簡単に7回連続出場と言うけれど、凄い記録だ。2年おきにU19の選手のチームが、毎回アジアのベスト4に入っていると言う事だ(連続出場の最初、中田、奥、松田、田中誠らの時だけは2国出場)。年齢制限のある大会で、毎回この成績を収めるためには、強いチームを作るだけではなく、(抽象的な表現だが)勝負強さも具備しなければならない。この7回中、韓国でさえ2回出場権を逸しているのだ(韓国は86年にワールドカップ出場した以降、ワールドカップ、五輪は全て出場している)。大体4枠のワールドユース出場は、4.5枠のワールドカップ出場より厳しいのだし、しかも短期決戦だから番狂わせの危険も高いのだから。
これは、90年代半ば以降、日本サッカーがアジアで屈指の強国である事と共に、ワールドユース出場に向ける「本気度」が他国より強い事が、要因として挙げられるだろう。「世界」を目指す日本としては、追いつくべき欧州、南米の強国と比較して、近隣にライバルとなる国は韓国くらいしかないため、若い選手が国際経験を積む経験が少ない。そのため日本では、ワールドユースや五輪のような、若年層の世界大会に出場し、優秀な若手選手に経験を積ませる事が非常に重要と考えられている。したがって、今回のチームに限らず、日本協会は相当長期の準備をこの世代のチームに行ってきており、その成果がこの7回連続出場の偉業と言えるだろう。日本協会の10年以上の積み重ねは、高く評価されてよい。
話は変わる。このアジアユース大会前のJリーグで、アントラーズのサポータが試合前に「内田のアジアユース代表出場反対」とアピールしたのが、一部で話題になった。ナビスコカップの決勝戦と、アジアユースがバッティングしたためだ。若くしてアントラーズの中心選手として活躍する内田が抜ける事は、戦闘能力的には相当痛手だと予想された。事実、ナビスコの決勝は、「内田不在」が大きな勝負のアヤとなった。アントラーズは、内田がいないため、本来左バックの新井場を右に回し、左サイドには不慣れなファビオ・サントスを起用した。そこに、絶好調の水野晃樹が来てしまい、そこから失点し敗れ、優勝の名誉と賞金(優勝と準優勝の差額は5千万円)を獲得し損ねた。言うまでもなく、内田がいたからと言って「アントラーズが勝てた」とは限らないが、アントラーズ関係者としては、不満が残る今回の内田の招集ではあっただろう。
一方、大会途中で柳川がユース代表を離れ帰国した。これは、J2昇格を争う佳境にありメンバ編成に苦しむヴィッセルの要請を、ユース代表サイドが受けた事によるもの。ユース代表サイドが受諾した要因には、柳川が帰国した時点で日本は準々決勝でサウジを打ち破っておりワールドユースを決めていた事、また柳川はユース代表でセンタバックの控えと言う戦術的な交代には起用されづらいバックアッププレイヤだった事もあっただろう。いずれにしても、単独チームと代表チームで相互の了解が取れれば、話は簡単なのだ。
では内田についてはどうか。上記のようにサポータが組織立って不満を表明した事はさておき、アントラーズがワールドユースに内田を出場させる事を拒否する打診なりを日本協会に対して行ったのかどうはは把握していない(特にそのような報道はなかったように思うのだが)。しかし、もしそのような打診があったとしても、少なくとも現場の総責任者である吉田靖監督は、絶対に「諾」とは言わなかったと思う。それは冒頭に述べたように、現状の日本サッカー界においては、ワールドユース出場は非常に重要な位置づけをされており、もし出場権を逸する事にでもなれば、監督の責任は相当重いものになるからだ。吉田氏にとって、中心選手の内田の招集は必須だったであろう。また、ちょうどナビスコ決勝の日程は1次リーグ最終戦(消化試合になったのは結果論でこの試合がとても重要になる可能性があった)と、最も重要な準々決勝との間にあったので、(アジア大会のように)後から現地入りと言う策も取りづらかった。
一方、内田個人の経験として、どちらが有益かと言う議論はあるだろう。しかし、インドで同年代のチームメートと七転八倒するのと、満員の国立でジェフと雌雄を決するのと、どちらが有益かどうかは判断しづらい。正解など無い問題なのだし。
では内田はどうすべきだったのか。
個人的な意見としては、たかだか「若年層の世界大会予選」である。ナビスコを優先し、内田はアントラーズに残るべきだったと思う。ワールドカップ(及びアジアカップの重要な試合)以外の国際試合よりは、原則国内リーグを重視すべき、と言うのが私の考えだからだ。
吉田氏はプロフェッショナルなのだから、「与えられた条件」下で戦うべきだった。しかし、内田をインドに連れて行けなかったとしても、一切言い訳は許されない。内田の離脱は「負傷した」と思ってあきらめるべきだったのだ。世界中どのような監督も、中心選手の離脱をリアルに捉えて戦っているのだから。
ともあれ、これは私の主観。異論も多かろう。いずれにせよ、ケースバイケースとして、都度関係部門が真剣に打ち合わせを行い、選手個人の意向を含め、意思決定していくしかないのだろう。
で、一番の不安。とてもとても深刻な不安。
このような問題は今後いくらでも発生する。上記した通り、都度打ち合わせで解決していくしかない。しかし、もしその打ち合わせが決裂したらどうするか。もし、そのような事態になった時にはトップの「ご聖断」で決めるしかない。そして、その「ご聖断」を発行する事ができるのは日本協会会長。
ああ、それなのに。今の協会会長の発言を、誰が信頼するであろうか。





