2008年01月31日

仕上がりが早過ぎるのが唯一の心配

 とにかくオシム爺さんが、あそこまで回復した事を喜びたい。あのオーロラビジョンに映った笑顔を見る事ができたので十分だ。試合前には「この寒い中、衆人の中に登場しTVカメラが向けられるのはいかがか」とも思っていたが、考えてみれば医師団が観戦を許可したのだろうから、素直に回復を喜ぶべきなのだろう。ご本人だって、この試合は現場で見たかったよな。あの笑顔を見る事ができたのだから、これ以上の贅沢を言う事が無いように己を律したい。

 チリ戦との大きな違いは2点。チリと異なりボスニアは組織的なプレスがやや弱かった事。そして、内田がこの日は勇気を見せて再三敵陣に進出した事だ。内田が前進する事ができたのは、経験の賜物なのか、敵のプレスが弱かったためなのかは、議論が別れるかもしれないけれど。とは言え、結果的にこの2点により、すっかり余裕を持った憲剛が面白いようにロングパスを繰り出し、日本ペースに。A代表2試合目でこれだけできれば、内田は評価すべきだろう。で、タイ戦は内田なのか、加地なのか、極めて興味深いな。しかしねえ、あの30分過ぎに憲剛のサイドチェンジからフリーで抜け出した場面ではシュートを打てよ。あの元日の一撃を君は忘れてしまったのか。
 巻は不運の負傷で早々に交替。しかし、この日の調子も悪くなかった。相変わらずゴリゴリと身体ごとのしかかる前線での頑張りは非常に有効。大久保の直前でボールキープしていたDFに対して、後方から素晴らしいウェーブの動きで大久保を追い越し、プレスをかけに行った場面は、正に面目躍如。この頑健なFWは、アジア中を悩ませ続けるに違いない。
 巻に代わって入った山瀬(おそらく岡田氏は、タイ戦のオプションとして後半アタマあたりから高原あたりに代えて山瀬を入れた布陣にする構想だったのではないか、それが巻の負傷で早まったのだと見た)。2得点1アシストと大活躍だった。チリ戦終盤に起用された際は、目立った引き出しを見せる事ができなかったが、この日は遠藤と憲剛が組み立て、高原がキープし大久保が突破する状況で、彼らのど真ん中から挙動を開始して最前線に進出するプレイを要求され、見事にその期待に応えた。惨敗に終わったアルゼンチンワールドユースで最も質の高いプレイを見せ、岡田氏率いるコンサドーレで活躍していた頃は、この日のような2列目からの前進が魅力的な選手だった。しかし、レッズ、マリノスと言ったトップクラブに移籍するやキックのタイミングや溜めが格段に成長、自らが展開する選手として機能していた。ために、「2列目からの前進」と言う若い頃からの特長が前面にあまり出てこなくなっていた。しかし、売り込み時代の恩師の下でプレイしたこの日は、かつての良さを、格段に向上した技巧と言う基盤の上に見せてくれた訳だ。2得点とも、周囲の演出により、全くフリーの状態で落ち着いて決めたもの。しかし、全くのフリーでボールを受ける位置取りの良さ、そしてその状態で冷静で正確にボールを敵陣に流し込む技巧の高さは大したものだ。大体、日本代表史上において、全くフリーのシュートを確実に決める事のできる選手は非常に少なかったではないか。期待は高まる。
 大久保は序盤はトップ下で、巻交替後はトップでそれぞれ能力を発揮した。2試合で無得点は不満だし、少し動き過ぎて敵陣から離れてしまうのも気になったが、とにかく後方から良好なフィードを受ければ、突破に入れるのは魅力的。この男が高原と2トップを組むのは、ジーコ就任直後2003年の灼熱のコンフェデレーションカップ以来か。随分時間がかかったが、そろそろ完成して欲しいものだ。
 久々の楢崎も上々のプレイ。と言う程活躍の機会はなかったのだが。とは言え、前半の阿部の信じがたい大チョンボ後の敵シュートを冷静に処理した場面は絶品。安定感も十分、岡田氏はタイ戦にどちらを選ぶのか。しかし、あの阿部にはビックリしたね。さすがの中澤も他の選手なら「万が一」を想定するかもしれないが、最も信頼するパートナの阿部があんなおバカをするとは思っていなかっただろうな。
 終盤起用された播戸。あの時間帯まで日本の猛攻で疲労困憊していたボスニアDF陣に襲いかかった。日本のMFがボールを持って前を向いた瞬間に敵DFラインぎりぎりでボールを要求するストライカ。2点目は播戸の狡猾な動きで敵CBが無力化、後方から進出した山瀬は大久保のスルーパスを楽々受ける事ができた。3点目は、羽生交替直後で敵DFの集中が切れかけたところで、今野の高精度クロスを敵CB2枚引き連れて競り勝ち、山瀬に落とす事に成功。正にスーパーサブの面目躍如。高原、大久保、山瀬と言った正当な攻撃タレントに対しながら、巻のプレッシャに辟易し、疲労を重ねた敵DF陣が、終盤起用された播戸に粉砕されるストーリが完成しつつある。
 1−0でリードした場面で当然のように起用された今野。守備を固めるオプション要員であるのに加え、DF各ポジションに負傷が出た場合の貴重なバックアップ(いや、水本も見たいのだけれどもね)。しかし、起用されるとこの男はバックアップにとどまらない。再三見事なインタセプトを見せ、強烈な押上げを見せる。幾度か好機の起点になり、とうとう3点目の起点にもなってしまった。たまにはスタメンで見たい。
 となると、初めて代表チームで腕章を巻いた啓太についても語らなければなるまい。この男には腕章がよく似合う。常に戦い続け、プレイでチームメートを鼓舞できる希有な人材。堂々たるキャプテン振りだった。しかし、私は敢えて啓太に腕章を任せる選択をした岡田氏に疑問を呈したい。啓太は腕章を巻いても巻かなくとも、常に最大限のプレイを見せる。それよりは、代表の腕章を巻く事で一層の自覚を持ちアジア最高峰の選手である事を証明して欲しい選手がこのチームには複数いる。そのようなタレントに腕章を託してもよいのではないか。繰り返すが、啓太は素晴らしいキャプテンである。しかし、啓太はキャプテンを務めなくても素晴らしいのだ。

 まあ上記したチョンボを除いて阿部は堅実に守備を固めていた。高原はまだ重そうだが、タイ戦には合わせて来るのだろう。駒野は相変わらず堅実にサイドを固め、崩し続けた。遠藤も少し重めだが、相変わらず汚い仕事もきれいな仕事も、しっかりこなす。憲剛はピークが早過ぎるのが心配になるが、あれだけの高精度なサイドチェンジやロングパスを通してくれるのだから、不満はない。中澤は、高原がまだ重いとよく見て取り、先代エースストライカの役割をしっかり果たしてくれた。
 文句を言う筋合いではない事はわかってはいるが、新監督でここまで短期的にチームが仕上っているのが、理屈抜きに何か心配になってしまうのが、唯一の心配か。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(5) | TrackBack(0) | 日本代表

2008年01月28日

幻の店

 チリ戦のために信濃町駅から国立競技場に向かっていた。青山門前の信号機直前で、赤地に白ダスキのユニフォームを着たおじさんがビラを配っている。「あれ、今日はチリ戦なのに」などと思いながら、引き寄せられるようにビラを受け取った。入場し席に落ち着いて、何となく気になっていたビラを読む。

 「え!」

 驚いた。何とそのビラは、ペルー料理店「ティアスサナ」の宣伝だったのだ。あの幻の店ではないか。そう、あのタスキはペルー代表のそれなのだ。

 「ティアスサナ」と言う名前は、私にとっては甘美な記憶の中の存在。20年ほど前、東銀座の日産ビルの地下にその店はあった。店に入ると、そこはペルーを中心にした南米サッカーの情報に満ち溢れていた。壁中に貼られている幾多の南米サッカーの情報。もちろん、壁に貼られている情報比率が最大なのは、クビジャスだったが。
 まだ仙台在住だった学生時代。所要で東京に出た私は、夕刻余った時間と僅かながらの千円札を持って東銀座に向かった。地下のその店に入ると、やさしそうなおばさんと店員さん達が迎えてくれた。そして、壁中に貼り付けられたサッカーの情報(当時は写真を見る事すら貴重だったのだ!)。それだけで興奮している私におばさんは語りかけてくれた。そのおばさんが「スサナおばさん」だったのだ。
「ビデオはいくらでもあります。この店が初めてならば、ゴール集がお勧めですね。『ペレのゴール集』など、どうですか。」
当時から私はヒネていた。一瞬考えてから
「リベリーノ、リベリーノを見たいんです。」
 そう、リベリーノ。当時見た事のある映像は70年、74年、78年のワールドカップ、それにもう1つ、78年大会直前の強化試合西ドイツ戦くらい。70年の高速ドリブルと強シュート、74年の壁抜けフリーキック(何のかの言って世界サッカー史上「最高の直接FK」だろう)、件の78年大会直前の西ドイツを完全に叩きのめす美しいゲームメーク、78年3位決定戦イタリアの名手ゾフを破るディルセウの決勝点を演出する大仕事。これくらいだったのだ。だから、もっとリベリーノを見たかった。
 ちゃんと「リベリーノゴール集」があるのですよ。そして、映し出された映像。俺は感動したよ。喩えて見ようか。30分間で、リバウドとハジと岩本テルと中村俊輔の名場面を見せられたら、あなたも感動するだろう。
 以降、結構な回数通わせてもらった。いくつか見た映像の感動もまた忘れ難いが、それはそれで別な機会に。

 残念ながら、しばらくしてティアスサナは閉店してしまった。

 で、冒頭に戻る。
 慌てて、携帯から連絡し、試合後の席の予約を行なった。古くからの友人と一緒に観戦し、試合後ゆっくりやる予定だったから、ちょうどよかった。
 そこには、懐かしいティアスサナがあった。大量のクビジャスの写真はもちろん、トヨタカップやジャパンカップ(現キリンカップ)で来日した名手たちのサイン。過去の経緯はよくわからないが、「サッカーコンテンツ」は20年前のものを保持しながら、約1年前に信濃町そばで、新たな「ティアスタナ」を開店したのだそうだ。
 そして、おじさん(スサナおばさんのご子息との由)が、渡してくれたワインリストならぬVTRリスト、かつてのリベリーノを含めた夢のようなリストが...
posted by 武藤文雄 at 21:29| Comment(3) | TrackBack(0) | サッカー一般

2008年01月27日

オシムチルドレンと内田 −チリ戦雑感−

 試合直前、何が盛り上がったと言えば、
「せばんごお〜、にぃじゅっご!うちだ〜〜、ぁあつと!」
とアナウンスがなされた瞬間だ。

 岡田氏は、やはり相当慎重なメンバ構成を選択した。加地の代わりに内田を起用した以外は、基本的にアジアカップのメンバではないか。
 新しい選手のトライは、固定メンバに少しずつ織り込んで行くのがセオリー。既存の選手達に内田を組み合わせたメンバ構成は、非常に理に叶ったものだった。まあ、「試す」と称して、全部のメンバを変える監督が、ちょっと前にもいたし、つい最近もいるけれど。
 そして、このテストは70分過ぎに、内田が加地に交代されるまで継続した。残念ながら、現時点では「不合格」と言う結論だったが。内田にとって、かほど強力なチームと戦ったのは初めてだったろう(ワールドユースはもちろんJのトップチームよりも、今日のチリは強かった)。また、正対した左ウィングの縦に出る速さは相当だった。しかし、新進気鋭のサイドバックがあそこまで押し込まれてしまい、ほとんど攻撃に参加しないのでは...一方で加地がピッチに入る時の堂々とした態度が面白かった。「こんな餓鬼と俺を比べるなよ」(と加地が思っていたように、私が思っただけですが)。
 この日の内田の出来は残念なものだった。おお、内田のポジションにおける日本サッカー史上最高の名手も、反対サイドのワールドカップ初出場に貢献した知性派も、考えてみれば内田の高校の先輩ではないか。厳しい評価はしたものの、不出来だったこの日の内田のデビュー戦は、あの2人の偉大なサイドバックの代表デビュー当時よりは、格段によいプレイだった事は間違いない(あの2人とも、若い頃はそんなものだったのだ)。厳しく成長を見守りたい。

 アジアカップの後、オシム爺さんは巻、山岸そして羽生に拘った采配はあまりしていなかった。それにも関わらず岡田氏が巻、山岸をスタメンに並べ、交代の一番手に羽生を使ってきたのは、まずは爺さんが期待していた(そして相当期間手塩にかけて育成してきた)この3人を改めて見極めたいとの思いがあったのだろう。
 巻はシーズン序盤の体調維持が難しい時期の試合にも関わらず、強引に身体を寄せていくプレイでよく戦った。立ち上がりの絶好機を敵の見事なスライディング(ファウルではないかとの報道が多いが、私は正当なボールへのタックルと見たが)に防がれたの惜しかった。あそこでの抜け出した時の丁寧なボールタッチは高く評価できる。定位置争いは厳しいが、強引に身体ごとボールを持ち出す強さは、チリDF陣にも十分に脅威となっていた。この手の「強い」FWは、多くの場合、経験を積み30歳近くになって花開く場合が多い。今後も相当期待できるのではないか。
 山岸は、やはり厳しい。この日の山岸は、運動量も豊富で開始早々からよくボールを引き出した。新たにチームメートとなった憲剛とは、お互い精度の高いコンビを形成しようとの意識も感じられた。しかし、どうしてこの男は敵ゴールライン間近で突破を狙わないのだろうか。瞬間的なスピードも、正確なボール扱いもあるはずなのに。(より後方のタレントに関わらず)加地や駒野が勝負どころで見せる強引な前進に対し、山岸の前を向いた場面での消極性へのフラストレーション。引き出せるだけに、突破しない事がもどかしい。
 一方、羽生は存在感を見せ付けた。前後して投入された大久保の派手な好機獲得(と直後の失敗)に隠れた感があったが、黒子を演じた羽生は評価されるべき活躍。羽生の上下左右動は、遠藤のヘロヘロ展開、憲剛のビシビシ展開それぞれとのマッチングがいい。憲剛のパスを受けた直後、大久保に通したスルーパスなど絶品だった。前に出て行くMFとして、水沼、北澤、反町、森島の系譜に連なることができるか。飛び出せる能力は現時点でも国内屈指だが、持ち出せる能力では羽生を凌駕する山瀬、(ずっと若い)梅崎、柏木と、ライバルは多いのだ。このあたりの比較論は別途やりたい。

 その他。
 川口の好守とおバカ、駒野の攻撃能力、中澤、阿部、啓太の安定感、憲剛と遠藤の妙技などは、まあ流行語?で言えば「仕様」か。高原はタイ戦には合わせて来るのだろうな(しかし、時に見せた正確なトラップと回転は評価しよう)。
 大久保は評価すべきだろう。確かに点を取れなかった事への不満も多い。ここで、「枠に飛ばせ」と激怒するか「打たなければ入らない」と期待するかは、さておき。
 残念だったのは山瀬。80分以降、チリが明らかに疲労したにも関わらず、もう1つ攻撃がピリッとしなかったのは、山瀬がしっかりとボールを受けて落ち着ける事ができなかったから。厳しい言い方になるが「やはり憲剛の方が」と言う出来だった。代表での成果はまだ「カメルーン戦終盤の出会い頭」しかない事を自覚して欲しい。

 テレビに常時映るバックスタンドだけが妙にガラガラ、他は満員のスタジアム。チリも強かったし(チリの若者達にとって、日本、韓国との敵地での連戦は素晴らしい経験になるだろう、とてもよいマッチメークだと思う)、日本も悪くなかった。足元から心底冷え込む辛い観戦だったが、内容がよかったので辛くない試合だった。ボスニアヘルツェゴビナ戦も期待しよう。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本代表

2008年01月25日

チリ戦展望

(国立に到着してから、闘莉王が負傷癒えずメンバ外だったのを思い出しました。赤面の至りの文章になっていますが、今更変更しても内容がおかしくなりますし、自省の念を含め、そのままにしようと思います。勝ち切れなかったのはちょっと残念でしたが、チリも中々強いチームで、とても面白い試合でした。試合の詳細については別途書くつもりです。2008年1月27日 AM1:10)


 早いもので、岡田監督が就任し最初のAマッチを迎える事になった。
 日本サッカー界にとって、各国の事情を斟酌せずに固定日程を強要してくるAFC(FIFA)の日程は迷惑千萬。とは言え、各国の日程を検討してからでは、まともに日程を組むことができないのも、確かなのかもしれない。しかし、ほんの1ヶ月前まで公式戦を戦っていた我らの戦士達が、ほんの短い休息しか与えられていない現状はつらい。そして、日程破綻が明らかになったここ数シーズン、何も対応すらせずに放置を継続している事は悲しい。しかし、そう言いながら過酷な日程下の試合だろうが、娯楽として見に行くのだから、私も矛盾しているな。そして、現地に行けば、選手に「サボるな!」と野次を飛ばすのだから現金なものだ。

 チリ戦、ボスニアヘルツェゴビナ戦は、いずれもタイ戦への準備試合の位置づけとなる。タイを軽視する気持は毛頭ないが、この両国はタイと比較してやや戦闘能力は高過ぎやしないだろうか。有料のA代表マッチを2試合準備試合として行なうならば、少なくとも1試合はスタイルや戦闘能力がタイに近い国ともやってもよいと思うのだが、例えばベトナムとかインドネシアとかマレーシアとか。無論、準備試合の両国は、長距離の移動+トップスターが参加しづらい状況のため、ベストの戦闘能力からマイナス分が大きい。対して「本気」で準備してくるタイとの比較も難しいの確かだが(タイはイングランドでじっくりと調整しているとの報道もあった)。
 ただし、タイ戦は「岡田新監督の短期チーム把握力」が問われる試合であり、勝ち点3獲得の確率を少しでも高くしたい試合。可能であれば「サッカースタイル」の違いまで意識した万全の準備を行ないたいところではあった。もっとも、チリ、ボスニアヘルツェゴビナ両国の招聘は、オシム爺さんが倒れる前のアレンジの可能性が高い(しかも爺さんは常に「強豪」との対戦を希望していたと言うし)から、仕方がない事なのかもしれないが。

 ともあれチリ戦への期待を。 
 チリは国内クラブの選手がほとんどの模様で、最も知名度の高いのはビエルサ監督と言う状況。ベストメンバではないものの、意欲的な若手で構成されたチームの模様、将来のサモラノやサラスがいるかもしれない(例えば96年秋に来日したウルグアイ代表は、やはり国内クラブからの選考だったが、若き日のレコパのプレイには驚かされたものだ)。また相性としても、(やや総論気味の乱暴な理屈だが)最近の日本はチーム全体でのボールキープを強さに押し出して戦うスタイルのため、技巧の質が高い中南米の国相手には苦戦する事が多いため、決して楽な戦いにはならないだろう。
 日本としては、タイ戦に向けたメンバの決定と、相互理解の再確認が課題になる試合となる。それらが達成された上で勢いをつけるためにも、そして何よりホームなのだから、しっかりと勝利したい。岡田氏はマスコミ向けに喜びそうな方針を掲げたようだが、タイ戦そのものはこれまでオシム氏が築いたパスワークを準拠した試合を見せる事になるだろう。一番興味深いのは、スコットランドから中村を呼び戻すかどうかだが、今日の試合の流れがよいようならば「戻さない」、悪ければ「戻すべくセルティックと交渉」とするのではなかろうか。
 そうこう考えると、フォーメーションとしては、オーソドックスな4−4−2か。加地−闘莉王−中澤−駒野がDFに並び、ボランチに阿部と啓太(または今野、今野は加地の代わりにサイドバックの可能性があるか)攻撃的MFに憲剛と遠藤、2トップに高原と前田遼一(または巻)で行くのではないか。敵のフォーメーションによっては阿部をDFラインに下げればよい。大久保と播戸が攻撃的にシフトする時に起用され、今野と橋本が守備固めに使われる。後は水本をテストするかどうか。このやり方ならば、いざとなった時に中村を呼び戻しても、憲剛(または遠藤)の代わりに投入すれば問題ない。また憲剛がボランチに下がるのも、アジアカップでのやり方なので、これまた問題は全くない。
 気持ちよい勝利を期待して国立に行こう。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(1) | 日本代表

2008年01月24日

勘弁して下さいよ

 久保がサンフレッチェに復帰した。

 もちろん「久保の体調がどうなのか」次第であろう。「まさかJ2のライバルチームに加入する」と言う事態は想定していなかったが、私は節に久保の復活を願っている。私は久保を諦められないのだ。久保が代表チームで輝いたのは、僅かに03年末から04年半ばにしか過ぎない。しかし、その間に決めてくれた幾多の得点が忘れられないのだ。あの大爆発が2010年の6月から7月にかけての2ヶ月の間に復活する可能性は決してゼロではないはずだ。
 だからと言って、どうしてJ2で久保と戦わなければならないのだ。ベガルタサポータとしては、久保と言う選手に関して考えるだけで嫌になってしまう。これなんて、その後でグヂャグヂャ語らせていただいたが、もう耐えられない記憶しか無い。上記した通り、04年半ばから体調を崩し、もがいていた久保。その久保が「存分に復調したのではないか」と思う事ができた試合も、たっぷりと堪能させられてしまった。

 とにかく久保はよくない。それに寿人が加わるなんて、もう勘弁して欲しい。どうしてJ2に久保と寿人の2トップが存在するのだろうか。昨シーズン開幕直後、私はこの2トップを是非見てみたいと述べた事がある。そして、その夢が叶った訳だ。最悪の形態で。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(6) | TrackBack(0) | Jリーグ

2008年01月23日

「不快」の要因

 戯言です。不愉快に思う方がいたらご容赦を。

 過日の事だが、複数の著名自称サッカー評論家が、「拡大トヨタカップのレッズサポータの応援は、大した事がなかった」と言う趣旨の発言を行ったとの由。まあ、彼らの発言は、過去も再三に渡り(私を含め)いくばくかのサッカー狂を不快にし続けてきた。この機会に、何故彼らの発言は、かくも私(のようなサッカー狂)を不愉快にさせるかを考えてみたので、以下述べる。彼らの発言など不愉快になるのだから無視すればよいし、他に愉快になるようなサッカーの話題も多々あるのに、わざわざ不愉快な話題に関して講釈を垂れる私自身の矛盾も感じるのだけどね。
 とは言え、私は「レッズサポータの応援が世界レベルか否か」を論じるものではない。そもそも、その命題そのものが、あまり意味の無い事だし。あくまでも、本稿は「著名サッカー評論家への不快感の理由」のみを述べるものである。

 まず、こちら。これは対談形式。二宮氏が聞き手になっているが、この方は「サッカー界においては『キャプテン』と言う単語は、試合中11人の中で腕章を巻いてチームを統率する人間である」と言う事を理解していないと言う実績があるので論外。で、語り手の金子氏。レッズサポータ批判の部分を抜粋させていただく。
金子:(前略)。それにしても、僕は浦和のサポーターにがっかりしましたね。
二宮: それはどういうこと?
金子: 試合の空気を読んでほしい、と強く言いたい。0対1で負けていて、残り時間はどんどん少なくなっていく。でも、0−0の時と変わらずに歌っているわけですよ。同じ応援歌がタイムアップという絶望の瞬間にもスタジアムに鳴り響いている。こんなスタジアムでは日本のクラブは勝てないな、と思いましたね。浦和のサポーターが日本で最先端を走っているのは事実ですよ。でも、欧州のスタンダードには程遠い。
ここまでの部分は、肯定はしないが、一つの理屈だと思う。確かに負けている試合終盤、(必ずしもレッズを含めたJクラブのサポータが、0対0の時と同じように歌っているとは思っていないし、少なくとも私はあまりそのような場に遭遇した事はないのだが)金子氏が指摘するように、単調に歌っているだけだとしたら、改善の余地はあるかもしれない。
 ところが、笑えるのは続く金子氏の発言である。
自分の愛するクラブが目の前に木っ端微塵に打ち砕かれていているのに、僕なら歌えない。言葉を失ってしまう。でも、テレビゲームのようにバーチャルに感じているから、負けても痛くもかゆくもないんですよ。
この人は経験がないのだ。自分の愛するクラブが目の前で打ち砕かれようとしているその時、言葉を失う人はサポータではない。打ち砕かれる直前までは、絶叫するのがサポータなのだ。そして、打ち砕かれた直後に言葉を失うのだが。この主審のホイッスル前後の絶叫と絶望を味わうのは、(願ってはいないのだが)一種のサポータ冥利なのだ。真のサポータとして経験のない人間(つまりサッカーが好きではない人間)に、どうして指図を受けなければならないのか。
 だから、この人の文章は私を不快にするのだろう。

 次はこちら。この人は再三「世界」とか「欧州トップモード」と言う定義不明な言葉を弄するので有名なのだが、レッズサポータ批判の部分を抜粋してみる。
 浦和のみならず、ゴール裏に陣取るJリーグの各クラブのサポーターは「見る」という行為が、いささか疎かになっている気がしてならない。常に声を張り上げ、身体を上下に揺らしていては、試合がよく見えるはずがない。
 それが端的に表れるのが、ブーイングのシーンだ。反応が決定的に遅いのだ。世界のサポーターに比べて、たとえば相手に有利に吹いた審判のジャッジに対し、異を唱える反応が確実に数秒遅れている。正面スタンドやバックスタンドで、静かに観戦している人の方が、むしろ反応は早いくらいだ。
 その応援風景は、殺気漂う圧倒的なものに見える。だが、少なくとも相手選手や審判は、最初はともかく、時間の経過とともに視線に鋭さが欠けていることに気づくことになる。彼らにとって本当に怖いものが、そこにはない。あるようでいてないのだ。一方、世界のスタンドにはそれがある。視線の鋭さこそが、スタジアムに殺気を漲らせているのだ。
 たとえば「カンプ・ノウ」に応援団はいない。試合中のスタンドは、滅茶苦茶静かだ。しかし、だからこそ、時にわき起こる歌声には迫力がある。ため息にさえ殺気を感じる。98,000人の観衆が瞬間、一斉にどっとつくため息だからである。ピッチに集中していない観衆が誰もいないことを意味するため息が、巨大なスタンドに響き渡った瞬間、そこには止めどもない戦慄が走る。
細かい部分の突っ込み(例えば、「数秒の遅延があればサッカーでは違う場面になっている、コンマ数秒の遅延はあるかもしれないが」とか「フィーゴの移籍直後の『カンプ・ノウ』が滅茶苦茶静かでしたか」などについては触れない)はさておき、「試合をしっかり見て反応すべし」と言う理屈は正しいとも思う。
 しかし、何か違和感がある。しばらくしてから気がついた。それは、杉山氏がここまでサポータの動きを観察している事そのものなのだ。少なくとも私は、サッカーの試合中、サッカー以外のものを見る余裕はない。過日のレッズーミラン戦にしても、レッズサポータを観察する余裕など一切なく試合ばかり見ていた。確かに相当な戦闘能力差を感じる試合ではあったが、一方でのんびりと応援風景を観察できる余裕のある試合ではなかった。
 おそらく杉山氏は試合そのものは見ないで、試合周辺を見るのが愉しいのだろう。そう言われてみれば、氏の過去の文章の多くは、形骸的な選手の配置や、欧州のサッカー場の雰囲気を語るものがほとんど。まともにサッカーの試合を見ているとは思えない内容のものが多かった。氏が97年ジョホールバルでイランに逆転された直後「ハハハハ、まただな」と笑っていたと言う逸話があるが、そう言う人なのである。これはこれで、1つの考え方だろうが。
 そのため、この人の文章は私を不快にするのだろう。


 ただし、上記した私の視点は、サッカーそのものを愉しむしか術のない、しがないサッカー狂のそれである。
 日本代表のワールドカップ3次予選タイ戦のチケットの売れ行きがあまりよくないとか、Jリーグの観客数が増えているがやや頭打ちと言う話を見聞きする。多くの方々にサッカーを愉しんでいただくためには、「サッカー狂」ではない方々に競技場に来ていただく事が非常に重要。そのためにも、このような「必ずしも自分はサッカーが好きではないが、一般人が喜ぶ視点でサッカーを語る事ができる」と言う自称サッカー評論家が必要なのだろう。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(48) | TrackBack(2) | マスコミ

2008年01月22日

平瀬智行への期待

 高原直泰が帰国し、レッズ加入。柳沢敦はアントラーズの慰留を振り切り、サンガ移籍。そして、平瀬智行がヴィッセル解雇の後、我がベガルタと正式契約を結んだ。
 さて、この3人を並列に論じた理由はわかるかな?その通り。この3人は、トルシェ氏が率いたシドニー五輪代表のFWだったのだ。シドニー五輪直前、こんな文章を書いた事がある。ちょっと引用する。
モロッコ戦、FWの3人は決定機を外し続けた。よく見ると、3人はそれぞれ外し方に「型」を持ち始めている。
平瀬は、シュートポイントに早く入りすぎて、ボールが懐に入ってしまい、ジャストミートできない。
高原は、シュートポイントに遅めに入り、トップスピードの勢いをボールに乗せようとするが、自分のスピードが制御しきれず、ボールコントロールが乱れる。
柳沢は、シュートポイントに入るタイミングは完璧だが、シュートが下手。モロッコ戦のポストに当てたシュートに至っては、「シュートを外す事にも天分があるのか」と思わせるほど。
そう、シドニー五輪直前、中田や中村や本山が次々に作る好機を、3人が仲良く外し続けていたのだ。

 もっとも高原は、シドニー本大会、続くレバノンアジアカップでもよく点を取り、02年の大エースと期待されるに至る。ところが、好事魔多し。自らも見事な得点を決めた敵地ポーランド戦の帰りの飛行機で、病魔に襲われ、02年大会を棒に振る。ところが、02年大会後ジュビロに復帰するや、凄まじい勢いの得点力を見せつけ、ドイツに移籍。その後も上がり下がりはあったが、06−07年シーズンには見事な活躍。昨夏のアジアカップでも存分にその得点力を見せ付けてくれた。そして、今回のレッズ加入。欧州でも実績を挙げた最高級のストライカとして、釜本、カズ(個人的には往事の久保もこの列に加えたいが)に比肩される存在となっている。
 柳沢と言う選手も、何のかのいいながら日本サッカー史に残るFWと言えるだろう。「得点を決める」能力を問わなければ、この選手ほど魅力的なFWは珍しい。正確な技術によるポストプレイ、忠実な守備、時に見せる見事な突破、正確なラストパス。その溢れ出る潜在力で、(得点以外の場面で)日本代表にもアントラーズにも貢献し続けてきた。先日の天皇杯決勝の終了直前の、「見事なボール奪取+シュート拒否+完璧なラストパス」は、正に柳沢の真骨頂と言えるのかもしれない。もっとも、2度のワールドカップの1年前には、日本代表でもよく得点を決めると言う「好調」を見せるのが、不思議な選手なのだが。

 そして平瀬。シドニー予選時点の99年には、柳沢よりも高原よりも高い実績を挙げていた。シドニーの2次予選は、カザフスタン、タイとのホーム&アウェイ総当たりでトップ抜けと言うレギュレーション。勝利が必要なホームの2試合(もっとも、初戦の敵地カザフ戦に2−0で勝った日本は余裕綽々の予選突破だったのだが)で、いずれも平瀬は2得点を決めた。中でも、カザフ戦の決勝点は、中村の40mはあろうかと言うスライスのかかったロングパスをトップスピードで受けて敵を振り切って決めたもの。従来の日本のFWには見られなかった、スピードあふれる突破力が何とも魅力的だった。平瀬はこの年の紅白歌合戦にゲストとして登場するのだが、当時の五輪代表において、一般マスコミの注目度は中村よりも稲本よりも明神よりも宮本よりも上だったのである。
 ところが、翌年のシドニー本大会で平瀬はほとんど活躍できなかった。多士済々のMF陣を軸にした当時のチームでFWに要求されたのはまずはポストプレイ。しかし、ポスト役が必ずしも得意ではない平瀬は、もう1つ機能しなかった。また得意の「前進力」は発揮するものの、肝心なシュートが(シドニーの)準備試合では思うように決まらなくなってしまった。今でも少し残念なのは、2試合めのスロバキア戦(スロバキアが守備を固めてきたものの、日本の攻撃力が上回り2−1で快勝した試合)で、終盤起用され、逆襲速攻から決定機を掴んだものの決められなかった場面。もし、あの場面で決めていれば、平瀬の後のサッカー人生は大きく変わったものになったように思えてならないのだが。
 以降、平瀬はアントラーズでも決定的な活躍ができず、マリノスにレンタルされたり、もう1つハッキリしないプレイぶりが継続。ヴィッセル移籍直後は、楽天が投資を開始した「新興チームに『かつてのスター選手』が移籍」と言う観点から取り上げられた事もあった。しかし、昨期は大久保の獲得などもあり、ヴィッセルでもはっきりした活躍ができず、とうとう解雇されてしまった。
 この平瀬のベガルタへの参入は、双方にとって非常によい出会いになり得る。ベガルタからすれば、これ程の経験を積んだ日本人FWはかつての山下以来ではないか。ベガルタの若手選手達への経験伝授が期待できよう。また、もう1つはっきりした活躍ができずに30歳を過ぎた平瀬にとって、熱狂的なサポータが支えるクラブで、今まで以上のモチベーションを持って復活を目指すのは悪くないはず。
 平瀬がユアテックスタジアムで「一花咲かす」事を多いに期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | Jリーグ

2008年01月17日

ベストメンバ規定周辺

 1月16日にJリーグ実行委員会が行われ、ベストメンバ規定について、羽生英之事務局長が何がしかの発言をしたらしい。
 断っておくが、私はこの規定は廃止されるべきと思っている。言い古された話だが、何をもってベストと言うかの定義が事実上不可能であるからだ。とは言え、悪法とは言え規則は規則、守られるべきであろう。ところが、昨年のフロンターレのACL準々決勝前後のレイソル戦でその規則通りにのメンバで試合を行ったフロンターレを、協会首脳が理不尽に罵倒したから、議論はおかしくなった。規則を守っているにも関わらず、上位者がその場の気分で発言する、あるいは発言する事が許されるのは、極めて危険な世界なのだ。
 で、羽生氏の発言に戻る。氏の発言に関して2つの報道を見つけた。1つ目は毎日新聞。主要部位を抜粋する。
(前略)Jリーグの羽生英之事務局長は「人事権は監督にあり、どれがベストメンバーかの答えはない。だが、(試合)日程はすべて分かっているのだから、計画性をもって対応してほしい」と説明した。
 ベストメンバー問題は昨季、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)参加で日程が過密になった川崎が、ACLの合間に行われたJリーグ戦で先発8人を入れ替えたことが発端。「先発11人は当該試合直前のリーグ戦5試合の内、1試合以上先発した選手を6人以上含まなければならない」と定めた規約には違反していなかったが、主力の大量欠場は試合の価値を下げるなどの批判が一部から出た。
これは、何を言いたいかよくわからない発言だ。フロンターレは、ACLの準々決勝とJリーグのバランスを取り、計画的にメンバ構成を決めて試合に臨んだら、協会首脳の訳のわからない暴言を食らったもの。あれ以上どのような「計画性」を持てばよいのだろうか。
 と思っていたら、全く異なるニュアンスの記事も出ていた。こちらは読売新聞。こちらも主要部位を抜粋する。
J1柏が昨年4月のナビスコ杯で、4日前に行われたJ1リーグ戦から先発メンバーを全員入れ替えた件に関し、Jリーグの羽生英之事務局長は16日、「また同じことがあれば、規約を変えなくてはいけないのではないか」と話し、同様のケースが再発した場合、Jリーグ規約を見直し、ベストメンバー同士による対戦を徹底する考えを示した。(以下略)
読売によると、羽生氏が言及した問題は、上記のフロンターレの試合ではなく、リーグ序盤のレイソルだと言う事になる。
 2つの記事をよく読むと、読売の方がしっくりくる。毎日の記事は、羽生氏の発言と、実例としてのフロンターレの件は独立しているので、フロンターレへの言及は記者の憶測に過ぎない(あるいは「ベストメンバ規定」との発言があったので、昨年の協会首脳の暴言の印象が強過ぎたので勘違いをした?)ように思えてくる。一方、読売の記事は羽生氏の発言は「柏について」と明言している。このあたりは、新聞(に限らないが)報道の恐ろしさ、難しさと言う事だろうか。
 と言う事で、読売の記事がより真実を伝えていると仮定しよう。ただ、読売報道の羽生発言もあまり感心しない。確かにレイソルの一件は、フロンターレのそれと異なり、規則で規定し切れない部分を突いた行為であるのは確かだ。Jリーグ当局として「規則の趣旨を徹底したい。」と言う意図は(私は賛同しないが)否定しない。けれども、規則とはそのようなものだ。もし、どうしても規則趣旨を徹底したいならば、「規定し切れない部分」の条項を改定し、趣旨を守らせる内容にすべきなのだ。そして、それができない事がこの規約が悪法である事の証左なのだ。「紳士協定」などには頼らず、悪法のまま運用する事であきらめるしかない。もっとも、悪法なのだから、その規則そのものを廃止する事が、なお結構な事は確かなのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(5) | TrackBack(3) | Jリーグ

2008年01月15日

藤枝東は局地戦でのボールキープを狙えなかったか

 昨日のエントリ
藤枝東の各選手は「蹴り合い」だけは避けようとして、技術でこのプレスをかわし、局面の打開を図ろうとした。ところが、結果的にはこのこだわりが災いした。流通経済大柏の「囲い込み」の餌食となり、再三自陣近くでボールを奪われ速攻を許す事になったからだ。
と述べたところ、かの党首殿より早速
流経のプレスに対抗して裏へ蹴るというのは当然の発想です。でも広島ユースは高円宮杯決勝でそれをやって完敗しました。藤枝東も総体でこれを試して流経に負けたそうです。(中略)藤枝東に厳しいようですが、あれは「こだわり」でなく唯一の選択だったのだろうと思います。
と鋭い指摘をいただいた。
 全くその通りで、「蹴り合い」をしても勝てる可能性は極めて低かったろう。いや、ただでさえ低かった勝つ確率は、より低いものになっていたようにも思える。もちろん、ここまで大差はつかなかった可能性はあるかもしれないけれど。理由は明白で、流通経済大柏の4DFと比較して藤枝東攻撃陣の脚力が優れているとは言えないから、「蹴り合い」に持ち込んでしまうと、得点の確率は一層下がっただろうから。たとえば、藤枝東高時代の中山雅史とか山田暢久とか「強さ」も武器にした攻撃タレントがいれば状況は違っただろうが。
 そう考えれば、「蹴り合い」を避けて、リスクを負いながら長所の技巧を活かそうとする勝負に出て、その賭けに敗れたとも言えるだろう。

 では藤枝東はどうすればよかったのか。
 もう1つ別な手段はあったと思うのだ。それは、ボール扱いの良さを守備に活かし、局所戦に持ち込み、流通経済大柏の時間を少しでも短くする事だ。藤枝東は、流通経済大柏の厳しいプレスと強い守備にも関わらず、マイボールになる度に毎回敵陣まで攻め切ろうとした。そして、そのために数的優位を確保するために、速くボールを回すなり、ドリブルを仕掛けるなりして、中盤を抜け出そうとした。流通経済大柏のプレスが厳しかったため、最終的に中盤で1対2あるいは1対3に孤立する事が多くなってしまったが。
 そうではなくて、マイボールになった時に、速く攻める事を放棄して、複数の選手でボールを回し、取られない事に集中する手段があったのではないか。つまりボールを奪ったら、自陣でよいからタッチライン沿いに展開し、そこで3、4人が比較的近い距離に集まり、技巧を活かしてドリブルとパスを併用して、とにかくボールをキープし続けるのだ。当然、流通経済大柏は厳しいプレスで追い掛け回してくるだろうが、1対2や1対3でキープするのは苦しくても、3対3や4対4ならば、あれだけ技術のある選手達だ、キープはできるはずだ。このような数的優位を確保するためには、長い距離の全力疾走は必要ない。集中力を持ち、早い動き出しで短い距離を走ればよい。これならば、肉体能力の差もそうは出ないはずだ。そして我慢を重ねながら、流通経済大柏の守備ラインがずれたら敵陣の裏を狙うも良し、逆サイドのバランスが崩れているならば逆サイドを狙うもよし、河井ならばそのような局面を変えるプレイも可能だったのではないか。
 どうせ我慢する展開になるのだ、自分でボールを保持する事に我慢する事で活路を見出せなかっただろうか。
 現実にこのようなプレイを見せてくれたのが、トヨタカップ2003年のボカだった。くしくも、相手は昨年12月と同じミラン。しかし、先月と異なり、03年はボカは、ひたすら守備的にボールをしっかりと回すサッカーでミラン相手に堂々とした勝負を演じ、最後はPK戦で打ち破った。

 準決勝から決勝まで1週間の時間があった。1週間を通して、守備的なボール回しの準備を行なえば、藤枝東は相当な抵抗ができたのではないかと思う。
 そしてこのやり方は、日本代表が欧州や南米の列強と抵抗する際にも、有力な手段だと思うのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(9) | TrackBack(1) | 若年層

2008年01月14日

流通経済大柏の完勝

 高校選手権決勝、新興の強力チーム流通経済大柏と名門中の名門藤枝東の対決となった。試合前は、高円宮杯を制した制した流通経済大柏がやや優勢なのかなとは思っていたが、藤枝東の準決勝や準々決勝の得点の技巧と着想も中々レベルが高く、拮抗した好ゲームを期待していた。生観戦を計画していたが諸事情で断念、自宅でテレビ観戦となったのだが、どうやら満員札止めだったらしいので、結果的には正しかったのか。
 で、試合内容。流通経済大柏が予想を飛び越えて強く、正に完勝。藤枝東は何もできなかった。準決勝、準々決勝を見る限り、藤枝東も相当強力なチームに思えたのだが、ここまで流通経済大柏が強いとは正直言ってビックリ。

 開始早々から流通経済大柏の強烈なプレスに藤枝東は中盤を全く抜け出せない。最前線からのチェイシングが厳しく、藤枝東の前線へのフィードが精度を欠くため、流通経済大柏の守備網が藤枝東FW陣を圧倒する。そのため藤枝東の中盤は前を向いてプレイができない。
 唯一エースの河井はよくない体勢でボールを受けても、見事な技巧で前を向くが、すぐに2〜3人くらいに絡まれてしまう。それでも河井は鮮やかなフェイントで抜け出しかける事もあったが、そうなると流通経済大柏は迷わずファウルで止める。押し込まれている影響で河井がボールを受ける場所はハーフウェイライン近傍なので、藤枝東はFKを獲得してもあまり有効ではない。
 それでも藤枝東の各選手は「蹴り合い」だけは避けようとして、技術でこのプレスをかわし、局面の打開を図ろうとした。ところが、結果的にはこのこだわりが災いした。流通経済大柏の「囲い込み」の餌食となり、再三自陣近くでボールを奪われ速攻を許す事になったからだ。

 開始早々の先制点は、大前が前向きにペナルティエリア内でボールを受けたところで勝負あり(巧く右サイドを崩して大前にパスを出した主将の名雪だと思ったが、技巧も判断も非常に優れた選手だな)。大前は実に見事なボール扱いで藤枝東DF3人を引き寄せてから、後方に目がついているかのようなマイナスのグラウンダのラストパス。全くフリーで走り込んできた村瀬が冷静にコースを狙って決めた。以降も流通経済大柏のペースで試合は続くが、藤枝東も粘り前半は1−0で終わる。押されていた藤枝東が1点差でハーフタイムを迎える事ができたので、流通経済大柏も攻め疲れがでてくるであろう後半はかなり面白い展開になるのではないかと期待した。
 そして後半開始早々、河井が右サイドから仕掛け、好クロスに藤枝東FWが合わせようとする好機を掴む。期待通り、前半我慢した藤枝東ペースになるのではないかと期待は高まった。しかし、これが、この日藤枝東の最初にして最大の好機になるとは。
 この直後、左サイドをえぐった流通経済大柏の低いクロスを、負傷上がりと言う上條(とても負傷上がりには見えない程よいプレイだった)が持ちこたえ、走り込む大前に正確に流し、大前がアウトサイドで狙いすましたシュート。藤枝東1年生GK木村が見事な反応で防いだが、そのこぼれ球を名雪が拾いセンタリング、逆サイドで待ち構えた大前がダイレクトでニアサイドを抜く一撃を決めた。これで事実上、勝負はお終い。それにしても、大前のゴール前の技術の精度には本当に感心させられる。よくもまあ、あのクロスから正確に低くコースを狙った強いシュートが打てるものだ。
 このあたりからは、流通経済大柏の一方的展開となる。あれだけ押されてしのぎ続けた藤枝東だったのだが、2点差となり精神的にも相当つらくなってしまったのも大きかったろう。原則、速攻を仕掛ける流通経済大柏だが、攻め切れないと判断すると、再三左サイドで数人でボールキープして遅攻を仕掛ける。このボールキープが巧みで、藤枝東はどうしてもボールを奪えない。出足や裏を付く速さのみならず、ボールキープでも藤枝東は劣勢になるとは思いもしなかっただろう。3点めは左サイドバックのえぐりから、上條のつぶれ、フリーの大前、と完璧な崩し。4点目は大前のCKから逆サイドに待機していた交替直後の田口がフリーで決めた。さすがに終盤、流通経済大柏のフォアチェックは緩んできたが、最終ラインの強さは変わらず、藤枝東は好機らしい好機すら掴めなかった。

 エースの大前が終始敵陣近くでよい体勢でボールをもらい続けた流通経済大柏と、エースの河井が敵陣より遥か離れた場所で奮闘を続ける事を余儀なくされた藤枝東。準決勝から1週間日が空いたためか、流通経済大柏各選手の体調が非常によく、あれだけ厳しいプレスを90分近くかけ続ける事ができた事が大きかったのかもしれないが、ここまで大きな差は全く予想していなかった。多くの名選手を育成してきた本田裕一郎氏の経歴での集大成とも言うべき試合だったのではないか。そして、あの藤色のユニフォームのチームがここまで何もできないと言う事に、何とも言えない感慨を持つ試合でもあった。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(3) | 若年層