2007年09月29日

バレーの決勝弾

 ガンバ対トリニータ、あのバレーの決勝弾。
 バレーの得点力と言うかシュートの精度と強さは凄かった(トリニータDF上本?の位置取りにも問題があったのかもしれないが)。しかし、あんな得点がロスタイムに入るか?
 で、色々な事を考えた。

 まず、優勝争い。何としてもレッズについて行きたいガンバとしては、あのまま引き分けに終わると1試合少ない段階で、レッズと勝ち点5差になるところだった。結果的に翌日に試合があるレッズには相当なプレッシャを与えるのに成功。3日に控えるACLの準決勝への対応を含め、レッズにはショッキングなロスタイムと言えるかもしれない。10月上旬はACLを戦うレッズにとって厳しい日程だが、中旬になるとナビスコを戦うガンバに厳しい日程となる。その意味からも、あまりに貴重なロスタイム得点と言う事になった訳だ。
 続いて残留争い。1部残留の星勘定から何としてでも勝ち点を確保したいトリニータ。ハーフタイムに、シャムスカ氏は攻撃の切り札梅崎をDFに交代、後半は勝ち点1を死守する狙いを明らかにした。遠藤の動きが今一歩だったガンバの攻撃が今一歩切れ味を欠いた事もあり、巧みに守り切った感があったのだが。残留争いも、横浜FCの陥落がほぼ決まり、FC東京とジェフが連勝で抜け出しつつある状況で、トリニータは残る降格枠にはまるリスクはまだ低くない(私の予想が改めて当たらない事に感心したりして)。この状況で、敵地ガンバ戦での勝ち点1獲得が濃厚だっただけにショックは大きかろう。魔術師シャムスカ氏の次なるカードはどうなるのか。
 この試合が、相互に絡み合い中々点が入らない難しい試合となったのは、明神とホベルトと言うリーグ屈指の「刈り取り屋」が、実力を発揮したからだった。それにしても、明神は相変わらず元気だな。この日のガンバの好機の多くは、明神の鋭い出足によるインタセプトによるものだった。毎回毎回しつこいが、もう1回代表で見てみたい。一方のホベルトも何とも落ち着いた対応で中盤でボールを押える妙技は相変わらず。経緯はよくわからないが、ベガルタサポータとしてはアビスパがこの選手との契約を継続しなかった事を喜ぶしかないな。
 で、改めて感じるのは、ブラジルと日本の「サッカー力」の差の大きさ。「何を当たり前の事を今さら」と言われるだろうが、バレーと言いホベルトと言い(いやエジミウソンもシジクレイもですが)本当にいい選手だ。しかし、彼らのレベルはセレソンに引っ掛かるかどうかと言うレベルだろう。どうしてブラジルと言う国は、あれだけよい選手を大量に育む事ができるのだろうか(いや、アルゼンチンも同様かもしれませんが、ブラジル人に比べると日本国内で活躍した選手は少ないのですよね)。あのような点の入り方を見ると、改めて当たり前の事を考えてしまった次第。

 それにしても、決勝点。映像を見る限りでは、シジクレイと競り合って一緒に転倒した森重に当たったこぼれ球が、バレーに流れたように見えた。正に偶然としか言いようのない得点ではないか。サッカーと言うのは、そう言うものなのだなと、これまた改めて感じ入った。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(9) | TrackBack(0) | Jリーグ

2007年09月28日

サッカーを好きでないトップを抱えて

 どのような組織でもトップが無能の場合、巧く機能しないと言われているが、我が国のサッカー界はその命題通りに進んでいないと言う意味で、非常に興味深い現象が進んでいるのかもしれない。
それにしても、日本協会会長がどうしようもないのはよく知っていたが、Jリーグ専務理事もどうしようもない事がよく理解できる一幕ではあった。
 「責任のある人間には言ってよい事と悪い事があるのだが、ああそれなのに」と言うのが、従来の川淵会長への嘆息だった。しかし、今回の暴言は「責任を持っていない人間としても不適切な発言」だな。単に傲慢で周りが見えないのみならず、サッカーの本質を全く理解できなくなっている事がよくわかった。ただ、Jリーグ専務理事はレッズ時代の手腕からすれば、もっと真っ当な人だと期待していたのだが。

 もっとも...私は今回の暴言騒動を耳にした時、最初180度勘違いして、「川淵、いい事言うじゃないか」と考えた。私は川淵氏が「せっかくJ当局がチャータ便をアレンジするなどしたのだから、レイソル戦にどうして伊藤や谷口を起用したのだ、彼らも休ませて、しっかりセパハン戦に準備をすべきだろう。」と叱責したのだと、最初思ったのだ。川淵氏の発言だからと言って、すぐに100%否定するのはいけないと気をつけるようにしていたのが、間違いの始まりだった。う〜む、最初から100%否定しても、そう間違いにはならない事態になりつつあるのか。

 そもそも、先日のレイソル戦については、フロンターレはいわゆる「ベストメンバ規定」を遵守している(個人的には「ベストメンバ規定」は悪法であり、廃止されるべきと考えているが、ルールがある以上は遵守する必要がある)。ところが、そのルールを守ったのにも関わらず因縁をつけられては、フロンターレもたまらない。これは怖ろしい事だ。明文化されたルールを遵守しているにも関わらず、上位者が「自分の思いつき」で、下位部門の行動を非難しているからだ。川淵氏は、日本サッカー界を「無法地帯」にしたいと考えているのだろうか。
 さらに不思議な事は、これらの暴言の狙いが全く理解できないのだ。過去の日本協会の愚行の背景を振り返ってみよう。例えば、05年のA征や先日の五輪代表征よりもオールスターより優先した事はオールスターのスポンサを意識したのは誰にでもわかる。06年4月のA代表の(欧州クラブ所属選手を招集できないためベストメンバでない)親善試合をJリーグ公式戦より優先した事も代表マッチのスポンサを意識したのも自明な事だ(このエントリのコメント欄で「ふるふる」氏がベストメンバ規定に言及しているのは傑作)。元々ベストメンバ規定を作るに至ったピッコリ氏騒動も、カップ戦のスポンサを意識したのも明白だった。いや、前代表監督の決定も...(以下自粛)カスミを食っては生きていけないのは確かだから、そのような意思決定も全否定はできないのかもしれない(しかし、トップの仕事はそこでスポンサの方々に納得いただく事なのだが...)。しかし、今回の暴言は一体何を意識して文句を言っているのか、さっぱりわからない。
 百歩譲って、彼らが何がしかの信念や正義感で今回の発言を行なったとしよう。だったら、何故ACL1次リーグの最終戦のバンコク大学戦、既に2次トーナメント出場を決めていなかったフロンターレが敵地に憲剛やジュニーニョはおろか、普段試合に出ていない選手を連れて行かなかった時に激怒しないのだ。いや、2004年のワールドカップ1次予選最終戦のシンガポール戦、2次ラウンド出場を決めていたジーコがこれまでレギュラとして起用しなかった選手を並べた時に非難しないのだ。断定するが、彼らには信念などカケラもないのだ。ただ、感情の赴くまま、権力を振りかざしたいから発言しているのに違いない。

 それにしても、あの素晴らしい試合の後、どのような神経を持っていたらあのような発言ができるのだろうか。もう彼らはサッカーが好きでなくなってしまったのか。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(87) | TrackBack(2) | Jリーグ

2007年09月27日

Jリーグ15年の成果

 左サイドの憲剛が、ノールック(としか思えない体勢で)右サイドフリーのジュニーニョに超高精度サイドチェンジ(スタンドから見ていた私よりも、フィールド内の憲剛の方が視野が広いのでないかと思わせる凄いパスだった)。堅牢なセバハンのDF陣が4枚慌ててジュニーニョに近づく。軽率に飛び出す敵DFを抜き去るのは、このブラジル人ストライカが最も得意とするところ。一気に4人を抜き去るスーパー個人技を見せ、強烈なシュート。しかし、セバハンGKモハマディが奇跡的に片手ではじき出した。決まっていれば、正に超アジアレベルの得点だったのだが。

 開始早々、セパハンのロングスローから連続CKのピンチ(ゴールを割られたが、オフサイド?でノーゴール判定)があったが、その後しばらくの時間帯はフロンターレの猛攻。憲剛やジュニーニョのシュートが飛び交った。セパハンの4−1−4−1のフォーメーションで中央の攻撃的MF2人が憲剛と谷口を押えるようになって、やや小康状態となる。そんな状況下、村上の左サイド突破からのジュニーニョのフリーシュートをモハマディが足ではじき出し、さらに冒頭の超アジアレベル決定機。手変え品変え突破しながら、崩し切れないイヤな雰囲気の前半となった。
 後半もフロンターレペース。幾度と無く好機を掴むが決めきれない。それにしてもセパハンのセンタバックとゴールキーパの強い事。これが国際試合なのだ。そんな中で森が負傷する不運、ここまで森は圧倒的な脚力で右サイドを切り裂いていたのだけに、これは痛かった。黒津を左サイドに投入し、村上を右に回す選択肢もあったように思うが、「1点もやれない」アウェイゴール2倍ルール。関塚氏もそこまでのリスクを選択するのは難しかったのだろう。
 後半終盤になると、フロンターレを「1点もやれない」感が襲い始め、無理ができなくなる。結果的に森負傷以降、「ある程度無理に攻める」時間帯を作れなかった。確かに終盤には各選手の疲労が顕著にはなっていた。しかし、疲労が前面に出ていたのはむしろセパハンの方。また、この日は谷口が非常によい出来で、3DFの前のディフェンススクリーンに位置取り、上下左右に動いてセパハンの逆襲の芽を摘み取り続けた。この谷口の献身もあり守備は安定していただけに、どこかの時間帯で強引に攻めに出てもよい気がしたのだが。
 延長開始早々、憲剛が足をつらせてしまう。関塚氏の選択肢は交代。たとえ、足を引きずる状態になっていても、憲剛は残すべきだったと思うのだが。結果的に、延長戦フロンターレは完全に攻めあぐむ事になってしまった。さらに終盤我那覇を投入するも、交代出場の割には運動量が少なく効果は少なかった。「にんにく注射」以降、すっかりこの選手は調子を崩してしまった感がある。
 そしてPK戦へ。

 サポータ達は、ゴール裏から敵のキッカーを少しでも幻惑しようとし、凄まじい音量のブーイングを浴びせた。しかし、サッカーの神は彼らに微笑まなかった。
 さらに、PK戦の約30分前、関塚氏はあろう事か、憲剛を交代させていた。倒れ行くチームメートを憲剛はどのような思いで見守っていたのだろうか。私はこの采配は間違っていたと思う。しかし、このチームをここまで引き上げてきた関塚氏の判断だったのだ。「正しい」か「正しくない」かの議論が無意味なのは間違いない。

 関塚氏がフロンターレの監督に就任したのが2004年シーズン。前年石崎氏に率いられながら後一歩でJ1昇格を逃したフロンターレ。新監督に抜擢された関塚氏は、J1昇格が必須として期待されていた事、既に名将として評価の高かった石崎氏の後任である事、と言った非常に難しい役割を担う事になった。
 ところが関塚氏は見事なチームを作り、圧倒的な強さでJ2を制覇。そのままJ1でも強豪となり、とうとうアジアのベスト8まで駆け上がるチームを作り上げた。箕輪、伊藤、寺田、佐原と言った頑健なDFを3枚並べる強固な守備ライン、抜群の突破力と得点力を誇るジュニーニョを軸とする高速カウンタアタック。この特徴はJ2時代から変わっていない。そして、フィールド上の指揮官である中村憲剛は、03年には「J2屈指の好MF」だったが、07年には「アジア屈指のMF」と呼ぶべき存在にまで成長した。関塚氏のチームは、中村憲剛の成長と同期して、チームの「格」を上げていったのだ。そして、ここでの「格」とは、チームの戦績だけではない。観客動員、地域密着、クラブとサポータの独特の厚い(熱い)関係を含めての「格」である。
 この躍進はフロンターレフロントと関塚氏の手腕と言う「必然」、中村憲剛と言う偉材との出会いと言う「幸運」の組み合わせによるものだった。いや、関東大学の2部のMFを獲得しここまで成長させたと言う意味では、これもフロントと監督の「手腕」と考えるべきかもしらず、「幸運」と呼ぶのは失礼かもしれないが。
 かの党首殿が、このフロンターレの躍進と敗退を
本当に悔しい結果。
浦和レッズなら今年勝てなくても、来年、再来年とチャンスがあるだろう。
しかし川崎はそういうクラブじゃない。
(中略)
アジアのベスト8に進出しただけでも立派には違いない。
川崎フロンターレ、J1のレベルは見事に証明された。
しかし膨らんだ夢が萎むのは切なく、虚しい。
と論じられている。その通り、彼らには来年、再来年はないだろう。屈強なDFたちも、ジュニーニョも、年齢的にギリギリなのだから。そして、だからこそ「圧倒的攻勢にも関わらずの敗退」の絶望感たるやなかった。派手な逆転劇やロスタイムの悲劇があった訳ではない。ただただ真綿で首を絞められるようにフロンターレは掴みかけていた勝利を獲得できなかったのだ。本当に悲しい敗退だった。しかし、これだけの悲しさを体験できるのも、またサッカーなのではないかと。

 息の詰まるような120分間の死闘。無理ができない中での猛攻。サポータの絶叫。強力そのもののセパハンのCBとGK。
 そして、呆然とする憲剛。天を仰ぐジュニーニョ。崩れ落ちる谷口。立ちすくむ関塚氏。

 これだけの絶望感を味わう事ができたフロンターレサポータの方々が本当に羨ましい。そして、この絶望的敗戦こそ、Jリーグ15年の1つの大きな成果と言えるだろう。

 最近ちょくちょく登場してもらっているフロンターレサポータの友人。惜敗に涙しながら後片付けをして、小学校6年生のご子息(この日も父親の指揮の下、ゴール裏で大旗を振って必死に応援していたらしい)と、深夜トボトボと帰宅したそうな。父親があまりにガッカリしているので、ご子息は必死に励ましてくれたとの事。「お父さん、まだナビスコがあるよ。」「天皇杯に優勝したら、またこの大会に出られるよ。」
 さすがに小6では、この日の敗退の無常までは理解できないと言う事か。ご子息は、数年後この晩の悲劇の重要性を理解し、己が参戦できた事を改めて誇りに思う事だろう。
 以前友人は「孫ができたら『昔、フロンターレがアジアチャンピオンになった事があるのだ』と自慢するのだ」と語っていた。友人の夢は破れた。でも、「昔、フロンターレが準々決勝でPK戦で涙を飲んだ」は、やはり相当な自慢話だと思う。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(3) | TrackBack(2) | 海外

2007年09月21日

アジアチャンピオンズリーグ準々決勝、微妙な初戦

 レッズはホームで2−1の勝利、フロンターレは敵地で0−0の引き分け、いずれも「得点勘定からすると微妙ではあるがまあ上々かな」と言う結果となった。

 レッズは早い時間帯に美しい先制点を決め、その後も押し気味に勧めながら追加点を取れないイヤな展開。案の定、前半も終盤以降は再三好機を作られた。それでも後半10分過ぎにCKから作られたピンチをしのいで逆襲速攻。達也が闘莉王とのワンツーから見事に決めて突き放した。その後は再びレッズペースに。終盤には山田と啓太の見事な連携から右サイドを崩し、長谷部?がペナルティエリア内で全くフリーになりながらスルーすると言う珍プレイ(誰か味方が背後にいると勘違いしたのだろう)で逸機。このような場面から流れは変わるもので、終盤全北のパワープレイに押し込まれる。
 ここで2つ残念な事があった。まず小野。敵CKをDFがしのぎ、ペナルティエリア外側で待つ小野に浮き球が流れてきた。ここで小野は横に流れてきた永井?か誰かに軽妙な浮き球のパス、ところが狙いが外れ敵にボールを拾われ、そこから決定機を与え、さらに敵攻撃の継続を許してしまった。己のボール扱いに自信があったのだろうが、あそこは一旦敵の攻めを切りたいところだった。そしてオジェク氏の交代タイミング。達也を内舘に代えるのは時間帯から言って妥当かもしれないが、敵CKの時に代えてはピッチ内の人数が減るだけの事だ。全北に内舘がピッチに入った瞬間にCKを蹴られ、敢え無く失点してしまった。オジェク氏の杓子定規な采配を突かれたと言うところか。
 言うまでもなく、この失点は痛い。2−0で終わっていれば、「2点先に取られてもまだ同点」が「1点先に取られたらもう大変」に変わってしまったのだ。このあたりが「アウェイゴール2倍ルール」の面白さと言えるのけれども。相手も必死なのだから、失点すること事態は仕方がない事だが、上記したミスが2本重なっての失点だけに、寝覚めが悪い結果となってしまった。
 済んだ事は仕方が無い。レッズにとって問題は、土曜日のマリノス戦をどう戦い、体調を整えて韓国に行くかと言う事だろう。ただリーグ優勝も狙うレッズとしては、敵地でのマリノス戦は相当厄介な戦いになる。Jの混戦化と言う意味でも、野次馬から見てもこの試合は今シーズンの重要な試合の1つ。強豪ならではの辛い連戦となる。
 戦闘能力を比較すればワシントンも戻ってくるだけに(全北に第1戦不在だった相当なレベルの別戦力がいればさておき)来週の第2戦は、やはりレッズは相当な優位に立っていると思う。特に、達也の動き出しに序盤ほとんど対応できていなかった全北守備陣が、ワシントンとポンテが上下に控える中で達也を止められるようには思えない。ただ、内舘投入時に見られたような、オジェク氏の杓子定規な采配がちょっと心配。

 一方のフロンターレ。0−0の結果は狙い通りのものと言ってよいだろう。ただ、セバハンの出来が今一歩で決定機はフロンターレの方が多く、ちょっと残念な気持ちも残る試合となった。実際、マギヌンの調子がもう少しよければ勝てていたように思えた。
 ただし、敵地で1点が取れなかった以上に残念だったのは、憲剛が警告を食らってしまった事だ。ペナルティエリアで憲剛が足を出して敵が転倒。トリッピングのようにも、ダイビングのようにも見える微妙な場面だった。DFの人数は足りていたのだから変な足の出し方をする必要がなかったのがまず残念。さらに主審が笛を吹いているにも関わらず両手を上げて敵のダイビングをアピールをした事で主審の心証を害してしまった。これで憲剛は、決勝の第1戦まで「何があっても警告を食らってはいけない」状況になった。「憲剛の不在」はフロンターレの野望を事実上終結させてしまうのだから。
 セバハンは、フロンターレにとって相性のよい相手だと思う。フロンターレ守備陣が苦手とするスピード突破やFWのポジションチェンジはあまり見受けられなかったし、憲剛へのマークも緩かった。セバハンのスカウティング部隊が以前来日したと言う報道もあったし、事前にフロンターレに対する研究は相当行なっていたはず。それなのに、適切な手立てを打ってこなかったのは少々不思議だったが、相性的に「アンチフロンターレ」的な策を取りづらいチームなのかもしれない。少なくとも2度目のお手合わせの際に、そう無策で来るとは思えない。初戦との交代メンバを含め、立ち上がりは要注意だろう。
 もっともフロンターレにとって最大の課題は、自分たちの体調だろう。第1戦を観た限りでは、フロンターレの選手の体調がよければ、相当の確率で勝つ事ができるように思う。しかし、フロンターレは日本−イランと言う長距離を往復してからの戦いになるのに対し、セバハンは片道旅行しかせずに、第2戦に臨む事になる。この差は大きい。
 レッズと異なりフロンターレは現実的にリーグチャンピオンになれる可能性はほとんどない。日曜日のレイソル戦、フロンターレは一部選手を休養させるべきだと思う。それにしても「ベストメンバ規定」なる妙な規定が、日本クラブの栄冠獲得を妨害するものだ。

余談
 フロンターレサポータの友人から聞いた話。あるフロンターレサポータの方がBLOGで「もうリーグ戦制覇の可能性はなくなった。リーグ戦では時に選手を休ませACLに専念すべきではないか。」と意見を述べたところ、一斉に「我々は全てのタイトルを狙うべきだ」と十字砲火を浴びて大変な事になったそうだ。
 また件の友人も私に「何を言っているのだ。日曜のレイソル戦は石崎さん(フロンターレの前監督)との決着をつける大一番なのだ、手を抜くなんて。」と言っていた。
 さて関塚氏は、いかにこの生真面目なサポータの方々に「バレない」ように選手を休ませるのか、手腕を見守りたい(でも憲剛とジュニーニョを下げたらバレるよなあ)。

もう1つ余談
 さらに件の友人。憲剛の出場停止について。「拡大トヨタカップまで今回の警告は持ち越すのかもしれない。すると1回戦で憲剛がイエローを食らうと、憲剛抜きでミランか...」
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 海外

2007年09月19日

女子代表1次リーグ敗退

 女子代表はドイツに0−2で完敗。「完敗」だったのだから「完敗」と書くしか無いのがあまりに残念なくらいの見事な試合だった。しかし、どう考えても「惜敗」と言う単語は使えないくらい差があった。
 ドイツに臆せず競りかけ、確保したボールは丁寧にかつ大胆につなぎ、いずれの選手も精力的に上下動を繰り返す。荒川と宮本を温存して後半勝負と言う策も、勝ち点3獲得のためには妥当だったように思う。結果的には後半荒川が交代早々に負傷してしまった不運で、ただでさえ劣勢な試合は勝負がついてしまった(もっとも点を取ると言う意味で貴重なセットプレイが武器の宮間を外したり、荒川負傷退場後にせめても敵陣前で強さを発揮できる可能性のある永里を外すのはいかがかとの議論はあるだろうが)。しかし、この不運がなかったにせよ、慎重に分厚く守るドイツ守備陣をこじ開けるのは難しかったように思う。
 むしろ「ドイツ戦のサッカーがイングランド戦でできていれば」とも思う(この試合は結果を知ってから映像を見たので、先日のコメント欄で指摘いただいた「スイス戦、五輪カタール戦以上の興奮」を味わい損ねた私は負け組です)。イングランド戦は、ドイツ戦ほどパスワークが機能せず、ボディアタックの前に押し込まれてしまった。もっとも、2次トーナメント進出のために、お互いが「勝ち」を狙った初戦は、イングランドのプレッシャの前につぶされてしまい、最終戦早々に先制し慎重に戦ってきたドイツにはパスワークが通じたとも考えられるのだが。
 こう言ってしまっては身も蓋も無いが、今の女子代表は強さを前面に押し出してきたチームに対し、それをかわすパスワークが足りないと言う事になる。

 考えてみれば、アテネ五輪の女子代表は結果的には1勝2敗での準々決勝敗退に終わったが、そのパスワークは列強により通用していた印象がある。スウェーデン戦の快勝は胸のすく思いだったし、ナイジェリアに対しても合衆国に対しても、互角に近い戦いを演じていた。残念ながら、今大会の日本の出来は3年前ほどのものではなかった。
 これには2つの要因があると思われる。
 1つは他国の日本研究が進んだ事。アテネ五輪でも、合衆国は日本に対して露骨なパワープレイを狙ってきた。イングランドもドイツもFWは大柄な身体を小柄な日本の守備ラインの選手にぶつけてくる。上背の差は、周囲のカバーリングと、パスの出所を押える事である程度守ることができる。しかし、体重差は、腰を低くして重心を低くしながら当たるくらいしか対応策はなく、押し込まれる要因となる。さらに体重差のある中での戦いは、都度体力を消耗していくと言う意味でもつらいところだ。そして、この体力の消耗は、押し上げの遅さにつながり、トライアングルが巧く作れず、日本得意のパスワークの乱れにつながっていく。
 2つ目は日本のチーム構成。アテネ五輪からチームの中央骨格は、磯崎、宮本、酒井、澤、荒川とそうは変わっていないし、彼女達はより経験を積みチームを支えている。アテネでは、その周辺で川上、小林、山本と言ったタレントが伸び伸びと派手な個人技を発揮していた。一方の今大会、宮間も近賀も永里も重要なところで得点に絡み、彼女達の個人能力が非常に優れたものである事を証明した。しかし、90分間を通して見た限りでは何かその個人能力が埋没していた感を持った。これは、ベテランに対する遠慮がもあるかもしれないが、大橋監督がパスワークを強調し過ぎたためではないか。パスワークを強調するあまりに、個々の局面で「敵を抜き去る」とか「一発のロングパスを狙う」と言った変化が少なくなり、結果的に敵に読まれてパスが巧くつながらない事態になっているのではないか。
 近賀や宮間がせっかくサイドでフリーになりながら、ショートパスやアーリークロスを狙うのを見ると、ついつい川上の傍若無人なドリブル突破や、小林の芸術的なアウトサイドのロングパスを思い出してしまったのだが。

 北京で上位進出を目指すために、今更体格差はどうしようない。とすれば、若く能力の高い選手が、局面によってエゴイスティックな個人技を発揮できるかどうかが、重要なのではないか。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(3) | TrackBack(0) | 女子

2007年09月17日

サッカー狂から見た柔道世界選手権

 リオデジャネイロで行なわれた柔道世界選手権。最終日に棟田、谷、塚田が金メダルを獲得、前日まで不振だった日本勢もやれやれと言ったところだろうか。結果的には、日本は、この3個の金メダルで金メダル数も地元ブラジルと並び、総メダル数でもトップになったと言う。やはり、苦しみ抜いたこの大会でも、やはり名実共に我が日本は世界最強の柔道国と言えるだろう。

 この最終日の大団円までは、今回の世界選手権は日本にとってよい事があまりない大会だった。
 大会前に、かの山下氏が理事選挙を,落選する事態。本件が、国際柔道連盟の権力闘争だったあたりの背景はこちらに詳しい(当のご本人が書かれている文章なので、割り引いて読む必要があるかもしれないが)。ただ、こちらの記事通りに、国際柔道連盟が「カネ」のための人事が動くのは、これはもう仕方がない事。カスミを食うだけでは物事は進まないのだし、TV放映料やスポンサーがあって、大きな組織は動くものだ。幸い、世界選手権で広告看板を出しているのは多くが日系企業だし、日本のTV局の発言権は相当大きいはずだから、日本柔道界の発言力は相当強い状態が継続すると思う。案外、日本柔道界にとって重要な事は、ビセール氏よりも日本の広告代理店に影響されない信念を持ち続ける事だったりして。
 また、大会初日に2枚看板とも言うべき井上、鈴木が「疑惑の判定」で早期敗退。さらに各選手の成績も今一歩だった。特に初日の2連敗は、柔道の素人がTV桟敷で見ていた限りではよく理解できなかった。しかし、こちらによると、国際柔道連盟審判委員の川口孝夫氏が
(負けは)やむなし。(判定は)最後に決めた方を取ることが多い
と語っている。微妙な判定でもあり、「日本の柔道基準」と「他国のJUDO基準」の違いもあったのかもしれない。まあもし日本人選手が「返し技」で金メダルを取っていれば、「日本人が勝てばそれで満足」と言う思いで、日本国内ではそれほど問題にはならなかったのかもしれない(もっとも、日本人選手は皆返し技など考えずに、堂々と攻めて勝ちに行こうとするから見ていて興奮するのだが)。
 このあたりは、念仏の鉄氏が柔道の世界普及史と言う観点から思慮に富むエントリをまとめられている。

 ここでサッカー狂視点から暴論を述べたい。
 柔道は国際競技なのだから、発祥の地日本が考えている柔道から少しずつ変質して行くのは仕方がない事ではないのか。
 たとえば、サッカー発祥の地は言うまでも無くイングランド(世界各地に蹴鞠とかカルチョとかセパタクローとか「足」を主体にした競技があったのは確かだが、現状のサッカーは、やはりイングランド発と考えるべきだろう)。しかし、サッカーのスタイルは世界各国に広がるに連れ千差万別になっていった。各地の気候、国民性、嗜好などから、受け入れた各国がサッカーを消化して言ったのだ。
 これはサッカーに限った事ではない。野球にしても、現在日本は世界チャンピオンな訳だが、発祥の地の合衆国のBASEBALLを日本風に攻守走いずれも精緻化する事に成功したのが主要因となったのは記憶に新しい。そう考えると、世界各地に柔道が広がる事で、他国が「柔道」を「JUDO」として消化して行くのは仕方がない事だと思うのだ。様々な国の人々が「柔道」を自国なりに解釈し、日本と異なるスタイルで戦ってくるところが、国際試合の面白さだと思うのだが。
 しかも、日本柔道は今なお名実共に世界最強。とすれば、敵が守備的に戦い、日本の隙を突いてくるのは当然の策。それでも、多くの選手は一本勝ちを連発するのだから、大したものではないか。

 結びに雑感をいくつか。
 鈴木の苦杯に、棟田の押さえ込みに、それぞれ乗り出して興奮する斎藤監督。88年のソウル五輪、どうしても金メダルを取れなかった柔道選手団の殿として最終日に登場し、堂々と金メダルを獲得してくれた19年前を思い出した。今回も最終日の歓喜だったな。
 リオから帰国は大変長い旅となる。なんと日本選手は、金メダルの3人だけがビジネスクラスでの帰国で、その他の選手はエコノミークラスだと言う。それの是非をどうこう言う気はないが、やはり日本柔道界は凄いよ。
 谷亮子は、まごう事なき日本スポーツ史に残るスーパースターなのだが、この方の発言を聞くと、喋り方と言い、内容と言い、かの長嶋茂雄氏にそっくりだと思うのは私だけだろうか。谷亮子は平成の長嶋茂雄なのだろうか。う〜ん。
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2007年09月12日

忘れられない1日

 自国の首相ともあるべき人が、職を放り投げると言う異様な日だった。そのような意味でも長い人生の中で記憶に残る日だ。しかしサッカー狂としては、未明のTVと夜の国立競技場と2つの歓喜を味わえたと言う意味で、忘れ難い日となった。

 と言う事で、ダイジェスト的に2試合を振り返っておく。
 
 まずはA代表スイス戦。
 前半のスイスの精力的な攻守にはビックリ。特にオーストリー戦をよく研究していたのだろう。中村と遠藤に対するプレスは厳重を極め、巧みなオフサイドトラップで日本に攻め手を作らせない。
 そして何と言っても左サイドバックのマニンの強力な攻撃力。序盤日本が少しの時間帯攻勢を取るも、マニンの好クロスからCKを取られ、それをしのいだところで稲本がゴール前で反則。そのFKを当のマニンに決められる。さらに直後マニンのクロスからPKを奪われ2−0。その後もマニンの適切な攻撃参加は、日本の組織守備を悩ますのみならず、ちょうど対面に当たった中村が後方に引っ張られると言う意味でも、非常に有効。前半は、スイスのプレスとマニンの攻撃参加に押しまくられた印象があった。
 ところが後半、スイスは腕章を巻いていたマニンを交代。これで日本は楽になる。そして、闘莉王が再三の前進。稲本の上下動と合わせて、日本はペースを取り戻す。加えて、スイスもさすがに前半はオーバペースだったのだろうか。中盤のプレスが機能しなくなる。となると、中村が息を吹き返す。松井が奪ったPKは中村が中央フリーで前進し、右に展開するフェイントを入れた後に松井にパスを通した。中村があれだけフリーでプレイするのは、アジアカップのベトナム戦以来か。そして、精度の高いパスをうければ松井のドリブルは極めて有効に機能する。面白かったのは、1度中盤の守備がおかしくなってしまうと、スイスと言えども中村を全く捕まえられなくなってしまう事。まあ前半の飛ばし過ぎもあったのだろうが。かくして、光り輝く中村を軸に3点を連取し逆転。その後の点の取り合いも面白かった。
 両軍の稠密な組織守備が、後方からの強力な攻撃参加(マニンと闘莉王)で崩れるものなのだなと改めて感心。

 そして五輪代表カタール戦。
 本田圭の出場停止により、反町氏は伊野波を左DFに回し、水野と家長を両翼に配する4−3−3(水野と家長は相当下がるので、4−5−1とも言える)。水野と家長と言う攻撃的ウィンガ、内田と言うよいサイドバックがいるチームなだけに、4DFで戦うのはある意味では当然なのだが、ここまでそのテストがほとんど行なわれず、勝ち点3がどうしても必要な本予選で難しいとも思われるホームカタール戦で、ぶっつけ本番なのが何とも味わい深い。そして、ぶっつけ本番を即興的に何とかこなしてしまうのだから、選手達は凄いな。
 開始早々の決勝点。水野がFKをニアに蹴り、青山直と若森島がファーに開いてできたスペースに梶山が飛び込み完璧なヘディングシュート。梶山がフィジカルの強さが発揮された。あれだけ巧くて、敵の意表をつくプレイができて、しかも打点の高いヘディングを決められる。梶山と言う選手の素質が再認識させられた試合ではあった。反町氏が固定して使いたくなる気持もわかる。でも、その後の展開の拙さを考えると、う〜ん。単に好みの問題なのかなあ。
 梶山同様固定化している事に再三疑問を呈してきた本田拓。食らった警告は2本とも無意味なもの。1本目は敵FW1枚に自分を含めた守備者が3枚、しかも後方をカバーしているのは大黒柱の水本だったのに、どうしてあんな無茶な当たり方をしたのか(それも自陣近くで)。2本目についても気持はわかるが、1枚もらっている選手がやるプレイではないな。Jの選手ならば、毎週のように黄色や赤を出すのが大好きな審判にもまれているのだが。まあ、本田拓のおかげで、あれだけ興奮する試合を堪能できたのだが...
 と言う事で10人になり、しかも各選手にサウジ遠征の疲労が出てからは、本当に興奮した。ロスタイムの5分の本当に長い事。「予選はこうでなくてはいけない」と言うプレイの連続。昨日、「入場料が高過ぎる」と述べたが、あの娯楽を堪能できたのだから、3000円の投資は安いものだった、と言う事になるのだろうか。MVPは、あの足で防いだ山本にやりたかった。
 それにしても、あの終盤の苦しい時間帯、何故、ボールボーイ達はタッチ外に出たボールをすぐにカタールの選手に渡すのだろうか。
posted by 武藤文雄 at 00:00| Comment(41) | TrackBack(1) | 日本代表

2007年09月11日

国立カタール戦前夜

 相変わらず五輪代表のチケットの売れ行きが悪いようだ。昨年の中国戦前にこの状況を憂えた訳だが、予選本番、それも最も重要に思えるホームゲームでの売れ行き不振だけに、事態は深刻と言えるだろう。最もこれまで前売りが不振でも、実際にはいずれの試合でも2万人程度の観衆は入ったから、明日もそのくらいの入場は見込めるだろう。平日の夜の五輪代表の集客能力はちょうどこのくらいなのだろう。まあ、レッズとアルビレックスには及ばないが、平日と言う事を考えれば他のJクラブに対しては互角以上に戦っていると考えれば、それでも「大したもの」と考えるべきなのかもしれない。もっとも雨が降ればその限りではないかもしれないが。まあ、それはそれとして。
 上記エントリでも述べたように、前売りの売れ行き不振にはいくつか要因があろう。多くのサッカー好きが「代表」から「単独クラブ」に軸足を移している事、協会会長の連続的な愚行に純粋に不快感を持っている人の増加など。いずれにしても、若年層代表チームの人気が相当落ちている事は間違いない。そして、人気が明らかに落ちているにも関わらずチケットを高額にしているのが一層売れ行きを落としていると言う指摘は正鵠を射ているように思える。さらに言えば、チケットが余っているのは自明なので、誰も無理して前売りは買わないと言う事になっているのだろう。私だってまだチケットは買っていない(もちろん観に行くけれど)。

 ただ、私は明日の試合は見世物としては大変面白いものだと思っている。
 「予選」と言う試合は「敗戦したら何も残らない」と言う恐怖感が、最大の興奮の源泉である。そのような意味では「入替戦」あるいは「残留、昇格、優勝を争うリーグ戦終盤」などが類似性のある試合かもしれない。しかし、「入替戦」に負けても、来年「下位リーグでのプレイ権」は存在する。ところが、「予選」で負けた場合「何も残らない」のである。
 そして、日本の代表チームはA代表、五輪代表、ユース代表については、ドーハの悲劇を最後に世界大会に向けた予選で「何も残らなかった」経験は皆無となっている。これは考えてみれば凄い事で、韓国でさえワールドユースの連続出場には失敗しているし、サウジに至っては五輪でよくドジを踏んでいる。そして、このような連続出場と言うものは「いつかは途切れる」ものなのだ。
 そう考えると今回の五輪予選には、
(1)同グループにサウジ、カタールと言う強豪がいる
(2)反町氏が意図不明の強化を続け、チーム作りが遅れている
など、「『いつか』がついに訪れるのではないか」と言う恐怖感が、現実的に漂っているのだ。
 実際、もしこの予選突破に失敗した場合、反町氏はJリーグを含め2度と監督を務める機会はないだろうし、選手達も「五輪に行かれなかった世代」と引退時まで揶揄される可能性すらある。そして、先日も述べたが我々も言いようのない寂しさを来年味わう事になるのだ。
 そして、ここまでの星勘定を考えると、明日のカタール戦は本予選の帰趨を大きく左右する試合である。これほど恐怖感を味わいながら、代表の公式戦を味わうのは(成功時の歓喜と価値は相当落ちるが)04年のドイツワールドカップ1次予選のマスカットオマーン戦以来だったりして。おお、そう言えばあの時も敗戦時のリスクを講釈したっけな。
 そう考えると、明日の試合が愉しみで仕方がない。これだけの試合を必死に応援しない手はないと思うのだが。

 と、日本協会も明日のカタール戦の訴求を行なえば、もう少しチケットも売れたのではないか。

 ともあれ、スイス戦に向けて寝よう。
posted by 武藤文雄 at 22:39| Comment(8) | TrackBack(1) | 五輪

2007年09月10日

敵地サウジ戦無事に引き分け

 内容も結果も上々の試合だった。
 「勝ちにきていた」サウジに対し、強力な守備を前面に出した試合で無失点。サウジに退場者が出た後も、冷静に守備的に戦ったのもよかった。前半の水野、後半の家長のヘディングは決めておきたいところだったが、そりゃ贅沢と言うものだろう。

 それにしても水本の1対1の強さには恐れ入った。肉体能力に優れた青山直や伊野波でさえ苦労していたサウジFWの「速さ」だが、水本はほぼ完璧に止めていた。水本がここまでやれるならば、やはり青山直との2CBを見てみたくなる。一方、ここまで水本の守備能力を見てしまうと、水本をサイドに回すオプションがもったいなくなってくる。ただし、A代表ならば中澤と闘莉王が真ん中を固めている状況で、水本を左に使うのは有力な選択肢にも思えるが。
 若森島の起用(と言うか平山を控えに回した事)は以外だったが、ある意味で理にかなっている。平山は確かにヘディングは強いが、やや細身で後方からのボールのヘディングを取るよりは、横からのセンタリングを叩き込むスタイルの選手。その点、若森島は後方からのボールに対して敵DFに身体を当てに行くから、守備的に戦う時は、こちらの方が適切だ。この2人をトップに並べるのは、ツインタワーとしてではなく、ポストプレイヤとシューターの組み合わせと言う意味で面白いかもしれない。ただし、「試す時間」が全くないのだが。

 右サイドには内田を起用したのも当たった。元々、反町氏はこのポジションには中村北斗を起用しており、水野は「2軍」だった。ナビスコ決勝を含め、J屈指の攻撃タレントに成長した水野を「2軍」扱いする度胸も大したものだったが。「2軍」で対応した敵地韓国戦で水野が非常に冴えたプレイを見せたためか、その後の国立韓国戦では北斗と水野を縦に並べた4DFで臨んだ。ところがこの試合で北斗が重傷を負ってしまった。その後反町氏は、そのまま3DFで水野を右サイドにはめ込む。以降も3トップを試みて水野の前に蓋をするなど時間を浪費した。この日の内田の起用を見て、改めて反町氏の考えが理解できた。反町氏は北斗なり内田なり後方から長躯攻め上がるタレントを使うサッカーをしたいのだろう。逆サイドの本田圭は、長躯するタイプではないが、相当後方から高精度がロングボールを逆サイドに通す事ができる特異な才能を持っている。これならば、伊野波をCBに使う3DFも理解できる。
 内田の右サイドMFははまったが、一方で水野をどこに使うかどうかは、これからの検討事項になってしまった。前半、水野は決定的なヘディングを放ったし、よく前線から守備をしていた。しかし、彼の最大の魅力である右サイドからの崩しをほとんど見せる事なく、柏木と交代してしまった。このチームには水野、家長、本田圭、梶山、柏木、梅崎と言った想像的な中盤の選手が多い。皆を並べる訳にはいかないのだから、誰かを外す必要がある。水野を外す選択肢を全否定するものではないが、ここまで選手の最適配置検討を放棄しておいて、予選が煮詰まったこの時点で、このスター選手のポジションが見つかっていないのは結構な事態だとは思う。
 つまり、反町氏は「自分の狙いに合わせて選手を当てはめようとしている」のだ。アルビレックスの監督の意識から抜け出せていないのだろう。代表監督、特に若年層代表チームの監督の仕事は「優秀な選手の配置を考える事」だと思うのだが。

 まあ、好みの問題だが、ドイスボランチの梶山、本田拓の2人への拘泥はよくわからない。2人ともよい選手だが、このポジションにはあれだけ豪華絢爛な選手がいるにも関わらず、どうしてここまで固定するのか。梶山に代わり青山敏が入ってからの方が格段にリズムがよくなったと思う。また本田拓の軽率な守備もどうしても好きにはなれない。私が本田拓を批判すると、「本田拓はよいプレイを見せたではないか」とコメントを寄せて下さる方が結構いらっしゃる。それは否定しない。でも「本田拓がよいプレイを見せる」のと、「本田拓よりもよいプレイを見せられる選手がいる」のは別な問題ではないのか。梶山については先日述べた通り。

 では国立でカタールにどう勝つか。案外と選手の「素材」で勝ってくれそうな気もする。一方で先日のベトナム戦同様苦しい戦いになるかもしれない。その場合でも、水本、青山直に伊野波が加わる最終ラインの強さが、救いと言えば救い。しっかり守っているうちに、水野か柏木が問題解決をしてくれるように思う。
 ともあれ、私ができる事はただ1つ。声を張り上げて応援する事だけか。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(9) | TrackBack(1) | 五輪

2007年09月08日

名人への遥かなる道

 欧州のこのクラスの相手が本気で相当なプレスをかけてきたのに、あれだけボールを回して遅攻をしっかりかけられるのだから大したものだ。
 日本のいずれの選手も、ボールを受ける直前の体勢の修正と、ちょうど次のキックの場所にボールを止めるトラップが素晴らしい。さらに日本は、中村、稲本、闘莉王と正確なロングパスを蹴る事のできる選手がいるので、彼らのサイドチェンジで、サイドに起点を作り、中盤で攻勢を取る事ができた(稲本が代表でここまで機能した試合は、あの2002年のロシア戦以来ではなかろうか)。
 一方のオーストリーは、いかにも欧州の勤勉なチーム。最前線から激しいプレスをかけ、そのプレスをかいくぐった日本に中盤を取られながらも、中盤選手の戻りの速さで中央を固め中々決定機を作らせてくれない。さらに、ボールを奪うや全員の意思統一がよくとれた速攻を見せる。ただ、攻めのスピードの中で精度の高い仕掛けをできるタレントがいないため、中澤が組織する日本守備を破りきれない。

 このオーストリーと敵地で戦う以上は、ブラジルやアルゼンチンのような列強でも相当点を取るのには苦労する事だろう。しかし、ワールドカップで2次トーナメントに進み、さらにはベスト8以上を目指そうと言うからには、この相手から相当な確率で勝ち点3をもぎ取る事ができるようにならなければならないのも、また確かなのだ。

 ではどうするか。
 中村が何とかしてくれれば。この試合で中村の「格」にも改めて感心した。あのプレスの中、一発で前を向き、高精度なパスをビシビシ通す。アジアカップと異なり、受け手が省エネモードでないだけに、出し所があるとまた違うものだ。ただ、だからこそ1点モノの好機をもっと作って欲しかったところだが。中村は2010年大会中に32歳になる。今の技巧に老獪さが加わった中村が全てを解決してくれる存在にならないか。
 駒野を右サイドで起用する事が可能になれば。オシム爺さんは両サイドDFを加地、駒野でほぼ固定している。加地の爆発力は素晴らしいものがあるが、少なくとも現状ではプレイの継続性とクロスの精度は駒野が上回っていると見る。本職のサイドバックではないが、今野、阿部、あるいは中田と言った人材もいる。状況によっては駒野を右で使う手もあると思うのだが(もちろん加地が常時大爆発してくれても、小宮山、本田圭、安田と言ったあたりが大化けしてくれても、問題ない)。 
 高原がいてくれれば。今の高原は、日本のストライカ史において釜本、カズ、久保(ただし03年から04年のみ)に近づく存在になりつつある(05年のテヘランイラン戦の最低の高原を思い出すと、この復活と言うか高度成長は本当に嬉しい)。この試合でも高原がいれば、状況は全く異なるものになっていただろう。高原の存在は、「カズが点を取ってくれる」と言う97年国立ウズベク戦までの日本代表を思い出させてくれる。
 もう1枚強力な攻撃兵器がでてきてくれれば。残念ながら、高原がいても、アジアカップは最後に点を取りきれなかった。もう1枚タレントが欲しい。達也はあのポストに当てたシュートは拙かったが、独特の短い間合いのドリブルは十分敵を悩ませていた。松井も独特のドリブル前進はさすが欧州で高く評価される人材だと思わせてくれた。この2人だけではない。オシム爺さんが選んでいる前線のタレントは皆「素材」は確か。明確な目的意識と執拗な反復練習を通じて誰が出てきてくれるか。
 チームとしての速攻が完成してくれれば。この日のオーストリーの速攻への意思統一は中々のものがあった。このようなチームとしての意思統一があれば、状況は格段に改善されるはず。オーストリーが来年の欧州選手権に向けて準備しているのに対し、当方の目標は2010年。チーム全体の意思統一はまだ先の問題でよいのだし。

 「名人と上手には天地ほどの差がある」と言われる。
 我々は間違いなく、「上手」までは到達した。ここからいかに「名人」に近づくか。ひたすた愚直に1つ1つの課題をつぶしていくしかないのだろう。だからこそ、このような有効な国際試合の実現が嬉しい。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(4) | TrackBack(1) | 日本代表