2007年12月31日

2007年10大ニュース

 今年もこの偏見あふれるBLOGにお付き合いいただき、ありがとうございました。年末ですので、恒例の10大ニュースを述べさせていただきます。実は年末に某所で暫定版を発表したのですが、その後少しアタマを整理してやや変更しています。
 毎年執拗に10大ニュースに挙げていた「破綻した日程」を敢えて外しました。それは選択した多くのニュースに、日程破綻問題が絡むからです。その負担を全て消耗していく選手達に押し付けている現状は、もはや看過できない状態になっているのですが。
 五輪代表の反町監督の迷走と言うか「天下の期待はずれ」は、08年に金メダル獲得で取り返してもらう事でチャラにすべく敢えて外しました。また、代表戦のチケット販売不振については入れたかったのですが着外と言う事で。

1.オシム爺さん倒れる

 最善の選択は、時に最悪の事態を生むと言う事なのだろう。
 「2010年に爺さんが手塩にかけたチームを世界に問う」と言う我々の願いは叶えられなかった。叶わない夢を持てた事だけでも幸せだったと考える事にしたい。
 幸い、回復は順調と聞く。どうやらあの笑顔を再び見る事ができそうだ。もうそれ以上の贅沢は言うまい。
 後任の岡田氏は(再三述べているが甚だ岡田氏には失礼だが)次善、三善の策だろう。しかし、その選考は間違っていないと思う。2010年は岡田氏と、1998年の復讐戦を戦うのだ。

2.アジアカップ3連覇ならず

 BLOGでも述べたが、私は決勝進出したら現地に行く計画をしていた。相当悔しかった。
 しかし、オシム爺さんが作ったチームは、芸術的なパス交換を基盤にしたとてもよいチームだった。そして、チーム作りも明らかに1,2年先を見ているのは明確だった。だから負けたのは仕方がない。
 でも、せめて1週間早くJを休んで準備できなかったものなのか。そのような時間が無いと言う日程破綻問題そのものが、極めて深刻な事態なのだが。
 やはり、それにしても、このチームの完成を見る事ができないのが悲しい。

3.ヴァンフォーレ甲府のビューティフルゴール

 J1前期、ヴァンフォーレ−ガンバ戦のヴァンフォーレのビューティフルゴール。15本ものショートパスをつないで、完全に守備ラインを崩したものだった。あれだけ、ひたすら短いパスをつないで同じサイドを崩した美しい得点は、ちょっと見られるものではない。
 ヴァンフォーレは結果的に今期J2に陥落した。しかし、あの美しい得点は永遠に記録にも記憶にも残る。

4.レッズのACL制覇

 レッズがACL王者を久々に日本に奪回。敵地で負けないしぶとさを見せて勝ち点を積み上げて1次リーグ突破。準決勝の城南戦は凄絶なPK戦を勝ち抜いての決勝進出と、決して楽な勝ち上がりではなかったが、それがまたレッズの強さを表した感があった。そのまま拡大トヨタカップに出場し、ミランと丁々発止。ミラン戦で、阿部と啓太と闘莉王のプレイが十分に通用したのが、嬉しかった。
 とは言え、日程破綻問題と、硬直したオジェク氏采配により、選手は疲労困憊、ガタガタになっており、ほぼ手中にしていたリーグタイトルを逸したのだが。

5.フロンターレのACL準々決勝敗戦

 あのセパハンのPK負け。何と言っていいか。負けた瞬間、私の記憶は白黒映像として鮮明に残っている。巧く言えないが、あのフロンターレが崩れ落ちたあの瞬間はそのような記憶なのだ。
 それにしても美しい試合だった。
 もっとも、あの美しさは、日程破綻問題ゆえもあったのだが。
 一方で、このセパハン戦周辺での協会首脳の信じ難い暴言は何だったのか。

6 我那覇のニンニク注射問題

 ドーピング問題を考慮した場合、ニンニク注射(点滴)はOKなのかNGなのかは、非常に微妙な問題だと言う。これ以上は専門家でない私が論じるべきではないだろうが、微妙な問題にも関わらず、事前にその情報を曖昧なままに扱っておいて、信じ難い高額な罰金と出場停止を宣告するJリーグ当局。さらに、以降の対応をアタマから拒絶する硬直性。何かおかしい。
 そして、我那覇がこの騒動以降すっかり体調を崩したのか、凡庸なプレイしか見せられないようになった事実は悲しい。

7.アントラーズ久々のJ制覇

 長期のリーグ戦と言うのものは、我慢を重ねて勝ち点を積み上げ最終戦終了時点で一番多くの勝ち点を取ったチームが優勝すると言う当たり前の事を、丹念にやり遂げた優勝。的確な監督選考と、毎期の堅実な補強が、ここに来て奏効したとも言えるか。
 個人的には、いよいよ狡猾で抜け目のないプレイをするようになった本山の成長が嬉しい。

8.サンガ−ベルマーレ、微妙な試合中止判断

 経緯はこちらに。
 もし、この試合にベルマーレが勝っていれば、J2の終盤戦は大きく状況が変わっていた。サガンのフロントが恣意的な事はしていないと信じてはいるが、結果から見れば何とも微妙な感想を抱かざるを得ない中断ではあった。悪しき前例にならない事を望む。

9.TOTOの危機

 経営不振が続いていたTOTOが、BIGを始めた事により、黒字化改善の目処が立ったとの事だ。しかし、これは何も喜ばしい事ではない。サッカーくじとしての「予想の愉しさ」が、世間に何も評価されていないと言う事だから。
 スポーツ振興財源のために、ギャンブルをいかに巧く使うのか。行政改革の俎上に乗る事もしばしばのTOTO。本質的な意義を問われている。

10.中村のスコットランド個人タイトル独占

 1人の選手が1国の個人タイトルを総なめする事はそうはない。それを日本の選手がやり遂げたのだから、多いに評価に値しよう。極端な言い方をすれば、日本の選手が国内の個人タイトルをここまで1人で総なめする事すら難しいのだから。
 今の中村は、代表においても、セルティックにおいても、登場するだけで「場」が変わる選手にまで成長した。体力的なピークを過ぎる年齢になったが、南アフリカで今度こそピークが来るべく鍛錬して欲しい。
posted by 武藤文雄 at 23:59| Comment(6) | TrackBack(0) | 歴史

2007年12月30日

2007年ベストイレブン

 従来であれば、ワールドカップの翌年と言うのは比較的落ち着いた年のはずなのだが、今年はアジアカップが1年前倒しになった事や、レッズの拡大トヨタカップでの奮闘など、インタナショナルマッチでもたっぷり愉しめる1年となった。自分なりに感じた「世界との距離」については近くまとめたいと思っているのだが。
 ともあれ、毎年やっている恒例の日本サッカー私選ベスト11を。

 闘莉王はアジアカップ直前の負傷を考慮して不選考。
 中澤については迷いに迷った(あの闘莉王が中澤とプレイするとおとなしくなるのが面白いのだが)。アジアカップを含めたA代表での堂々としたプレイ振りを考えるとベスト11決定!なのだが、マリノスと言うチームが今一歩だったので、思い切って外した。
 あと阿部について。本当に凄い選手だと思ったし、アジアカップでも巷で言われるほど悪くなかったし、城南戦の肉体能力を投げ出した守備は凄かったし、本来のMFで起用されたミラン戦でカカやアンブロジーニと見せた丁々発止には感動した。でも自己顕示欲が少なすぎる。ミラン戦でもアジアカップサウジ戦でも、試合終盤どうして前に出て行かないのか。と言う事で落選。
 あと、明神を選びたかったのだが。

都築龍太
 GKは悩んだ。豪州戦のPKストップの川口はさすがだったがあの1回程度でベスト11と言うのは何か失礼な記がする。楢崎はそれほど目立たなかった。川島も菅野もよかったけど何か今一歩。五輪の山本の国立カタール戦の超美技は反町を救ったがそれでベスト11と言う訳にもいかない。と言う事で、レッズの国際試合で2回PK勝ちした都築にした。あのエトワール戦のおバカは御愛嬌と言う事で。

森勇介
 あの右サイドの前進意欲。いささか落ち着いたとは言え、後先考えない闘争本能。A代表入りはさておき、本当によい選手になった。あのセパハン戦の負傷退場が悔しい。

水本裕貴
 あの「組織力は全くないが個の力だけで勝ち抜いた」五輪代表の象徴として。現在のA代表の中澤と闘莉王が強さではね返すタイプなのに対し、水本は読みとスピードで守る。この3人が連携を高めれば、日本サッカー史上かつてないスケールの守備ラインが期待できる(もちろん青山直の参加を拒むものではないが)。

岩政大樹
 アントラーズJリーグ制覇の立役者の1人。単純な強さ、高さでは相当なレベルに達した。その強さを活かしたまま、足下への対応をどこまで伸ばす事ができるか。中澤にしても、先ごろ引退した秋田にしても、20代半ばからその能力をガーンと上げた。岩政にとっては、09年は非常に重要な年になるのではないか。

安田理大
 ワールドユースの活躍とナビスコカップでの決勝点を評価して選考。この選手で嬉しいのは守備の着実な進歩。とにかく、スライディングの思い切りがよい。もちろん攻撃参加のタイミングもどんどん成長している。確かに都並敏史の若い頃を思い出させる。もっとも当時の都並はフライデー止まり、安田はしっかりお子さんも授かったようだが。

鈴木啓太
 文句ない今期のMVP。私選アジア年間最優秀選手でもある。それにしても巧くなった。五輪代表時代落選時に、私は「ミスパスの多さからA代表は難しいのではないか」と予測した。しかし、その予測は完全に間違えていた。ここに改めて、啓太には謝罪したいと思う。
 「ごめんなさい」

中村憲剛
 昨日のエントリで不満を述べた。代表でも不満は多い。中村俊輔はさておき、どうして遠藤にまであそこまで遠慮するのだろうか。遠藤は憲剛が要求を出せば応える技術も対応力も持っているのだから。とにかく要求する水準は高いから、どうしても不満が多くなってしまうと言う事か。でもあのスーパーアシストは凄かったので。
 「関塚さん、どうしてセパハン戦、あそこで交代させたのですか?」

遠藤保仁
 遅い事を武器にできる日本では真に珍しい選手。今年この選手の成長の経路己のスタイルへの拘泥について述べたが、語るに本当に愉しい選手だ。特に好きだったのは、アジアカップ1次リーグ第2戦の完璧な試合クローズ。おそらく、今後もこのやる気があるのかないのかわからない男を語り続ける事を、じっくり愉しめる事だろう。

中村俊輔
 1国の個人タイトルをここまで独占した日本人選手は、往時の釜本以来だろう(笑)。紛れもなく、欧州最高レベルと評価されたと言う事だ。不思議なのは、この偉大さの評価が、妙に国内で低い事だ。A代表でも、セルティックでも中村がちょっとボールに触るだけで、大きな変化が生まれる。
 1歳年上の中田が自ら戦場を去り、1歳年下の小野が不振にもがいている今、中村だけは着実に成長し、世界に明確な位置を獲得したのは、歴然たる事実なのだ。

本山雅志
 岩政同様、アントラーズ優勝を評価して。でも、本当によい選手になった。あのレッズ戦のサイドバック振りの見事な事。元々、技巧と狡猾さは優れていたが、戦略性も身につけてきた。2列目から前進できるタレントとしては、山瀬、羽生、そして若い柏木がいるが、経験に優れる本山は南アフリカの有力候補である事は間違いない。贅沢なのはわかっているけど、勝負どころで若い頃のようなカミソリドリブルも見せて欲しいのだが。

高原直泰
 あれだけドイツで点を取り、アジアカップでも大事なところで決めたのだから。
 あのテヘランイラン戦での無様なプレイ振りを散々非難した私だが、ここまで立ち直ってくれて、素直に嬉しい。とにかく、この人は体調を整える事が全てなのではないか。
 残念ながら、今期は負傷がちで欠場続き。慎重なコンディショニングを心がけ、南アフリカでピークにと思わずにはいられない。
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2007年12月29日

天皇杯準決勝の雑感と決勝展望

 しかし、勝てば勝つほど、「サンフレッチェはリーグ戦で何をやっていたのだ」と言う雰囲気が漂ってくる。J2に陥落したクラブが、天皇杯で好成績を収めると言えば、01−02年シーズンのセレッソが思い出される。けれども、あの時のセレッソはリーグ戦で大エースの森島が長期離脱し、J2陥落確定後に新監督が就任したりしていた。つまり、低落気味だったチームに対し、明確な切替が行なわれていたのだ。ところが、現在のサンフレッチェは違う。負傷から復帰した選手がいる訳でもないし、監督も変わっていない。しかも、この劇的なチーム変革が、入替戦第1戦第2戦の間の僅か中2日に行なわれたのだ。さらに言えば、本来MFの森島和を中盤に戻すと言う非常にわかりやすい変更のみで。言い換えれば、シーズンを通して奇策で戦い、入替戦第2戦から正常な方策にしたら強くなったのだから、サンフレッチェサポータの嘆息もわかろうと言うものだ。
 今のサンフレッチェは先制してからの守備の強さがベースになっている。駒野と服部が守備ラインに入り5DFの形になりながら、分厚く守る。中央のストヤノフの読みは絶品。最前線で寿人がウロチョロするから敵が押し上げ切れない。ボールを奪うと、ストヤノフなり森崎和がしっかりと溜めて起点となる。そして、よい体勢でボールをキープすると服部(入替戦では元気が無くて心配したが天皇杯に入っては好調で安心)と駒野と柏木の3人のいずれかが、敵DFの隙を見て長躯前進。実に見事なカウンタを見せる。と言う意味で今のサンフレッチェに先制点を与えてはいけないのだが、ジュビロは森崎浩の飛び道具に、FC東京は柏木の長躯と寿人の巧技に、ガンバは寿人の狡猾さ(と加地のおバカ)に、それぞれ敢え無く先制点を奪われてしまった。

 ガンバは立ち上がりの失点時の加地の位置取りのミスが全てと言う試合。寿人のようなすり抜けのFWを抑えるためには、ラインを上げるのは重要だが、守備側の意思疎通が崩れるとこのような事になると言う典型的場面だった。
 以降、ガンバは89分間何か乗り切れないで試合を終えてしまった。ナビスコ決勝のような集中力がなかったように思えた。チームのピークがずれたとでも言うか。あるいは遠藤や加地はシーズンを通して戦い抜き疲れ切ってしまったのか。今期以上に厳しい日程の来期、彼らは僅かなオフの後戦い始めなければならない。

 フロンターレは、セパハン戦と言い、ナビスコ決勝のガンバ戦と言い、この準決勝のアントラーズ戦と言い、大事な試合で攻め切れないシーズンだった。いや、アジアカップも含めよう。中村憲剛は重要な試合で高いレベルの守備網を破るまでに成長できなかったのだ。後一歩なのだが。
 私はこのシーズンオフ、経済的に豊かないずれかのクラブが法外な金額で憲剛を買い取ろうとするのではないかと想像していた。しかし、そうはならず、憲剛はフロンターレと再契約した模様だ。来期、フロンターレはACLに出場できない分国内に専念できる。フッキの再加入により、ジュニーニョはスピードの衰えを技巧でカバーするプレイが可能だろう。ベテラン揃いの守備陣がもう1シーズン戦い抜けらるか不安が残るが、憲剛が後一歩の成長を遂げる事ができれば(それは簡単な事ではないし、加えて憲剛も僅かなオフでまた戦い始めなければならないのだが)、フロンターレは悲願の初タイトルを狙えるだろう。

 かつての強さが戻ってきたかのようなアントラーズの決勝進出。
 本山の決勝点。かつてのカミソリドリブルの名手は、すっかり成熟した大人の選手になった。あの浮き球を強く捉える技術の見事な事(ちょっと水沼貴史を思い出した)。小笠原は素早い出足と鋭い読みと(表情を変えない)悪辣なプレイで、憲剛をよく押えた。昨シーズンの大化けからやや停滞した感のある野沢と合わせ、3人ともA代表に起用されても何らおかしくない。さらに青木の成長も見事。元々、前に出て行く強さが魅力の選手だったが、守備の粘り強さが着いてきた。このMFは強い。フロンターレが崩しきれなかったのも、この分厚い中盤を抜け出しきれなかった事が大きかった。分厚い中盤を抜け出しても4DFは粘り強いし。さらにマルキーニョスは相変わらずしたたかに動き、成長著しい田代は強いし技巧もある。またアントラーズの強さは交替選手の多彩さにもある。ダニーロの味わい深いキープ力、柳沢のスピード、経験豊富なこの2人は色々な使い方ができる。点を取りたい時の興梠も有用だし、守備を固める際の中後も中々。
 これらの名手を巧みに使いこなすオリヴェイラ氏の采配。Jリーグでの奇跡的な逆転劇、と言うかそれに至る連勝により、このクラブはすっかり「勝ちグセ」を取り戻した感がある。

 さて、決勝戦。先制逃げ切りで勝ち抜いてきたサンフレッチェと、しぶとく延長なり終盤の得点で勝ち抜いてきたアントラーズ。常識的には、いずれのチームが得意の型に持ち込めるかが焦点となるように思えた。ところが、肝心の柏木が出場停止。
 個人的には贔屓の寿人、駒野、服部らがいるサンフレッチェを精神的には応援したい。しかし、長躯の後に鋭い技巧を発揮できる柏木がいないと、アントラーズの分厚いMFを抜け出すのは難しいように思える。何か、地味な守り合いから2−0くらいでアントラーズが勝つ、野次馬には面白みの少ない決勝戦になるように思えてならない(もちろん予想が外れる事を望んでいますが)。
 それにしても「若き柏木が老獪な小笠原に挑戦」って、年明けの試合に最高のキャッチだったのだけれども残念。
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2007年12月23日

拡大トヨタカップ 2007年12月16日の満喫 その3 レッズサポータと共に

 レッズ−エトワール戦、私はレッズサポータの方々の真ん中で観戦する機会を得た。ご承知のようにトヨタカップのチケットは完全指定席方式。さすがのレッズサポータ諸兄も、まとまった席の確保は困難だったようで、ゴール裏2階席中央部に終結を試み、たまたまその一角の席の指定券を私が持っていたと言う事なのだが。
 キックオフ約15分前にゲートをくぐると、通路はレッズサポータ諸兄で満ち溢れている。その混乱を掻き分けて自分の席に行くと、赤い服を着たお嬢さんが荷物を置いている。
「すみません、ここは私の席だと思うのですが。」
と言うと、慌てて荷物をよける。どうやら、とりあえず空いている席を占拠していただけの事らしい。後から後から指定券を持った人間が来るたびに混乱が起きる。若い男性レッズサポータが
「すみません、悪いのは我々だと言うのはわかっています。拙ければすぐどきます。他にやりようがなくて...」
と言い訳していた。クソ真面目な考えからすれば「自分の席で応援する」と言うやりようはあるかもしれないが、私はそのような杓子定規な野暮は大嫌いだから、できる限り協力した。とにかく詰めて立って通路も使えば、座席数の倍以上の人数が収容できる。不平がありそうな方には
「彼らは決勝になればいなくなるのだし、大事なタイトルマッチなのだから、協力しましょうや。サッカーちゅうのはこう言うものですし。悪いのは日本協会ですから」
と、レッズに無関係そうな声の大きい中年男がなだめて周辺の整理を行なえば、少しはトラブルも小さくなると言うものだ。周辺にトラブルがあると、集中して観戦できないと言う切実な事情もあったのは認めるが。それにしても、他クラブのサポータから再三レッズサポータの量に任せた狼藉に対する不平をよく聞くが、この日に関しては私の周囲にいた皆さんは皆礼儀正しかった。
 この大会の日程が準備された時点で、レッズ(あるいはフロンターレ)がこの試合に登場する確率は決して低くはなかった。(地元枠と言う極めて恥ずかしい問題を抜きにしても)例えば1万人分とかの枠をACLの決勝終了後に売り出すだけで、状況は随分と改善されたと思うのだが。

 考えてみれば、他のクラブの応援振りを横から眺めるのは簡単だが、サポータの真っ只中で観戦すると言うのは得難い経験だ。
 この日私のスタンスは「結構熱心にレッズに勝って欲しい」と言うもの。それは以前から述べているように、私はベガルタのサポータであると同時に日本代表のサポータであり、世界の中の日本サッカー界のプレゼンスが向上するために、この大会における日本クラブの好成績は重要だと思うからだ。だから、ミラン戦では、レッズがよいプレイをすれば「持ち上がれ阿部!」とか「よっしゃ啓太!」と騒いでいたし、失点場面では「あいやー坪井!」とか「中央に2人目が来るぞ!」などど絶叫していた。
 しかし、レッズサポータに囲まれた状態は想定していなかった。と言って、一緒にコールしたり歌うのもねえ。少なくとも私の周囲のレッズサポータの方々ほど、心底勝利を祈っているかと言うと何とも言えないし。大体、「UuuuuhW! uWashington!」コールならさておき、心の中で、「Ah... I am not a member of REDS, but ... I sincerly hope REDS will win...」などと思いながら「We are REDS!」なんてコールするのは、やはりレッズ諸兄に失礼と言うものだろう。
 ともあれ、歌ったり踊ったりコールしたりを除いては、レッズサポータと呉越同舟(もっとも呉と越ほど敵対はしていないと思うが)しながら、ミラン戦同様、あらん限りの声で好き勝手な野次を飛ばし、坪井と都築のおバカに頭を抱え、ワシントンの得点に絶叫する事になった。PK戦後は横にいたおじさん(と言っても私よりは若かったな)に勧誘され肩を抱いて踊り狂う事になったのだが。
 他のクラブの応援振りを間近で見るのも、勉強になるものだな。大体、遠くで聞いていると、コールや歌は何を述べているのか聞き取れない事が多いのだが、さすがに間近で聞けば意味もよく理解できる。確かに「赤き血のイレブン」は格好いいし。ちなみに一緒に観戦していた友人が、「あの永井って言うのは、玉井真吾の息子なのか」と訳のわからない発言をしていたな。違うよ、大永井の息子はレイソルだって。

 1つだけ残念な事。試合終了後、レッズサポータ達が「We are DIAMONDS」を歌い始めた。あの「Sailing」の節のやつだ。普段レッズの試合後にこれを聞くのは忌々しい思いになる事も多いが、この日に関してはまあよいだろう。
 と思っていたら、主催側が信じ難い暴挙。サポータが朗々と勝利を愉しんでいる時に、突然Chemistryが現れて、歌い始めたのだ。当然、競技場中のスピーカから歌声が流れ始める。繰り返すが、これは許し難い暴挙だ。サッカー場はサッカー人のためにある。試合後、サポータは勝利を喜ぶ権利がある。それを土足で踏みにじるような行為である。加えて、この時点で決勝のキックオフまで1時間以上時間があった。ほんの数分くらい待てば問題なかったのに。つまり、最初の台本がヘマだったのだ
 これは、Chemistyはもちろん(と言うか、あれだけのミュージシャンがあのような悪い雰囲気で歌わざるを得なかったのは気の毒だ)、仕切った広告代理店が悪いのではない。悪いのは日本サッカー協会だ。あのようなイベントでは、台本製作前にサッカーサイドが「サッカーの都合」を適切に伝えておかなければならない。もっとも、当日の進行現場側も柔軟な進行をもう少し考えてもよかったとも思うが。Chmistryのスケジュールの都合だろうか。
 まあ、レッズサポータ達もさすがで、全く妨害を気にせず朗々と歌っていたけどね。

 終盤ボロボロになっていたレッズについては過日述べた通り。心底「どうしてこの男達は戦い続けられるのだろうか」と思った。そして、それに対する推論を少し。
 上記の私の疑問に対し、「レッズサポ」さんが「客席にいたなら、わかるでしょ?」とコメントして下さった。おそらく「レッズサポ」さんは「自分達の壮大な応援が選手達を支えたのだ」と言いたいのだろう。
 しかし、それは違うと思う。もちろん、応援が勝たせる試合と言うものは結構ある。しかし、応援でいつも勝てるならば、レッズはJリーグ黎明期からトップを走っていただろうし、ベガルタだってすぐにJ1に昇格している(泣)。
 この日参戦できたレッズサポータの方々の見事な応援は実感したが、個別のサポータの応援そのものはどこのクラブでもそう変わるものではない。レッズ応援席の真ん中にいたベガルタのサポータがそう実感したのだ。いや、他クラブのサポータの方々だって、そう考える事だろう。
 しかし、レッズサポータが他クラブより優れている事がある。あの多人数のサポータの整然とした応援だ。言うまでもなく、まず人数が違う。さらに、その人数にも関わらず、声が揃っているとか、ブーイングのタイミングがよい、とかの応援技術も相当なものだ。さらに加えて、入場時の見事な自主規制とか、チケット確保の手練手管など、競技場周辺でのスキルも大したものだ。レッズサポータの凄さと言うのは、そのような総合力なのだ。無論、時にその凄さが他クラブのサポータに大いなる不快感を与える事例も見聞きするのだが、それはこの日の本題ではない。
 しかし、この日は上記した日本協会のチケット販売の段取り悪さもあり、これらのレッズサポータの利点を思うように活かせない試合だった。そう、この日のレッズは上記「レッズサポ」さんがおっしゃってくれた「客席にいたなら、わかるでしょ?」が、通常通りに機能しない日だったのだ。極端な事を言えば、この日のレッズイレブン(正にイレブンだよな、オジェク氏は交代すら使わないのだから)にとっては、この日本協会の段取り悪さに始まるサポータの少なさも、苦闘の要因と言えたかもしれない(誤解されては困るが、私の周囲のレッズサポータの方々は大したものでしたよ)。
 それでは彼らは勝ち抜いた。だから感心したのだ。「どうしてこの男達は戦い続けられるのだろうか」と。

 おそらく、累積値なのだと思う。
 今年の天皇杯決勝で、私はブッフバルド氏がレッズに叩き込んだ「勝利のメンタリティ」に感心した。そして、その「勝利のメンタリティ」は今シーズンを通してさらにレッズの中で研ぎ澄まされたのだろう。選手のプロフェッショナルな姿勢と、(あの非交代策、ターンオーバの否定により私はオジェク氏をあまり評価していないが)オジェク氏を初めとするコーチ陣の指導と、阿部の補強に代表されるフロントの手腕と、そして過去から綿々と続けられてきたサポータの応援と、それぞれが累積し、この日の信じ難い勝負強さになったのではないか。
 あの苦しい後半戦、2−1に突き放したきっかけは啓太の「ここしかない」と言う場面での前進だった。同点となった終盤、これまでフラフラボロボロだった若い細貝の攻め上がりから決定機を掴んだ。彼らのあの信じ難いガンバリは、過去のレッズの累積値が作り上げたものだったのだ。

 今シーズンは、フロンターレの凄絶なPK負けと、レッズの信じ難いPK勝ちを体験できた。この2試合共にJリーグ15年の集大成とも言うべき試合だったのだ。
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2007年12月22日

拡大トヨタカップ 2007年12月16日の満喫 その2 欧羅巴対南亜米利加

 ボカとトヨタカップと言えば、00年、01年、03年とカルロス・ビアンキ氏に率いられたチームが、欧州の金満クラブに対し、知的かつ陰険に守備を固め、リケルメの巧技(03年はテベス、ただし負傷で終盤に起用されたのみだったが)を軸にしたカウンタで悩ませた印象が強過ぎる。さらに拡大トヨタカップになった以降の2年間、サンパウロ、インテルナシオナールと言うブラジルの名門が素晴らしい組織守備で、リバプール、バルセロナの欧州の巨人を完封している(この欧州の2大名門クラブは未だ「世界一」の栄冠を獲得していていないのだ!)。
 となれば、この日もエトワール戦で見せた組織的な守備で、ボカがミランをいかに悩ませるかと言う試合を予測していた。その予測はよい方向に完璧に裏切られた。ボカが攻めに出たのだ。
 トヨタカップの歴史を振り返っても、90年代半ばボスマン判決以降欧州の金満クラブが大量に選手をかき集めるようになる前を含め、「攻め」に出たチームは数少ない。81年のジーコのフラメンゴ、85年史上最高のトヨタカップのアルヘンチノス・ジュニアーズ、そして92,93年のテレ・サンタナのサンパウロくらいではなかろうか。むしろ80年代は南米のチームは、欧州よりも戦闘能力が高い事が多かった。それにも関わらず、しっかりと守備を固め確実に勝利を狙うチームが多かったのだ。これは上記のビアンキ氏のボカや、ここ2年のブラジルの名門の「戦闘能力は劣るが工夫で対抗するために守備を固める」策とは全く異なるものだった。
 と言う事で、ボカの「攻め」には驚かされた。いかにもアルゼンチンらしい、角度をつけた短く強いパスでミランの強力MFのチェックを外し、最終ラインまで攻め込む。アンブロジーニ、ガットゥーゾの厳重な守備網を抜け出したところで、セリエAのクラブも欧州チャンピオンズリーグのトップチームも、パスの精度が崩れてしまう。ところが、ボカの各選手は中盤の密集を抜け出した後も精度が崩れないのだ。ネスタとカラーゼを前に、ギリギリのスペースを狙った突破を挙行、パスのタイミング、ちょっとした溜め、そして強さと精度、相当数の「後一歩」の場面を作った。このボカの攻撃は見ていて本当に面白かった。
 78年のメノッティ氏が作り上げた芸術、85年のホセ・ジュディカ氏率いるアルヘンチノス、94年ディエゴ麻薬が明らかになる前のアルフィオ・バシーレ氏が作り上げた超攻撃的なチーム。アルゼンチンが本腰を入れて攻撃的なサッカーを試行した時の美しさは、何とも言えないものがある。そして、この日のボカはそのような偉大な先達を思わせる意欲でミラン陣内に攻め込んだ。さらに短いパスでの攻め込みを有効にするのはしっかりした押し上げ、ミランがはね返しても適切な読みでこぼれ球を拾い、連続攻撃を仕掛ける。
 強いチームに対して、攻撃的に戦い敵にペースを渡さないように攻め切ってしまうのは、1つの有力な策である。ただし、攻め切る事ができれば。そして、ボカの意欲は素晴らしかったし、野次馬としてはその美しい攻撃を愉しめたのだから、文句を言う筋合いはないのだが、ボカのこの日の相手はイタリアの名門中の名門だった。攻撃的なチームが攻め切る事が最も難しいイタリアの。

 前半20分あたりまでボカの美しい攻撃に感心しながらも、あの前掛り振りは、典型的な敵カウンタの好餌になるのではないかなあと思い始めた。もちろん、しっかりとした押上げがあるのでそうは悪い形ではボールを奪われないのだが、何せカカなのだ。ボカのゾーンディフェンスは4DFの前にトレスボランチの形で選手が並ぶのが特徴だが、短いパスでの攻め込みには4,5人の人数をかける必要があるし、そこをフォローするために押し上げれば、どうしてもきれいな7人のラインは崩れる事がある。その僅かなバランスの崩れをカカは巧みな位置取りで突く。そして、イタリアのトップ選手達はボールを奪った瞬間の切替の早さは世界一、そのカカの一瞬を逃さない。それでもボカの守備は相当数残っているのだが、1度フリーになったカカは簡単には止められない。
 1点目はカカの突破をかろうじてブロックしたが、こぼれ球を拾われ、逆サイド側に逃げる動きをするインザギをキッチリと視野に入れられてしまう。それにしてもVTRで幾度もこの場面を見直したが、カカは一体いつインザギを視野に捉えたのだろうか。
 2点目はインザギの狡猾なつぶれから。このようなセットプレイの嫌らしさも正にイタリア。
 3点目に至っては、ガットゥーゾ?の縦パスをカカが受けた時は2対5くらいの状態。それでもフリーで縦に入るカカの強烈な突破、外に開いてボカDFを引き付けるインザギの巧妙な動き。何かカカが挙動を開始した瞬間に点が入る気がしたが、本当にそうなっちゃった。カカ凄いな。
 4点目は完全前掛りに対する速攻で、もうどうしようもない。
 結局ボカは攻め切れなかった事と、インザギの老獪な動きを止められなかった事が敗因となった。カカをとめられないのはある意味どうしようもないし。そう考えると、多くのタレントが欧州に流出してしまっているアルゼンチンのクラブが、純アルゼンチン風攻撃サッカーで欧州金満クラブを破るのは難しいと言う身も蓋もない結論になってしまうが。確かに立ち上がりのボカの攻撃は本当に美しかったが、ネスタとカラーゼを大慌てさせるまでには至らなかった。最後ペナルティエリアに入るところで、もう一工夫が足りないのだ。前半の同点弾はショートコーナを巧く使った狡猾なプレイだったが、
 あの85年のアルヘンチノスにしても、若きスーパースター候補クラウディオ・ボルギ(候補で終わってしまったのはあまりに残念だったのだが、あの素晴らしいボルギがガエタノ・シレアやアントニオ・カブリニを真っ青にするのを見られた私達は本当に幸せだったのだ)、翌年このアルヘンチノスとは全く正反対の守備的なサッカーで世界チャンピオンになるチームの中核を担ったセルヒオ・バチスタ、78年ワールドカップ当時は精力的なサイドバックだったホルヘ・オルギン(この試合では老獪なセンタバックを務めた、後にアビスパの監督として来日)、と言ったアルゼンチンのトップ選手がいたのだ。パタグリアもパレルモも素晴らしい選手だがその域には達していないと言う事だろうか(もっともエトワール戦の得点時のパレルモの裏を突くパスは凄かったけれど)。
 しかし、野次馬としては、この日のボカのサッカーはとても興奮させられるものだったし、ブラジルのトップスターを前面に押し出すミランのイタリア風逆襲速攻も存分に堪能した。本当に面白い試合だった。
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2007年12月19日

拡大トヨタカップ 2007年12月16日の満喫 その1 亜細亜対北阿弗利加

 一言で語れば、今年の拡大トヨタカップは例年以上に印象的な大会となった。要因は言うまでもなくレッズが登場した事が1つ目、そして2つ目は決勝でボカが守備を固めずに攻撃的に戦った事だ。その結果として、単純に試合を愉しめたのもよかったし、あるいは比較論から世界のトップレベルと日本サッカーの差を具体的な形態で認識できた事も、自分としては有益だった。さらには何の因果か、3位決定戦をレッズサポータ諸兄の真ん中で観戦すると言う得難い機会を経験する事もできた。
 換言すると、ここまで語ってきた準決勝までの伏線が、16日の決勝戦と3位決定戦で、見事に結実したとも言える。そのあたりを複数回に分けて講釈を垂れていきたい。

 で、レッズ−エトワール戦。
 開始早々レッズは押し込み、CKを3回獲得するが攻め切れず。そしてエトワールのクリアがレッズ守備ラインの後方を襲う。そこで、いきなり坪井がおバカを見せる。高いバウンドに合わせ損ね、慌ててジャンプし、自ら敵FWに抜け出す好機を提供。抜け出した敵FWに慌ててスライディングしなぎ倒した。PKは当然だが、あまりの無様さに主審はイエローカードで勘弁してくれた。これがJの杓子定規な主審ならば当然レッドだっただろう。この日の午前中「跳ねそうな浮き球は絶対ジャンプしてはならず、上半身をボールにかぶせろ」と、小学生に教えていた身としては、来週「な、俺の言った通りだったろ」と言うのがつらい。
 先日のカカに出し抜かれた場面を攻めようとは思わない。あれは世界一の選手に能力面での「差」を突きつけられた場面だったからだ(あのような「一瞬の集中」が90分続くかどうかは、このレベルでの「差」と言う事になる)。しかし、このミスにしても、アントラーズ戦のミスにしても、完全な判断ミス。代表選手がここまで決定的な判断ミスを大事な試合で2回してしまってはいけない。疲れていたのだろうか。

 以降レッズは再び攻勢をとるが、相変わらず堅固に8人で守備を固めるエトワールは中々隙を見せない。前半のうちに追いついておきたいところだが、攻め手が見つからない。最大の問題は長谷部にあった。あれだけ密集した守備網を崩すためには、敵陣に近いところで誰かが無理をしなければならない(ここで言う無理とは、僅かなスペースにパスを通すとか、密集地域で敵を抜くとか、敵の意表を突くスペースを狙うとか、高度な判断と技巧を駆使すると言う意味)。その役割を担った長谷部だが、敵陣近くまで迫りながらどうにも仕掛けられない。ミラン戦どうしようもなかったのは仕方がないが、この相手ならば「何か」をやって欲しいのだが。疲れていたのだろうか。
 この難しい局面を打開したのは、阿部と山田とオジェク氏だった。
 ペナルティエリア右に向かい走りこんだ永井に最後尾の阿部が高精度のロングフィードをピタリと合わせる。永井が巧みに落とした攻撃をエトワールは何とかはね返すが、再びボールは最後尾でフリーの阿部に、阿部の展開から最終的に右サイドで山田がフリーになる。山田のカーブがかかった好クロスをエトワールは逆サイドに逃げるのが精一杯、拾った相馬のクロスをワシントンが叩き込んだ。しっかりとラインを構成している守備ラインを崩すために、後方から精度の高いロングパスを入れてラインを下げさせ、サイドでのプレイ経験が豊富なベテランが鮮やかなクロスを上げたのが起点となった。山田を右サイドに写したオジェク氏采配を見事と言うか、最初からそうすればよかったのにと言うか、いずれを正とするかはさておき。そして、阿部にはこのようなプレイ頻度をとにかく増やして欲しいのだが。
 ともあれ、この同点劇でエトワール守備陣のライン形成はおかしくなった。右サイドで永井が巧みな引き出しで抜け出し、最後はワシントンの強シュートがポストを叩いた場面は惜しかった。もっとも、その後にCKから見事なヘディングシュートを打たれ、都築がゴールラインぎりぎりからかき出すと言う危い場面も作られたのだが(これは後半の苦戦の伏線だったのか)。

 後半に入ると様相は一変した。
 レッズが全く動けなくなったのだ。過去2試合半、あれだけ守備的に戦っていたエトワールも、こうなると中盤を制して攻勢に出る。レッズはハーフウェイラインを越えるのがやっとと言う惨状に落ち込む。
 このあたりは(試合開始時には右サイドを務め、前半半ばに山田と入れ代わってボランチに入った)細貝がいっぱいになったのが大きかった。中盤後方でボールを受けた後、全くパスをつなげないのだ。好調時は丁寧にボールを扱い(いささか常識的ながら)しっかりとつなぐ選手なのだが。上記した通り、長谷部も機能しないため、中盤が全く機能しなくなってしまった。疲れていたのだろうか。
 それでもレッズの勝負を見極める力は凄い。中盤を孤立無援で支えていた啓太からクサビを受けたワシントンが持ちこたえている間に、押し込まれていた啓太が前進、リターンを受けて相馬に鋭いスルーパスを通す。相馬のクロスが敵DFにハンドで防がれたが、レッズはそのFKからワシントンが完璧なヘディングを決めてしまった。この後半、啓太が唯一思い切りよく上がった場面だった。啓太の判断力をどう称えればよいのか。
 ところが、都築の信じ難いミスで再び同点。都築も...疲れていただろうが、GKなのだから...

 その後、レッズは凄絶な戦いを演じる事になる。誰の目にも明らかな疲労。ここ数年全てのツケを選手達に押し付けている無謀な日程。いつもの事だがどんなに選手たちが疲弊していても交代策を使わずそのままの戦いを要求するオジェク氏。そう言えば、ターンオーバの概念を理解していない日本協会やJリーグ首脳の愚かな発言もあったな。それでも、細貝が最後の力を振り絞って自らの展開から、最前線に飛び出し決定的なヘッドを放った場面には感動した。アンブロジーニに完敗した準決勝、ボロボロになるまで疲弊し最後にはPKも決めた決勝。この2試合はこの若者にとって大いなる経験になっただろう。本当に反町は幸せな男だ。
 「どうしてこの男達は戦い続けられるのだろうか」と素直な疑問が湧いて来た終盤、レッズはかろうじて守り抜きPK戦に持ち込む事に成功。サポータの後押しもあり、3位を勝ち取った。
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2007年12月13日

拡大トヨタカップ 欧州対亜細亜

 ハーフラインからちょっとレッズ陣内に入ったところでのFK。カカが挙動を開始する。アンブロジーニ?が素早いリスタート。坪井の挙動が遅れた。カカが高速ドリブルをスタート。坪井は持ち味の俊足を活かして追いすがるが、1度完全に加速したカカに対し初期動作の遅れはいかんともしがたかった。カカは余裕綽々持ち直し、一拍おいて後方で我慢したセードルフにボールを流し込んだ。
 カカと坪井の格の違いが出た失点だった。

 開始早々、ミランはレッズの様子を見ながら慎重に試合に入る。レッズは阿部と啓太がレッズの慎重さを見て取り、巧みにボールを刈り取り速攻を仕掛け、阿部、長谷部がミドルシュートを放つ場面を作った。強敵を相手にする場合は、序盤の交通事故は1つの狙い目だ。
 序盤、カカは阿部に複数回ボールを奪われた。一方でカカは阿部の間合いを計っていたのだろう。前半20分過ぎ、カカはガットゥーゾのサポートもあったが、阿部を完全に出し抜き、高速ドリブルで前進し、セードルフの決定機を演出した(都築の冷静な守備が素晴らしかった)。これでカカを乗せると拙いと思われた。しかし、阿部はよく修正。1度右サイド(以降左右は全てレッズから見て)から崩されかけた場面(ヤンクロフスキがシュート)以外は、カカをそれなりに止める事に成功した。
 件のカカのプレイ以降、ミランがペースを掴むが、闘莉王を軸にレッズはよく我慢。オッドのクロスにジラルディニが合わせた場面以外は、決定機を与えなかった(ジラルディニと闘莉王の対決はアテネ以来か)。一方でワシントンの前進(前を向けばネスタとカラーゼに対しても、あの戦車前進は通用するのだ!)から相馬の好クロスを永井が落とし啓太がフリーでシュートを放つなど、散発ながら逆襲も見せる(それにしても相馬が前進すると、ミラン守備陣が2枚並んで必ず縦を押えるのは面白かった、ちゃあんとセパハン戦をスカウティングしているな)。前半あと2、3分になったところで、ミランが無理をせずに時計を進めるためにボールを回し始めた時は、ちょっと感動した。あのミランが、リスクを最小限にする戦いを指向しているのだから。

 とにかく前半を0−0だった以上、後半のアタマからミランが仕掛けてくるのは当然か。状況を悪化させたのは闘莉王。左サイドで見事なタックルでボールを奪いながら、調子にのってオッド?を抜こうとしてボールを奪われ、慌てて抱きかかえて止める。いかにもらしいプレイ(笑)だが。このFK以降、ミランは一気に押し込んでくる。
 セードルフの2度の決定機。ピルロ?の浮き球を巧みにレッズDFから1度消えて裏に入りこまれた場面、カカの高速ドリブルから右サイドフリーで抜け出され打たれた場面。90年代半ば、ライカールトの後継者として注目されたセードルフ、中盤ならどこでも最高レベルのプレイを見せる多様性が逆に最適なポジションが決まりづらい感もあったこの名手が、幾多の経験を積み31歳になってこのような第2ストライカとして完成するとは、若い頃は想像すらしなかった。
 何とか後半30分まで0−0で行かないだろうかと思い始めたのが後半15分頃だったか。そこまで持ちこたえれば、ミランも無理をするか、あるいは我慢するか、どちらかを選択するはず。前者ならば逆襲でケタグリをかける機会が増えるだろう、後者ならば延長まで持ち込める可能性が高まる。と思ったところで、インザギが投入された。アンチェロッティ氏も、もつれさせたくなかったのだろう。そして、セードルフが中盤に下がり、カカがトップに位置取り。結果的にこの策が奏効した訳だ。
 一方で、後から思えばこの前後の時間帯が最もレッズがミランゴールをおびやかした時間帯だった。闘莉王の縦パスから永井が突破、ネスタ?がダイビングヘッドで防ぐ(永井の独特の間合いは存分にネスタとカラーゼを悩ませていた)。啓太のインタセプトからワシントンのカーブをかけたシュートをジダがファインセーブ(本当に啓太は素晴らしい選手に成長したものだ)。
 そうこうしているうちに、カカの高速ドリブル。坪井が抜かれ、闘莉王が抜かれ、それでも追いすがった坪井が鮮やかなスライディングで防ぐ、坪井の速さがよく出た好守(ちょっとPKっぽかったけど)。そして、その直後の失点場面に...
 ミランがレッズから得点してあれだけ喜ぶなんて。それはそれで嬉しかったが、もちろんこの得点がない方がもっと嬉しかったのだが。

 終盤、アンブロジーニが細貝の若さを再三突いて再三ボール奪取。試合を進める中で、最も経験の不足している選手を冷徹に見極められた。序盤を除いて長谷部はとうとうよい体勢でボールを持たしてもらえなかった。中盤で最も創造的な選手への厳しいケア。試合が煮詰まれば煮詰まるほど、見えてくる確かな差。
 最後の3分。最終ラインに下がっていた阿部に再度前進して欲しかったのだが。

 達也とポンテがいれば、闘莉王が最後まで残っていれば、などと色々な思いはある(とは言え、負傷した闘莉王に代わった山田が独特の突破力とシュートを見せてくれたのは嬉しかった)。しかし、よくやったとは思うが、明らかな明らかな差を改めて改めて感じた試合だった。
 98年6月、トゥールーズでアルゼンチンに対し「よくここまでやってくれた」と感動し、ナントでクロアチアに対し「でも、どうやってこの差を埋めていけばよいのだ」と感動した。あれから9年、間違いなく差は詰まっているのはよくわかった。しかし繰り返そう。改めて改めて埋めきれない差を感じたのだ。

 歴史的な試合だったのだ。現場で参戦できた幸せを噛み締めつつ。杉山隆一氏と落合弘氏はこの試合に何を感じたのだろうか。
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2007年12月12日

拡大トヨタカップ、南米対北アフリカ

 ボカ対エトワール。
 守備を基盤にしミランを破る目的で来日しているボカにとって、強力なCBを軸にした組織的な守備を誇るエトワールとの準決勝は厄介な試合になる事が予想された。
 
 実際前半から非常に緊張感のある試合となった。ボカも慎重な立ち上がりを見せ、双方が分厚い中盤を抜け出すのに苦労する。ただ、ボカはそれでも最終ラインの勝負に持ち込みエトワールのCBに止められるのに対して、エトワールの攻撃はボカの中盤に刈り取られてしまうところに、微妙な差があったのだが。
 そして、前半も40分になったあたりでボカが先制してしまう。空中戦から流れたボールをパレルモがダイレクトで裏に流し、パラシオが縦に抜け出し、エトワールのCBコンビをずらした上で、低いセンタリングを入れ、カルドソが絶妙な走りこみから腰を捻ると言う難しいシュートをゴールに突き刺した。堅固なエトワールの組織守備だが、裏とサイドを巧妙に取られてしまった。
 さすがにリードされたエトワールは、攻める頻度を増やす。前半終了間際に中央突破からエースのシェルミティが決定機を掴むが、抜け出す際のフェイント入りのトラップが僅かに外に流れ、ボカGKカランタに見事にブロックされてしまった。
 後半も、ややボカが引いて逆襲を狙うスタイルにしてきた事もあり、エトワールも攻めかける。1人1人の技術も高く、ボールの受け方も巧みで、サイドに拠点を作り追い越しの動きなどから、好クロスを上げるが、ボカのCBも強い。エトワールが前に出た分、ボカも巧みにサイドで数的優位を作る逆襲の頻度が増える。幾度か、ボカはサイドの崩しから中央の選手が空きフリーで強シュートを打つ場面を作るが、エトワールCBが見事にブロックする。ボカのバルガスが退場になったのもそのような場面。エトワールがはね返したボールを取り返そうとして、ラフなタックルを仕掛けてしまった。
 この退場劇以降のボカがまた凄かった。MFをやや守備的に組み直す交代をして、7人で後方を固める。で、守りに専念するのかと思ったら、これがしっかりと逆襲をしかけるのだ。むしろ、自軍の数が減った分だけスペースができたかのような(笑)動きだった。
 エトワールも前に人数をかけて反撃する。丁寧にサイドを崩し、ファーサイドにクロスを上げ、逆サイドからの連続攻撃を狙うが、ボカのセンタバックは崩れない。結局、そのまま1−0で終了。

 面白い試合ではあった。エトワールの守備が相当レベルが高いのはパチューカ戦でわかっていたが、攻撃の質も中々だった。ただ、この両軍には何か埋め難い程の差があるのも感じた試合だった。この差について考えてしまった。結局この差と言うのは、瞬間的な技術の差だと思う。
 エトワールがパチューカに対して守り勝った試合では、そのような差は全く感じなかった。しかし、この日の試合ではエトワールがよいプレイを見せただけに、ボカとの間にはっきりとした差を一層感じたのだ。この日のボカの選手たちは、アルゼンチン代表に入る可能性はあるかもしれないが、長期間レギュラを確保できるかと言うと疑問のレベルだろう。そのボカの選手達と、エトワールの選手達に、瞬間的な技術の差を、明確に感じたから、考えてしまったのだ。そして、この「差」を何とかして明確化して、追いつく努力をする事が、チュニジアにとっても、そしておそらく日本にとっても大きな課題なのではないかと思うのだが。何とも曖昧なイメージなのだけれどもね。

 「差」を感じた翌日に、いよいよレッズ−ミランを観戦できる。ミランの選手達の個人能力は、当然ながらボカの選手達のそれより上だろう。「差」を認識しつつ、どこまでやる事ができるのか。
 それにしてもアンチェロッティ氏が「鈴木、阿部、長谷部を警戒する」って語るのは、やはり嬉しいね。
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2007年12月10日

18年の歳月

 相馬の鮮やかなクロスを永井が止め損ねたこぼれ球、全くのフリーで飛び込んだ長谷部が外した時は悪い予感がした。超決定機を外した事も残念だったが、長谷部と相馬の悔しがり方が尋常でなかったからだ。彼らはここ最近の試合でどうしても点が取れていない事が、相当なトラウマになっていたのだろう。
 そうこうしているうちにセパハンの逆襲から右サイドの裏を突かれ敵FWが全くのフリーになる。決定機を外した直後にやられる事が多いのは、サッカーの古典的理論。「やられた!」と思ったが、オフサイドに救われた。直後のVTRを見る限り、非常に微妙な判定だったのだが。
 そして、その直後再びよい体勢でボールを相馬が再び見事な突破、今度のセンタリングはグラウンダでゴールをよぎるボール、永井が正確にボールを捉えた。重苦しい雰囲気を打破したのは、大当たりだった相馬と、謎の大試合男永井だった。おい、セパハン、相馬の事を調べていないのは怠慢ではないのか。怠慢なのはセパハンではなく、イラン大使館だな。

 後半開始早々の決定機をかろうじて凌いだレッズ。敵のミスを拾った相馬がまたも強引に左サイド突破を狙い、こぼれたボールを拾った阿部がいかにも彼らしい広い視野からワシントンに完璧なスルーパス、ワシントンがGKを抜いてそのままノーステップでシュートすると、ボールは敵DFの間隙を突いてゴールに飛び込んだ。相馬、阿部、ワシントンの個人能力が見事に連続したよい得点だった。

 その後は、相変わらずメンバを交代もせず、特に守備的にボールを回す訳でもなく、中2日で世界最強クラブと試合すると言う自覚が全く見えないオジェック采配を堪能しながら、時計が進むのを見守る展開となった。阿部の展開力も、闘莉王の進出も、相馬の突破も、ワシントンの得点力も、長谷部の後方からの進出も、永井の飛び出しも、さらには小野の存在も、全てをアンチェロッティ氏に公開しながら、90分が終了、歓喜となった。

 ミランがトヨタカップに初来日したのが、89年だから18年前か。当時、レギュラだったアンチェロッティは負傷欠場、代わりにライカールトがディフェンススクリーンを務め、若きパオロ・マルディーニは既にイタリア代表に定着していた。ミランが名GKイギータと完璧なCB故エスコバルの前に散々苦労したあの試合、トヨタカップの歴史でも5本の指に入る素晴らしい試合だった。おお、そう言えば俺は89年に結婚したのだっけなと。
 そして、89年の12月と言えば、三菱はJSL開始以来初めて2部に落ちていたはずだ。そして、新人の福田正博が毎試合のように得点を決め、1部復帰に向けて勝ち点を重ねていた。それにしても、まさか18年後に拡大トヨタカップの準決勝で、三菱がミランに挑戦する事になるとは...

 何かしら、試合ができる事だけに満足している自分を戒めたい。勝ちを狙わなければいけない。地元なのだし、先方は少年サッカー教室やら何やらで忙しそうだし。
 ただ心配は当日の座席なのだが。ゴール裏のチケットを1枚だけ確保しているのだが、もしレッズの応援席に入っていたらどうしたらいいのだろう。シゴト帰りだから、濃い色のコートか背広だ。赤い服など1着も持ってはいない。ベガルタの黄色いポンチョや、代表戦用の青い防寒着では巧くないような気がするし。

 ともあれ、レッズの快勝も嬉しかったけど、それ以上に菅井の来期の契約がまとまった報道が嬉しい1日だった。よしよし。梁も萬代も続くのだ。
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2007年12月09日

拡大トヨタカップ、北アフリカ対中米

 非常に面白い試合だった。エトワール・サハル(チュニジア)対パチューカ(メキシコ)。  

 チュニジアは北アフリカ地中海沿いのアラブ系の国、洗練されたビルドアップするサッカーは、イラクに通じるものがある。2002年の森島スタジアムの歓喜を含め、幾度か代表チームとも手合わせしているライバル国の1つとも言える。そして、このエトワールは、宗主国のフランス人監督マルシャン氏の指揮の下、典型的な4−4−2で後方を8人で固める非常に組織的な守備を見せてくれた。一方の攻撃もオーソドックスにトップの技巧を軸に、サイドに数的優位を作ろうとする。あるいは、稠密な中盤で前の方でカットしての逆襲速攻。
 一方のパチューカは、これまた中米の雄メキシコの典型的チーム。最終ラインの3DFのゾーンと、横に並ぶMF4人の距離感が抜群で、散発のエトワールにチャンスを作らせない。攻撃は各選手がいかにもメキシコらしいリズムのフットワークと独特の間合いで、ショートパスを軸に丹念に逆サイドを突く。エトワールの分厚い守備網を崩しきれずとも、ファウルを誘いセットプレイの名手ヒメネスの強烈にカーブのかかるキックが有効。

 ただし、両軍ともトヨタカップの常かもしれないが(笑)、守備を意識してチームを仕上げてくるため、得点の匂いがしない。
 エトワールは上記した巧みな攻め込みを見せるのだが、最前線の選手の技巧が今一歩で逆襲が最後のところで精度に欠く。日本テレビが大騒ぎしていた若きエース?のシェルミティだが、プレッシャがかかると精度がガクンと落ちる。1−0でリードした終盤、無理攻めを仕掛けてきたパチューカの裏を突いた逆襲から抜け出し、左サイド全くフリーの選手に出したパスが浮いてしまって巧く通り切らなかった場面は、このシェルミティと言う選手がまだまだのタレントである事を如実に示していた。もっとも日本テレビのこの若者をスターに仕立てる努力は大したもの。解説の都並敏史は(TV局の意図を読む経験はさすが)シェルミティの本質的でない場面の精妙なボールさばきを絶賛する。試合終了後も特別な殊勲者とは言えないシェルミティのインタビューを生中継で流すなど、相変わらずの姿勢を見せていた
 一方のパチューカ。注文相撲通り、ヒメネスのセットプレイが猛威を振るうのだが、エトワールの守備がこれまた凄い。GKマトルティが落ち着いた対応でギリギリでセービングを連発。前半開始早々のバーに当たった後のヘディングをゴールラインギリギリではじき出した後は、マトルティはヒメネスのキックにリズムが合ってしまったとも言うべき守備を見せ続けた。この試合マトルティ唯一のミスは、後半半ば過ぎにヒメネスのFKの落差の大きい変化に判断を誤りボールをこぼした場面。詰めていたパチューカ、マンスールが決め、勝負ありと思われたが、オフサイドで救われた。それにしても、この場面のマンスールのオフサイドの愚かさは何なのだろうか。詰めるための前進狙いはよくわかるが、ヒメネスが特別なフェイントをかけている訳でもなく、エトワール守備陣がトリッキーなオフサイドトラップをかけた訳でもないのに、ヒメネスが蹴る前にスタートしてオフサイドポジションに飛び出してしまった。その後のパチューカの連続CKも凄い迫力。高さでは勝てないため、左右から2連続で大外を狙い、3本目でニアを狙った。そこに見事に飛び込んだのが上記のマンスール。Not His Day!!!
 これは延長かと思われた終盤。エトワールが勝負を決めてしまった。巧みな速攻から、右サイドで人数をかけて戻しのパスがフリーのナリーに。ナリーのグラウンダのシュートはパチューカのDFに当たり方向が変化、GKカレロはボールに触るも防ぎきれなかった。必ずしも創造的でも技巧的でもなくとも、サイドに人数をかけて起点を作り、後方のMFのシュート力を活かす事に成功した得点。互角の攻防ながら、執拗な守備を愚直に繰り返したエトワールに幸運が舞い降りた。

 エトワールがボカに挑む準決勝も中々の見ものになるのではないか。おそらくボカはミランに対し、いかにケタグリをかけるかに専念した準備をしてきているはず。必ずしも準決勝対策は十分ではないと思う。そのボカに対しエトワールの組織守備は悩ましい障壁になるはず。これはこれで、非常に愉しみな見世物だ。

 いよいよ明日は、拡大トヨタカップにレッズが登場。よりによって、セパハンと戦わなければならない事実が、「地元枠」の愚かさを如実に示している。来年以降、この拡大トヨタカップがどのようなレギュレーションで行なわれるか、どの国で行なわれるか、私は知らない。しかし、「地元枠」の愚行は今大会を最後にして欲しい。
 それはさておき、レッズには期待したい。もうここまで来たら理屈ではない。私は公式戦で欧州の大巨人に挑戦する日本のクラブを見たいのだ。
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