耐えられようが、このフロントの判断はベテランストライカには酷なものだったろう。
 
 リーグ優勝を争い、天皇杯もこれから佳境になる中での発表。けれども、播戸にとっては「これ以上発表を遅くできない」事情があった。各クラブの編成が基本的に完了してしまう前に「俺はフリーだ」と宣言をする必要があるからだ。
 これだけ実績があり、得点と言う最も厄介な仕事を相応にこなす事ができて、しかもチームのリーダシップを取れる人材。引く手あまたに思える。唐突な例えだが、昨日国立ですばらしい戦いを演じた両軍いずれかのベンチに、もしもこの男がいたならばと想像してみればよい。播戸を所有する監督が取り得るオプションと、所有しない監督が考慮しなければならない想定は、それぞれ飛躍的に多かったはずだ。この選手の才能と積み上げて来た努力は、まだまだ日本サッカー界にとっては大切なものだ。
 しかし、「俺はフリーだ」が広がらなければ、各クラブは編成構想に播戸を入れる事はできない。昨年、この選手の時にも講釈を垂れたが、クラブと選手の出会いは、ほんの僅かなタイミングで決まってくるもの。この発表により、多くのクラブが「播戸はいくらだ、複数年契約は必要か」と動き始める事だろう(現実的には水面下で、既に様々な動きはあったはず、うがった見方をすれば播戸が「自らのつり上げ」を狙ったのかもしれないが)。ついでに言うと、それによって、編成構想からはずれる選手が出るのだが、まあそれはそれとして。

 元々今期オフから、移籍ルールが変わる事もあり、今回の播戸のような「俺はフリーだ」宣言は、公になるもの、水面下のもの、含めこれから錯綜するのかもしれない。よい選手が、よい職場を見つけ、よいプレイを見せ続けてくれる事は、我々にとっとも非常に重要な事だ。
 播戸が的確な新しい職場を見つけ、来期以降我々を愉しませてくれる事を期待してやまない。
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2009年11月03日

米本のはじまり

 前半20分過ぎだっただろうか、攻撃の起点となった米本がハーフウェイライン手前より前進を始めた。この労をいとわぬ知的な若者のここぞと言う時の前進の判断は、常に的確だ。センターサークル後方やや右寄りから左方向に斜行した距離は40mくらいだったろうか、その米本に平山がいかにも彼らしい柔らかな落とし。うまくフリーでボールを受けた米本は急停止後右斜めに方向を変えながら1度ボールを持ち出し、浮かさぬようによく腰を落として、ミドルシュートを放つ。反対側のゴール裏で見ていた私からは、ボールが枠に飛ぶのはわかったが、距離も相当だし、GK川島を破るのは難しいと思った。
 けれども、ボールは川島の手をはじきネットを揺らした。周辺のFC東京サポータの方々も、入るとまでは思わなかったのだろう、一拍おいて歓喜の絶叫とあいなった。
 距離が遠かったせいもあり、最初は川島の判断ミスによる得点かと思った。でも私は間違えていた。振り向いて見たオーロラビジョン、米本の放ったシュートは全くの無回転弾だったのだ、あのコースに飛んだ無回転弾をGKが止めるのは至難の技だ。
 もう1度整理しよう。米本は攻撃の起点となった後、約40m長駆し、ボールを自分が蹴るポイントに正確に止めながら身体の方向を変え、サイドネットぎりぎりに約30mの無回転シュートを放ったのだ。判断、技術、フィジカルいずれも極めて難度の高い決定的なプレイを、これだけのビッグゲームと言う場で、まだ18歳の若者が演じてくれたのだ。

 試合は序盤からFC東京の最終ラインが非常に厳しく守備を固める展開。ただし、憲剛のマークが曖昧なため、フロンターレが幾度か好機をつかむ。ジュニーニョが外した決定機などもあり、フロターレがもう1段くらいギアを上げようとした矢先の、ある種唐突な失点だっただけに大きかった。
 以降、フロンターレは最終ラインが単調に長いボールを蹴る事が多くなり、憲剛を経由した攻撃が少なくなってしまう。攻撃が単調になれば今野を軸にしたFC東京守備陣は守りやすくなる。後知恵だが、前半の残り時間の攻めあぐみはフロンターレの失態となる。

 後半に入り、フロターレの猛攻がスタート。以降は、憲剛が工夫を凝らして米本を軸にした中盤を抜け出し、ジュニーニョと鄭大世は強引に裏を狙い今野とブルーノがギリギリで読み、梶山が中盤でボールを回し平山が前線で持ちこたえて時間を稼ぎ、と時間が経過する。
 FC東京の2点目の逆襲速攻だが、フロンターレがCK後の執拗な連続攻撃でボールを複数回拾った直後で残っている選手のバランスが崩れたのを突いたもの。何かフロンターレはとことんツキがない感じがした。もちろん、鈴木の視野の広さと平山がマークしていた菊地の視野から消えた動きなど見事なものだったのだが。

 2点差になっても、憲剛もジュニーニョも諦めない。幾度も幾度もFC東京ゴールを襲うが、最後権田とバーが立ち塞がる。権田の飛び出しのよさは秀逸でセンタリングへの反応も抜群。憲剛は権田の前への飛び出しが好調なのを見て取り、頭越しのファーのクロスを狙うなどするが、それにも権田はしっかりと対応していた。75分過ぎだったか完全に揺さぶって最後憲剛がフリーで狙ったグラウンダのシュートにまで権田が反応した場面で、何か「勝負あり」との雰囲気が漂い始める。
 それでも憲剛もジュニーニョも諦めない。ただ、このあたりから、この諦めない2人ががんばり過ぎるものだから、肝心の敵陣前に思うように入り込めなくなり、結果的に今野と権田を楽にした印象もあった。

 いい試合だった。
 「あの米本がビッグゲームを決めた最初の試合」と、長きに渡り記憶される試合となる事だろう。
posted by 武藤文雄 at 21:28| Comment(16) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月02日

ナビスコ決勝前夜2009

(チケットをFC東京サポータの超大物Mさんに確保いただいたので、明日はFC東京側の片隅での観戦となります。だから、どうにもFC東京寄り視点になっています)

 明日はナビスコカップ決勝戦。ナビスコカップと言うのは、中々微妙なタイトルマッチで、H&Aで行われる総当たりの予選ラウンド、さらにアウェイゴール方式の準々決勝以降のトーナメント、多くが代表戦と干渉する日程で行われ、決勝進出クラブが決まると言う大会だ。実際、今年の準決勝も、代表のオランダ遠征と完全にバッティング、憲剛抜きフロンターレ、岡崎抜きエスパルス、今野長友抜きFC東京、中澤抜きマリノスが覇を競った訳だ。これは毎年毎年似たような状況となっている。
 また、優勝するとトップ選手を2人くらい雇えるくらいの多大な賞金こそ獲得できるのだが、天皇杯と異なりACL参戦権が提供される訳ではない。翌シーズン開幕前に開催されるパンパシフィック選手権への出場権が付与されるが、陳腐な評価だがこの参加権は「罰ゲーム」っぽいところもある。
 ところが、このナビスコカップだが、決勝戦だけがいずれのシーズンでも、両軍の代表選手を含めたベストメンバが登場し、実に真剣なタイトルマッチとなる。そして、天皇杯と異なりシーズン真っ最中に決勝が行われるためか、ここ数シーズンの決勝戦は「名勝負」と言えるような試合が多い。結果的に、この決勝戦は大変権威を持つ試合となってきている。
 で、今年の対戦はFC東京ーフロンターレ、巷で大受けしている多摩川クラシコを戦うライバル?同士の戦いとなった。いずれも首都圏の人気クラブらしく、チケットも発売早々に売り切れ。4日後に開催される別な大会のチケット販売は大苦戦状況との事だが、偉い違いだなと。共に国内屈指のスター選手を抱え、よい試合を期待したいところだ。

 が...

 現実は厳しい。落ち着いて考えると、FC東京は負傷者山積なのだ。準決勝から2ヶ月、このクラブは不運が山積している。カポレが中東に買われた穴は、タイプが異なる多産系のストライカ赤嶺である程度埋まった模様。ところが、石川直宏がレイソル戦で重傷(それでも当初心配されたよりずっと軽傷だったのがせめもの救い、リハビリの粋を尽くして今期の抜群の感覚を復活させてくれ、南アフリカが待っている)、さらに長友が脱臼で出場が不安視されている。
 FC東京は選手層は比較的厚いクラブだ。また「選手が欠けた時にどう埋め合わせられるかが本当の強さ」は一般論としては正しいだろう。けれども、日本最高の選手が2人いなくなってしまっては...(長友は強行出場との噂もあるが、本調子ではないだろう、しかも問面の選手は敵の弱み?を平気で突いてくる胆力を持っている事では定評があり、強行出場は危険な予感もするのだが)
 ただでさえ、最近の憲剛を止める事は不可能に近い状態。さらにこの決勝戦、日程も工夫され両軍ともに中1週間以上の調整期間が準備された。フロターレはベストに近い調整ができた事だろう。結構試合によって出来不出来に差が大きいジュニーニョ、鄭大世も完全にこの試合に合わせてくる。加えて、10月上旬ACLに敗退した頃のフロンターレはチーム全体から疲労が感じられたが、その疲労もほぼとれてきたようで、前節のリーグでは(敵に退場者が出るなどの幸運もあったようだが)サンフレッチェを大差で粉砕している。
  もちろん、石川抜きで、FC東京はリーグでエスパルスを下してはいる。けれども、エスパルスは一気に首位に上がって来た時からややピークがずれてきた時期であり、何よりこの試合には長友がいた。中心選手の1枚欠けと2枚欠けでは深刻度も違う。
 と、冷めた目で見ると、圧倒的にフロンターレが有利なのだ。

 ではFC東京はどう戦うべきか。
 私は奇策もありだと思う。梶山を1つ前に上げ、平松なり北斗なり浅利をスタメンから起用し、後方を(梶山を含めた)7人で固めてしまうのはどうだろうか。憲剛には、それこそ米本をマンマークでつけるくらいのつもりで(今野を中盤につけてマンマークさせてもよい)。それで、とにかく試合を壊すのだ。フロンターレの守備も盤石とは言えないので、平山を軸に1、2点は計算できよう。とにかく失点を減らして、とにかくロースコアの展開に持ち込む。
 一番避けるべきは点の取り合いで雑な試合になる事。たとえば前半半ばくらいで双方が点を取り合う展開になると、スタンドは盛り上がるし選手も興奮するだろうから攻め合いになる。すると、序盤は1−1くらいで始まった試合が、後半半ば気がついてみると、5−2くらいの大差が付いていると言う事になりかねない。早い時間帯に点を取れたとしたら、それを残り時間守り切るくらいの思いで戦うべきではないか。極端な事を言えば、後半半ばまで2点差で負けていても無理をしないくらいの覚悟があってよいと思う。正に5年前、ジャーンが涙した以降くらいのつもりで、最初から試合に臨むのだ。

 ポイントは梶山と平山が握っている。この2人は今期たしかに以前よりはよくなった。でも、もっともっとやれる選手のはずだ。潜在能力を持ちながらそれを活かしていないと言う意味では国内屈指のこの2人が、人生をこの90分(あるいは120分、場合によっては120分+α)に賭けるくらいの、あるいはこの1試合の活躍だけで南アフリカへの代表入りを果たすくらいの気持ちでプレイしてくれれば。もうすぐ同じユニフォームを脱ごうとしている(潜在能力を活かし切ったプレイを見せてくれて来たと言う意味では国内屈指の)2人のベテランのためにも。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月31日

天皇杯の波乱と日程と

 ベガルタは天皇杯3回戦でアルディージャに勝利。だいたい天皇杯では、ここ最近ロクな成績を収めていなかったのだから、大変めでたい。悔しい事に、地域の中学校の大会の審判などがあり、生観戦できなかった。まあいいや、うちの中学生達の苦闘の末の優勝を見る事ができたし。

 2回戦は、リーグ戦が水曜日にあった後の週末で、次にリーグ戦まで1週間空いてはいたとはいえ、ベストでは戦いづらい日程だった。しかし、今日は前後のリーグ戦と完全に1週間空いていただけに、ほぼベストの陣容で試合に臨めたのが大きいのだろう。今日は、ベガルタの他にも、ヴァンフォーレとサガンがJ1クラブを下した訳だが、J2の上位を争うクラブが、比較的余裕のある日程で一発勝負に臨めば、そりゃこのような結果も不思議ではない。
ちなみに、J1の上位を争うサンフレッチェがサガンに苦杯を喫した事が番狂わせ的な評価を受けているようだが、私はそうは思わない。決してチーム力が低くないチームがJ1昇格がほぼ絶望になった現状。そのタイミングで、今までクラブに多大な貢献をしてきた岸野監督が、ここまで強烈なコメントを残して退任を発表しているのだ。
Q:「今季、『夢昇格』というスローガンを掲げて戦ってきたが、鳥栖が昇格するために足りなかったことは?」
岸野氏:「う〜ん、(相当な時間を要して)お金かな」
 サガンの選手達が、この天皇杯に賭ける気持ちはすさまじいものがあるはずだ。比較的きれいなサッカーを狙っているサンフレッチェがやられる事自体は十分にあり得る事だろう。

 ところで、2回戦でやはりJ2上位を争っているセレッソとベルマーレが苦杯を喫しているが、これは上記の日程のキツさから天皇杯に専念しづらかった事が影響したと見る。逆にその2回戦をうまく(「かろうじて」と言う表現が妥当にも思うが)抜け出したベガルタ、ヴァンフォーレ、サガンが今日勝利を収めたのも、上記の通り今週の日程が「J2向き」だったからだろう。さて、セレッソとベルマーレは、次節のリーグ戦に2週空いた状態で臨むが、疲労回復にはよかったかもしれないが、試合勘回復と言う意味でどうなるか。ついでに次節ベガルタが戦うホーリーホックも2回戦で敗れて中2週間。試合勘が鈍っているといいのだけれどなあ(実際には、新競技場のお披露目なので、相当気合いが入って試合に臨んでくるだろうから、厳しい試合になるだろうな)。
 4回戦だが、またもJ2からは前後1週間空いた日程。しかも、日程都合(ナビスコ決勝)でベガルタの相手は中3日で「FC東京ーザスパ」の勝者と対戦。さらに嬉しい事にFC東京が上がってくると、南アフリカ、香港遠征で代表選手不在と、ベガルタにかなり有利な状況。もちろん、それでも楽に勝てる相手ではないのだけれども。もちろんベガルタにとって、最大の目標はJ1昇格。ただし、中1週間での試合ならば、リーグと同等に臨めるのだから。

 もう1つ。J1残留を実現しかけているモンテディオが明治大学に敗れた。これは番狂わせとしか言いようがない。ただ、これを読むと、「仕方がない」としか思えなくなるし、改めて小林伸二氏の指揮官としての能力が並々ならぬものだと再確認させられる。

 今期の天皇杯はJ1クラブも2回戦から登場となり、一部のトップクラブは一層の過密日程に苦しむ事になっている。天皇杯だけに関して言えば、今週はJ1もJ2も完全に前後1週間空いた日程で戦いやすい日程。ただし、今週をこのような設定にしたために、J1日程は海外での代表戦から中2、3日での試合を余儀なくされた節もあった。既に破綻している国内トップの日程において、何をどう優先させるのかは非常に難しい問題(しかも今期は、ACLに全クラブが討ち死にしているため、例年よりは格段に日程が楽になっている)だが、まあこのような週があってもいいのですかねえ。
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2009年10月30日

グランパス敗退に思う

 グランパスがホームでもアル・イテハドに完敗し、日本勢は今期のACLから皆敗退してしまった。大変残念だが、アジア王者を毎年獲得しようと言うのも、随分贅沢な話であり、仕方がないと考えるべきだろう。

 もちろん、本質的な勝負は敵地でのロスタイムでついていた訳だが、このホームゲームの戦い振りも疑問が多いものではあった。
 まずスタメン。アレックス、ブルザノビッチをボランチに並べ(と言ってもブルザノビッチは前に前に行くから、アレックスの1人ボランチと言うべきか)、両翼に玉田とマギヌン、2トップにケネディと巻弟。小川はサイドバックに位置取り。「攻撃的なタレントを揃えて大量点を狙う」と言うと聞こえがよいが、明らかにバランスを欠いた布陣だった。
 案の定、分厚く守るアル・イテハドに対し、完全に攻めあぐむ。玉田とブルザノビッチは行き場がなく、中途半端な位置取りで、攻撃のテンポを遅らせてしまう。致命傷となる最初の失点は、ブルザノビッチのコントロールミスが拠点になったものだったし、玉田も再三軽率な(いかにも彼らしいと言えばそれまでだが)ミスパスで敵のカウンタを呼び込んでしまった。トップから引いてきて(そこに小川や杉本が走り込み)さばく玉田は有効だが、2列目で行き場のない玉田がウロウロするとロクな事はない。またアレックスにしても、敵の意表を突くような判断は得手ではない。また質のよい走りの受け手も少なく、思ったような展開はできない。
 これならば、オーソドックスに右サイドに隼磨と小川を縦に並べ、ボランチに吉村とアレックスを置いた布陣の方が格段に得点の香りがしたと思うのだが。そのような布陣で活動量を上げて攻撃的に戦い、後半2〜30分までに何とか2点差を狙い、終盤の奇跡を待つ、と言った戦い方の方が、まだ(もちろん極めて薄いものだが)可能性はあったと思うのだが。
 まあピクシーとしては、「あれだけ戦闘能力の高い敵相手に4点差」と言う時点で、「頭から奇跡狙い」を採るしかないと判断したのだろう。う〜ん。

 今期のACLの特徴として、トーナメントの序盤から、日本勢同士の戦いが複数回行われた事が挙げられよう。そしてこの準決勝は、その日本勢同士の戦いを勝ち抜いたグランパスが準決勝で力尽きたとも見る事ができる。ただ、Jのクラブがお互いの戦いによって早く消えてしまったのは残念だが、それはそれで仕方がないと思っている。確かに、それがなければ、上位に複数の日本クラブが進出した可能性はあったかもしれない。また、異国のスタイルが異なるクラブとの試合をあまり見られなかったのも残念だった。
 けれども、おかげで、遠藤との丁々発止の末に憲剛が鮮やかな逆転劇を演出する試合を見る事ができたのだし、ピクシーと関塚氏の駆け引きの下での憲剛の涙に感動する事もできたのだ。それらはそれらで、実に見事な試合だったのだし、存分に愉しい試合だった。組み合わせ抽選に文句を言う事そのものも愉しい事ではあるが、文句を言い過ぎるのは、これらの見事な戦いを否定する事になってしまうような気がする。
 今期の日本勢にとってのACLは、Jとの二兔を追った3クラブと、ACLに焦点を合わせたグランパスが参戦し、後者の道を選択したグランパスがピクシーの見事な采配でベスト4に進出した大会だったと言えるのではないか。そして、準決勝で負傷とインフルエンザで2人のセンタバックを欠いたピクシーはそれをカバーできずに、サウジの強豪に屈した。実際アル・イテハドは確かに強かった。アジアを制するのは、それだけ難しい事なのだ。だからこそ、一昨年のレッズ、昨年のガンバ、それぞれの成果は非常に高く評価される。
 また、進行中のワールドカップ予選だが、既に出場権を獲得したのは豪州を含み東アジアの4カ国。もしバーレーンがニュージーランドとのプレイオフに敗れると、なんと36年振りに西アジアからの出場国がいないワールドカップとなる。あくまでも短期的な視野だが東高西低となっているアジアサッカー界で、ワールドカップの出場権を久々に失ったサウジのトップクラブが、我々の前に立ち塞がったのも、ある種の必然を感じたりもする。

 決勝をホーム&アウェイではなく、一発勝負で行うのは賛否両論があるだろう。私は反対である。しかし、結果的にグランパスが敗れた事で、中立地での一発勝負となった。これだけのビッグゲームを生観戦できる機会を得た事に文句を言うのも大人げないような気もするな。あの岡山が登場するとの噂もあるが、どうなるのか。期待して決勝を待つものである。
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2009年10月29日

忘れたいが、忘れてはいけない過去2009

 また今年もこの日がやってきた。昨年は異国滞在中だったために、本件について書く事ができなかったが、毎年この日はあのクラブについて思い起こし、2度とあのような悲しい出来事は起こって欲しくない考える事はとても大切だと思っている。

 あれから11年が経った。当然ながら多くの選手が現役を去った、それでも当時の主力選手だった楢崎誠剛を筆頭に、、三浦淳宏、吉田孝行、波戸康広らは今なおJのトッププレイヤとして君臨している。以前も語ったが、あのクラブの「ある意味において明確な後継クラブ」と言わざるを得ない横浜FCはJ1での戦いも経験した。さらに、そこでは山口素弘がプレイし、そのクラブを最後に彼はスパイクを脱いだ。あのクラブでキャリアをスタートした遠藤保仁は、丹念に自らを磨き日本最高の選手と評価されるに至った。いや、他にもあのクラブ出身のサッカー人は、加茂周、ズデンコ・ベルデニック、反町康治、ゲルト・エンゲルス、田口禎則、岩井厚裕、前田浩二、大島秀夫、氏家英行ら、日本サッカーを色々な立場で支えているのは言うまでもない。

 11年の月日を経て、Jリーグは当時考えられない程、日本の隅々に根を張る事に成功した。いや、「Jリーグ」と言う表記は適切ではないな。先日の松本山雅が浦和レッズに勝利した事そのものが、日本サッカーが分厚くなっている事の証左なのだ。
 しかし、一方で厳しい現実もある。ヴェルディの迷走は、経営の失敗そのものかもしれないが、この名門クラブに消失の危機がある事はやはり残念だ。そのほかにも、FC岐阜をはじめ、Jでも相当経営が苦しいクラブの話は枚挙に暇ない。日本経済の冷え込み、ネットの発達によるマスコミの急激な構造変動(広告ビジネスの大きな転換を含み)など、サッカー界は世情に左右されるのは仕方がない事だ。しかし、ステークホルダであるサポータの厚みさえあれば、ほとんどの危機を乗り越える事ができるはずだ。そして、それがサッカーなのだ。経営が苦しくなり、キャッシュが回らなくなり優秀な選手を確保できずに下位リーグに陥落しても、クラブが存続すれば夢は続く。
 ところが、あのクラブの消滅は、分厚いサポータがいながら、「サッカーを理解しない」企業の論理を、「サッカー側」が誤って認めてしまった事態だった。だからこそ、あの痛恨の失敗を忘れてはいけない。
 繰り返すが、あのような悲劇を再発させぬように、あのクラブの事は絶対に忘れてはならないのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(2) | TrackBack(1) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする