2017年06月10日

ロシアに向けたの準備が整った試合

 日本1対1シリア。

 前半はひどかった。ボールがしっかりと回らず、およそ中盤が機能しない。 思うようにボールを保持できない故、無理な縦パスが多く、ボールを失う悪循環。さらに、ハリルホジッチ氏が「デュエル」を要求するからだろう、敵のボール保持時間が多いのに、無理に強く当たりに行くから、かわされピンチを増やす。
 それでも、今の日本はFWの個人能力が高い。前線で大迫はしっかりと持ちこたえるし、原口は幾度もシュートまで持ち込む。前半終了間際の久保のシュートも惜しかった。しかし、シリアのDFも強い。特に主将のアルサリフは、ロンドン五輪予選から、我々に立ち塞がっていた名手(大迫との丁々発止当時も今も見事な戦いだ)で、今日もすばらしいプレイを見せてくれた。と言うことで、前半日本がリードしてもおかしくはなかった。もちろん、リードされても不思議はなかったが、充実の川島と麻也を軸に、何とか守り切る。
 後半開始早々も同じ展開。そして、押し込まれた展開から許したCK、ショートコーナへの緩慢な対応、期待のCB昌子の目測ミスから、あえ無く先制を許した。

 元々、この試合はとても難しい試合だ。
 何よりアウェイ(と言っても中立地だが)イラク戦に勝ち点3を確保するのが最重要事項。そのための準備となるこのシリア戦は、体調のピークを合わせるわけにはいかない。しかし、ビジネス上の理由で、満員の大観衆を集めて仰々しい試合としなければならないのがつらいところ(いつもいつも語っているが、カスミを食うだけでは生きられないのだから、しかたがない)。そうなると、そうひどい試合を見せると勢いが出ない。
 さらに、以下の特殊条件が重なる。今回の代表強化セッションは、欧州のシーズンが終了し、選手達は休暇前にもうひと頑張りと言うタイミング。加えて、久々にハリルホジッチ氏が、欧州クラブ所属選手を集中強化(あるいは観察)できる貴重な機会。
 そうこう考えると、何とも焦点の絞りづらい試合なのだが、このままでは、内容は悪いは、結果も出ないと言うことになる。その状況でイラク戦に臨むのでは、何とも重苦しい雰囲気になってしまう。

 内容が悪いと言えば、タイ戦もそうだった。中盤でのボール回しが明らかに劣勢にもかかわらず、香川、岡崎、久保の見事なシュート力で点差を広げ、麻也を軸に最終ラインでしのぎ続け、あげくは川島のPKストップ。チームとしての機能は褒められたものではなかったが、気が付いてみれば、スコアだけ見ると4対0の完勝だった。悪いなりに拾った試合ではなく、すごく悪かったけれど完勝だったのだ。日本代表を40余年見続けているが、あれほど内容が悪い中で、結果だけがすばらしかった試合はなかった。また、その前のUAE戦は、アウェイゲームで、序盤に久保が先制したこともあり、守備的にペースを握ればよい試合だったが、中盤から崩した好機は少なかった。つまり、今年に入って能動的に中盤が機能した試合はなかったのだ。これは長谷部の負傷離脱の影響もあったのだが。
 言ってみれば、今年に入っての日本代表は、モドリッチのいないレアル・マドリード、イニエスタがいないバルセロナのようなサッカーを見せていたのだ。これでは、安定した試合は望めないし、何より相手DFが当方のFWより能力が高ければ、点はとれない。そして、残念ながら、大迫も原口も、クリスチャン・ロナウドやメッシの域には達していない。
 さらに振り返れば、日本にとって貴重な強化期間だった1次予選で、ハリルホジッチ氏は先を見据えた準備をあまり行わなかった。必ずしも本調子でなかった本田、香川を軸にした攻撃ラインを拘泥、組織守備が崩壊しても試合結果がよければ、それでよしとの態度だった。
 そして、最終予選でいきなりUAEに苦杯し、イラクに苦戦して、慌てて組織守備を整備。原口、大迫を抜擢し、攻守を建て直した。平行して、吉田麻也が格段の成長を遂げたのが大きかった。このあたり、ハリルホジッチ氏の追い込まれたときの手腕はさすが、と言うべきだろう。
 ただし、上記の通り、スコア的に完勝だった敵地UAE戦にしても、ホームタイ戦にしても、中盤でのボール回しは褒められたものではなかった。そして、このシリア戦の前半、これが3試合続くと言うことは偶然ではない。長谷部がいないと、中盤の展開力が激減するのだ。そして、イラクはアジアの中では、日本、ウズベキスタンと並び、中盤の展開力が高い国だ。この状態で、この厄介な相手と戦うのか。いや、それでも予選は勝ち抜ける確率は高かろうが、33歳の長谷部を頼りに、ロシアに向かおうと言うのか。さすがに楽観的な私も、イヤな気分にとらわれ始めた。

 しかし、答えは簡単に見つかった。
 本田圭佑のインサイドハーフ起用だった。
 ザッケローニ氏時代の本田は、年齢的にも全盛期、トップ下で圧倒的な存在ではあった。しかし、細かすぎる崩しに拘泥したり、強引な持ち出しを狙い過ぎる傾向があった。そして、その本田の自己過剰評価と共に、ブラジルで日本は沈んで行った記憶は新しい。
 けれども、この日の本田は違った。
 交代時間が前後したが、アンカーに入った井手口の、早くて速い展開のサポートを受け、本田が長短のパスを繰り出し、中盤をリードした。そこに乾が加わり、溜めを作りつつ突然得意のドリブルで突破も狙う。こうなると、倉田も持ち味が出て来て、中盤で落ち着いてバランスがとれる。
 この日の本田は、自己過剰評価などみじんも感じさせず、よい意味で自己顕示欲を発揮しつつ、落ち着いて中盤を構成した。試合を積んで、大迫との位置関係が整理されれば、いっそう変化あふれる中盤が作れるようになるだろう。こうして軸ができれば、周囲の選手も役割が決まってくるはずだ。
 我々は、本田圭佑と共に、1人のトッププレイヤの登場、成長、飛躍、停滞を愉しんできた。そして、そのドラマに、成熟と言う新たな章が、刻まれようとしている。代表サポータならではの人生の贅沢である。

 遠藤保仁の後継者は、すぐそばにいたのだ。

 川島−麻也−本田−大迫と、縦のラインがしっかりと固まった。これにより、ロシアのベスト8以上に向けてチームの中軸がようやく整理された。本大会まで約1年、ちょうど、タフなイラク戦、豪州戦、サウジ戦を控える。準備状況としては最適なタイミングなのではないか。
 本田が、このシリア戦と同じポジションで常時出場できる的確なクラブを選択することを期待したい。そうすれば、このシリア戦は、ロシアに向けた準備が整った試合と記憶されることだろう。
posted by 武藤文雄 at 13:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月03日

南米との相性の悪さと未来への希望

 ユース代表は、2次ラウンド1回戦ベネズエラ戦、0対0で迎えた延長後半、CKから失点し悔しい敗退。

 今大会は、冨安のミスで敗退した大会と記憶すべきだろう。
 煮詰まった延長後半立ち上がりの敵CK、冨安は目測を誤り、ベネズエラ主将エレーラにフリーでヘディングシュートを許してしまった。110分間これだけタフな試合を繰り広げた上での判断ミス。集中力の欠如ゆえのミスだったが、冨安を攻める気持ちは一切ない。また、冨安がいなければ、我々はここまで勝ち残ることはできなかった。冨安の魅力は、1対1の強さ。特に、加速に乗って仕掛けてくる敵FWへの対応のうまさは格段で、順調に成長してくれれば、日本サッカー史最高の守備者にまで成長する可能性を持たせてくれた。つまり、現在の師匠である井原正巳を超える存在になるのではないかと。
 しかし、この悔しい試合では、肝心要の場面で、目測ミスから痛恨の失点を許してしまった。これだけの逸材なのだ。「冨安のミス」と、皆で明確に記憶し、捲土重来を期してもらうべきだろう。

 悔しいけれど、戦闘能力に僅かだが明確な差があった。一方で、このチームは、日本のの伝統的強さに新たな要素が加わった魅力があった。

 まず、悔しいが明確な差について。ベネズエラとの差は、歴史的に幾度も見てきた、典型的な南米強豪国との間に見られるものだった。
 元々我々は、南米勢とは、相性が非常に悪い。90年代半ば、日本が世界大会に常時出場するようになった以降、ワールドカップ、五輪、ワールドユースで、日本は南米のチームにほとんど勝っていない。アトランタ五輪のブラジル戦と、ナイジェリアワールドユー ス準決勝のウルグアイくらいではないか。この要因には、「絡みキープ力?」とでも呼ぶべきか南米独特の各選手の1対1のうまさと、勝負どころを見極める集中力の二つがあると思っている。

 まず前者の「絡みキープ力」。
 0対0で迎えた後半、ベネズエラはフォアチェックで日本DF陣に厳しいプレスをかけてきた。日本はこれを抜け出すことができず、ベネズエラに攻勢を許した。それでも、中山と冨安を軸に丁寧にしのぎ、それなりに意図的な逆襲を狙ってはいたが、有効な攻撃頻度は少なかった。
 少々乱暴な総論で語る。この日もそうだったのだが、南米の選手達は単純な1対1の競り合い、それも粘り強く身体を絡めてのキープがうまい。そして、その「絡みキープ力」と対すると、日本は持ち前のパスワークの精度が落ち、ペースをつかめなくなる傾向がある。
 欧州やアフリカが相手だと、南米ほど絡みキープが執拗でないため、よりパワフルな選手がいても、日本はパスワークで圧倒できることも多いのだが。ちなみに南米勢は、欧州勢との対戦では、欧州の単純なパワーの前に、絡みキープがうまくいかず苦戦することもある。まあ、このあたりは、ジャンケンと言うか、相性と言うものなだろう。
 南米勢と互角以上に戦うためには、こう言った絡みキープ力を高める必要がある。そのためには、はやり言葉で言うデュエルとかインテンシティとかだけではなく、純粋なボール扱いの技術、身体の使い方、ボールを受ける前の準備、競り合う中での判断など、多面的な強化が必要に思う。そして、そのためには、1対1で勝つための執着、創意工夫を必死に考える習慣付けが必要。これは、指導の現場と言うよりは、サッカーを語る我々が、「絡みキープ力」で勝てる選手を称え続けることが重要に思う。

  次に後者の勝負どころを見極める能力。
 後半、日本は粘り強くしのぎ続け、延長まで持ち込む。そして、延長に入るや、さすがにベネズエラに疲労が目立ち、日本も押し返せる時間帯が増えてきて、シメシメと思っていた。ところが、延長後半、キックオフから攻め込まれ、FKを奪われ、その流れからの連続CKから失点してしまった。しかも、悔しいことに、敵の精神的支柱のマークを当方の守備の大黒柱がし損ねての失点である。それにしても、ここでのキックオフ直後のベネズエラ各選手の集中力には感心した。
 南米勢との試合で、勝負どころで見事な集中や変化を付けられて、やられることは多い。この大会のウルグアイ戦の失点時もそうだった。昨年のリオ五輪でも、コロンビアに許した先制点は、当方の僅かな守備陣のミスを活かされたものだった。
 この感覚を、いかに若年層の選手たちに身につけてもらうか。陳腐な考えだが、若い頃から厳しい試合を経験してもらうしかないのではないか。具体的には、Jユース所属時代から、J2なりJ3のクラブにレンタルに出し、毎週末サポータに後押しされながら(場合によっては罵倒されながら)、勝ち点を1つでも積み上げる(多くのクラブでは、下位に近づかないようにもがく)経験だ。プリンスリーグや、U23でのJ3の試合では、このような経験は難しい。一番似ているのは、高校選手権になるが、これは勝ち抜き戦と言う構造から、多くの選手が経験できない欠点がある(もっとも、そのような欠点があるから、格段の難しさとなり、貴重な経験となるのだが)。

 一方で、今回のチームは、過去のユース代表と比較しても、実に魅力的だった。日本の伝統である、細かなパスワークも、粘り強い集団守備も高いレベルだった。いずれの試合でも、ペースを握った時間帯は、素早いパスワークが奏功し、変化あふれる攻撃を見せてくれた。特に市丸と三好は判断力と技術に優れたMF、この2人が遠藤保仁と中村憲剛の配下として、Jを戦っていることは非常に意味があると思っている。中山も非常に優れたCBで、落ち着いたカバーリングと精度の高いフィードは魅力的だった。久保については、色々な意味で標準外のところもあり、別に検討してみたい。
 ともあれ、今回のチームを魅力的にしていたのは、冨安と堂安だろう。
 冨安については、冒頭に述べた通り。この手の若年層大会で、ここまで格段の素材力を見せてくれたタレントはほとんど記憶にない。師匠の井原正巳は、当時に日本の戦闘能力の低さもあり、世界のトップレベルと対峙する権利を得ることができたのは20代後半になってからだった。対して、冨安は18歳でこれだけ鮮やかな失敗経験を積むことができた。前途洋々たる未来である。もちろん、ここから、大人の身体に育つときに今の強さと速さが維持できるか、ちょっと猫背気味の体型など、気になることもあるが、これだけのタレントがこれだけの経験を詰めたことを素直に喜びたい。
 そして堂安、あのイタリア戦の2得点で十分。日本サッカー史上最高の攻撃創造主と言えば、やはり中村俊輔と言うことなるだろう。そして堂安は、俊輔があれだけ気の遠くなるような努力を積んでもどうしてもできなかった、屈強な守備者をボールタッチと緩急の変化で突破する能力を18歳で身につけている。もちろん、贅沢を言えばキリがない。特に押し込まれたベネズエラ戦の後半に、ちょっと引いて市丸あたりとボールをキープして、試合を落ち着けて欲しかった。今の堂安の年齢で、A代表マッチでそのようなプレイを見せてくれたタレントは少なくない。ディエゴ・マラドーナとか、ミッシェル・プラティニとか、ネイマールとか。
 冨安にせよ、堂安にせよ、最大の課題は、いかに早く自分のクラブで絶対的な存在になるかだろう。自分のクラブで、いかに研鑽を積み続けられるか、期待していきたい。

 我々が多数の好素材を保有していることを再確認できる大会だった。そして、公式国際試合と言うものは楽しいものだと、再確認できた。よい時代はまだまだ続く。
posted by 武藤文雄 at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月29日

渡邉監督、順調だからこそ柔軟な采配を

 イタリア戦の堂安の2発もすごかったが、昨日のアルビレックス戦ののクリスランの決勝弾も相当な難易度だった。テレビ桟敷とは言え、これだけ鮮やかな得点で幾度も歓喜することができたのだから、誠に結構な週末だった。

 ベガルタは、アルビレックスに2対1でかろうじて逆転勝利。敵地でエスパルスに3対0で快勝した以降、4試合ぶりの貴重な勝利となった。
 ちょっと過去3試合を振り返ってみる。
 まずホームのFC東京戦。前半CKのこぼれ球、ゾーンディフェンスがカバーできない地域に位置取りした大久保に、ペナルティエリア外側あたりから、地を這うような強烈な一撃を決められる(生観戦してたのですが、美しい弾道だった、くそぅ)。さらに後半、シュミットのミスを突かれ大久保にもう一発食らう。強引な攻めは森重に止められるため、三田を中心に丁寧に変化をつけた攻めを展開。しかし、どうしてもGK林を破ることはできなかった。大久保、森重、林と言った、個人能力の高い選手に敗れた試合だった。
 続く敵地の大宮戦。前半は完全に圧倒、敵DFの軽率なミスで得たPK崩れからクリスランが先制。その後も複数回好機をつかむ。ところが、後半CKからニアを固める(最近のはやり言葉ではストーン)クリスランが簡単に敵に前に入られフリックされて、ファーサイドフリーの山越に決められ同点を許す。これにより、連敗続きの大宮がホームの大声援の後押しで勢いを増す。特にFW瀬川の献身的なフォアチェックに苦戦。西村の軽率なボールロストからの速攻から、大前に鮮やかな個人技を発揮され決勝点を奪われた。ペースを奪われた時間帯に無理をしてしまい、悪い流れのまま無理をしてやられると言うもったいない試合だった。
 そして前節の敵地横浜戦。この試合も前半から敵を圧倒する。決定機は前節前半より多いくらいだったが決められない。選手達にも焦りがあったのか、フィニッシュに向けて、妙に凝ったパス回しを始める。イヤな予感がしていたら、案の定中盤のミスから速攻を食らい、前半アディショナルタイムに先制を許す最悪の展開。それでも後半もよいペースを維持、CKから大岩が同点弾を決め、その後も攻め込んだが、どうしても中澤を破れず、引き分けに終わった。フィニッシュには課題が残ったが、90分間攻勢をとれたのは明るい材料と思われた。

 そうこうして迎えたこの新潟戦。前節からの勢いをそのまま継続したように前半から攻勢をとる。しかし、フィニッシュに工夫が足りず決めることができない。特に高いクロスの多くを、新潟CB宋株熏にはね返されていたのだから、ラストパスにもう一工夫欲しいところだった。
 しかし、好事魔多し。後半立ち上がりに、中盤で簡単に奪われて、速攻から決定機を許すも、かろうじてしのぐ。そして、それ以降、押し込むことができなくなる。そして、無理に攻め込もうとしては中盤でボールを奪われ、さらに2度好機を許す。そして、60分過ぎ、前線で石原がうまいキープを見せるがフォローに入った梁?との連係ミスから簡単にボールを奪われ、またも速攻を許し、とうとう先制点を奪われてしまう。
 これは、渡邉監督の采配ミスだろう。後半立ち上がりから、思うような展開が叶わず、幾度も速攻から決定機を許していたのだから、何がしかの修正を行うべきだった。梁に代えて西村を入れて運動量を増やし敵DFを押し下げてもよかた。この日久々にベンチに入った野沢を起用して全体の展開をスローにする手段もあったはずだ。もちろん、中盤を構成する富田や三田に、ベンチから「無理して前ばかりいかず、ゆっくり展開せよ」と指示する手段もあった。しかし、後半立ち上がりの15分間、あれだけペースが悪くなっていたのに、渡邉氏は何も手を打たなかった。
 大宮戦もそうだが、敵がアグレッシブになることで、今までうまく行っていた展開が叶わなくなることはあるものだ。それに対して、無理にうまく行っていたときと同じやり方にこだわるのは、どうしても無理が生じてしまう。

 失点後、渡邉氏は果断な采配を振るう。クリスランと西村を同時投入、基本的に後半交代することが多い梁はさておき、今シーズン攻撃の要としてほぼフル出場していた石原を比較的早い時間帯に外したのは、相当な決断だった。
 この交代はうまく行った。いきなり西村が遠い距離からミドルシュートを放つなど、再三縦に出る勢いを見せ、新潟DFを押し下げることに成功したからだ。そして、ベガルタは再び攻勢をとると、少しずつ新潟の選手に疲労が目立ち始める。
 そして83分、西村との連係で抜け出そうとしたクリスランが倒されPK獲得し同点。さらにその直後、永戸が守備ラインとGKの間に見事なクロスを通す。そして、クリスランがものすごい得点を決めてくれた。左からのクロスをジャンプして左アウトで左前方にトラップ、それを左足のジャンプボレーで叩き込んだのだ。クリスランがトラップした瞬間、「ヘディングシュートを狙えよ」と文句を言ったのはひみつだ。
 その後は、一度ホニに抜け出されシュミットのファインプレイでしのいだ場面を除いては、丁寧に時計を進めタイムアップ、久々の勝利とあいなった。まずはやれやれである。

 勝ったのは嬉しい。しかも逆転劇の快感は格段だ。けれども、後半序盤の悪い時間帯に、しっかり修正できていれば、ああも易々と失点しなかったのではないか。そして、大宮戦に続き、悪い時間帯に修正し損ねたのは気になる。

 勝ち点は思うように伸びていないが、チーム作りは順調に進んでいるのは間違いない。
 今シーズンから始めた両翼を押し出す3DFの連係は、試合ごとによくなっている。開幕当初から、よく機能している左サイドの新人永戸は、この日もアシスト以外でも、工夫したクロスを再三上げている(同点直前、西村に合わせたグラウンダのクロスも見事だった)。加えて、ここ最近、右サイドの蜂須賀が、脚力と両足を扱える長所を活かせるようになってきた。今期の移籍組で最も期待された中野も復活してきたし、ここにはふてぶてしさが武器の茂木もいる。
 前線の選手層も相当なものだ。石原と梁の異なる知性、奥埜の献身と裏抜け、西村のアグレッシブさ、佐々木匠の技巧は間違いない、ルヴァンカップを見た限りではまだまだ野沢も元気だ。そしてクリスランのズドーン。これだけのタレントを、どう組み合わせるか。
 若い選手の台頭も多く、選手層も着実に厚くなっている。結構なことだ。ルヴァンカップを含め、西村、匠、椎橋と言ったタレントが存分に機能している。他クラブの関係者に笑われるだろうが、我がクラブが20歳そこそこのタレントを機能させられたのは、J2時代の菅井、関口、萬代ら以来なのだ。

 渡邉氏は、見事にチームを作ってきている。だからこそ、いっそう柔軟な采配を期待したいのだ。せっかく、ここまで質の高いサッカーの息吹が感じられるのだから、それを存分に活かしたいではないか。
 まあ、そうそう思うように行かないから、おもしろいのですがね。
posted by 武藤文雄 at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月28日

ワールドユース、まずは1次ラウンド突破

 ワールドユース(最近はU20ワールドカップと言うらしいが、この呼び名の方がずっと好きなので、あしからず)、グループリーグの無事突破が決定。
 いや、よかった、よかった。しかも、進出を決めたイタリア戦、序盤に2失点する最悪のスタートから巻き返し、堂安の鮮やかな個人能力による2得点で追いついたのだから堪えられない。
 加えて、試合終盤には、あのイタリアと相互忖度で試合をクローズさせたのだから、もう最高。単調な約15分間のすばらしさ、現地に行かなかったことを心底後悔した。
 さらに、これが土曜日の晩なのだから、酒が進むと言うものだ。

 しかもですよ。3試合とも先制点を奪われ七転八倒を余儀なくされたのだから、我らの若い戦士たちには格好の経験となった。
 もっとも、その失敗要因は、非常に悩ましいものだったが。南アフリカ戦は、いわゆる初戦の序盤の緊張。ウルグアイ戦は、小川の負傷退場に対する過剰な負の反応。そして、イタリア戦序盤の最終ライン調整のグズグズさ。ウルグアイ戦の2点目を除いた4失点はいずれも、こう言ったおかしくなった時間帯に奪われたもの。
 しかし、これらの失点後落ち着いた後は、(結果的にリードしている)敵は丁寧に守備を固めてきた。それにもかかわらず、日本は伝統のすばやいパスワークに加え、三好、堂安、久保の個人技で再三相手守備を崩すことができた。一方、前掛かりになったが故の敵の逆襲は、冨安の圧倒的な守備能力と中山の冷静な対応で、しっかり止めてしまう。
 これだけの能力の選手たちが、どうして上記のような不首尾を演じてしまうのか。

 自らへの過小評価のためではないか。そして、これこそ日本サッカー界の最大の欠点なのではないか。

 ウルグアイもイタリアも確かに強かった。しかし、落ち着いて戦っている場面を見れば当方の戦闘能力は何ら遜色がなかったのは、誰の目にも明らかだろう。先制を許してしまった後に、落ち着いて粘り強く自分たちのペースに引き戻せたのだから、選手達の精神力も大したものだ。
 そうこう考えれば結論は明らかではないか。あのような不首尾を演じてしまうのは、自分たちの能力に対する自信のなさなのだ。言い換えると、敵への過剰なリスペクト。
 そしてこれは、マスコミを中心にした周辺が「相手が強い、日本が弱い」と過剰に騒ぎ、「日本のあれがダメ、これがダメ」と騒ぎ立てることによるのではないか。
 誤解しないで欲しいが、私は別に日本代表がワールドカップに優勝できると言っているのではない。現実は厳しく、いまだ日本からは、欧州チャンピオンズリーグを制するようなチームで、コンスタントに活躍する選手を輩出はできていない。
 しかし、イタリアの守備者のすべてが日本の守備者より能力が高い訳でも、スペインの若年層育成組織のすべてが日本の組織より優れているわけではない、と言うことをいいたいのだ。実際、この試合では、イタリアの中盤選手達は堂安をまったく止められなかった。イタリアのFWは単身では冨安をまったく突破できなかった。
 だから、試合開始から選手達がもっと自らの能力に自信をもって戦っていれば、こんな苦しい戦いにならなかったと言いたいのだ。そして、そのためには、いたずらな自虐論はやめて欲しいのだ。もちろん、このユース代表のタレントたちが、欧州南米の同年代の名手たちに劣らない微分値の成長曲線を維持できるかどうかは、別な話なのだが。
 まずは、2次ラウンドで、腰を引かずに堂々と戦ってください。

 ともあれ、今日の堂安はすばらしかった。正直言って、南アフリカ戦でも、ウルグアイ戦でも、内山氏が、必ずしも本調子とは思えない堂安に最後まで拘泥した采配に疑問を感じていた。
 申し訳ありませんでした。私が間違っていました。
 あれだけ身体が伸び切った状態で、しっかりと空中でボールにミート。ペナルティエリアで3人を抜き去った後に、丁寧に内側の左足でボールにミート。クライフとディエゴだよな。クライフはインサイド、堂安はアウトサイドだったし、ディエゴの挙動開始点はハーフウェイライン、堂安はバイタルエリアだったけれどね。
 このまま、大会終了後、堂安はユベントスに行ってしまうのではないかとの思いはあるが、彼の将来はこれからなのは言うまでもない。1979年のディエゴとなるか、2005年のオランダのクインシーにとどまるか。
 まずは、2次ラウンドで、ディエゴへの道を歩んでください。

 改めて国際試合と言うものはおもしろいものだと感心するこの大会。
 そして、ここ最近、ワールドユース出場権を逸し続けたことは、日本サッカーの損失だとの意見をよく耳にした。正直言って、私はこれらの意見にはあまり賛同できなかった。もちろん、出場できれば、それに越したことはないし、選手達はすばらしい経験を積めたことだろう。けれども、出場権を得られなくとも、日本は常に五倫出場権をしっかりと獲得し、優秀な選手は次々にA代表に登場し続けている。ワールドユースに出られなくとも、致命的な損失はないのではないか、と私は考えていたのだ。
 しかし、今大会を見ると私は間違えていたように思う。やはり、ワールドユースの出場権を逸し続けてきたことは大きな損失だったのだ。なぜならば、我々サポータが、こんなおもしろいタイトルマッチを愉しむ機会を逸し続けてきたのだから。
posted by 武藤文雄 at 01:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月08日

取られも取られたり

 ベガルタはレッズに0対7で惨敗。
 1週間根を詰めて働いて迎える愉しい週末が、これで始まるのだから、サポータ稼業はやめられない。現地に行かれなかった己の情けなさを呪い、大差がつけられても奮戦してくれた選手たちを誇りに思い、現地で最後まで声援を送り続けた友人たちに感謝したい。

 まあ、言い古された話ではあるが、0対7で1試合負けるのは、0対1で7回負けるよりも格段にマシなのだ。今シーズンはルパンカップを含め7試合を行い、得点は3、失点はこのレッズ戦を含め17。それでも、リーグ戦で勝ち点9を確保しているのだから、最高の成果を挙げていると理解すべきだろうな。

 勝敗そのものも、大差がついてしまったことも、2点目が分岐点となった。得点力に乏しい我が軍は、西川や遠藤航が後方を固めるレッズから大量点をとるのは難しい。ために、2点差になった時点で、ベガルタの選手達の守備統率意識が崩れてしまった。一方で選手達の敢闘精神はすばらしかったのだけれども(終了間際の梁の逸機がその典型だった)。3点目はミスがらみだが、武藤へのアプローチに連動がなくズドーン。4点目のPK提供の平岡の宇賀神に対して無謀なタックル。5点目はレッズの速攻に対しラインが揃わない。
 選手1人1人が頑張っても、あれだけ守備組織がおかしくなると、レッズの攻撃は防げない。サッカーは頑張るだけでは勝てない。頭を丁寧にはたらかせて、相互が適正な連係をとらなければ。2点差、3点差にされても、落ち着いて頭をはたらかせて欲しかったのだけれども。もちろん、全選手が冷静な判断を失っていたわけではない、特に関は、あれだけ失点を重ねがらも、90分間を通し冷静な位置取りで的確なプレイを継続してくれた。
 まあしかし。レッズ相手に組織崩壊し、どんどんと点差を開かれても、いずれの選手も戦う気持ちは萎えてなかったのだから、それでよいのだろう。いや、今後のことを考えると、この展開では知性よりも精神力を見せてくれた方がよかったのかもしれない。

 元々この日は契約条項で石原が使えない。平山と西村は負傷離脱中、クリスランもフルタイムの出場は難しい。そのような状況で、渡邉監督は、奥埜と梁を2トップにした5-3-2を選択、まずは守備的に戦うことを選択したのだろう(野沢を前線に起用するやり方があったように思うが、体調がよくないのだろうか)。これはこれで、合理的な策ではあった。
 しかし、両翼の永戸が若さを露呈し絞り過ぎ、蜂須賀が駆け引きで興梠に完敗し、早々に失点。2点目は、中盤選手が引き過ぎて(この欠点は、ヴィッセル戦でも見られたことだ)、いわゆるバイタルを空けてしまい、そこから永戸が関根に出し抜かれた。
 特に永戸は同年代のトッププレイヤである関根に完敗したことそのものが、とてもよい経験になったはずだ。永戸は終盤茂木と交替させられた訳だが、経験と言うことを考えれば、最後までプレイさせたかった。交替に関しては、この展開だったのだから、菅井ではなく2年目の佐々木匠を使ってもよかったとも思う。これだけ状況が悪くなったのだから、若い永戸、茂木、匠らに託すのも一手段ではないか。
 まあ、渡邉監督はそう言う男なのだ。どのような状況になっても、若手だから優先するのではなく、いずれの選手にも公平に対応する。その生真面目さを、私はとても信頼している。

 冒頭にも述べたが、埼玉でのナイトゲームだけに、参戦する計画を立てていたのだが、本業都合でどうしてもかなわなかった。そんなことをやっているから、これだけ貴重な機会を逸してしまうのだ。考えてみれば、今シーズンはこのレッズ戦のほかにも、レイソル戦やルパンのFC東京戦など居住近隣地での観戦機会を逸しっぱなしだ。これではいけない。しっかりと、他のことを片付け、現場に通えるようにしなければと大いに反省した次第。
 幸い来週は所要があり帰仙するので、ユアテックアントラーズ戦には参戦できる。心を入れ替えて、ちゃんと応援しよう。
posted by 武藤文雄 at 14:39| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月28日

埼玉タイ戦前夜2017

早いもので、あの腹が立った埼玉UAE戦から半年以上が経過した訳だ。そして、迎えた敵地UAE戦、さすがにハリルホジッチ氏は、慎重で几帳面な策を選手達に指示、各選手がそれを冷静に遂行し、見事な2-0の勝利と相成った。細かい部分で、手放しで喜んでよいのか、と言う試合ではあったが、本大会出場にグッと近づいたのは間違いない。まずはめでたいことだ。

まずは、UAE戦を振り返ろう。
この日何より見事だったのは、吉田麻也の充実だった。前半から、的確な位置取りと丁寧なカバーリングを見せていた麻也の真骨頂は、後半2-0となったところで発揮された。技巧にすぐれた選手を多く抱えるUAEの逆襲を、丹念につぶし続けたのだ。
半年前埼玉でUAEに苦杯した試合では、逆襲対応に慌てる悪癖が出 てしまい、同点となるFKを提供するなどミスが目立った。けれども、豪州戦あたりから、非常に落ち着いたプレイを見せてくれるようになり、サウジ戦、そしてこの敵地UAE戦では、ほとんど完璧だった。
腕章も中々よく似合い、チームリーダとして風格も漂っていた。サザンプトンでも完全に定位置を確保したことを含め、完全に一段ランクを上げた感がある。この ベテランCBの向上は、ロシアでベスト8以上を目指そうと言う我々にとって、とてもとても嬉しいことだ。
余談ながら、後半幾度か日本が逆襲を許し、吉田が活躍する展開になったのは、皮肉な流れからだった。後半立ち上がり、日本は、ちょっとフワッとした感じで後半入ってしまい、UAEに2度ほど決定機を許した。その直後に、今野が突き放す2点目を決めたわけだが、タイミングも得点経過も絶妙だった。
麻也の正確なフィードを、大迫が完璧なヘディングで敵CBに競り勝って、フリーの久保にボールを落とず。久保は敵DFが寄せる前に、切り返して逆サイドへの正確なクロス。大迫が競り勝った際は、その後方でフォローしていた今野が、その間にファーサイドに進出、敵DFの裏から、久保のクロス を受けて落ち着いて決めてくれた。
同点機を複数回逸した直後に、2点差とされただけに、UAEには相当ショック だったはずだ。しかも、得点に至る流れが、個々の個人能力の差を活かしたものだっただけに、各選手が相当落ち込んだのがよくわかった。
その結果、日本が前半以上にパスを回せるようになったのだが、逆にチーム全体として分厚く守る方針が曖昧になり、前線で不用意なドリブルからボールを奪われて、時折逆襲を許す状況となった。
試合前の計画としては、2点差となれば、ホームのUAEが必死に前線に出てくるとので、後方を厚めにしっかり守って速攻をねらうやり方を考えていたのではないか。ところが、あまりに日本にとっては都合よく(UAEとしてはショッキングに)2点差となってしまったので、日本にとって制御が難しい流れとなってし まった。難しいものだ。

もちろん、この日の勝利を支えたのが、川島永嗣と今野泰幸の両ベテランだったことは言うまでもない。
正直言って、川島のスタメン起用には相当驚いた。ここ最近重要な試合では西川周作が起用され続けていたし、川島自身がFCメスでもほとんど出場機会が得られていなかったからだ。
前半半ばの好プロックにせよ、UAEのクロスをしっかり完封したことにせよ、川島はすばらしかった。プレイする機会が限られているにもかかわらず、よいトレーニングを積んでいるのだろう。ただ、ハリルホジッチ氏が、なぜ川島を起用したのかは、よくわからない。川島が公式戦でよいプレイを見せたならば理解できなくもないのだが、今回はそれにはあたらない。記者会見で、川島の経験やメンタルについて言及した模様だが、氏の真意はどこにあったのだろうか。
ポジティブに考えれば、試合出場機会に恵まれていないものの川島が相変わらず充実している、と言うことになる。ネガティブに考えれば、ハリルホジッチ氏は、西川ら他のGKのパフォーマンスに満足していないことになる。もちろん、Jの序盤戦で水際立ったプレイを見せていた東口の負傷も、氏の判断を左右したのかもしれないけれどね。
一方で今野のスタメン起用は驚きではなかった。今までハリルホジッチ氏が選考してきた中盤後方のタレントのうち、長谷部と井手口が負傷、永木はアントラーズ定位置を確保し切れていない、遠藤航はレッズで中盤では使われていない、と言う状況で、今野は呼び戻された。つまり、今野の招集は緊急事態に備えたものだっただけに、スタメン起用もある程度予想されたものだった。そして、今野はこの起用を存分に愉しみ、ついには得点まで決めてくれた。
ただし、今野をいわゆるボランチではなく、インサイドハーフに起用したハリルホジッチ氏の策は中々だった。アンカーに山口をおき、両サイドバックを自重させ、後方に人を残す。そうしておいて、今野を中盤の前方に配し、いわゆる刈り取りと攻撃支援を担当させたが、これが見事にはまった。原口と久保の2人はいわゆる相当後方まで引いて守る時間帯もあるので、今野のような守備力の高いタレントをここに起用するのは有効だった。このポジションに、今野の若いチームメートの井手口を使うとおもしろいのではないかと思ったりした。
今後今野が代表に再定着できるかどうかは、何ともいえない。代表チームが負傷者などが続き、メンバ構成が苦しくなった際に、30代半ばの経験豊富なベテランを呼び戻すのは有効な手段だ。ただし、そのような大ベテランを継続して招集するかどうかは、ワールドカップ本大会への準備を考えると、微妙なところだろう。特に83年1月生まれの今野にとって、ほぼ同世代の84年1月生まれの長谷部の存在が、代表再定着の大きな壁になる。
など考えていたら、今野が負傷で離脱したと言う。残念だ。同郷人が代表にいるのは、大きな喜びなのだよ。早期の回復と、上記した厳しいバトルへの復帰を祈るものである。
ともあれ、川島にせよ、今野にせよ、元気で充実したベテランの存在は頼もしいことこの上ない。そして、これらの貴重なベテラン達が、日本代表を一層分厚いものにしてくれているのだから、喜ばしいことだ。

日本のよさが目立った試合だったが、UAEのオマルを軸にした中盤の展開力には改めて感心させられた。上記した川島がファインプレイで防いだ前半の崩し、後半立ち上がりの素早くボールを左右に動かして許した決定機。日本の中盤守備がよかったにもかかわらず、隙を見て幾度か崩されてしまった。正直言って、豪州やサウジよりも、「戦いづらい」相手と言う印象がある。今回のUAE代表チームは若年層時代からの育成が奏功した世代と聞くが、このような強化が継続されれば、アジアサッカー界でのプレゼンスは高まっていくことだろう。これは日本にとっては歓迎するべき事態、知性と技巧を活かしたチームをアジア各国が作れば、アジアのレベルは格段に上がり、アジア域内の国際試合 で的確な強化を積むことができる。

さて、タイ戦。
勝ち点3の獲得が重要なのは言うまでもないが、贅沢を言うと得失点差を稼ぎたいところ。
大迫の離脱は痛いが、ここには岡崎がいるので問題はない。むしろ、ポイントは原口、久保の強力な両翼に、サイドバックをどのように絡ませるか。UAE戦は、長友と酒井宏樹に前進を自重させ、その役割を今野に託した。タイはUAEほど中盤でのキープ力はないだろうから、この個人能力の高い両翼に、サイドバックを含めた攻撃を交通整理して欲しい。このような交通整理が、攻撃力の強化に重要なはずだ。
ワールドカップまで、あと1年ちょっととなった。1つ1つ、丁寧に丁寧に積み上げ、ベスト8以上を目指すのだ。
posted by 武藤文雄 at 00:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月05日

ベガルタ開幕2連勝

 ベガルタは、敵地でジュビロを下し開幕2連勝。2試合続けて、粘り強く戦い、終盤に1点を奪い、丁寧に守り切る、いわゆるウノゼロ、理想的なスタートダッシュと呼んでよいだろう。両試合とも、今シーズンから導入した3ー4ー2ー1が奏功、新加入の石原と永戸が組織的に機能するのみならず、中心選手として活躍したのだから、笑いが止まらない。

 ともあれ、ジュビロ戦。
 前半はあまりよくなかった。川又(必ずしもポストプレイがうまいとは言えない選手なのだが)に再三クサビを収められ、中村俊輔に自由を許す。結果、両翼の太田とアダイウトンが再三前を向いて前進、危ない場面を多数作られた。さらに押し込まれていると、川辺とムサエフの両ボランチに拾われる悪循環が続いた。
 もう1つ状況を悪くしたのは、個々の選手の軽率なミス。押し込まれているのだから、さっさとクリアして切ればよいのに、無理につなごうとして状況を悪化させてしまった。中でも、菅井は凝り過ぎたプレイで、再三危ない場面を作ってしまった(まあ、菅井らしいと、ポジティブに捉えればよいのかもしれないけれどもね)。
 それでも、前半をゼロで終えることができたのは、GK関がほぼ完璧なポジション取りで、敵クロスやDFラインの裏へのボールに対応したこと。3DFがあわてず粘り強い対応で、敵速攻の第一波を止めたこと。そして、最前線の石原を含め全選手の帰陣が早かったこと。このあたりは、流れが悪いなりに的確に対応できたと評価すべきなのかもしれない。

 後半、状況は改善された。
 まず、ボールを奪われた直後の切替と敵選手への対応が格段に改善された。中でも、川又への厳しいチェックは見事だった。結果的に、川又が焦りからか独善的なプレイが増え、俊輔が機能しなくなった。さらに、永戸と菅井の両翼への早めの展開が増え、後方から石川と大岩が押し上げることで、攻め込みの時間が増える。特に、左サイドの永戸が左利きを活かしたサイドチェンジをねらい、菅井がそれを受けることで、効果的な場面を再三作った。見事な修正だった。
 そして迎えた74分。右サイドからのFKを平岡が折り返し、混戦になったところで石原が見事な身のこなしから、後方で待機する奥埜に落とす。奥埜は、インフロントキックで狙い済ましたシュート、その軌道は完璧で、GKカミンスキーはブラインドで動けず、ゴールカバーのDFの頭上を越え、ポストの内側を叩いてネットを揺らした。好機を高頻度でつかんでいた時間帯に、しっかりと決め切ることができた。
 その後、攻撃の切り札として投入された高速ドリブラ松本への対応に、対面する菅井が苦労する局面はあったものの、丁寧な組織守備と、前掛かりのジュビロの裏を突く速攻の継続で、しっかりと逃げ切り、めでたく開幕2連勝とあいなった。

 後半の内容はとてもよく、三田、永戸のロングフィードでの大きな展開、石原(まちがいなくこの日のMVP)の再三の妙技による前線の溜めに奥埜と梁がからむ攻撃も整備されてきた。昨シーズンからの大きな課題だった速攻への対応も改善されてきた。各選手の体調が上がるのはこれからだろうから、一層の改善が期待できるだろう。
 もちろん、課題はまだまだ多い。上記した通り、前半再三速攻を許したのは大きな課題。また、終盤松本への対応に後手を踏んだのも感心しなかった。またセンタバックの層の薄さも気になる。この日の終盤に平岡が足がつるハプニングがあり、増島が投入されたが、いまベンチ外のCBは、2年目の常田しかいない。まあ、悪いことを考えてもしかたがないので、楽観的に考えることにしよう。
 さて、最大の難敵のDAZNくん。先週はライブ中継は楽しめず、番組冒頭からの映像を時間遅れで見ることになっていた。今週は一応ライブで見られたのだから、大きな改善だった。もっとも、前半画面が真っ暗になる事態が2回、特に前半終了間際は真っ黒になったまま、何も返ってこなくなり前半が終わってしまった。まあ、少しずつ改善しているようだから、気長に付き合っていこう。
posted by 武藤文雄 at 22:29| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月25日

まずは開幕勝利

 2017年シーズン開幕。ベガルタは、コンサドーレをユアテックに迎え、1対0の勝利。

 ベガルタは、三田を中心に丁寧にボールを回し、前後半を通じ、攻勢をとっていた。しかし、コンサドーレは、最終ラインを分厚く固め、一方攻撃から守備への切り替えも速い。時に、都倉とジュニーニョの個人能力による逆襲がいやらしい。結果、80分過ぎまで崩し切れずイヤな展開。
 そうして迎えた84分。交替出場して前線で再三コンサドーレに脅威を与えていた西村(昨年と比べ、上半身が格段にたくましくなっていたのが嬉しい)がうまい持ち出しで前進、後方から進出したフリーの三田につなぐ。三田の強烈なミドルシュートを、GKがファンブル、詰めていた石原直樹が落ち着いて流し込んで、ようやく決勝点を奪えた。
 石原はいわゆる2シャドーの前のワントップでの起用。左右両翼に開きつつ前線での引き出し、落ち着いた最前線でのキープ、最前線での激しいプレス、さらに時には敵DFの前線進出にもからむ、と鮮やかな活躍ぶりだった。そして、あと10分を切ったところで、渡邉監督は石原に代えて一発のある平山の起用を準備していた。そして、平山がタッチラインにスタンバイしていたその時、石原が決勝弾を決めたのだ。負傷もありレッズで活躍の機会が得られず苦しんでいた石原直樹が復活した瞬間だった。
 その後、渡邉監督は、平山の交代を中止。CB増島を起用、右から蜂須賀、大岩、増島、平岡、石川と、頑健なDFを5枚並べ、しっかりと逃げ切った(考えてみると、増島と平山が、我が愛するクラブで再会するなんて素敵だよね。そう考えると、水野も残っていて欲しかったなと)。

 正直言います。ここ2シーズン、レッズでほとんど活躍の機会を得ていなかった石原が、どこまで活躍できるか疑問視していました。ごめんなさい、石原さん。そして、ありがとう。丹念にコンディションを上げていき、シーズンフル出場をねらってください。でも平山も頼むぞ。

 コンサドーレ関係者には失礼な言い方になるが、ベガルタにとってコンサドーレは、J1で戦闘能力上互角以下と考えられる数少ないライバル。そのコンサドーレとのホームゲームは、是が非でも勝ち点3を獲得したい試合だった。その大事な試合が、十分にコンディションが揃っていない開幕戦に当たったのは、少々イヤな印象があった。
 この難しい試合に、ベガルタは新しいフォーメーション、3-4-3で臨み、上記した通り、三田を軸にした丁寧なボール回しでペースをつかんだ。コンサドーレの前線でのプレスをうまくかわし、中盤まで丁寧に持ち出すことができたのは、この新フォーメーションが奏功したと見る。まずは、スタートは上々と考えるべきだろう。他チームのスカウティングが充実してくる数節後、どのように対応するのかを待ちたい。
 さらに、スタメン出場した35歳の梁勇基と32歳の菅井直樹が元気だったのがまた嬉しかった。さすがに、勝ち切る必要があったこの試合、2人は途中交替を余儀なくされたのだが。まあ、ここは、2人の体調と言うよりは、チーム全体のフィジカルコンディションの問題と捉えるべきだろう。実際、チームとしては、体調のピーキングは随分と先に合わせているはず、厳しい鍛錬を通じ、慌てず調子を上げて行ってほしいものだ。

 もちろん、新人永戸の大活躍が嬉しかったのは言うまでもない。「左足のクロスがよい」とは聞いていたが、しつこいディフェンス、位置取りの適切さ、敵の対面マセードを完全に押し込んだ前進意欲、ロングスロー、さらには右足で狙った無回転シュート。いずれも上々だった。敵のスカウティングが充実してくると、まずは壁にぶつかるだろうが、伸び伸びと活躍して欲しいものだ。

 ただし、このやり方で、勝ち切る試合を増やすためには、もっともっと攻撃の変化が必要。この日は、終始攻勢をとることができたこともあり、80分以降に明らかな疲労から、コンサドーレの守備が甘くなった。交替出場した西村がその隙を突き、三田の前線進出をうながしたことが、この日の勝因となった。
 しかし、より強力なチームと戦う際は、三田が前線に進出するのは、そう簡単ではなくなる。となると、いわゆるバイタルエリアで、技術なり判断で変化をつけることが必要となる。そのためには、茂木や佐々木匠のような、技術的に優れた若いタレントに期待したくなる。頼むぞ。

  ともあれ、開幕戦で、苦労を重ねて勝ち点3を奪えた。いや、本当によかった。なかなか、現地に行くことが叶わない不良サポータ。DAZNには、心底苦しめられそうだが負けません。
posted by 武藤文雄 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベガルタ2017年シーズン展望

 Jリーグが開幕する。

 先日、平山相太への怪しげな期待について、講釈を垂れた。では、肝心のベガルタ仙台の今シーズンはどうなるのか。以下、おめでたいサポータの楽観的な展望を。

 どうやら今期は、基本的な布陣を3-4-2-1とするらしい。選手の配置は必ずしも本質ではないけれど、ベガルタにとっては大きな変化点となる。。
 何のかの言って、2007年に望月達也氏が監督に就任以降、2008年から2013年までの手倉森政権、それを引き継いだ渡邊氏時代、基本的には、フラットな4-4-2の布陣で戦ってきた。2013年のACL長戦時に、手倉森氏が4-3-3にトライしたり、手倉森氏の後を引き継いだアーノルド氏が独自の守備方式を試みたことはあったけれど。(余談ながら、アーノルド氏の暗黒時代を、渡邉氏が引き継いだときの七転八倒は忘れ難い思い出ですな)。
 正直言って、布陣変更、それも本腰を入れた変更の報道を目にするまで、今シーズンの編成には不安があった。サイドバック、特に左サイドバックの層が非常に薄かったことだ。昨シーズン定位置を確保していた石川は、明らかにスピードに衰えが見られ、そろそろCBでプレイするべきに思えていた。その場合、左サイドバックは、負傷の多い蜂須賀と、新人の永戸のみになってしまう。
 なるほど、3DFで行くならば、ここに中野を持ってくるのは有効(この選手の獲得はヒットだ、レンタル獲得と言うところはちょっと気に入らないけれど)、あるいは茂木、藤村、佐々木匠などを使った変則布陣も可能となる。もっとも、この新布陣が効果を発揮したらの話ですがね。

 そして、今シーズンのベガルタの鍵は、若手の成長が握っている。具体的には、高卒3年目の茂木、西村、2年目の佐々木匠、小島、常田、椎橋、この6人が、どのくらいスタメンにからんでくるか(と言うか、匠と小島は、ワールドユースねらわなければいかんのだが)。
 もちろん、上記、平山に関するブログでも述べたとおり、ベガルタはトレードで受け入れた選手を、上手に鍛え直して戦力化して(言い換えると、やりくりして)成果を発揮してきた。これはこれで、誇るべきことだ。一方で、自前の若手選手が中々育ち切らないことが大きな悩みだった。
 しかし、奥埜(ベガルタユース → 仙台大、指定選手で継続育成 → ベガルタ加入、Vファーレンにレンタル → ベガルタで中核選手に)の育成成功は、我々の大きな自信となった。昨シーズン、高卒5年目の藤村が活躍したのも、明るい話題だ。だからこそ、彼らに続く、20代そこそこの6人の活躍は、とても重要なのだ。
 もちろん、上記した藤村に加え、シュミット(何かすごくワクワクするよね)、差波、中野、パブロ、クリスランと言った20代半ばのタレント達の活躍は当然として。

 渡邊監督も、4シーズン目を迎える。勝負の年となる。
 最初のシーズンは、スタメンのほとんどが30代と言うすごい試合を経験するなど、ACL戦士の老齢化に悩む日々だった。幾度も語ったが、連戦連敗のアーノルド氏のチームを引き継ぎ、J1残留を果たした手腕は、驚異的だった。2年目は新しい選手を大量に獲得し、己の意図を伝えることでそこそこの成果を挙げた。そして、昨シーズンは、チーム全体を相当攻撃的にシフトチェンジした、一方で敵速攻への対応は解決しきれなかったが。
 そして、4シーズン目。チームは上記の通り、新たなフォーメーションに挑戦し、また優秀な若手選手をたくさん抱えている、他クラブと比較して潤沢な戦闘能力とはとても呼べない。しかし、4年目を迎える渡邊氏の手腕、大いに期待している。決して裕福とは言えないクラブだからこそ、若いこれからの監督に長期政権を託すことが重要なのだ。
 
 Jリーグが開幕する。
 毎週末の絶望、悲嘆、嘆息、失望、そしてたまに訪れる絶対的な歓喜。少しずつの積み上げ、僅かな失態からの崩壊。
 1試合が終わり、それを反芻していると、すぐに次の試合が訪れる。
 幾度も幾度も語ってきたが、こんな素敵な玩具を手にできるなんて、若い頃は想像すらできなかった。うん。
 
 そして、ベガルタサポータにとっては、4年の歳月をかけて、じっくりと育ててきた監督の手腕を堪能するシーズンとなる。最高だ。
posted by 武藤文雄 at 01:50| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月19日

平山相太と戦える喜び

 ベガルタサポータとして、平山相太と戦うことができるシーズンの開幕が近づいてきた。何かとても素敵なシーズンになりそうな予感がしている。

 私は、平山相太と言う選手が大好きだ。そして、若い頃から、その将来性を大いに期待していた。
 一方で、10年以上前、平山が若い頃から、周囲の指導者が、「平山の特長を誤って捉え、成長を阻害しているのではないか」と、憂う文章を随分書いたものだ(もっと読みたい方は、検索ウィンドウに「平山」と入力ください。そして、8年ほど前に、FC東京で中心選手として定着し始めた頃にも、「そのプレイスタイルは相変わらず平山の潜在力と一致していない」と、文句をつけたこともある。そして、翌年の平山A代表でのハットトリックには、随分興奮したものだ。
 しかし、残念ながら平山は、代表はおろか、FC東京の主軸にすら定着はできなかった。けれども、その得点能力は決して錆びついていない。FC東京での最終戦となった昨年末の天皇杯準々決勝フロンターレ戦の終了間際の一撃など、実に見事だった(もっとも、その一撃が遅すぎて、自軍の勝利につながらないあたりも、いかにも平山らしいのだが)。
 そして、平山はFC東京から、我らがベガルタ仙台に移籍してきた。

 平山は31歳。ここまで、平山が、大成しきれなかった要因はいくつかあるだろう。
 最大の要因は、負傷の多さだろう。2011年、12年、14年と骨折による長期離脱は、あまりに不運だった。また、上記したように、この選手の特長を見誤った使われ方が続いたのも、残念だった。もちろん、オランダ時代からよく取沙汰されるように、いわゆる「戦う気持ち」に課題があったのかもしれない。しかし、これらは皆過去のことだ。
 そして、上記したフロンターレ戦の一撃を見れば、平山はまだまだ存分な輝きを見せる能力を保持しているはずだ。いや、かつてないほどの輝きを見せてくれる可能性もあるように思うのは私だけか。
 もちろん、そのために解決すべき課題は無数にある。厳しい鍛錬により、コンディション調整をしっかりと行うこと。チームメートが、平山の特長をよく理解し、平山に点を取らせるサッカーを行うこと。そして何より、平山が己の特長を理解し、チームメートに適切な要求を行い、それに平山が応え、信頼を獲得すること。それらは、決して簡単な道ではないだろう。
 ただ、若くして格段の才能を発揮しながら、活躍しきれなかった選手が、ベガルタ仙台に加入し光彩を放った事例が無数にあるのだ。たとえば岩本輝雄、たとえば財前宣之、たとえば角田誠。もちろん、朴柱成もその系譜に加えてよいかもしれない。

 などと考えると、冒頭述べたように、「素敵なシーズン」と語りたくなる気持ちを、理解いただけるのではないか。うん、楽しみだ。
posted by 武藤文雄 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする