2019年01月06日

そこに菅井直樹がいた

 菅井直樹が引退を発表した。
 ベガルタのレジェンド、そしてJリーグを代表する得点力あふれるサイドバックは、ベガルタゴールド以外を身にまとうことなく、プロ生活を終えた。今までの色鮮やかなプレイに、ただただ感謝の言葉を捧げるのみである。ありがとうございました。

 そう、色鮮やかだったのだ。菅井のプレイは。
 その神出鬼没の右サイドからの得点に、幾度歓喜させられたことだろうか。特に、逆サイドの左バックに朴柱成がいた頃は、朴の無骨な前進からの独特のクロスが上がる度に、いずこから現れたのかはわからない菅井の飛び出しに胸を躍らせたものだった。いや、もちろん朴柱成だけではなかった。梁勇基も、関口訓充も、ウイルソンも、蜂須賀孝治も、そして奥埜博亮も、右サイドからいつの間にかゴール前に飛び出してくる菅井へのラストパスを、常にねらっていた。
 攻撃がうまいサイドバックはたくさんいる。しかし、菅井はただ攻撃がうまいのではなく、得点をとるのがうまいサイドバックだったのだ。
 いわゆる嗅覚に優れた、鼻が利くと言われるストライカがいる。古くは、ゲルト・ミュラー、パオロ・ロッシ、そしてフィリッポ・インザーギ。日本では、佐藤寿人や大黒将志がその系譜に連なる点取り屋だ。ここで言う得点機の匂いとは何か。敵守備陣と味方攻撃陣相互の全体的相対位置関係、自分を注視する相手DFとの駆け引き、チームメートの持ち出し、これら全体を把握し続ける。その上で、マーカと自分の相対能力差を考慮し、己のどこでシュートをすればネットを揺らし得るかの判断。嗅覚に優れたストライカ達は、この判断力が格段なのだ。
 そして、菅井もこれらのストライカ同様、その判断力が格段の選手だった。ただし菅井はフォワードではなくディフェンダだった。ディフェンダなのだから、守備が甘いのは論外だ。そして、重要なことは、菅井は格段の得点力を誇りながら、守備能力も高かったこと。より正確に言えば、攻撃参加の隙を突かれてピンチを招くことが、とても少なかったことだ。これは、菅井が得点をとるための判断力のみならず、チーム全体のバランスを考慮した判断力にも優れていたことの証左となる。もちろん、そのための正確なボール扱い、長短のパスを繰り出せる右足の精度、とっさに足を出せる瞬発力、上下動をいとわないスタミナ、それぞれいずれもすばらしかった。けれども、菅井が最も優れていたのは、攻守それぞれにおける判断力だった。
 40余年サッカーに浸り続けた私だが、得点をとるのが巧みなディフェンダとしての菅井の能力は、ジャチント・ファケッティ、ダニエル・パサレラ、マティアス・ザマーに、匹敵するものがあったのではないかと思っている。まあ、ちょっとした戯言として。
 とにかく、菅井のプレイを見るのは楽しかった。普段はしっかりと自軍の右サイドを抑えている菅井。その菅井が、ピッチの上から俯瞰する私たちでさえ意表を突かれるような前進を行い、得点と言う最大の歓喜を提供してくれたからだ。それも幾度も幾度も。これを、色鮮やかと言わずして、何と言おうか。

 2003年シーズン、菅井は山形中央高校からベガルタに加入した。同期には中原貴之がいた。90年代後半には事実上経営破綻の状況にあった我がクラブが、このレベルの若者を獲得できるようになった感慨は忘れられない。ただし、その年ベガルタは清水監督の自転車操業の努力むなしく、J2に陥落してしまった。
 2005年シーズン終盤、菅井は、当時の大黒柱シルビーニョと中盤後方でコンビを組むことで定位置をつかんだ。さらに、翌2006年シーズン、当時の監督ジョエル・サンタナ氏は、菅井を右サイドバックにコンバートする。あまり愉快な思い出のないこの監督だったが、我々に何ともすてきなお土産を残してくれたわけだ。そして、2006年を含む4シーズン、J2屈指の右サイドバック菅井は、他クラブからのオファーに動じずベガルタに残留し、2010年にはとうとうJ1に復帰する。
 そして、以降菅井はJ1屈指の右サイドバックとなり、我々に色鮮やかなプレイを見せ続けてくれた。菅井のリーグ戦出場記録を見直すと、J2は186試合、J1は203試合、あの永遠に続くのかと思ったJ2時代は、はるかかなた昔のこととなったのだ。ここ数シーズン、菅井は負傷の多さもあり、試合出場の機会が少しずつ減ってきていた。しかし、菅井は他クラブへ移る選択肢はとらず、ベガルタで現役生活を全うしてくれた。
 たった一つ残念だったことは、日本代表の声がかからなかったこと。同じポジションに、より若い内田篤人と言う格段のタレントがいたのが不運だったか。その結果、プロになった以降、とうとう菅井は公式には黄金色のユニフォーム以外は、まとわなかった事になる。
 それにしても、引退の言はすてき過ぎはしませんか。「心残りはエンブレムの上に星を付けることができなかったこと、今後、実現できても選手ではないことです。」とか「選手としてオーバーヒートするまで走り切りました。」なんて。

 引退については、覚悟はしていた。
 そうでなければ、こんな文章は書かない。ただ、いくら何でも発表されるならば、年内だろうと思い込んでおり、ここまで発表がないから「大丈夫だろう」と思い込んでいた。こちらはこちらで、油断していたのだ。
 昨日、散々と奥埜の去就について愚痴を垂れたが、菅井への惜別の情は、やはり奥埜へのそれとは、かなり違う。
 もちろん、寂しさも大きい。もっと、菅井を楽しみたかった。けれども、それは贅沢と言うものなのだろう。これだけの期間、あの色鮮やかな菅井直樹のプレイを心底楽しむことができたのだから。そして、それを歓喜と共に、味わい尽くせたのだから。改めて、菅井直樹の色鮮やかなプレイに感謝したい。繰り返します、ありがとうございました。

 そこに菅井直樹がいた。改めて、ベガルタサポータでよかった。
posted by 武藤文雄 at 22:21| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月05日

奥埜博亮との別れ

 昨年末より噂となっていた奥埜博亮のセレッソへの移籍が発表された。
 奥埜は、24年に渡るベガルタ仙台の歴史においては特別な選手だ。と言うのは、ベガルタユースから、J1のトップクラスのプレイヤと紛れもなく呼べるまでに成長させることができた、初めてかつ(現状では)唯一、と言ってよいタレントだからだ(他のクラブのサポータからは、「お前ら、それしか成功例がないのかよ?」と笑われるかもしれませんが、事実は事実なのです)。しかも、ユース卒団時にはトップ加入は時期尚早として、提携していた仙台大でプレイさせ、同大を卒業後に入団させた選手。さらにその後、Vファーレンにレンタル移籍させて経験を積ませて、とうとうトップの選手として確立した選手だ。この奥埜の育成方法は、素材的にレベルが高いが高卒段階ではトップには達していないタレントへの対応としては、実に適格なものだったと思う。そのような経歴のタレントなので、ベガルタサポータからすると格段に思い入れがある。
 ボールを保持しながらのターンが速く、瞬間的な加速にも優れているので、中盤の小さなスペースで相手を抜き去ることができる。(少々常識的だが)丁寧なパス出しでゲームを作り、粘り強い守備で敵攻撃の第一波を防ぐのもうまいし、スリムな体躯ながら腰を低くした当たりからのボール奪取も中々のものだ。シュートの精度に若干の改善の余地はあるが、ベガルタの中盤の中核として、奥埜は、とても頼りになる存在だった。
 正直言って、奥埜が今シーズンオフに他クラブに移ることはないと思い込んでいた(油断していた)。と言うのは、奥埜は89年8月生まれで、2019年シーズンには30歳になる。もうベテランと言ってよい選手なので、経済的に豊かな他クラブの獲得興味対象にはならないと考えていたのだ。奥埜が定位置を確保した15年シーズン以降は、オフになる度に「20台半ばの働き盛りの奥埜が他のクラブから買われたらどうしよう」とオロオロしていたのは確かだが、奥埜は毎シーズンオフにベガルタと契約を継続してくれた。これだけのタレントなので、過去非公式でも他クラブからの打診がなかったとは思えない。しかし、奥埜はベガルタでのプレイを選択し続けてくれた。これは、ベガルタが奥埜にそれなりの誠意(この世界で誠意とは現金以外ない)を見せていたからだろう。そして、30歳を迎えようとする奥埜には、ベガルタを凌駕する誠意を見せるクラブが出てくるとは思っていなかったのだ。
 そうこう考えれば、今回のセレッソは奥埜に対して最高級の誠意を提示してくれたのは間違いない。とすれば、違約金を含めてベガルタにもそれなりの実入りはあったはずだし、ユースからの自前育成選手が、この年齢にもかかわらず、経済的に豊かなクラブに購入いただけたのだから、まことめでたいと言う事になる。まずは、素直に喜びを…などと言えるわけないではないか。残念だ、とにかく残念だ。

 毎シーズンオフ、選手の他クラブへの流出を懸念して、何とも言えない日々を送るのが常なのだが、上記の通り、奥埜については完全に油断していた。このオフについては大岩一貴、シュミット・ダニエル、椎橋彗也の3人については、本当に心配していた。特に椎橋については、素質がある選手であれば後先なく買い集めるような金満クラブに目をつけられたらどうしようと不安だったのだ。奥埜と異なり、ベガルタがまだ若い椎橋に、他を圧する誠意を見せていたとは思えないし。
 奥埜の他も他クラブに場を求めた選手は少なくない。特にこのオフは中盤選手の移籍が目立つ。ベガルタ加入後その潜在能力を発揮するようになった野津田岳人が保有権を持つサンフレッチェに、個性的なドリブラの中野嘉大がコンサドーレに、サイドアタックのスペシャリスト古林将太がベルマーレに、高精度パスが期待された庄司悦大がレンタル先のサンガに、そしてベガルタユース出身で強いキックが持ち味の茂木駿佑がやはりレンタル先のホーリーホックに、それぞれ移籍した。正直言って中盤の核だった奥埜と野津田が2人チームを離れたのは戦闘能力的に大きな痛手かもしれない。ただ、上記の通り、将来性を含め中盤で最も重要な椎橋は確保し、新たに中盤には松下佳貴、石原崇兆、飯尾竜太朗と働き盛りで実力は折り紙付きの中盤選手を3枚補強できたわけだし、痛手は思ったよりは少ないかもしれない。まずは、2019年シーズンの編成の最終確定を待ちたい。

 ともあれ、タレントの流出については、悪いのは移籍先のクラブではなく、ベガルタなのだ。奥埜にセレッソ以上の誠意を提供できない経済力しかないベガルタがいけないのだ。天を恨んで人を恨まず、残念なことは極まりないが、快く奥埜を送り出したい。セレッソの新監督のロティーナ氏のヴェルディ時代の采配を見た限りでは、奥埜は氏好みのタレントだと思うし。 
 奥埜よ、今までのすばらしいプレイをありがとう。君が定位置を確保した2015年シーズン以降、ベガルタは、早々にJ1残留を決め中位を確保、17年シーズンはルヴァンのベスト4、そして昨18年シーズンは天皇杯決勝進出、これらの好成績は君抜きでは、なし得なかった。新しいクラブで頑張ってくれ、ただしベガルタ戦以外で。
posted by 武藤文雄 at 19:03| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月31日

2018年10大ニュース

1位.ベルギー戦
 幾度も書いたけれど、「世界屈指の強豪とワールドカップで丁々発止することは、中学生時代からの夢だった。そして、夢は叶った。それは、あまりに甘美で絶望的な体験だったけれど。改めて、その場にいられたこと、その場にいられることを許してくれた方々に感謝したい。
 毎回毎回負ける度に確信するが、近づけば近づくほど、その差は明確となり具現化される。あのアディショナルタイムの惨劇、コンマ数秒の切り替える能力差を、クルトワとデ・ブライネに突き付けられた。我々が、将来に渡り、それに追いつき、ひっくり返すことができるかどうかはわからない。けれども、その差をここまで具体的にすることができたのだ。

2位.鹿島アントラーズアジア王者
日本のトップクラブ鹿島アントラーズが悲願のアジア制覇。JSL2部の住友金属時代からの、長きに渡る強化が、1つのピークを迎えたと言うことだろうか。しかも、リーグ3位、天皇杯、ルヴァンカップベスト4と、国内の大会でも上々の成績を収めたことも特筆すべきだろう。
少なくとも、クラブワールドカップでも、レアル・マドリードに本気で勝ちに行っていたのも、頼もしかった。最後、リーベル相手にボロボロになった試合も、年間60試合の末の結論。お見事な戦いでした。でも、UAEに三竿健斗と鈴木優磨は連れて行きたかったですね。

3位.レッズ、日程がクルクル変わる天皇杯を制覇
 自分にとって初めての天皇杯決勝。それはそれで究極の体験でした。それにしても、決勝のレッズの勝負強さ、阿部勇樹の老獪な守備には恐れ入りました。
 一方で、破綻する日程を放置する日本協会の無策ぶりが出た大会でもあった。アントラーズの大奮闘に伴う、信じ難い日程修正案のひどさ。Jの年マタギ開催など寝ぼけたこと言うのはやめて、真剣にアジア協会とも調整し、全うな日程案を作らなければいけない。

4位.川崎フロンターレ連覇
 ベスト11でも記述したが、「中村憲剛がいなくなったらどうなってしまうのか」と思われたクラブは、憲剛がいるうちに大クラブになってしまった。
 Jリーグは、当然ながら経済的に豊かなクラブに優秀な選手が集まるわけだが、トップ選手の多くが欧州に移籍してしまうため、どうしても戦闘能力差がつきづらい。その結果、今シーズンは未曾有の混戦となった。けれども、フロンターレは、他クラブを圧倒する戦闘能力を発揮し、終盤戦で飛び出し圧倒的強さで優勝した。
 中村憲剛が次に目指すのはACL。

5位.湘南ベルマーレ、ルヴァンカップ制覇
 ベルマーレが約20年ぶりにタイトルを獲得した。90年代メインスポンサだったフジタ工業が撤退した以降、経済的面で苦労に苦労を重ねたきたクラブが、゙貴裁氏と言う格段の監督を擁し、ついにタイトルを奪還。これは、明確な親会社を持たず、経済的に潤沢でないクラブすべてを勇気づける快挙だ。おめでとうございます。
 前身のフジタ工業時代に、70年代から80年代にかけて古前田充、今井敬三、カルバリオ、マリーニョらを擁し、複数回JSLと天皇杯を制した。そして、90年代、洪 明甫、ベッチーニョ、名良橋晃、岩本テル、中田英寿らを擁し天皇杯、アジアカップウィナーズカップを獲得したこの名門の復活劇はすばらしい。
 本音、天皇杯制覇をし損ねたベガルタサポータからすると、嫉妬の対象でしかないけれどね。

6位.冨安健洋と堂安律、欧州で着実にランクを上げる
 日本がワールドカップに初出場した1998年に生まれた、2人の若者は欧州で着実に地位を築いており、当然のようにアジアカップ代表にも選考された。この2人は、井原正巳や中田英寿が代表で地位を確立したのと、ほぼ同じタイミングで代表の経歴を積んでいることになる。この2人ならば、欧州で着実に経歴を積みメガクラブの中心選手まで駆け上がってくれて、我々をワールドカップベスト8以上に導いてくれるのではないかと期待も高まるのだが。たとえば、中村俊輔と長友佑都は総合能力と言う意味でそのレベルまで行ききれなかった。酒井宏樹はその域に達していると思うが、そのレベルに達した時は歳をとり過ぎていた。
 一方で、逸材はこの年齢で欧州に出る方がよいと言う、身も蓋もない現実に突き当たる。Jリーグの発展に対する明らかな背反。悩みは深いが、結構な悩みと前向きと捉えることにしようか。

7位.田島会長の絶望的政治センスのなさ
 ハリルホジッチ氏を解任しようと決断したのは、(私は賛同しないが)1つの理屈があったのだろう。しかし、解任するならば、しっかりと外部に説明する義務がある。もし、それが発表できないと言うならば、できる理屈を作ってからにしてほしい。その理屈を、自分で考えられないのは仕方がない。しかし、動かせる大枚があるのだから、広告代理店なり誰かに考えさせることはできるはずだ。そもそも、そのような理屈を準備しなければまずいと言う発想が出ないこと、あるいは周囲がそう助言しないことが、あまりに情けない。
 飽きもせずJの年マタギ開催を主張し、その結果現状の破綻する日程問題を完全に放置するのも、むべなるかな。

8位.アジア大会、五輪代表、決勝で韓国の前に散る
 他国はU23なのに当方は東京五輪向けチーム。Jリーグ開催中の開催ゆえ、1クラブから1人の選考限定。選手も直前のJを戦って疲労困憊。当然オーバエージもなし。明らかに他国と比較して不利なチーム構成。しかも、チーム数が多いため、中1日を含む狂的な日程。
 大会序盤は、「どうなることか」と言う低調なチームだったが、試合を続けるうちに、チーム力が向上。ベトナム、マレーシアのような、俊敏で技巧的なタレントを擁する東南アジア勢には苦戦したものの、逆にサウジ、UAEと言った中東勢は、戦術眼の高さで圧倒。
 決勝で、兵役解除を目指す孫興慜率いる韓国と対戦。 前半こそ個々の能力差で圧倒されたが、後半に入るやスローテンポにすることに成功、先方の疲労もあり互角の攻防として延長に持ち込む。しかし、延長で李承佑の絶妙な発想にやられた。悔しかったですな。大会後一部選手が「韓国のフィジカルにやられた」と言っていたのが気になる、やられたのは「李承佑の戦術眼」だったのだが。まあ、いいだろう、これからも李承佑は厄介な存在になるのだろう。
 余談、孫興慜は現状、日本のどの選手よりもランクの高いクラブの中心選手だ。車範恨と奥寺、朴智星と中村俊輔、正直言って韓国代表の大エースが、我々の英雄より少々だがランクの高いクラブの中心選手であることが残念。

9位.女子の強化が新しいフェースに入った
 女子ワールドユース(U20ワールドカップ)で、とうとう初優勝を勝ち取った日本女子代表。
 気づいてみれば、なでしこリーグの試合は、10年前よりも格段にレベルが上がっている。ほんの10年前、女子代表の選手には、左足でしっかりボールを蹴ることのできない選手もいた。インステップキックで30mクラスのパスを通せない選手もいた。しかし、ベレーザを軸にした今のなでしこリーグのレベルは格段に高いものになっている。関係者の努力のたまものだろう。
 一方で、世界のレベルも上がった。特に欧州各国はフィジカルに優れたタレントが多数登場している。だからこそ、日本は技巧を意識したサッカーにこだわるべきだろう。少なくともU20はそれに成功した。
 シニアなでしこの女神高倉麻子監督の下、短期的な強化の成功に期待したい。

 のだけれども、澤穂希が格段だったのは忘れてはいけない。そう簡単に世界一の奪還はできないとの自覚は忘れずに。

 
10位.大杉漣U氏逝去と高木美帆の金メダル
 2018年2月21日、大杉氏が亡くなった日、高木美帆がパシュートで金メダルを獲得した。その報せを聞いた時、大きな悲しみと、大きな喜びが、同時に訪れ、私は少なからず混乱し、しばらく頭の整理がつかなった。大杉氏は、徳島ヴォルティスの真摯なサポータであることはよく知られている。一方、高木は中学生までサッカーにも本格的に取り組んでおり、若年層代表にも選考される人材だった。
 大杉氏は、ご自身がプレイしていた縁からだろうが、生まれ育った徳島のクラブを心底愛し、貴重なプライベートな時間をヴォルティスに捧げていた。これは、Jリーグと言う玩具が、いかに日本の多くの土地に浸透しているかの現れなのだ。大杉氏のような公人ではないが、氏とヴォルティスの関係は、私とベガルタの関係と同じだ。若い頃、創造も及ばなかったJリーグの発展は、我々に最高の玩具を提供してくれている。
 高木をはじめとして、幼少の頃サッカーをやったトップアスリートは、鈴木桂治、桐生祥秀など枚挙にいとまない。サッカーと言う競技は、行うためのコストが非常に低く、自然に走り回ることを要求するし、ルールがわかりやすく遊びから入れることもあり、幼児や小学生には最適だ。高木のように素質に恵まれたわけではないが、彼女と同学齢の我が坊主も高校入学時にサッカーからラグビーに転向、それなりのレベルでプレイを続け、親バカを楽しませてくれた。日本中のサッカーおじさんやおばさんがあちらこちらで、子供たちがサッカーを窓口にスポーツを楽しむ環境が準備することが、日本のスポーツの発展に寄与するはずだ。
 もし、我々がワールドカップに優勝しようと言うならば、日本中にいっそうサッカーを浸透させるしかない。そのためには、目先の日本代表人気などに気をとらわれず、少しでも多くの方々にJリーグを楽しんでもらう必要がある。いたずらにサッカー少年少女を囲い込もうなどとせず、多数の子供をサッカーに浸らせ、適正を見て他競技で活躍する方がよければそれを勧める。そのような活動、つまり大杉漣氏のようなサポータと、高木美帆のようなアスリートを増やすこと、それらこそがサッカーの隆盛には重要なことではないのか。
posted by 武藤文雄 at 23:56| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年ベスト11

恒例のベスト11です。ワールドカップで上々の成績を収めた年の選定は楽しい作業ですね。柴崎岳と乾貴士については、本当に迷いました、ワールドカップであれだけ美しいロングパスを2本通してくれて、あれだけ美しいシュートを2本決めてくれたのですから。ただ、あれこれ考えたときに、この2人は今年の11人ではないのかと判断したものです。それについては、近々整理中です。

GK.権田修一
このポジションはいろいろ迷ったのだが、年間を通じて最も安定していたのは権田ではないかと考えた。若いころから日本を代表するGKになるのではないかと期待されていたものの、いくつかの不運に見舞われ続けもう29歳。アジアカップに向けて、定位置を確保できるか。私はベガルタサポータだからシュミットの定位置確保を期待しているが、レベルの高い争いは大歓迎だ。
DF.酒井宏樹
紛れもなく世界屈指の右サイドバックであることを、ワールドカップで見せてくれた。落ち着いた粘り強い守備能力と、効果的で変化あふれる攻め上がり、それに加えてGK川島のパントキックを高さで制圧したのも忘れ難い。この選手は、もう2歳若く欧州に出ていれば、いわゆるメガクラブの定位置まで行かれたのではなかろうか。
DF.冨安健洋
井原正巳、中澤佑二を凌駕する可能性を持つCB。守備能力の高さ、単純に跳ね返す強さと高さ、その能力を活かし自分の担当地域を抑え込む判断の妙、ロングパスの精度、持ち上がって展開する能力。富安(と同世代の堂安律)を見ていると、逸材はこの年齢で欧州に出る方がよいと言う、身も蓋もない現実に突き当たるのだが。まずはアジアカップ制覇を。
DF.昌子源
ワールドカップでの1試合ずつの成長、特にセネガル戦ニャンに苦戦しながもの、どんどんと対応能力が向上していくのには感動した。それがACL制覇時の冷静なプレイにつながったのではないか。そして、とうとう欧州に挑戦、富安とは異なるタイプのCBとして、読みとカバーリングの妙が充実していくことに期待したい。
DF.長友佑都
セネガル戦の1点目につながるトラップは、日本サッカー史に残る絶妙なボールコントロールだったのではないか。ロシアでは、ブラジルで見せられなかった知性の冴えを発揮してくれた。スピードが少しずつ衰えるかもしれないが、ポジションを上げるなどして、まだまだ活躍して欲しい。
MF.長谷部誠
サッカーで最も大事なのは、技巧でもフィジカルでもなく、知性だと言うことを、改めて示してくれたのがワールドカップでの長谷部だった。
MF.三竿健斗
ACL制覇の原動力であり、紛れもなく国内屈指のMF。クラブワールドカップにも三竿がいれば、状況は相当好転したのではなかろうか。短い時間帯ながら、マリ戦、ウクライナ戦で素晴らしいプレイを見せたものの、経験不足?から、ワールドカップの23人に入れなかったこのタレント。不運にも、今度はアジアカップを負傷で棒に振ってしまった。このポジションは同世代に、遠藤航、守田英正、大島僚太らがいるが、三竿の実績は彼らに勝るとも劣らない。
MF.中村憲剛
今なお国内最高峰のMFとしてJに君臨する。「憲剛が引退したら、フロンターレはどうなってしまうのか」との心配は、今は昔、憲剛は愛するクラブを、自らを中心に国内トップレベルの選手がズラリ揃う最強のクラブに成長させた。もはや憲剛の貢献はサッカーにとどまらない。京浜工業地帯、東京のベッドタウンとして発展してきた川崎と言う都市にアイデンティティを提供、サッカークラブがホームタウンにいかに貢献できるかまでを証明してくれた。
MF.原口元気
現在日本最高の選手と思うのだけど、どうして自分のクラブでも代表でも冷遇されているのだろうか。驚異的な上下動後にもう一仕事できる格段の脚力と技術。しかも、ワールドカップでは、本来の左サイドではなく右に起用されてのあの貢献だった。それにしても、森保監督の失礼とも言える控え扱いの中(いや、中島翔哉も素晴らしい選手ですけどね)、アジアカップでどこまでのプレイを見せてくれるか、おそらく一番頼りになる選手だと思うのだけれども。
MF.家長昭博
若いころから将来を嘱望されていた逸材が、とうとう最適な仕事場を見つけた感がある。それが、中村憲剛、大島僚太、小林悠などの豪華絢爛たる選手たちの間で、芸術を発揮しながらバランスをとる仕事だったとは。トリニータでの中盤後方の将軍、アルディージャでの前線で王様は、仮の姿だったのか。
FW.大迫勇也
ロシアワールドカップでの日本の躍進は、コロンビア戦の大迫のターンから始まった。あの1回のプレイで、日本は先制し、コロンビアは1人減り、他国はこのフォワードのマークに神経を使う事になった。最前線で格段のキープ、ターンしては鋭い技巧で前進。このワールドカップの活躍で、間違いなく日本サッカー史上最高のフォワードとなった。ただ、サポータは贅沢なもの、日本サッカー史上最高のストライカになって欲しいのです。50年前の背番号15のように。もう少し、ゴール前で肩の力を抜きさえすれば、大迫にはその地位が、我々にはアジア王者再臨が、それぞれ勝手についてくる。

ちなみに、吉田麻也は最後にクルトワの邪魔をしなかった年なので、選ぶのは麻也に失礼と考えたものです。
posted by 武藤文雄 at 19:23| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月23日

生まれて初めての天皇杯決勝体験

 サッカーに浸って40余年。生まれて初めて、自らがかかわる天皇杯決勝を体験させていただきました。ここまで、勝ち残ってくれた渡邉監督を軸とするスタッフたち、大岩一貴とその仲間たち、共に戦ったサポータ仲間たち、すべてのベガルタ関係者に感謝します。そして、すばらしい試合を演じてくれた、レッズ関係者にも感謝の言葉を捧げます。この雑文で、生涯でもそうない悔しさを存分に堪能することができた、夢のような2時間を振り返ります。

 敗れた。
 呆然としていた。
 妻に引きずられるように、スタジアムを出て、浦和美園駅に向かう。
 頭が整理できない状況での夜景。ちょっと、5ヶ月前のロストフ・ナ・ドヌを思い出した。
 60年近い人生で、たった5ヶ月の間に、ここまで濃密な経験を2回も味わうことができたのだ。
 ありがたいことだ。

 立ち上がり、ベガルタは左右からゆさぶりやや攻勢をとる。しかし、レッズ長沢に中盤から飛び出すフリーランで、左サイドをえぐられ(以降、左右はベガルタから見て)、興梠に決定機を許した以降、レッズペースに。そして、幾度か左サイドに人数をかける攻撃で崩され、CKを許す。そのCKをショートコーナでつながれてクロスを許し、野津田のヘディングでのクリアを、宇賀神に鮮やかなダイレクトのミドルシュートを決められ失点した。
 ベガルタは敵CKを、ゾーンディフェンスで守るが、それを研究している敵は、中央を固めたゾーンの外から狙ってくる。この場面では、宇賀神に「恐れ入りました」と言うしかない。ただ、贅沢を言えば、クリアした野津田は、まったくのフリーでヘディングできたのだから、ダイレクトシュートのリスクを考慮し、中央に返すのではなく、逆サイドのタッチ方向にボールを流してほしかったのだが。
 その後、レッズはベガルタの3DF大岩、板倉、平岡に、興梠、武藤、柏木の3人が厳しくフォアチェックをかけ、ベガルタの組み立てを阻止してくる。そのため、ベガルタは下りてきたアンカー椎橋なり、GKのシュミットなりが、前線にロングボールを入れ、トップのジャーメインを走らせることで、レッズを押し下げることを狙う。しかし、若いジャーメインは、挙動開始のタイミングを、老獪な阿部勇樹に完全に読まれ、正に絵に描いたように「完封」されてしまう。そのため、ベガルタは攻め手を失ってしまった。
 このようなときに一番常識的な対抗手段は、両サイドのCBが左右後方に引き、DFラインのボール回しにGKが加わって数的優位を作って、遅攻でペースを取り戻すことだ。しかし、このやり方をすると、両サイドMFも挙動点も後方に下がってしまう。これは、両翼を前線に張り出させ、チームとしてボールを握ろうとする、今シーズンのベガルタの狙いとは違う。
 そして、渡邉監督は今シーズンのやり方を継続した。平岡と板倉を高い位置に残し、椎橋、大岩、シュミットの3人から、奥埜と野津田に展開して前線で数的優位を作り、両翼の古林と中野をさらに前に展開する、ベガルタ本来のやり方を続けた。このやり方では、椎橋らにミスが出ると、一気に速攻から失点するリスクはある(そして、椎橋は今シーズン時々やらかしたこともあるのだが)。けれども、この日は椎橋が頑張ってくれた。レッズのフォアチェックを外し、中盤でしっかりとつなぎ、前線で石原が拠点を作り、両翼で数的優位を作り始めたのだ。阿部勇樹に完封されていたジャーメインも少しずつ、前を向く機会が増え始める。一方のレッズは、負傷上がりの選手が多いためか、無理な攻めをせず、全軍は引き気味の体勢をとり、決定機を与えてくれない。
 後半に入り、ベガルタペースが継続する。そして渡邉氏は、関口、阿部拓馬を相次いで起用し、圧倒的攻勢に出る。両サイドの関口、中野のところに拠点を作り、素早い集散で3対2、4対3を作り、サイドをえぐれるようになる。しかし、ベガルタが崩しかける度に、レッズ守備陣は、阿部勇樹と槙野の2人を中心に声を掛け合い、必死の修正を重ねる。阿部拓馬のミドルシュートはGK西川の正面を突き、フリーで抜け出した野津田はダイビング気味のヘディングをジャストミートできない。どうしても崩し切れない。
 崩し切れなかった要因は2つあった。1つは、両翼の攻防でレッズの宇賀神、橋岡の2人を破り切れなかったこと。左サイド中野のドリブル突破には定評があるが、ユース代表の中核でもある橋岡は、中野の得意の間合いを作らせぬように不用意な動きを行わず、瞬発力を活かして中野がはたくパスを狙って再三ボールを奪った。一方、右サイドの関口の変幻自在のフェイントに対し、宇賀神は我慢を重ね、裏だけは突かれないような位置取りを続けた。結果として、ベガルタは両翼を崩すのに時間がかかり、中央の阿部勇樹、槙野、岩波の強力3DFに余裕を与えてしまった。
 そして2つ目。この3DFに対して崩し切るだけの変化がなかった。石原も阿部拓馬もすばらしいFWだが、彼らにこの強力DFを破れるような変化を伴うラストパスは供給できなかった。もう1枚前線で変化加えたかったのだが、高さを期待し獲得したハーフナーはとうとう定位置をつかめなかった、ハモン・ロペスは移籍前クラブで天皇杯出場をしていたので出場できなかった。
 そして。アディショナルタイムにロシアの首都で奮戦する若者を思い出したのは秘密だ。ジャーメインの成長に期待したい。

 かくしてタイムアップ。日本一にはなれなかった。
 思い起こせば、今シーズンのベガルタを象徴する試合だったと思う。ゾーンで守るセットプレイの弱点を突かれて失点。以降、両翼を前に出してパスワークで崩すやり方を阻止する守備方式をとる敵に対し、我慢を重ね自分たちのペースにするのに成功。幾度も好機を作りながら、崩し切れなかった。
 負けたのは悔しいが、ここまで積み上げてきたサッカーの質は非常に高いもので、存分に誇り得るものだったと思う。だからこそ、勝ちたかった。日本一の座をつかみ、ACLに再度挑戦したかった。悔しい。
 とはいえ、渡邉監督には感謝の言葉しかない。氏がチームを引き継いだ時は、手倉森監督の卓越した手腕でACLまで出場したチームはすっかり老齢化していた。そこから、若手選手を育成することを軸に丹念に強化を重ね、ここまでのチームを作り上げたのだ。そして、西村は北の大国に旅立ち、シュミットはA代表に定着しつつある。
 ただし、ここまでチームが仕上がってくると、そこからの上積みの強化は容易ではない。選手個々の質の向上など、現場の強化にはとどまらず、チームとしての経営規模拡大がなければ実現できない要素が重要になってくる。いよいよ、ベガルタの経営陣の奮起が必要になる。
 決勝戦翌日、ベガルタは早々に渡邉氏との再契約を発表した。翌シーズンに向けて、ベガルタ経営陣は、まず最も重要な仕事から初めてくれた。しかし、勝負はここからである。

 すばらしい決勝戦だった。
 ピッチ上の両軍の攻防のレベルもすばらしかったは、上記の通り。それに加えて、スタジアムの雰囲気は、また格段のものだった。
 一部で、「レッズがホームグラウンドでプレイできたので不公平」と言う報道を目にしたが、まったくピントがずれた見方だ。この日は諸事情で、ゴール裏ではなく、ベガルタ寄りのバックスタンドの2階席で参戦したのだが、私の周囲にはレッズのサポータは、ほとんどいなかった。当然ながら、チケッティングは、非常に公平に行われたからだろう。そして、ベガルタサポータの応援は、声量こそ物量差で劣勢だったかもしれないが、チャントの変化や、次々に繰り出す応援歌の変化は、レッズに何ら遜色のないものだった。あれで、「アウェイで不利だった」などとは、選手たちは決して口にしないだろう。
 そもそも、諸事情で現状は、中立の大型スタジアムがないのだから、たまたまそこをホームとするクラブと決勝で戦うことはやむを得ない。豊田や吹田でやるよりは、多くのベガルタサポータが参戦できる埼玉での開催は、むしろ幸運だったと考えるべきだろう。いや、そもそも準決勝のモンテディオ戦が、ユアテック開催だったことだけでも、我々にとっては相当は幸運だった。
 そのような状況下でもレッズのサポータたちには感心させられたは否定しない。特に後半半ば、ベガルタが圧倒的にな攻勢に立った時間帯、ゴール裏を中心とした「We are Reds!」は、苦しむレッズ守備陣を、さぞや勇気づけたことだろう。
 また、後半、シュミット、大岩、椎橋が後方から丁寧につなぎ持ち出そうとする度に、後方のレッズサポータが、すさまじい音量でブーイングする迫力は中々だった。しかし、シュミットらが、それに一切動じず、丁寧なつなぎから組み立てる姿は感動的だった。そして、反対側のゴール側の声援に引き出されるようにベガルタは猛攻を繰り出したのだが。ベガルタが「ベガルタ、センダイ!」と「センダイ、レッツゴー!」と2種類のチャントを持っているのは、非常に有効なのだと、当たり前のことを再発見したりした。

 磐田の夕焼け空の下で茫然としたのは、ほんの10年前のことだ。J1を制覇し損ねて茫然としたたのは、ほんの6年前のことだ。ACLで2次ラウンドに進出し損ねて茫然としたのは、ほんの5年半前のことだ。そして、もう1つ。
 ベガルタは、たったの10年間に、私にこんな素敵な体験を4回も積ませてくれた。

 ロストフと埼玉。我ながら、おめでたい人生だと思います。ありがとうございました。
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2018年11月23日

ベガルタ、来期に向けて

 シーズンも終盤に近付いてきた。
 ベガルタは一時期の連敗で、リーグ戦上位に入ってのACL出場の可能性は失ったが、残り2試合をキッチリ戦って、シーズン当初の目標である5位に少しでも近づきたいといころ。
 そして、言うまでもなく我々は天皇杯を残している。もちろん、宿敵モンテディオを倒し、さらに新旧のアジア王者であるアントラーズとレッズのいずれかがファイナルで待ち構えることを考えれば、決して容易な戦いにはなるまい。けれども、今年の充実したチーム力を考えれば、歓喜の確率は低くなく、この時の25倍くらいはあるように思っている。
 
 一方でだが、シーズンが終わりに近づいてくると気になるのが、来シーズンの編成である。決して経済的に潤沢とは言えないわがクラブ、今シーズンすばらしい実績を残してくれた各選手に、来シーズンいかにその成果の対価を提供するか。
 代表に定着しつつあるシュミット・ダニエル、毎年オフには「他クラブが獲得に乗り出す」報道が流れる大岩一貴、今シーズン格段に成長した椎橋慧也、こう言ったタレントをつなぎ止めることができるのか。ベガルタの最も上手な補強手段と言われる、「レンタル選手のいつのまにか保有権移転」は、今シーズンも成功するのか。何にせよ、これらのタレントの確保のために、ベガルタは彼らにしっかりとした誠意を見せる必要がある。そして、この世界での誠意とは、現金以外にはない。
 まあ上記については、毎年のシーズンオフの話題なのだが、このオフに関しては、他に結構重要な事柄があるように思っているのだ。以下、講釈を垂れていきたい。

 ベガルタサポータの幸せの1つに、梁勇基と菅井直樹と言う2人のレジェンドの所有がある。この2人と共に七転八倒した十数年の歴史は、本当に素敵なものだ。そして、梁は36歳、菅井は34歳になった。
 梁は巧みな位置取りや、的確な引き出しで、今でも起用されれば常に見事なプレイを見せてくれる。先日のレッズ戦、前半せめあぐんだベガルタだが、後半に入るや、梁が変幻自在の位置取りを見せる。その結果、後方からの出しどころが増え、我々は攻勢をかけるのに成功した。先日のサガン戦、久々の生観戦の私の眼前で、梁はFKから見事なボールを蹴り、石原の得点を引き出した。この弾道は、精度、タイミング、曲がり具合、いずれも往時のそれらとまったく遜色がない美しいものだった。目頭が熱くなったのは秘密だ。
 そして菅井。元々、今のベガルタのやり方のねらいは、各選手の位置取りの約束事を徹底してボールを回しつつ、両翼を前に張り出すリスクを冒し、組織力でそれらがために訪れるリスクを最小することにある。知的なポジショニングで攻守両面で能力を発揮する菅井は、(往時のスピードは失われたものの)このやり方には最適なタレント。サイドMFにせよ、CBにせよ、起用されれば、格段のプレイを見せている。ただ、あまりに負傷が多いこともあり、次第に出場機会が限定されてきている。
 この2人は最後までベガルタでの選手人生を全うしたいと思ってくれているに違いない。しかし、問題なのは、ベガルタがこの2人に、彼らが納得してもらえる高給を継続することができるのかだ。限られた金銭という資源を、この2人と、上記した現状の中心選手たちやレンタル選手たちと、どのように配分するのか。さらに、この2人には試合出場への欲求があるはずだ。僅かでもランクを下げれば、この2人に出場機会をもっと提供してくれるチームはいくらでもあるだろう。他のユニフォームを着たこの2人を見ることは耐えられないのだが、それは私のわがままと言うものだろう。彼らの考えと、ベガルタフロントの考えが、錯綜する。

 石原直樹は、まごう事なきベガルタの要の選手。今のベガルタの攻撃のほとんどは、後方からのフィードを、石原が妙技を駆使して収めるところが起点となると語っても、過言ではないほどだ。私の見るところ、石原よりもボールを収めるのが巧みな日本人選手は大迫勇也くらいのもの。大迫のバックアップを見出すことができていない森保氏に、「石原をUAEに連れて行ったらどうでしょう」と進言したいくらいだ。
 ところが。石原直樹は、同じ名前の菅井直樹の1か月前生まれ、もう34歳なのだ。そして、この34歳の偉才に、今のベガルタのサッカーは大きく依存している。石原はよほどの節制と努力を重ねているのだろう、今シーズンの石原を見る限り、衰えは微塵も感じさせないプレイぶりだ。けれども、来シーズン半ばには35歳を迎えるタレントである、後継者の確保は急務なのは言うまでもない。つい数か月前までは、この候補として西村拓真がいたのだが、彼は野望を胸に北の大国に旅立ってしまった。
 などと考えると、ここの補強は、このシーズンオフ最大の課題に思えてくるのだ。もちろん、ハモン・ロペスがもう少し体調を整えれば有力な候補だが、そもそも彼と再契約ができるのかどうかを含め。

まあ、来年のことをどうこう言う前に、残り4試合全勝することだな。うん。
posted by 武藤文雄 at 22:11| Comment(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月18日

シュミット・ダニエル、A代表初出場

シュミット・ダニエルA代表初出場
 日本対ベネズエラ。
 ベガルタのシュミット・ダニエルがスタメン出場。ベネズエラの単調なクロスをしっかりと止め、巧みなビルドアップで貢献、PKから1失点したものの、すばらしいプレイ振りだった。本当に嬉しいことだ。
 ベガルタの選手がA代表マッチに出場するのは、2003年の山下芳輝(韓国戦、スタメンするもハーフタイムで交替)、2010年の関口訓充(アルゼンチン戦、71分から交替出場)以来3回目。ただし、90分フル出場したのは今回のシュミットが初めて。当時の山下も関口も代表には定着できなかった。しかし、シュミットには代表定着はもちろん、スタメン確保、22年ワールドカップでの上位進出への直接貢献を期待できるのではないかとの思いは高まる。
 その詳細は後述する。

 このベネズエラ戦は、アジアカップをねらう日本代表としては、重要な準備試合。
 ここまでの準備試合で、富安、南野、堂安、中島と言った若手タレントがよいプレイを見せ、遠藤航も充実したプレイを見せている。ロシアワールドカップのチームにこう言った若手を組み合わせることで、アジアカップで強力なチームを愉しめる期待が高まっていた。、ロシアのメンバに加えてこれだけの新戦力を機能させたのだから、ここまでの森保氏の手腕は中々のものがあった。
 ところが、ここに来て長友の出場が危ぶまれている。元々、両サイドバックは酒井宏樹、長友と世界のいずれの国にも遜色ないタレントがいるが、ワールドカップ時から控えの層は薄いのが悩みどころだった。
 森保氏は、長友の代わりに佐々木を起用、佐々木はミスもあったが無難なプレイを見せた。このポジションには、抜群の左足を誇るマリノスの山中が選考され、また本来はCBの槇野と言う選択肢もあった。しかし、森保氏は、自ら直接指導した経験もあり、大学経由でプロとなり不運な重症も経験した佐々木を重要視するようだ。苦労人の佐々木のアジアカップでの活躍を期待したい。
 もう一つ、富安がパナマ戦に続き見事なプレイを見せたのも、長友不在時の対応に重要となる。それにしても、この逸材は頼もしい。20歳そこそこで、単純な強さ、守備対応の柔軟性、敵攻撃の読み、攻撃力、これらを兼ね備えたCBは、井原正巳、松田直樹以来ではないか。富安がここまで充実していると、現状のメンバに加え、アントラーズでアジアを制した昌子を呼び戻し、麻也と富安とを並べれば、過去日本代表にはちょっと考えられなかった強力な3DFが構成可能となる。その場合は、左サイドに原口を起用すれば、比較的バランスよい布陣となるだろう。ただ、そのやり方をすると、中島、南野、堂安の同時起用はできなくなるけれど。あるいは、富安を遠藤航と並べて中盤の底に置くやり方も考えられる。ただそうすると、柴崎の使い所が難しくなるだろうか。このあたりを、キルギス戦を経て、森保氏がどのような采配を振るうかは、とても愉しみだ。

 さてシュミット・ダニエル。
 終盤ベネズエラに与えてしまったPK。私は一瞬「シメシメ」と考えてしまいました。ここまで、非常によいプレイを見せていたシュミットだが、それに加えて、超ファインプレイを見せる絶好機がやってきたからだ。しかも、PKを与えたのは責任はシュミットにはなく、責められるべきは、やらかした酒井宏樹なり軽率にボールを失った杉本(だと思った)だし。もちろん、そのような邪な気持ちは、たいがい叶わないのを再確認することになったわけだが。
 ともあれ、シュミットは森保氏の起用によく応えた。自らの特長である、長身を活かした高さと、展開力のうまさをとを、しっかりと発揮したのだ。この日のベネズエラは、前線のタレントは経験不足からかラストパスは精度を欠き、攻撃はあまり脅威ではなかったのを、割り引く必要はあるかもしれないが。
 まず、その高さがよく機能した。何より、ハイクロスへの対応も的確で、 ベネズエラの中途半端なクロスをキッチリと押さえていた。麻也と富安の2CBの安定と合わせ、ゴール前の制空権もまったく問題なかった。これだけ、中央の高さが安定していれば、敵の攻撃の選択肢は限定される。
 そして、展開力。ベネズエラが最前線から、麻也、富安に厳しくプレスをかけてきたため、2人はシュミットにバックパスをすることが多くなった。するとシュミットは落ち着いて、両サイドバックなりDFラインまで下がってきている柴崎なりに、正確なパスを供給、攻撃の起点として機能した。もちろん、ときには大迫をねらった正確なロングボールを提供、これらをことごとく大迫が収めてくれるから、日本は幾度もそこから好機を掴めた。
 日本が世界のトップクラスと伍して戦おうと言うならば、高さに秀でたゴールキーパが必要なことは言うまでもない。また昨今、組織的な守備論理が整備されると共に、ゴールキーパが組み立てに参加する必要性と、浅い守備ライン後方をカバーする能力も重要となっている。
 以前から再三講釈を垂れているように、シュミットは、この現代風のゴールキーパに最も近い存在であることは言うまでもない。まあ、色々あったけれどもね。そして、このベネズエラ戦は、シュミットの潜在力が存分に発揮された試合となった。そう、これがはじまりなのだ。
posted by 武藤文雄 at 21:36| Comment(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月21日

まことめでたし、ウルグアイ戦

 まことにめでたい試合だった。堂安、中島、南野の3人のプレイを見ているだけで、幸せな気分になれたのだから。

 ウルグアイ戦と言うと、85年や96年の対戦を思い出す。
 85年のキリンカップはウルグアイ代表、ウェストハム(イングランド)、サントス(ブラジル)、マレーシア代表、日本代表、そしてその年の元日の天皇杯優勝した読売クラブが、総当り戦を行うレギュレーション(毎年レギュレーションはあれこれ変更になったが、当時のキリンカップは優勝を争う大会だった)。読売クラブには、当時の代表チームの大黒柱のCB加藤久、定位置を確保していた両サイドバック松木安太郎、都並敏史がいたが、彼らは読売クラブで大会に参加、日本代表では出場しなかった。今で言えば、麻也、長友、酒井宏樹が、不在で戦うようなものである。かくして迎えた日本対ウルグアイ、加藤の代わりに腕章を巻いた木村和司のすばらしい直接FKで先制し、CBとして守備を引き締めた岡田武史の奮闘はあったものの、切れ味鋭いカルロス・アギレラと、優美なストライカのホルヘ・ダ・シルバに2得点ずつ奪われて、1対4で完敗した。そう言えば、この試合には長沢和明(有名女優の親父殿)も出場していたな。80年代の日本代表は、欧州や中南米の代表チームとは、ほとんど試合をしてもらうことすらできなかったわけだが、このウルグアイ戦はとても貴重な経験となった。その絶好機を主将や中心選手抜きで戦ったわけだが。
 余談ながら、その後日本代表は、加藤を軸とする読売クラブとも対戦、戸塚哲也に得点を奪われ0対1で敗れている。
 96年は加茂氏率いる日本がユーゴスラビア、メキシコを連破し、(ホームでコンディションがよければ)欧米の列強にも勝てるのだと雰囲気が漂い始めた折だった。そして日本はその勢いのまま、ウルグアイを圧倒。次々に得点を重ねた。中でも、中盤後方にポジションを替えた名波の高速展開から、左サイドバックの相馬がオーバラップして好クロスを上げ、カズがヘディングで決めた得点はまことに美しいものだった。ちなみに70分くらいまでに4対1とリードしたものの、終盤バタバタして失点を重ね、終わってみれば5対3となっていたのだが、何か今回も似た試合になったな。
 余談ながら、この時のウルグアイは不思議なことに赤い色のユニフォームを着ていた。あと、無名のストライカに2点を奪われたっけな、アルバロ・レコパと言う若者だった。

 さて、この試合。
 もちろん、遠藤航の成長も楽しかった。特に後半大迫の宇宙開発を演出した場面、遠藤は中盤で見事な守備でボールを奪い、酒井宏樹に正確なスルーパスを通したわけだが、鳥肌モノのプレイだった。若い頃からリーダシップをとれ安定した守備力に定評あったこの選手が、コスタリカ戦に続き攻撃力も発揮してくれたのは結構なことだ。
 大迫も、屈強なCBのゴディンを相手に優美な技巧を披露し、最前線で幾度もみごとなターンを見せ、相変わらず輝きを見せてくれた。先ほど述べた宇宙開発を含め、よくシュートを外したのは確かだが、とにかく1点は奪ってくれた。シュートはまずは打たなければ入らないのだし、外しても気にせず狙い続けるのはストライカの基本要素だ。
 大迫だけではない、ロシアで活躍したベテランが元気なのは嬉しいことだ。我らが誇る世界屈指の両サイドバックである酒井と長友が相変わらず攻守で格段だったこと。ここ最近試合出場機会が減っているとのことで心配していたのだが、麻也の1対1の安定感は絶品で、腕章がとても似合っていた。
 など色々語りたいことがあったが、この試合に関しては、堂安、中島、南野のトリオが鮮やかな個人技を発揮して、美しい得点を重ねてくれたことが何よりだったのは言うまでもない。

 とにかく、堂安はウルグアイにボールをとられないのだ。いや、取られないだけではない、いわゆるデュエルで相手を打ち破った後すぐに次のプレイにつなげることができる。元々、どのレベルでも日本代表が、南米勢に苦戦する要因は、中盤でのボールキープ合戦で劣勢となり、チーム全体として攻撃の時間を確保できないところにあった。ところが、堂安は屈強なウルグアイ守備陣に身体を当てられても、ボールを取られない。堂安が1人いるだけで、日本の他の選手は前を向くことが容易になった。小野伸二や遠藤保仁のキープ力は格段だったが、彼らの挙動地域は中盤後方だった。中田英寿や本田圭佑もは中盤前方で見事なボールキープを見せてくれたが、持ちこたえた後に次のプレイをするためには、もう一拍持ち直しが必要だった。けれども、堂安は相当な細かなタッチで高頻度にボールを触れるので、敵を打ち破った直後、そのまま前進し仕事ができる。大迫の2点目を生んだ中島のシュートへの持ち出し、南野の4点目につながった堂安自身の強シュートはその典型だった。そして、何よりだったのは3点目。酒井のスルーパスも見事だったが、トップスピードで抜け出しながら、鋭い切り返しでウルグアイDFを完全に手玉に取りつつ、自分が正確にボールを蹴ることができる場所にボールを置くことに成功した。ボールがネットを揺らすのを確信できる美しい得点だった。同じピッチの反対側のゴール前に、堂安と同じ背番号21をつけていたウルグアイのストライカも中々の選手だったが、少なくともこの日に関して言えば、当方の21番の方が格段に光り輝いていたな。
 敵DFに身体を当てられながら、細かなボールタッチで持ち出しすぐに次の仕事ができる。そう、堂安はあたかもアルゼンチンのトッププレイヤであるかのような能力を発揮してくれたのだ。

 中島の切れ味あふれるドリブルに対し、ウルグアイの守備選手達が完全に腰が引けていたのも痛快だった。変化あふれるドリブルを長い距離で仕掛けた直後でも、強烈なシュートを打つことができる中島。大迫の2点目時を含め、この日も強いシュートを幾度も枠に飛ばしていた。なので、ウルグアイ選手もズルズルと下がることもできない。と言って軽率に取りに行くと、中島はボールにはあまり触らず大きなフェイントが武器なので、ベロッと抜き去られてしまう。ウルグアイDFもそれがわかっているので腰が引けた対応をするしかなく、中島はドリブル突破とシュート以外の選択肢も容易にとることができる。1点目の南野へのアシストのように狙い済ましたパスを通したり、オーバラップする長友を使ったり、逆サイドの酒井や堂安に展開したり。そのような選択の判断力が磨かれれば、中島はさらなる高いレベルに行くことができるのではないか。また、その魅力を活かすためにも、ボールを受ける挙動はサイドでもよいが、どんどんと中央に入ってプレイすべきにも思う。
 敵DFに正対しながら、ボールに触らず素早いフェイントを繰り返せる。そう、中島はあたかもブラジルのトッププレイヤであるかのような能力を発揮してくれたのだ。

 コスタリカ戦、パナマ戦を含めて、得点を重ねている南野のプレイは、堂安や中島ほど派手ではない。しかし、何が見事と言えば、その冷静な判断力だ。大迫が広範に動き、身体を張り、ボールを日本のものにすると共に、敵陣前にスペースを作る。南野は、ボールがペナルティエリア近傍に入るまでは、マークをひきつけながら遊弋し、堂安なり中島なりからのボールが、大迫が作ったスペースに入ろうとする瞬間に、フルパワーのプレイを見せる。要は、肝心な場面に体力を残しているのだ。なので、一番プレッシャがかかる敵ペナルティエリア内でも、正確なトラップをすることが可能で、自分が強いシュートを打てる場所にボールを置くことができる。南野は大迫を含めたチームメートすべてを己の配下と割り切り、一番おいしいところをいただく感覚を確保しているのだ。
 これって、古くはエンツォ・フランチェスコリ、新しくはディエゴ・フォルランを思い起こすではないか。そう、南野はあたかもウルグアイのトッププレイヤであるかのような能力を発揮してくれたのだ。

 もちろん、この試合には突っ込みどころも多々あった。失点もセットプレイでの空中戦の完敗、中盤デュエルでやられての速攻、三浦のお笑いプレイ。しかし、次のワールドカップはまだまだ先のことだ。新しい攻撃タレントが、この南米の強豪国に対して、美しいプレイを連発し、ゴールネットを揺らし続けてくれたのだから、私は素直にこれらを喜びたい。先方のコンディションが不十分だった、来年のコパアメリカに向けて準備中だった、スアレスがいなかった、など余計なことを考えても、しかたあるまい。息が詰まるような思いをしながら胃が痛くなるような試合は、ロシアで存分に堪能したではないか。あれは間違いなく最高の体験だったが、このようなお祭りのような試合も悪くないではないか。
 そうは言っても、アジアカップは近づいてくる。そして、その準備と言う視点からしても、結構な試合だった。大体、第2列はこの3人のほかに、ロシアであれだけ光り輝いた原口がベンチに控えていた(そして、パナマ戦での原口の存在感は圧倒的だったし、この試合でも終盤起用された原口はすばらしいプレイを見せてくれた)。もちろん、召集されなかったが乾がいる。本田や岡崎のような圧倒的な経験値を持つ選手を呼び戻す手段もある。後方に目を転じても、上気した遠藤航の充実に加え、パナマ戦では三竿もよかった。ここには、青山や柴崎ほど射程は長くないが、緩急の変化と短く速いパスが格段の大島がいる。最終ラインでは富安が底知れぬ素材感を見せてくれたし、三浦もあの場面がなければ…アジアカップを制覇するための準備も順調と考えてよいだろう。それはそれでよし。

 本調子ではないウルグアイに対して、あれだけ美しい攻撃を繰り出し、次々と得点できる国が、世界中探して他にいくつあると言うのだ。しばらくは、このめでたい試合を肴にしておいてバチはあたるまい。 
posted by 武藤文雄 at 23:12| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月30日

続シュミット・ダニエルの致命的ミス

 ベガルタは、敵地三ツ沢でマリノスに2対5で完敗。

 試合の流れはわかりやすかった。
 マリノスが最前線から質が高く厳しいプレスをしかけてくる。ベガルタはそれを抜け出せないことが多く、幾度も有効な攻撃を受ける。それでも、そのプレスを抜け出すのに成功すると、マリノスが前に人数をかけている分、後方は薄いから好機を作れる。
 そのような、流れが継続した前半、奥埜のクリアミスを拾った天野の見事なさばきから、山中に超弩級の左足段を食らい失点。その直後、上記の薄い守備をうまく突き人数をかけたパスワークから自殺点で同点に。しかし、ハーフウェイライン付近の争奪戦で前を向かれた仲川のスピードドリブルに富田がついていけず、大岩も軽い対応で股抜きされて、再度リードを奪われる。。
 後半開始早々、山中と天野の絶妙なワンツーからのクロスに、守備陣が完全にボールウォッチャになり、仲川にファーサイドのゴールエリア内に進出されてヘディングを決められ突き放される。ここまでの3失点は、いずれも連続攻撃で振り回されたと言うことではなく、ジワッと押し込まれ続け、守備時の対応にミスが出てのもの。サポータからすれば、いずれの失点も「もうひと踏ん張りしてよ」と言いたくなるものだったが、マリノスの長時間攻勢に当方守備陣が少しずつ疲労し集中を欠いたと言うことだろう。
 その後は、マリノスは後方を厚めにして速攻をしかけ、その第一波をベガルタがしのぐも、すぐに再度プレスをかけられ、得意の人数をかけてパスワークに持ち込めず、崩し切れない時間帯が継続。そうこうしているうちに、バックパスをシュミットが処理ミスをして、ウーゴ・ヴィエイラに奪われ3点差とされ勝負あり。ただ、以降の時間帯、守備ラインの選手達の押上が遅くなり、チームプレイがまったく機能しなくなったのは残念だった。まあ、選手達も機械ではなく人間だから…
 マリノスには、7月に8点とられて殲滅されたことがあったが、流れとしては同じような展開になってしまった。両チームとも、選手の配置、攻守の重点は異なるが、最近の欧州風の数的優位を確保するサッカーを狙っている。ベガルタとしては、、上記したジワッと押し込まれた影響と、山中、天野、仲川、ウーゴと言った選手の個人能力に、やられたこととなる。まあ、天皇杯は俺達が勝ったから、と強がりを言っておくことにしよう。
 ここに来ての2連敗は痛い。しかし、済んだことを嘆いていもしかたない。次節は難敵レッズ。ACLのためにも、何としても勝ち点3が欲しいところ。渡邉監督の修正に期待しよう。

 さて、本題のシュミット・ダニエル。
 上記4点目の失点場面。大岩からのバックパスを受け、プレスに来るウーゴをかわそうとして、ブロックされた上に、置いてきぼりを食らい、無人のゴールに決められてしまった。前節に続いて、言い訳の余地のないミス。ここで問題だったのは、かわそうとし損ねたボールコントロールのミスではなく、その前のプレイ。ウーゴのプレスはあったが、シュミットには十分時間的余裕があったから、前進してパスを受ければ、まったくフリーでボールを扱うことができる状況だった。グラウンダのパスを受けるために、パスコースに向かって進むのは、サッカーの基本中の基本。ところが、シュミットはこの場面、ウーゴのプレスを読み誤り前進を怠った。バックパスだったので、手で扱うことができないボールなので、ペナルティエリアに止まる優位はないのだから、前進しなかったことに言い訳の余地はない。
 余談ながら、DAZN実況の倉敷氏と福田氏が、このブロックを「間違いなくハンド」と言っていたが、ベガルタサポータの私の目から見ても、これはハンドではないと思う。だって、ウーゴは手を胸にしっかりとつけていたところに、シュミットが蹴ったボールが当たったのだから、どう考えてもウーゴは意図的に手を使っていない。この試合、その他の場面でも両氏の審判団批判、それも何かマリノスに有利な判定をしている趣旨の発言が多かった。しかし、完敗したベガルタサポートの目からみても、これらの批判は疑問だった。たとえば、仲川の3点目をオフサイドの可能性を示唆していたが、映像を見た限り、とてもではないがオフサイドには見えなかった。また主審が、中盤戦でベガルタのファウルを取り過ぎる、インテンシティの高いプレイをするためには不適切との発言も目立った。しかし、この日の主審の笛は、接触プレイにやや厳し目だったたが、基準は明確だった。ベガルタは中盤で激しいプレスをかけるやり方をしているだけに、笛への対応に苦慮していたのは確かだが、それはマリノスも同じこと。マリノスと比較して、ベガルタの選手達の判定基準への対応が下手だっただけだ。もちろん、後半右サイド明らかなベガルタボールのスローインを見損ねたこと、最後のベガルタのPK(笑)はミスジャッジだった思うけれど。もしかしたら、主審の笛にうまく順応できず、いらだつベガルタの選手達を見た、我らが黄金のサポータたちのブーイングなどの不平不満に、両氏は引っ張られたのかもしれないな(笑)。
 実は3点目時にも、目立たないが、シュミットはミスをしている。右サイドを、天野と山中のワンツーで崩され、山中がクロスを上げた場面、シュミットは一度そのクロスを取りに行ったが、取れずと判断してゴールラインに戻りながら対応、結果的に仲川のヘッドへのセーブが間に合わなかった。直接的失点要因は、仲川の進出を放置し誰もマークしなかったベガルタDF陣の対応であり、もしシュミットがクロスを取りに出なくとも、決められていた可能性は高い。しかし、ミスはミスである。
 先ほど、解説の福田氏を批判したが、私が「福田氏の言う通り」と同意したこともあった。前半、ベガルタ陣35mくらいの直接FK、山中が直接狙ってきた低い弾道の一撃が、ポストを掠めた場面。シュートは壁に入った富田と阿部(だったと思った)の間を抜けてしまった、壁が役割を果たさなかったのだ。その時に福田氏は、「これはシュミットは怒らなければいけない」と言っていたが、その通りだ。もっと、守備陣とのコミュニケーションを豊かにしてもらわなければ、よい守備網を築けない。
 と、マリノス戦のシュミットには不平不満山積である。そして、2節続けて決定的なミスで失点に絡んでしまったことは重い。

 けれども。
 上記した場面を除くと、シュミットは再三マリノスの鋭いシュートを押さえてくれた。特に先制される前のウーゴのシュートへの反応などすばらしかった。鋭いシュートを確実にキャッチすること、キャッチできないボールをはじく方向など、いわゆるシュートへの対応は、着実に進歩をしている。大柄なゴールキーパにありがちな、低いシュートへの対応への課題は払拭しつつあると見てよいだろう。だからこそ、持ち味の高さと守備範囲の広さを、もっと活かせる段階にきたはずだ。
 先週も述べたが、2022年に、欧州、南米の列強に我々が打ち勝とうとするためには、守備範囲が広くペナルティエリアを完全に制圧し、最後方から正確な組み立てをするゴールキーパが必要だ。その理想像に、シュミットは近い存在の1人であることは間違いない。そして、そのために、シュミットには日々「前進するプレイ、飛び出すプレイ」を成功できる選手となるように、努力を積み上げて欲しいのだ。先日の日本代表選考で、シュミットはそこに向けての意識を持ってくれたのだろう、それが故の前向きのミスが続いていると、信じている。
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2018年09月23日

シュミット・ダニエルの致命的ミス

 それは79分のことだった。
 ハーフウェイラインからややベガルタ陣に入ったところで、長崎に与えたFK。
 長崎FWファンマに合わせたクロスに、果敢に飛び出した仙台GKシュミット・ダニエル。しかし、ボールに触ることができず、こぼれたボールを長崎澤田に無人のゴールに決められてしまった。
 言い訳のしようがない、シュミットのミス。ここまでの時間帯、丁寧に攻め込み、幾度も決定機をつかみながら、長崎の粘り強い守備をどうしても崩せなかったベガルタとしては、本当に痛い失点となった。その後、梁勇基とハーフナーを投入し、猛攻をしかけるが、逆に攻撃が単調になったきらいもあり、崩し切れず。
 ベガルタにとっては、この敗戦は、歴史的な痛恨となるかもしれない。丁寧に勝ち点を積み上げ、ようやくACL出場権が現実的なものになってきた矢先の勝ち点ゼロだからだ。このシュミットのミスにより、来年のACLを失ったかもしれない。

 ともあれ、ベガルタの試合内容はよかった。
 前半から、ここに来てしっかりとチームの基軸となった速いパスワークから、両翼に基点を作り好機を幾度か作る。そのため、後方を厚くした長崎に対して、最終ラインから精度の高いロングボールを入れることで、長崎の中盤選手を押し下げる。結果、はね返されたボールを、奥埜や富田がきっちり拾い分厚い攻撃を続ける。
 ただ、長崎高木監督は、しっかりベガルタの弱点を狙っていた。ベガルタの攻勢をはね返したボールが、(ベガルタから見て)左サイドに流れると、いずれの選手も板倉の軽い当たりを突き、そこから速攻をしかける。しかし、ここ数試合でベガルタの危機管理は見違えるほど充実している。全選手の帰陣も早く、シュミットの落ち着いた位置取りもあり、しっかりと押さえる。
 そして後半に入り、ベガルタはさらに攻め込む。野津田の展開と、奥埜の押し上げ。中野を関口に替えて投入し、蜂須賀との両翼攻撃が圧力を増す。それでも決められないまま、終盤を迎え、最後の10分でどう崩すかと言う場面での、冒頭の失点…
 シュミットの失態を別にすれば、この試合の反省点はハーフナーの活かし方。空中戦の強さが格段のこのシュータをトップに入れた際の、両翼の崩しや、他の選手の入り方が、まだまだ洗練されていない。ベガルタは、最前線の選手にも、高度な守備判断を求めるサッカーを行っている。そのため、シーズン途中に加入したハーフナーは、どうしてもスタメン起用ではなく、終盤どうしても点を取りたい場面に限定される。ために、ハーフナーの出場時間は限定され、中々連携が成熟してこないのが悩みだ。あと9試合でどこまで、この連携を高めていくか。

 済んだことはしかたがない。冒頭に、敢えて重苦しい表現をとったが、私は悲観していない。
 ここまで質の高いサッカーをできるようになってきたのだ。上記した板倉の軽率さや、ハーフナーの使い方の改善を含め、連携を洗練させ、攻撃に変化を加え、守備の粘り強さを高める。全選手が、いっそうの努力を重ねれば、2度目のACLは自然と我々の手に入るはずだ。

 で、シュミット・ダニエル。
 ベガルタサポータとしては、過去もシュミットのミスを嘆息したこともあった。また、ベガルタには、キーパとしては小柄ながら、堅実に実力を積み重ねてきた関と言うすばらしい選手もおり、毎シーズンシュミットと激しい定位置争いを演じてきた。そして、シュミットは、ここに来てベガルタの定位置を確保し、控えとは言え代表にも選考された。2m近い長躯、左右で蹴ることができる正確なキック、敵FWのプレスをかわせる技巧、シュミットには世界トップレベルのキーパに近づける、いや追いつける、あるいは追い越せる?素質はある。
 シュミットが、2022年ベスト8以上を目指す日本代表の正ゴールキーパを目指そうと言うならば、あのクロスに飛び出し、しっかりはね返せる選手にならなければならない。そして、そう言ったレベルのキーパになるためには、それなりの失敗経験は必要だろう。ベガルタサポータにとしては、この長崎戦の悔しい敗戦は、2022年日本のゴールを守るシュミットを楽しむための、高い授業料だったと理解したい。
 シュミットはこの日のミスをしっかり反省するのは当然だ。しかし、反省して、このクロスに飛び出さなくなったら意味はない。今後も、このようなクロスには飛び出し、確実にはね返すキーパにならなければいけない。ノイヤーや、ロリスや、クルトワのように。そして、2022年の歓喜のために。
posted by 武藤文雄 at 00:13| Comment(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする