2006年11月30日

ワールドユースの連続出場と選手召集問題

 いささか古い話題だが、ワールドユース7回連続出場の快挙と選手召集問題について。

 簡単に7回連続出場と言うけれど、凄い記録だ。2年おきにU19の選手のチームが、毎回アジアのベスト4に入っていると言う事だ(連続出場の最初、中田、奥、松田、田中誠らの時だけは2国出場)。年齢制限のある大会で、毎回この成績を収めるためには、強いチームを作るだけではなく、(抽象的な表現だが)勝負強さも具備しなければならない。この7回中、韓国でさえ2回出場権を逸しているのだ(韓国は86年にワールドカップ出場した以降、ワールドカップ、五輪は全て出場している)。大体4枠のワールドユース出場は、4.5枠のワールドカップ出場より厳しいのだし、しかも短期決戦だから番狂わせの危険も高いのだから。

 これは、90年代半ば以降、日本サッカーがアジアで屈指の強国である事と共に、ワールドユース出場に向ける「本気度」が他国より強い事が、要因として挙げられるだろう。「世界」を目指す日本としては、追いつくべき欧州、南米の強国と比較して、近隣にライバルとなる国は韓国くらいしかないため、若い選手が国際経験を積む経験が少ない。そのため日本では、ワールドユースや五輪のような、若年層の世界大会に出場し、優秀な若手選手に経験を積ませる事が非常に重要と考えられている。したがって、今回のチームに限らず、日本協会は相当長期の準備をこの世代のチームに行ってきており、その成果がこの7回連続出場の偉業と言えるだろう。日本協会の10年以上の積み重ねは、高く評価されてよい。



 話は変わる。このアジアユース大会前のJリーグで、アントラーズのサポータが試合前に「内田のアジアユース代表出場反対」とアピールしたのが、一部で話題になった。ナビスコカップの決勝戦と、アジアユースがバッティングしたためだ。若くしてアントラーズの中心選手として活躍する内田が抜ける事は、戦闘能力的には相当痛手だと予想された。事実、ナビスコの決勝は、「内田不在」が大きな勝負のアヤとなった。アントラーズは、内田がいないため、本来左バックの新井場を右に回し、左サイドには不慣れなファビオ・サントスを起用した。そこに、絶好調の水野晃樹が来てしまい、そこから失点し敗れ、優勝の名誉と賞金(優勝と準優勝の差額は5千万円)を獲得し損ねた。言うまでもなく、内田がいたからと言って「アントラーズが勝てた」とは限らないが、アントラーズ関係者としては、不満が残る今回の内田の招集ではあっただろう。

 一方、大会途中で柳川がユース代表を離れ帰国した。これは、J2昇格を争う佳境にありメンバ編成に苦しむヴィッセルの要請を、ユース代表サイドが受けた事によるもの。ユース代表サイドが受諾した要因には、柳川が帰国した時点で日本は準々決勝でサウジを打ち破っておりワールドユースを決めていた事、また柳川はユース代表でセンタバックの控えと言う戦術的な交代には起用されづらいバックアッププレイヤだった事もあっただろう。いずれにしても、単独チームと代表チームで相互の了解が取れれば、話は簡単なのだ。

 では内田についてはどうか。上記のようにサポータが組織立って不満を表明した事はさておき、アントラーズがワールドユースに内田を出場させる事を拒否する打診なりを日本協会に対して行ったのかどうはは把握していない(特にそのような報道はなかったように思うのだが)。しかし、もしそのような打診があったとしても、少なくとも現場の総責任者である吉田靖監督は、絶対に「諾」とは言わなかったと思う。それは冒頭に述べたように、現状の日本サッカー界においては、ワールドユース出場は非常に重要な位置づけをされており、もし出場権を逸する事にでもなれば、監督の責任は相当重いものになるからだ。吉田氏にとって、中心選手の内田の招集は必須だったであろう。また、ちょうどナビスコ決勝の日程は1次リーグ最終戦(消化試合になったのは結果論でこの試合がとても重要になる可能性があった)と、最も重要な準々決勝との間にあったので、(アジア大会のように)後から現地入りと言う策も取りづらかった。

 一方、内田個人の経験として、どちらが有益かと言う議論はあるだろう。しかし、インドで同年代のチームメートと七転八倒するのと、満員の国立でジェフと雌雄を決するのと、どちらが有益かどうかは判断しづらい。正解など無い問題なのだし。



 では内田はどうすべきだったのか。

 個人的な意見としては、たかだか「若年層の世界大会予選」である。ナビスコを優先し、内田はアントラーズに残るべきだったと思う。ワールドカップ(及びアジアカップの重要な試合)以外の国際試合よりは、原則国内リーグを重視すべき、と言うのが私の考えだからだ。

 吉田氏はプロフェッショナルなのだから、「与えられた条件」下で戦うべきだった。しかし、内田をインドに連れて行けなかったとしても、一切言い訳は許されない。内田の離脱は「負傷した」と思ってあきらめるべきだったのだ。世界中どのような監督も、中心選手の離脱をリアルに捉えて戦っているのだから。

 ともあれ、これは私の主観。異論も多かろう。いずれにせよ、ケースバイケースとして、都度関係部門が真剣に打ち合わせを行い、選手個人の意向を含め、意思決定していくしかないのだろう。



 で、一番の不安。とてもとても深刻な不安。

 このような問題は今後いくらでも発生する。上記した通り、都度打ち合わせで解決していくしかない。しかし、もしその打ち合わせが決裂したらどうするか。もし、そのような事態になった時にはトップの「ご聖断」で決めるしかない。そして、その「ご聖断」を発行する事ができるのは日本協会会長。

 ああ、それなのに。今の協会会長の発言を、誰が信頼するであろうか。
posted by 武藤文雄 at 23:35| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ

2006年11月29日

史上最高の守備者

 バロンドールと言うタイトルは、類似のタイトルが多々登場しつつも、最も老舗的な感覚がある世界最高峰の個人タイトルと言っても過言ではない。もちろん、こう言ったサッカーの個人表彰そのものが非常に難しいのは、随分前にも述べた通りだが。

 そのバロンドールを、晴れて?世界チャンピオンの主将でかつ世界最高峰の守備者であるカンナバーロが獲得した。元々、バロンドールの歴史を考慮しても守備者が選ばれる事は稀。GKのヤシン、リベロのベッケルバウアとザマーのみである。このうち、ベッケルバウアは最終ラインで冴えた守備を見せたいたのは確かだが、実質的にそのメインの武器は守備と言うよりは前線への展開。ザマーに至っては、洗練された闘莉王(そもそも洗練された闘莉王と言う概念があるのかどうかはさておき)と言うか、敵の守備の弱点を見つけて、スッとそこに前進して得点に絡むのが魅力の選手だった(むしろこの2人よりも、同じドイツ人のマテウスの方が所謂後方の守備者っぽい雰囲気があるのが面白い)。

 そう考えてみると、純粋な守備者がバロンドールを獲得したのは、ヤシン以来。フィールドプレイヤの守備者としては初めてと言ってもいい事態だと思う。そして「守備者」と語った時に、カンナバーロは「史上最高の守備者」と言う印象すらある。例えば、上記のベッケルバウアにしてもザマーにしても、あるいはバロンドールにかすったDF、ファケッティ、B・ムーア、フォクツ、クロル、カブリーニ、F・バレーシ、ライカールト、ジョルジーニョ、デザイイ、リザラス、カフー、そしてマルディーニ、などを思い起こしてみても、皆「守備も凄いが、攻撃もまた凄いと言う選手」と言う印象がある(95年以降、欧州外の選手も選考対象になったのを織り込んでみました)。

 しかし、カンナバーロは違う。とにかくこの男は守備者だ。しいて、同タイプでバロンドールかすり選手を考えると、K・H・フェルスターとテュランくらいだろうか。ただK・H・フェルスターは、単純な1対1の強さは見事だったが守備の全体組織と言うタイプではなかった。またテュランは98年のサイドバック時代は、攻撃でフランスの危機を救ってみたところで、守備者とての「純粋性」に欠け、またここぞと言う場面でやや肉体の強さを前面に出し過ぎる。その点、カンナバーロは若い頃からの1対1での粘着的な強さを残したまま、全守備網を指揮すると言う、稀有な能力を発揮した守備者だ(一時のパルマで、カンナバーロとテュランの2人がセンタバックを組んでいた事があったっけな)。と言う事で、単なる守備者としてカンナバーロは「史上最高」なのではないかと思った訳(あ、もちろん60年代以前の選手は、よくわからないところがあるので、暴論だと言う事は承知しております)。



 カンナバーロを生堪能したのは98年ワールドカップだった。私はこのような粘着質の守備をする選手が大好きで、すっかりそのプレイ振りに惚れ込んだ。ただ当時は今年のカンナバーロほど凄い守備者になるとは思いもしなかったが。ちょっと悔しいのは、今回のカンナバーロを生観戦できなかった事。日本が2抜けして、カイザースラウテルンで戦うはずだったのだが。



 カンナバーロほどスケールが大きくないが、日本人選手で言えば古くは石崎、新しくは薩川、大森など、同様の系列の選手が過去から登場し続けている。。オシム氏が作ろうとしているチームの守備ラインは、攻撃センスあふれる選手が守備ラインに並び、そこからの美しい展開が魅力的。しかし、そのようなチームに1枚「粘着質の守備者」がいるのも悪くないと思う。

 だから、頑張れ水本!
posted by 武藤文雄 at 23:33| Comment(1) | TrackBack(0) | 海外

2006年11月27日

高木琢也の勝利

 ワールドカップが終わり、ようやく落ち着いてJ2をじっくり堪能できる精神状態になった頃、ベガルタサポータの友人達と飲みながら、J1昇格プランについて語り合った。当時、私は極めて楽観的だった。

 「ヴェルディはまあ監督がアレだ、もう浮上はない。昇格争いは、ヴィッセルとレイソルと横浜FCとベガルタの4クラブに絞られるはず。そして、やや選手層が薄く、30代後半のカズや山口を軸にする横浜FCはいつか落ちるはず。とすれば、最悪でも入替戦出場の3位には入れるだろう。自動昇格もよいけれど、入替戦を戦うのもまたよいではないか。いや、そこまで行けば、まあサポータのナニで勝たせる事もできるだろうし。」

と、まあこのBLOGで語っている講釈を、そのまま口頭に移したような強引な理屈を吹聴していた訳。



 でも、横浜FCは落ちなかったのだ。



 一方でスコンスコンと落ちて行った我がベガルタだが、これについては別途(ちなみに28日発売予定のサッカーマガジンに、板垣晴朗氏によるベガルタの今シーズンの総決算が掲載されます、仙台を拠点にベガルタのピッチ内外を堅実に追っている板垣氏らしい落ち着いた視点での、見事な総決算ですので興味ある方は是非)。



 何故、横浜FCは落ちなかったのだろうか。

 一言で言えば監督の高木琢也氏の卓越した手腕と言う事になるだろう。そもそも、J2第1節が終わった時点での前監督更迭劇が行われた際は、横浜FCフロントは「日本中のサッカー関係者の笑い者」と言う風情だった。事実、私も唖然とした。しかし、私を含めた先見性の無い人間達と異なり、横浜FCフロントの慧眼鋭かったと言う事なのであろう(やや棒読み)。

 高木氏の凄みをいくつか具体的に述べてみよう。

 第1に見事な守備組織の整備。それもシーズンを通しての固定メンバではないのだから恐れ入る。早川、小野、鄭、そして山口の4人はほぼフル出場だが、トゥイードの離脱などメンバは結構入れ替わった(早川、。終盤戦に補強したベテラン小村を含め、どのような組み合わせでも巧く機能したのだから、高木氏は守備網の構想のみならずその維持にも成功した事になる。しかも52節、もとへ51節の長丁場において。見事としか言いようがない。

 第2に補強選手の活かし方。横浜FCフロントはシーズン半ばに次々と的確な選手補強を行った。アレモン、崔成勇、滝澤、小村など。正直言って傍目から見ても、「巧い!」と言う補強だったのが、よい補強もそれを使いこなす監督あってこそ。ある程度巧く勝ち続けているチームに、これだけ実績あるタレントを増強すれば、普通はチームがギクシャクするものだが、鮮やかに各選手を使い切った。カズと城とアレモンをバランスよく使って機能させるなんて、並の監督ではできないよ。

 第3にカズと山口をとうとうリーグ終盤まで壊さずにかつ健全に使い切った事。大ベテランと言うのは、機能さえしていれば、若い選手のよい模範となり、チーム全体の精神的支柱となる。しかし往々にして、負傷で離脱する事が多く不在の時の戦力確保が問題となる。また、チーム事情によりレギュラから外れたりすれば、不満が表に出る事もありチームの雰囲気を崩す事もある。この扱いの難しい両者を、同年代の高木氏が御したのだから大したものだ。大体、氏はかつての代表のチームメートのカズより若いのだから凄い。

 同世代で日本代表のFWを争った長谷川健太氏と言い、30代の優秀な監督が登場してきた事は、実に頼もしい。



 それにしても、菅野はいい。



 もう1つ、社長の奥寺氏の存在。現役時代からの蓄積、経験は言うまでもない存在。このような経歴のある人が、「経営者」として成功体験を積む事は、大変困った状況にある日本協会にとっても非常に重要な事だ。



 さて、年間最優秀監督には、高木琢也を選ぶか、大木武を選ぶか、愉しい酒の肴だな。
posted by 武藤文雄 at 23:45| Comment(5) | TrackBack(0) | Jリーグ

2006年11月24日

多々あるのですが

 五輪代表の日韓戦の翌朝に、本業都合で韓国に移動したもので、更新が進んでいない。後でもう少し深く書きたいような材料が溜まってしまった。



 まず五輪代表日韓戦。

 反町氏はかなりヤバイと思う。中国、韓国と戦った4試合の選手起用だが、私の見るところ(相当偏見に満ちている可能性がある事は否定しませんが)およそ「公平な競争」からは、ほど遠いもの。

 さらに、試合後の記者会見で、この日輝いていた選手を意味不明に傷つける発言も見受けられる。この反町氏のコメントが各方面で、平山に関する言及のみ取り上げられているのも、奇妙な事だが。

 豊富な選手層と言う「嬉しくも難しい状況」に対して、策を弄し過ぎるのみならず、マスコミにサービスし過ぎるあまり、自分でどんどんと仕事を難しくしているように思うのは私だけか。 

 別途、詳しく述べたいと思っているが、これで各選手の不満を抑えて、「チームマネージメント」が巧く行き、アジア大会で好成績を収めたとしたら、反町氏の手腕は「恐るべきもの」と言う事になる。もっとも、この男の場合、「恐るべきもの」なのではないかと期待も持たせてくれるだが。



 中村のFK。

 前回と異なり、今回のは正に「中村ならでは」の凄い一発。実は私はこの一撃を、約1日遅れで何も知らずに酔っ払って戻ったホテルにて(当然ながら)韓国のTV中継で堪能した。そして、21年と約1ヶ月前の、左右対称の一撃を思い出した。距離と言い、「ボールが曲がる」と言い、「ボールが落ちる」と言い、GKがノーチャンスな事と言い。



 J1優勝争い。

 結果しかわからないが、ここ数節は、「レッズが負ける」のと「ガンバとフロンターレがこける」を交互に繰り返しているのが面白い。このペースで行くと、次節FC東京が恒例の上位いじめを行い、無事勝ち点2差で直接対決になるのだが。それにしても、フェルナンジーニョが...



 文丈と城の引退。

 長期間我々を愉しませてくれた名手が、トップクラスのプレイを断念するのは寂しい事だ。城の引退決意を否定するものではないが、できる事ならばもっとやって欲しかった。選手の限界は年齢で決められるものでない事はわかっているつもりだが、文丈くらいボロボロになるまでやって欲しかった。

 できれば、この2人への惜別は別途。 



 事務連絡し忘れた話。

 22日発売のエル・ゴラッソ。今週のお題は柳下氏だったのだが、どうにも絶妙なタイミングだったようで。中々素敵な写真が付いていたのですが。
posted by 武藤文雄 at 23:12| Comment(9) | TrackBack(0) |

2006年11月18日

おしまい2006年

 現場にいなかった己の情けなさは当然として。ベガルタは、これで4シーズン連続のJ2生活が決まった。 

 ところが、事情で今日は首都圏から遥か離れた数百kmのところで、本業に励んでいたのだから、情けない事おびただしい。ただ、自分を納得させるために、「今日は勝つ、勝負はこの後」と、無理やり念を入れていたのだが。

 試合内容については映像も見ていないので何とも言えない。ただ、ボルジェスのPK失敗が大きな局面になったと言う。正に、今シーズンを語っているように思える。



 別にJ1に上がれなくても終わりでも何でもない。J2はJ2で決して悪くない。毎週毎週、いや毎半週ごとと言う感もあるが、リーグ戦がやってくる。J2の仲間の多くは、仙台と同様の地方都市、「お互い何でこんな女に引っ掛かったんだろう」と言う思いの同士どうし(あ、女性の方はもちろん「女」を「男」に読み代えて下さい)。たまに昔のよかった時代を思い出す。「ああ、マルコスが中田浩二に競り勝って、完璧なヘディングを決めたなあ」とか、「清水が、岡田を完全に騙し切ったなあ」とか。数少ない美しい思い出は、後の人生が悲惨であれば悲惨であるほど、いやその前の人生が屈辱的であれば屈辱的であるほど、一層美しくなっていく。

 遠い思い出が美しければ美しいほど、近い思い出が悲しく思い出されるのも面白い。噂で聞こえてきたベルデニック氏が要求した選手。そのベルデニック氏に払った違約金。都並の昨年最終節のあの珍采配。



 いつも主張している事だけれども、勝とうが負けようが、チームと一緒に七転八倒するから愉しいのだ。愉しいのだけれども、やはり負けると悔しいよね。

 まあ、事実上今シーズンは終わった。残り3節を、プライドを持って戦って欲しい。



 ベガルタのフロントと言うか、東北ハンドレッドと言うか、ベガルタ仙台と言うか、要求は幾多にある。友人達と少しずつ、その要求を伝え、理想に近づくように戦っていけばよいのだろう。もうどうしようもなくなってしまった日本協会よりはズットましだろうし。

 理想を語ればキリはない。サンフレッチェのように「カネはないが体制が見事」と言うクラブもうらやましい。グランパスのように「カネはあるが体制は...でもグランパスくん一家は素晴らしい」もまたうらやましい。いや、J1のクラブは皆うらやましいし、J2のライバルたちにしても、うらやましいチームは幾多もある。

 大事な事は、ベガルタ仙台と言うクラブが、向上心を持って、「他のクラブはうらやましい」との新鮮な思いを忘れない事ではないか。そして、今ベガルタから失われているのは、その「羨望」感ではないかと思ったりする。



 ただねえ。あの4、5月頃の、ボルジェスとロペスも利いていたが、菅井が梁が熊林が後方から次々に沸いて出てくるサッカーで得点を重ねていた頃を思い出すと、心底悔しいのだけれども。
posted by 武藤文雄 at 23:54| Comment(20) | TrackBack(1) | Jリーグ

2006年11月15日

美しい3得点

 前半16分過ぎ、サウジの甘いクロスを川口がキャッチ。素早く右に開いた加地にグラウンダの展開(これは急)、加地は巧く前向きにターンしながら中央の憲剛にはたく(これは緩)、憲剛はダイレクトで速く低く正確なクサビを巻に当てる(これは急)。巻はよいトラップで前を向きつつ大きく逆の左サイドに展開(これは緩)、左オープンで受けた駒野は走りこんだ勢いを止めずに前進、アレックスが左外に走りこんで敵DFを引き付けてできた空間に走りこみニアにセンタリング(これは急)、ムンタシャリ独特の身体を伸ばし切るプレイでクリアされたものの、実に美しい展開だった。NHKの町田アナウンサも、よほど嬉しかったらしく、大騒ぎしていたが、この美しい展開以降日本は圧倒的にペースを掴む。
 引き続き、今野、闘莉王、阿部の最終ラインでいやらくしボールを回し、右に流れた阿部が中央憲剛に預けて、最前線に進出、憲剛は阿部に引き付けられたサウジ守備陣の逆を突き我那覇に精度のあるロングボールを合わせるが、かろうじてGKが好捕。そのゴールキックを、日本守備陣が簡単にカットし少し回した後、引いてきた憲剛に。憲剛は素早く右でフリーになった加地に展開、加地は冷静に前線でフィードすると、右に流れてきたアレックスが突破を狙うが、サウジ守備陣がかろうじてタッチに逃げる。そのスローインを、アレックス、加地、啓太でつなぎ、上がってきた闘莉王がフリーで巻へ狙いすましたスルーパス、巻は巧いトラップから強シュートを放つが敵GKが好フィスティングで逃げる。その憲剛のCKは敵GKがパンチで逃げるが、それを拾ってしつこく攻め込み、最後は憲剛の好クロスをサウジDFがかろうじてCKに逃げる。そして、この2度目のCKを憲剛は、ピタリと巻に合わせ(巻の前に我那覇が走りこんだのがまたよかった)、サウジがかき出したところを、闘莉王が詰めて先制した。
 何という分厚い攻めだろうか。川口が最初に加地にフィードしてから、最後に闘莉王が押し込むまで、3分30秒。この3分30秒間、ゲームメーカの憲剛と、リベロの闘莉王を中軸に、11人全員が次々に登場し、緩急、高低、前後左右、様々なひねりを加えた美しい攻撃を連発し、サウジの堅陣をこじ開けた。
 その後の猛攻がまた凄い。我那覇と駒野の逸機も、チーム全体の組み立てによるもの。このあたりで町田アナウンサは興奮のあまり「サウジ相手にこんな猛攻するなんて」と語った後、6年前のアジアカップ1回戦の4−1の完勝を思い出すのが御愛嬌。
 そして、2点目の美しい事。日本のプレスにパスの出しどころがなくなったサウジの甘いパスを駒野がカット。落としたパスを受けた阿部は、闘莉王とのパス交換の後、左足(利き足じゃないから凄い)で精度の高いサイドチェンジを加地にピタリと合わせる。加地の外側を長躯した今野が走り抜けパスを受けると、今度は加地が今野の外に走り抜けサウジDFを引き出す。そのおかげで全くフリーとなった今野は狙い済ましたクロス、我那覇は余裕綽々ヘッドを決めた。憲剛を軸にめまぐるしい攻撃をしかけて1点目を奪った日本。そして、2点目は阿部と今野と言う守備ラインに控える至宝コンビの演出によるものだった。
 TV画面に、啓太の代表試合が7試合目と言う表示を見て、「あー早くもオシム爺さんもは7試合目の采配なのか」と感慨にふけった。そして、「ワールドカップ以降僅かに5ヶ月で、ここまで見事なサッカーを見せてしまって大丈夫なのかな」と余計な心配をし始めたその時。

 啓太が絵に描いたようなプレゼントパス。そこからのサウジの速攻。人数が足りているにもかかわらず、今野が少々厳しすぎるチェックをしてしまいPK献上。豪州人の主審も、このまま大差がついては拙いと思ったのかもしれない。が、啓太のチームの好リズムを過信したが故のミスパス、今野の不用意な対応。逆説めくが、ここまでの美しい攻撃に対比して、このような未成熟なミスがあると妙に安心する。ただし、啓太も今野も、決して若くはない。水野や柏木がこのようなチョンボをするなら可愛いが、2人共もういい年齢なだから、猛省すべき。

 そして後半。開始早々に日本は遅攻からまたも美しい3点目。川口、啓太、闘莉王とスローテンポなつなぎ、憲剛が右の阿部に展開、阿部は我那覇が得意の短いクサビを入れ、我那覇は正確に憲剛に落とす、憲剛はここでスピードアップ、左前方のアレックスに当て、アレックスはより左後方の今野に落とす。ここまでのパス交換で今野はハーフウェイライン近傍で全くフリーになる事に成功。落ち着いて、前方に走り出す駒野にフィード。フリーで抜け出した駒野は左足で低いセンタリング、そこには先ほど阿部の前方にいた加地が走りこむも合わせ切れず。しかし、そのウラには巻と我那覇が前後差をつけて走り込んでおり、最後は大外からきた我那覇が全くのフリーで冷静に敵陣に流し込んだ。川口が啓太にパスしてから、我那覇が流し込むまで30秒たらず。この間、サウジは全くボールに触れず、一方日本は全選手が絡んだ完璧な得点だった。

 あ、それ以降は津波警報になってしまいました。本業の都合で、時間差視聴(つまり録画を爾後愉しもうとしたのです)を試みたのですが、NHK衛星放送は津波警報に切り換えてしまった訳。まあ、天変地異重視は当然でしょう。したがって、高松の奮闘も、闘莉王のPK失敗も(でも、どうして闘莉王が蹴ったのだろうか)映像は見ていません。いつ再放送があるのかなあ。まあ、あの3点目までの濃厚さを存分に堪能したので、よしとすべきでしょう。
 オシム氏には相当な期待をしていた。凄いチームを作ってくれると信じていた。しかし、ここまで早く見事なチームを作ってくれるとは思ってもいなかった。実に見事な試合だった。
 そして、その他に..
 欧州には中村も松井も中田浩二もいる。Jリーグにも、小野や福西や久保がいる。この日のベンチには、隼磨、長谷部、寿人、前田ら優秀なタレントがズラリと待機していた。もちろん播戸も遠藤もいる。さらに反町氏は、この日召集された本田や青山を筆頭に、水本、谷口、北斗、水野らを抱えている。吉田靖氏は、福元、梅崎、柏木、内田、若森島...そして城福氏は柿谷...

 何のかの言って、夢のような4年間を愉しめるだろう事を改めて確信した次第。
posted by 武藤文雄 at 23:55| Comment(29) | TrackBack(0) | 日本代表

2006年11月14日

あれで負けないのだから凄い

 先日、この試合の五輪代表選考について、反町氏に因縁をつけたわけだが、内容はさておき、敵地での引き分けだから、結果には文句をつけられない。さらには「プライドが傷ついているのではないか」と懸念した、谷口、水野、カレンが他の選手をリードし、堂々たるプレイを見せたのも、チームマネージメントが巧く進んでいる証だろう(ベンチに座っている井原氏が、そのあたりでは相当利いているのかもしれない)。そう考えると、因縁は空回りしたと言う事か。反町氏には「恐れ入りました」と言っておこう。



 しかし、序盤は本当に酷い内容だった。

 最終ラインの惨状には目を蔽わされた。開始早々に2度の決定機を許しかろうじてしのいだ後のCK、柳楽があえなく敵に前を取られて失点。この失点までの3度の決定機は、DFが単に敵FWに置いていかれると言う大変残念なもの。

 その後も、さほど正確とは言えない韓国の後方からのロングボールに対し、どんどんとウラを簡単に取られてしまい圧倒的に押し込まれる。それで舞い上がってしまったのか、韓国の単独ドリブル突破にDFが軽率に当たりに行き、ビシビシと抜かれてしまう。柳楽、千葉も、Jではもう少しまともに守っていると思うのだが。さらに、CBの不振が飛び火したのか、左DFに起用された上田も抜かれまくった。3人とも、それなりに、Jリーグでも試合経験のある選手なのだが。あれだけ守備ラインがボロボロになると、韓国はロングボールで易々と攻め込めるため、日本は中盤で攻撃を止めるところではなくなってしまった。

 加えて、トップのカレンにボールが全く収まらない。もともと、カレンと言う選手は、豊富な運動量でペースをつかんでいく選手なのだが、押し込まれているためかDFが不正確なロングボールを蹴りまくるので、1人でそれを追い掛け回す事になってしまった。元々、ジュビロでもワントップではあまり機能していないのだから、この起用法は気の毒だった。

 かくして悲惨な前半だったが、GK松井の好守と韓国のシュートの拙さにも救われ1点差のままで終了。ともあれ、代表GK松井と言われるだけで、約20年前を思い出し何となく嬉しくなった、ライバル西川は強力だが順調に育って欲しい。それはそれとして、前半のピッチ上の圧倒的な劣勢は30年くらい前の日韓戦ばりだったな。



 後半、立ち上がりから韓国が再度猛攻をしかけてくるが、ここでも幸運にも恵まれ無失点でしのぎ切る。そして、ここをしのいだ所から流れが変わる。想像だが、日本があまりに不甲斐なかったのでて、韓国は逆に攻め込む機会が多過ぎ、結果的に攻め疲れたのではないかと思う。

 とにかく以降、谷口が中盤後方で落ち着いて展開が可能になる。すると、水野が前向きにボールを持つ機会が増える。水野がドリブルで「行くぞ、行くぞ」と仕掛ければ、敵DFは後退を余儀なくされる。結果として、上田、田中の両サイドバックも押し上げられるようになる。と、突然全てが好循環に回り始め、日本がペースを掴む。

 同点弾は自殺点だったが、あれだけ揺さぶって攻勢をしかければ崩れるものだ。入った瞬間「どうしてカレンはガッツポーズを取らないのだろう」と怪訝に思ったのだが、触れなかったのね。でも、あそこにカレンが飛び込まなければ入らなかったのだから、胸を張って欲しい。五輪代表のFWラインは、平山、苔口、前田と言った素質豊かなライバルたちが皆伸び悩んでいる。彼らと比較してカレンはJの実績で彼らをリードしていたが、五輪代表における位置づけでも抜け出した言ってよいのではないか。



 同点後は再び韓国がペースを掴むが、日本もしっかりと逆襲を仕掛け、好機の数は互角。ただ、前田を投入しFWを2枚にしたのはよいが、3DFに切り換えたのは失敗だった。結果的に水野の動作開始点が後方に下がってしまったから。

 一方で抜擢された乾が個人技を発揮し、好機を演出したのは見事だったが、これは将来への期待の余技と言ったところか。ユース代表の梅崎、柏木コンビに、乾が割り込むのは愉しい想像だ。



 結びにこの日素晴らしかった谷口と水野へさらなる要求。

 谷口は腕章もよく似合い、正にチームリーダとして機能した。しかし、あの苦しかった前半、中盤でもっと暴れ回って欲しかった。もう、「自ら戦う事で味方を鼓舞する事」を要求してもよいレベルまで来ている。

 そして水野、この日ボールを持った時の風格は実に見事。しかし、複数回あった決定機のいずれかは決めてくれなければ。このような難しい試合を決めてのエースではないか。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(7) | TrackBack(0) | 五輪

2006年11月13日

これで優勝までしてしまっては贅沢か

 悔しいけれど、まあ仕方がないのだろうな。準々決勝では後半終了間際に美しい得点で突き放して、ワールドユース出場権獲得。準決勝では、幾多の戦術ミスはさておき、人数が1人少ない中で、ほとんどサンドバック状態になりながら守り抜き、宿敵とのPK戦を勝ち抜き。と、ここまで美しいドラマを描いてきて、これでアジアチャンピオンになっては、何か申し訳ない。と言うより、勝とうが負けようが、これだけ厳しい試合を経験できたのだし、「復讐心」と言う得難い経験を積む事ができたのだから、よいアジアユースだったのではないか。繰り返すが、ワールドユース出場権と、ライバル韓国への勝利を刻む事ができたのだから。

 さらに言えば、このチームは北朝鮮とやるのは3回目。選手達は3回目で負けた事をよほど悔しがっているようだが(とてもよい事だ)、醒めた視点から言えば、このチームの第一目標「ワールドユース出場」のためには、この決勝戦よりも、熊本の1次予選、先日の1次リーグ初戦の方が、よほど重要だった。重要だった試合は、キッチリと勝ったのだから、何ら問題はなかったのだ。



 でも悔しいね。



 一方で、北朝鮮のガンバリにもビックリ。考えてみれば、上記のように要となる試合でことごとく日本に負けながら、よくもまあゾンビのように生き返ってきたものだ。前半、ガツガツ来て日本が苦しむのはある程度予測していたが、120分間ガンバリきったのには驚いた。後半、ようやく日本が落ち着いてボールをキープできるようになり、柏木と梅崎を軸に幾度となく好機を掴むが、守り切られてしまった。さらに前線の選手の脚力が落ちず120分間走り切り、幾度となくカウンタから好機を掴んのだから恐れ入る。40年前ミドルスプラでアズーリがやられた時も、このような脚力にやられたのだろうか。

 以前より語ってきたが、東アジアで日本と韓国が突出している事は、日本にとっては決して望ましい事ではない。したがって、北朝鮮が強いチームを作ってきた事は歓迎すべき事態であろう。少なくとも、優秀な選手を並べながらも志の低いサッカーしかできないサウジアラビアや、敵の足を蹴ってはいけないと言うルールが定着していない中国よりは、格段に魅力的なサッカーだった。もちろん、脚力に頼るサッカーには限界もあろうが、1人1人の選手の技術もそれなりに高いものがあったので、将来テンポを落とせる選手が登場する可能性もあるだろう。また、安英学、李漢宰、梁勇基(あるいは彼らに続くタレント)と言った日本育ちの選手が、有効なアクセントになるかもしれない。



 監督の吉田氏だが、中々の現実主義者のようだ。「大人の」采配で、「選手に経験を積ませ」ながら「負けない事を狙った」ように思えた。

 ハーフナーと伊藤と言う今大会出場機会は少なかったが「素質」に期待できそうな選手を起用した事だ。考えてみれば、今大会の6試合中、初戦北朝鮮、タジキスタン、サウジアラビア、韓国の4試合は「必勝」体制で臨み、イラン戦と決勝は「経験」も考えたように思えた。もちろん、フレッシュな選手を起用したと考える事もできるが、森島がそれほど消耗していたようには見えなかったし、青木は過去2試合フル出場していた訳でもない。むしろ、定石としては、アトム、森重に代えて香川や柳沢を入れて、柏木の守備負担を減らすべきだったのではないか。

 また3人目の交代を我慢したのは、「勝つ事」よりも「負けない事」を狙い、終盤の負傷に備えたのだろう。GK林に対する信頼感から、PK戦に持ち込まれても勝つ可能性が高いと考えたのかもしれない。ある意味でこの策は的中し、終盤も終盤で森重の足がつった時に、柳沢を投入する事で、守備のやらずもがなの崩壊を防ぐ事ができた。けれども、戦闘能力の優位さを考えたら、3枚目を積極的に使い「勝ち」を狙って欲しかったのだが。

 しかし、吉田氏は現実的な選択肢を選んだと言う事だろう。誰よりも吉田氏も決勝で勝てなかった悔しさを感じているだろうが、彼のより本質的な仕事は、優秀な素材を成長させる事とワールドユースでの好成績なのだから、そのような選択も正しい。是非、吉田氏には、小野の時よりもよい成績を収めてもらいたい。



 それにしても柏木の成長には恐れ入った。あの同点弾の場面、柏木が加速して敵DFに向かっていった瞬間に、思わずTV桟敷で「勝負しろ、お前なら2人くらい抜けるだろう!」と叫んだら、その通りになり、坊主の尊敬を獲得する事ができた(笑)。独特のリズムのドリブル、振りの速いスルーパス、精度のあるヒールパス。今大会梅崎も決して悪くなかったのだが、少なくとも今大会は柏木の大会だったな。すっかり風格がついた柏木が、サンフレッチェに帰り、寿人にビシビシとラストパスを通すのを愉しみにしよう。おー、そうだ、反町さん。来週の国立には、柏木を呼びましょうよ。



 ここまで、複数回に渡りアジアユースについて講釈を垂れてきた。しかし、ある意味で最も重要な話題2点に、にまだ到達できていない。7回連続出場そのものが大変な偉業である点、そして内田の召集問題(柳川の帰国問題を含む)である。この2点については、相互の関連を含め、後日述べたいと思う。
posted by 武藤文雄 at 23:42| Comment(8) | TrackBack(1) | 若年層

2006年11月11日

マリノスの悩み

 レイソルがヴィッセルに競り勝ってしまった。ここは、ベガルタは残り4試合を全勝し、レイソルが4連敗すれば、逆転できる可能性が残ったと前向きに捉えるばかりだろう。少年団の都合で、次節のレイソルとの直接対決を見に行くのが難しそうなのが悩みなのだが。え、サガン?まあ、それはそれとして。



 天上界の優勝争いだが、ガンバとフロンターレが敗れ、またレッズが圧倒的な優位に立ってしまった。ガンバは播戸の負傷が痛かったようだ、このような時こそフェルナンジーニョが必要なのだと思うのだが。そしてフロンターレは信じ難い逆転負け、2人退場が出た上で逆転されたようだが、何が起こったのだろうか。



 一方のレッズは、見事な試合でマリノスを打ち破った。

 マリノスとしても、ここでレッズを叩く事を相当意識したのだろう、共に守備を固める激しい試合となった。前半半ば過ぎから、お互い簡単には点が入りそうにない展開となる。ところが、レッズはマリノスの一瞬の隙を突いて先制する。マリノスから見て左サイドのスローイン、ドゥトラ?が入れたボールを啓太(多分)が鋭い出足でヘディングでカット、浮いたボールを受けた永井がそのままボレーで前線にフィード、ポンテが見事な動き出しでそのボールを受け縦に抜け出しグラウンダのセンタリング、フリーで飛び込んだ山田が冷静に決めた。永井がボールを浮かそうとした時に、「抜け出せる可能性」に賭けて動き出したポンテを褒めるしかない得点。ただ、ポンテについてたのは松田だっただけに「抜け出される危険性」を読んで欲しかったのだが。この微妙な差は、「優勝争い」の有無だったのかもしれないが。

 その後も互角に近い攻防だが、マリノスは好機を作れない。この日のマリノスは4−4−2で攻撃的?に行こうとしたようだった。しかし、レッズの啓太、長谷部、山田の中盤の守備感覚が素晴らしく、マリノスは両翼に枚数を揃えて突破する事も、上野や山瀬によい体勢でボールを持たせる事も叶わなかった。一方でレッズの鋭いカウンタを、松田と中澤がよく押え緊迫感のある試合が継続。水沼氏は終盤に久保、隼磨、坂田と豪華絢爛な大駒を次々に投入しパワープレイを仕掛けて幾度か好機を掴んだが、最後の最後で闘莉王を破れず。



 両軍の守備の強さが前面に出た面白い試合だった。 

 しかし、マリノスはどうにも攻め手を見出せず、終盤のパワープレイに頼らざるを得なかった。先取点を奪われてしまいレッズに分厚く守られた事も確かだが、何かそれだけでない差があるように感じた。考えてみれば、この2シーズンマリノスは、自他共に認める分厚い戦闘能力を確保しながら、思うように勝ち切れずに、ついには名将岡田氏が辞任している。その要因としては、マンネリだとか、負傷者が多過ぎる事とか、様々な事が語られてきた。この日のマリノスの苦戦を見ていて、もう1つ異なる要因があるのではないかと思った。

 それは、守備ラインの選手のプレイスタイルが似過ぎているのではないかと言う事だ。このチームは、能力的には日本最高と言える中澤と松田がいて、さらに河合、栗原、那須、加えてベテランの中西と、実に強力な守備選手を抱えている。中西以外の5人はいずれも、大型選手で空中戦が強い。しかも、大型選手にありがちな足元の守備も問題なく、さらにボール扱いもそこそこよいのでフィードも悪くないし、持ち上がってのプレイもできる。バランスの取れた大型センタバックが少ない日本サッカー界ゆえ、ほとんどのクラブが外国人選手を補強しているが、マリノスだけはその必要が一切ない。

 バランスの取れた守備者ゆえ、河合や那須は守備的中盤で起用される事が多い。他のタイプのマリノスの守備的中盤選手と言えば、上野、マグロン(もういないけれど)、展開力と技巧に優れた選手だ。このレッズ戦の守備的MFのスタメンである河合と上野の組み合わせは、頑健+展開力と言う意味で理想的なバランス。

 けれども、この日ののように先手を取られ、強力な最終ラインと精力的な中盤に守りに入られた時に、この組み合わせはどうだろうか。マリノスとしては、展開力のある上野、ラストパスを出せる山瀬、サイドを個人技で崩せるドゥトラや吉田(隼磨)らが、フリーで敵陣を向いた状態を作りたい。けれども、レッズ(のような守備の強いチームが)が落ち着いてボールを回し、組織的な守備で中盤にスペースを与えてこないと、マリノスの名手達は思うように前を向けない。それを打破するためには、敵のボールを跳ね返す対応をする河合のような選手ではなく、(例えば啓太のように)自ら能動的にボールを奪い取りに行く選手が必要になる。ところが、豊富な選手層を持つマリノスだが、不思議にそのような選手がいないのだ。啓太とか今野とか明神のように代表クラスとまでは言わないが、中盤でよく動いて敵MFに自ら絡んでまとわりついてボールを奪いつなぐ選手、ジェフの坂本とか、トリニータの梅田とか、FC東京の浅利とか...そのような選手が1人でもマリノスベンチに座っていれば状況は改善するのではないか。しかし、あれだけ質の高い守備選手を多数抱えているマリノスとしては、わざわざそのような人材まで補強するかと言うと...

 まあ1つの邪説と思っていただければ。マリノスの苦戦の要因は、他チームから見れば垂涎の的である守備選手の層が厚過ぎる事ではないかと考えた次第。
posted by 武藤文雄 at 23:05| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ

2006年11月10日

反町氏への大きな疑問

 私は今まで、反町監督を高く評価してきたし、五輪代表の監督としても大いに期待している。しかし、今回の韓国戦のメンバ選考は、全く納得ができない。具体的には、前回の国立中国戦で先発起用された選手が、選考されていない事だ。

 反町氏のコメントの主要部は以下の通り。
今年の目標である選手層を厚くする、一人でも多くの選手に経験をつんでもらう事を基準に選手選考を行った。この遠征では、前回中国戦で試合経験が出来なかった選手を中心に戦う。
 狙いたい事はよく理解できる。今年は可能な限り多くの選手に機会を与え、予選が始まる来年にチーム作りをしたいのだろう。また、単独チームに迷惑をかけないため、1回ずつの召集人数を少なくしたいと言う考えもあるだろう。けれども、運用が決定的に拙い。



 まず第1に相手が韓国だと言う事そのもの。韓国とは常に真剣勝負をすべき。どのようなレベルでも、韓国は日本と同等の強いチームを作ってくるに決まっている。たとえ、準備試合だとしても、その時その時の可能なベストメンバで戦うべきなのだ。試合前から、指揮官が敗戦の言い訳を準備可能な状況に自らを置いて、韓国と戦う事だけは許されない。これは理屈ではない。



 第2に選手のプライドの問題。これでは何をどう言いつくろっても、今回選考された選手が2軍扱いになってしまう。しかし、谷口、水野、カレン、家長、枝村と言った、中国戦に起用された選手と同等以上にJで実績を残している選手が、このような扱いに納得するだろうか。納得するとは思えないし、納得されても困る。彼らはプロだし、出る出ないの問題は団体競技の常だから、表立って不満を吐き出す事はないだろうが、面白く思っているはずはないだろう。さらに、不当な低評価を甘んじて受け取るようでは、成長も期待できない。彼らを使う側が、そのような事に細心の注意を払わなければならないはずだ。



 第3にこのような分離強化は、「集めて強化する」事の最大の目的である連携の強化に役立たない事。今回の五輪代表は、実に多士済々。最前線こそやや層が薄いが、DFとMFはJで実績を上げている選手がズラリと揃っている。反町氏の仕事は、これらの選手を適切に競争させながら連携を高め、五輪で好成績を上げる事で優秀なタレントに成功体験を積ませ、選手の成長を一層促進させる事にある。具体的に言えば、どの守備者が西川と円滑に連携できるか(もちろん、松井、佐藤昭、そして林らが、西川を脅かすべく研鑽を積む事は当然として)、本田と家長は併用できるのか、水野と北斗(と内田)をいかに並べるか、エクストラキッカーとして(いやファンタジスタでも何でも呼び名は何でもよいのですが)梶山、本田、水野、(梅崎、柏木)の誰を選ぶのか、等々と言った問題こそ、反町氏の仕事ではないのか。



 反町氏について危惧していた事が起こり始めたのだと思う。アルビレックス関係者には大変失礼かもしれないが、反町氏は「豊富な人材を自在に」指揮した事はないのだ。彼の実績は「少ない人材を苦労して」指揮した事だったのだ。現時点での反町氏は、ありあまる玩具を持て余し、強化を理論的に進めようと考え過ぎて、理論倒れしようとしているのだと思う。

 幸い、反町氏には1年半の時間がある。「少ない人材を苦労して」指揮していた監督が「豊富な人材を自在に」指揮する監督に成長するには十分な時間だろう。「豊富な人材を自在に」指揮していた監督が「少ない人材を苦労して」する監督に成長するは相当難しいだろうが。ただし、反町氏の仕事は、自らが成長する事ではなく、成果を出す事なのだが。



 以上クドクド述べてきた私の屁理屈を、反町氏には是非見返して欲しい。話は簡単だ。韓国に2連勝してくれればよいのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:17| Comment(14) | TrackBack(0) | 五輪