2008年02月28日

鈴木啓太、年間最優秀選手獲得

 各方面で報道されているが(例えばこれ)、鈴木啓太が年間最優秀選手(いわゆるフットボーラー・オブ・ザ・イヤー)を獲得した。啓太は、この他に昨シーズンはサッカーマガジンのクリスタルアウォードを獲得している(JリーグMVPは同僚のポンテに譲ったが)。
 昨シーズンのレッズ、代表での八面六臂の大活躍を考えれば当然の受賞だろう。以前も述べたが、日本の最優秀選手にとどまらず、アジアの最優秀選手として表象して欲しかった程の活躍振りだったのだから。

 啓太の活躍を称えつつ、今日はこの今まであまり議論される事の少なかった年間最優秀選手について少し考えて見たい。だいぶ前に述べた事があるが、この手の表彰は「優秀」な選手を選ぶのか「殊勲」の選手を選ぶのか、選考者の好みや考え方もまちまちだし、結構難しいものがある。
 そして、この年間最優秀選手と言うタイトルは日本では最も古く権威があるものとされている。歴代の受賞者はこちら(手元にこれ以外資料がなかったので、Wikipediaを用いた、少なくとも私の記憶レベルでは間違いはないと思うのだが)。こうやって眺めると、結構バランスの取れた選考をしているのがわかる。最近の受賞者の顔ぶれを見ても、それなりに納得できる選手が並んでいるではないか。
 無論、いささか疑問の残る選考が行なわれたシーズンも少なくないし、当然選ばれて然るべき選手が選ばれていないケースもある。選ばれていない事例としては、森孝滋、奥寺康彦、加藤久、井原正巳らが挙げられるが、彼らは選ばれるべき活躍をしたシーズン(つまりプレイも充実し、タイトルを獲得したシーズン)にそれ以上にマスコミ的に目立つ選手がいたために、選考されなかった訳だ。
 しかし、一方で見事な選考が行なわれたシーズンもある。例えば、79年の今井敬三は、分厚い守備でJSLと天皇杯を制覇したフジタの守備の中核でもあり、代表でも堅実な活躍をしていた選手で、このような選手がしっかりと評価された。87年の森下申一もゴールキーパとしては初めての選考だったが、JSLを非常に少ない失点で優勝したヤマハの中核としての活躍が評価されての受賞だった。このような選手の活躍が、このような個人タイトルとして残る事には大きな価値があると思う。
 そのような意味では、啓太の今回の表彰についても、過去の歴史を掘り下げた報道があればよいのにと思うのは私だけだろうか。

 70年代半ばくらいだっただろうか、牛木氏が昔サッカーマガジンにこの表彰を始めた時の経緯を書かれていた事がある。当時、少しでもサッカー界を盛り上げようとして、牛木氏を初めとする若い新聞記者たちがこの年間最優秀選手と言うタイトルを企画したそうだ。その時に心がけたのは「誰もが文句が言えないくらい活躍した選手がいるシーズンに始める」事だったとの事。そのような配慮をする事で、タイトルに権威をつけようとしたとの事である。
 と言う事で、改めて第1回の受賞者を見ると、このタイトルの深みを一層感じていただけるのではないか。
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2008年02月27日

レアル・マドリードと浦和レッズの類似的失態

 大仰なタイトルを付けたが、もちろん今日のお題は、先日のレアル・マドリーがヘタフェ戦での失態について。 

 オフサイドポジションにいたラウールが敵GKのファンブルを拾って(この瞬間オフサイドだった訳だ)センタリング、ロッベンがダイレクトで決めたもの。ところが、オフサイドにもかかわらず、皆で喜んでいるうちにヘタフェがプレイを再開し、見事に得点を決めてしまった。
 私もそうだが、多くの方々が93年のアントラーズ戦での、レッズの福田の得点直後の失態を思い出した事だろう。ただ、この2つのプレイの大きな相違がある。15年前のレッズのそれは「正式な得点」の後だったのに対し、今回のレアル・マドリードは「反則により得点が認められなかった」後である事だ。得点後のキックオフ時は、得点したチームの選手は皆自陣に入っていなければならないのだが、当時のレッズは間違いなくその状態で大喜びしていた。そのような危険な状態を放置し、アントラーズにその隙を疲れた訳だ。つまり、レッズは喜ぶにしても、自陣より外で喜ぶとか、あるいは冷静な選手がセンターサークルに入ってキックオフをさせなければよかったのだが。一方で、今回のロッベン直後は、オフサイドでのノーゴール直後だけに、レアルの選手達がどこにいようが、ヘタフェはプレイを再開できたはず。唯一の可能性は間接FKの近くに立ち警告覚悟で妨害する事くらいだろうが、よほど良い位置にいる選手が鋭く切り換えないと難しいように思う。つまり、間抜け振りは五十歩百歩かもしれないが、今回のレアル側は一部の選手が得点と勘違いして大喜びしてしまった時点で、既に決定的な危機を迎えていた訳だ。そう言う意味ではグティが「4歳児並みのミスだ」と反省していたらしいが、このミスはいずれのチームにも襲いかかる怖れはある。そして一般論では、衝撃はレアルのケースの方が大きいかも。レッズのケースは1−0が1−1になっただけだが、こちらは1−0のつもりが0−1だからな。

 とは言え、15年前は懐かしいな。当時はアントラーズの実質監督ジーコのブラジル風の抜け目無さに感心させられたものだ。そして、その抜け目無さは「マリーシア」と言うポルトガル語と共に日本サッカー界に定着して行く事になる。ああ、あの頃はジーコも真剣に取り組んでくれていたのだなと。
 そして、ロッベンと異なり見事な得点を「決めた」福田。あの頃、福田はもがいていた。と言うのは、Jリーグ開幕直前に行われたワールドカップ1次予選で体調を崩したままリーグに入っていたからだ。当時の福田はまごう事なきオフト氏率いる日本代表の攻撃の中核。ダブルセントラルで行われた予選のUAEでの最終戦前、東京の直接対決で勝ちさらにバーレーン、スリランカから大量得点を奪う事に成功していた日本は、6点差で負けなければ2次予選出場を決めていた。その試合直前に福田は風邪で体調を崩していた。ところが、オフト氏は無理に福田を出場させてしまった。
 結果として、福田はボロボロの体調のまま、週2試合、延長PKありと言う狂的な日程のJリーグに参加する事になった。結果、レッズは開幕から連戦連敗を続けていた。このアントラーズ戦はそのような状況下で迎えた試合だった。そして、実に久しぶりに福田が強烈なドリブル突破から先制点を決め、チーム全体が歓喜に浸っていた直後に本件は起こった訳だ。その精神的ダメージは極めて大きく、(上記のように)単に1−0が1−1にと言うものではなかった。
 以下、余談の戯れ言。その後も福田は体調維持に苦しみ、その影響は秋口まで続き、ドーハに旅立つ事になる。当時のオフト氏の手腕は素晴らしいものだったとは思う。思いはするが、あの敵地UAE戦で福田に無理をさせた事が、オフト氏の最大のミスだったのではないかと、この15年間思い続けているのだが。
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2008年02月26日

女子代表東アジア初制覇

 中国戦の勝利は完璧なものだった。正直言って、女子代表が中国相手にここまで完璧な勝利を収めるなんて、過去もなかったし、予想もしていなかった。私が過去記憶している女子代表のベストゲームは、アテネ五輪のスウェーデン戦ではないかと思っているが、あの試合を凌駕するような試合だった。90分間、技巧と知性で完璧に中国を圧倒できたのだから。

 今大会はどうにも都合がつかず、女子代表の試合は最終戦まで見る事ができていなかった。私の理解では(今思えば非常に安易な思い込みでの)東アジアのランキングは、北朝鮮と中国は日本を上回り(その差の多くは選手のフィジカル差だけなのだが、どうにもその差が大きい)、韓国よりは明らかに上と言うもの。初戦の北朝鮮戦の勝利は終盤の逆転劇で、よほど痛快なものだったようだが、一方で相当劣勢な試合だったとの報道だった。
 そして迎えた最終戦は地元中国との対決。日本はここ最近中国に勝った事はあるが、押され気味の試合を巧くまとめたと言う印象が強い試合振り。敵地と言う事もあり、引き分けでも優勝と言う状態ではあったが、楽な戦いにはならない事が予想された。
 ところが試合が始まってみると、内容でも中国を圧倒。ボランチの澤、阪口の早い展開を起点に、柳田、近賀が攻め上がりサイドの数的優位を作る。荒川と永里(永里の切れ味、切り返しの速さ、がアジアのトップになった事が今大会最高の成果ではないか、この速さが欧州勢に通用してくれれば)の大きな動き。宮間(宮間が流れの中で、あの技巧を活かせるようになった事は今大会2つ目の成果に思える、この技巧が欧州勢に通用してくれれば)を発揮できるようにの高精度のパスと、大野の狡猾さで、中国の浅いラインがボコボコになる。男子同様判断力に欠け、男子と異なりラフプレイをする訓練を受けていない中国の選手達は、どうしてよいのかわからなかったのだろう。ただ、日本の選手を追いかけ回すだけだった。
 0−2になった後半、長身選手を増やし空中戦に活路を見出そうとした中国だが、ハーフラインを超えたところで起点すら作れないのだから話にならない。むしろ、中国は彼我の実力差を考慮し、(例えば先日の埼玉でのタイ代表のように)引きこもって守備を固めて日本の焦りを誘うべきだったろう。しかし、過去の戦歴を考慮すれば、ここまで戦闘能力差が開いているとは予想しようがなかったと言う事か。

 過日私は女子代表の課題として、若くて技巧的な選手達が持ち前の技巧をエゴイスティックに発揮する事ではないかと述べたが、永里、近賀、宮間、阪口、大野らが正にそれらの課題を解決した大会と言えるのかもしれない。
 また、今大会は長年代表の中核を務めていた宮本が不参加、下小鶴が負傷離脱、加藤(酒井)、池田(磯崎)が控えに回る事が多かった。それでも、若手が十分にその穴を感じさせない活躍を見せた事は、重要だと思う。一方で、山郷がレギュラを再び奪うなど、純粋によい意味での定位置争いが激しくなっているのだろう。
 では、アテネでの好成績はどうかとなると、上記のエントリでも述べた肉体能力差を、いかに知性と技巧で埋めるかと言う話になろう。少なくとも、中国は圧倒するが、北朝鮮には相当苦労するレベルまで来た女子代表だけに、非常に面白い戦いができると思う。と、同時にもしそれなりの成績を上げる事ができれば、上司代表は世界のサッカー界で他国と全く異なるアプローチを行っていると言う意味での評価も期待できるように思う。

 川淵会長が、女子代表選手へのボーナスをはずんだとの報道を目にした。どうせ、男子への出費がなくなったのだし、女子代表史上初めてのタイトル獲得だったのだから、もっと奮発してもよかったと思うのだが。
 将来日本の女子サッカーを振り返る時に、この初優勝が、男子における92年ダイナスティカップと同じ扱いになる事を祈る。
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2008年02月23日

くそう

 冷静に考えれば、かほど実りのある強化の機会はそうはなかっただろう。
 シーズン早々にも関わらずタフな試合を要求される政治的事情、泣く子や地頭が懐かしくなるような理不尽の連続、相次ぐチームメートの離脱。それらを乗り越えて、百点満点とは言わぬまでも1勝1分けでしっかり戦ってきた上で、立ち塞がる宿敵。総得点数差により「勝たなければならない」拘束条件。そして、(自己責任ではあるが)序盤の痛恨の失点。
 何より山瀬の完璧な地位の確立(日本協会は、山瀬の充実の映像を、すぐさま中村俊輔と松井に送付せよ)。田代の発見。内田と安田の経験。
 岡田氏の痛恨の表情、終了後のインタビュー、「(インタビュアを睨みつけて)もういいですか。残念です。」と言う発言。

 韓国より下になる事が悔しいのだよ!

 川口よ。どんな、どうしようもないシュートでも防いでくれよ!
 内田よ。「だから中にしぼり過ぎてはいけない!」って言っただろう。
 今野よ。韓国にやられるようならば、欧州や南米の強豪にもまたやられるぞ。
 そして、この場面にやられた事によるあまりに重い痛恨。

 でも、それはそれ。

 橋本の使い方、憲剛の交代、播戸起用時間の短さ、疑問は多数あるよ。
 でも、岡田さんよ、俺はあんたと共に戦っていくよ。試合終盤の(いささか空回りではあったが)パワープレイを含めた猛攻。前線の選手を次々に切り出す選手起用。思い叶わず勝ち切れなかった時の悔しげな表情。
 97年から98年にかけてのあんたの七転八倒も素晴らしかった。でも、それより80年代のあんたのプレイ振りが忘れられないのだよ。日本代表と古河のために粉骨砕身したあんたの姿が。
 そして、この難しい状況で引き受けた2度目の代表監督。繰り返すが細かな疑問はある。しかし、ここまでの6試合を存分に理詰めに戦ってくれた事は高く評価するしかないわな。あんたは大した人だよな。そして、改めて振り返るとこの6試合は愉しかったなと。

 でも繰り返します。
 韓国より下になる事が悔しいのだよ!
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2008年02月21日

日本代表を応援する誇り

 これほどの代表選手達を保有できている事を改めて誇りに思える試合だった。
 確かに、中国は圧倒的な戦闘能力差がある非常に弱い敵ではあった。そもそも、これだけ戦闘能力差があるチーム同士が試合をするのがミスマッチなのかもしれない。

 しかし、2つの事態が試合をスコアだけはもつれさせる事になった。いずれも試合前にある程度の予想と言うか、覚悟はできていた事なのだが。
 1つ目。中国の全選手は「敵を蹴ってはいけない」と言うサッカーのルールを知らなかった。安田を壊したGKがイエローカードを食らって文句を言っていた事、さらにはあのGKは終盤啓太が中国の主将ともつれた時に冷静に仲裁に入っていた事、この2点から、あのGKはあの安田に対するプレイに悪意を持っていないし、罪の意識も感じていない事が理解できる。つまり、あのGKはルールを知らないのだ。その他の中国選手も、前半2回楢崎が蹴られた場面を皮切りに、スクリーンした日本選手を後方から蹴る、足の裏を見せてタックルする、肘打ちをする等、様々なプレイを見せてくれた。おそらく、彼らは悪意なくこれらの行為を行っているのだろう。そう言えば、こんな試合もあったなと。
 2002年の韓国代表チームの振る舞いは、これらに比較すれば随分と正常なものだ。当時の韓国選手達は審判団の判断基準を理解した上で、明らかに明確な意図を持ってラフなプレイを継続していたからだ。当時の韓国のプレイ振りは、イタリアやスペインを存分に悩ませていたが、それでもそれは(相当卑怯なやり方ではあったが)あくまでも意図のあるプレイだから、予測可能なもの。しかし、昨日の中国のそれは悪意がないのだから、日本選手の対応は極めて難しいものだった。6年前にマルディニ達が相手にしたのはまだ人間だったのに対して、昨日啓太達が相手したのは人間ではなかったのだ。
 2つ目。しかし、それでも審判がまともであれば、前半で中国は10人になっていただろうし、後半中国は試合成立不可能な人数に減っていただろう。ところが昨日の主審の判定基準は非常に明確ながら独特のものだったために、90分間試合が継続してしまった。
 通常の試合ならば数試合以上の出場停止になる反則にはイエローカード。通常の試合ならば退場になる反則だと日本のFK。通常の試合ならば警告となる反則だと中国または日本いずれかの反則(ほぼ半々の比率だっただろうか)。実に明確な判定基準ではないか。まあこのように独特の判定基準に審判には、たまには出会う事があるのだけれどもね。
 試合終了時、憲剛と握手をした際の主審の清々しい表情が、無能な人間に大役を負わせては行けない事を示していた。北朝鮮は審判の育成に苦労しているのではないか。特にカードの出し方を理解していないようだ。幸い日本にはカードを出す事を得意とする審判は多数いる。柏原丈二氏あたりを、長期間に渡り北朝鮮に審判技術指導で派遣するのはいかがだろうか。日朝両国のサッカー界いずれにもメリットになると思うのだが。

 それにしても日本選手の戦う姿勢と冷静さは素晴らしかった。80年代に友人が「クールに燃えろ!日本代表」と言う応援幕を出していたが、正にこの日の日本の全選手は、「クールに燃えて」いた。あの中国の異様な削りと、あの主審の独特の判定に対し、誰1人逃げもしなかったし、誰1人取り乱す事もなかった。中澤や遠藤や楢崎のように海千山千の経験を積んだ選手だけではない。むしろ、今回のチームは決して平均年齢こそ低くはないが、諸事情でアジアの真のタイトルマッチの経験は少ない選手が多かった。それにもかかわらず、全員が冷静に戦い抜いたのだ。いくら相手が弱いと言っても、上記した2つの外乱に耐えながら、ここまで知的に技巧差を発揮できる試合を演じてくれたのだ。これほどのまでの代表チームを保有できる事が本当に誇らしい。
 唯一の得点は完璧な崩しだった。中国の組み立てに憲剛と啓太がプレッシャをかける事でミスパスを誘因、右サイドで拾った安田が中央の山瀬につなぎ、山瀬が巧みなスクリーンプレイでキープし、後方に引いてきた田代が左に流れる遠藤へ展開、遠藤が一拍ためる間に駒野は左サイドに進出し田代と山瀬は前線に進出。遠藤の展開を受けた駒野が縦を突きセンタリング、田代が敵GK前でつぶれ、こぼれたボールを山瀬が押し込んだ。CBが駒野ばかり見て田代を見失ってしまうレベルの選手だったのは確かだが、実にきれいな得点だった。どうでもいいが、中国のサッカー人は、このような得点を自分たちが決める快感を味わいたいとは思わないのだろうか。

 この日の日本のチームとしての課題は先制後の前半、中国に合わせてやや蹴り合いめいた展開にしてしまった事か。内田や楢崎への狼藉を主審が見逃した事、中盤のバランスが悪く敵ボランチを自由にしてしまった事などが要因だった。しかし、ここでは憲剛に注文したい。確かに敵CBのラインは不適切だったが、無理に縦パスを狙い過ぎたのではないか。まだ試合は前半で中国選手には体力も残っていたし、1−0でリードしていた。無理に2点目を狙う事よりも、交通事故による失点すら防ぎ、敵を疲労させるのが前半の課題だったのではないのか。一方で完璧なボールキープと揺さぶりで敵DFをガタガタにし続けた後半の展開は上々だったが、目指しているのは格段に高いレベルである事を認識して欲しい。
 負傷した安田はどうやら無事らしい。やれやれである。彼のblogを読んだが本当に感動した。彼はあの場面、蹴られる前にシュートを外した事をしっかりと反省している。これは本物だ。絶対に積んで欲しくなかった経験を積み、いよいよこのタレントは本物になっていくであろう。
 内田は散々の前半だった。主審の独特の判定基準を理解できず、不当なチャージに倒されて再三敵に好機を作らせてしまった。しかし、後半には、主審の基準をよく理解し守備も格段に向上したし、幾度となく攻撃参加から好機を演出した。ただし、落ち着いた後半でも中にしぼり過ぎ、時々右サイドでフリーの選手を作ってしまった位置取りには課題ありか。既に安田には相当な差をつけられてしまっている事は忘れてはいけない。
 田代も高い評価を与えるべきだろう。決勝点への絡みで、山瀬のスクリーンプレイを判断よく感じ取り、自らが近寄った判断など絶妙だった。この得点場面の他にも、ワントップの難しいポジションで、前線でしっかりとしたキープし、得点への意欲を見せてくれた。終了間際の謎のオフサイドになった得点も絶妙。ロスタイムの決定機に枠に飛ばせなかった事を、しっかりと反省してくれれば、さらに向上が期待できる。
 羽生も、安田が壊された難しい状況での交代出場で堂々たるプレイを見せた。あの重苦しい場面で、しっかりと引き出すプレイを連続する事で、チームのリズムを作ると共に好機を演出した。先日、山瀬との並列を期待したのが、実に不幸な事態で実現した訳だが、苦境でも活躍できる重要な人材だ。
 橋本は久々の登場。頼りになるクローザ振りを見せてくれた。このようなJリーグで格段な実績を残している選手は、どんなぶっつけ本番でも国際試合で着実にはたらいてくれる。優秀なトップリーグを保有していると、このような事が強みになる。
 そして山瀬。とうとう来た。森島寛晃以降ようやく我々は1.5列目から格段の得点力を持つタレントを獲得できたのだ。森島は飛び込んでのダイレクトシュートに妙味があったのに対し、山瀬は一歩遅れた挙動からの正確なボール扱いが持ち味。森島が時に頑健な敵DFと共につぶれる事でスペースを作ったのに対し、山瀬は優雅な技巧で敵陣前にスペースを作る。その対比はさておき、我々は久々に頼りになるセカンドストライカを確保しつつある。
 これ以外の楢崎、中澤、今野、加持、駒野、啓太、遠藤については、この程度の相手に完勝した事を、改めて評価する事が失礼なのかもしれない。ただし、試合終了直後の中澤のガッツポーズは忘れ難い。あのガッツポーズこそ、他の全選手に「クールに燃える」事を認識させ続け、それに成功した男の成功の歓喜だったのだ。伝統は継続しているのだ。

 中国には13億人もの人々が住んでいる。これだけの人々が「優れたサッカーの代表チームを所有する喜び」を持つ事ができない事が、あまりに気の毒だ。
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2008年02月19日

安田理大の「またぎ」

 安田理大が、嬉しそうな表情でフィールドに入ったてから、まだ数分しか経っていなかった。安田が左サイドで「またぎ」を見せた時。何か言葉にならない「期待」を感じた。そして、その「期待」は見事に的中した。新進気鋭の若者が、堂々とした個人技でA代表マッチのデビューを飾るなど、そうは見る事のできない。あの伸び切りの姿勢からのセンタリングの軌跡を思い起こすだけで、この試合の映像を見た価値は十二分にあった。

 北朝鮮は先日敵地でヨルダンに勝っているのだから、そう弱いチームの訳がない。66年のワールドカップでの成果を含め、アジアでは屈指のサッカー強国の歴史を持つ。伝統的に縦に出て行く速さを持つ選手が多く、個々の選手の判断力も中々だ。問題は、国策のためだろうが、ワールドカップ予選やアジアカップなど重要なタイトルマッチを棄権する事が多く、選手がしっかりと試合経験を積めない事にある。しかし、ここ最近の傾向として、日本で生まれ育った選手がチームに独特のリズムを与え、変化をつける事がチーム強化につながっている感がある(80年代に北朝鮮代表で活躍していた在日選手が、外から見てもあまりプレイスタイルが他の選手とは違う印象を感じさせなかったが、最近の選手には「違い」を感じるのは何故なのだろうか)。
 そう考えれば、主軸の多くを欠くこの試合が、決して楽なものにならない事は容易に想像できた。テレビのアナウンサのヒステリックな連呼については諦めているが、各種の報道やBLOGでも試合前後に北朝鮮を完全に見下げた表現を見受けられるのはいかがなものだろうか。また「北朝鮮が中国より弱い」と言う表現もよくわからない。ワールドカップ本大会の歴史云々とまで言う気はないが、最近の実績だけを考慮しても、とても「中国>北朝鮮」と言う不等式は書けないと思うのだが。
 ともあれ、引き分けと言う結果は残念だったし、内容も不満が無いわけではなかった。しかし、川淵会長や一部のマスコミ関係者やブロガ達が、この試合に非難轟々なのは理解できない。上記の安田のまたぎも、逆サイドの内田の奮戦も、遠藤の技巧的なゲームメークも、存分に私には愉める試合だったのだが。

 立ち上がりに敢え無くCK崩れから鄭大世に中央突破され失点。
 まず、鄭の巧みな反転を許した水本は猛省を。確かに鄭はよい選手だし、この試合への意欲も十分。しかし、同じリーグ戦でクセもわかっている選手に、ああも易々と鄭にやられた水本は自覚が足りないとしか言いようがない。水本への期待は単に若手の有力なCB程度ではない。南アフリカで闘莉王と中澤のいずれかをベンチに追いやる事なのだ。あの1点を食らった場面で交代させるくらいの懲罰を与えてもよかった位だ(岩政も体調不良との情報も聞いたので、代わりがいないような気もするが)。以降も2度ほど、水本は鄭に入れ代わりを許し、中澤の助けを求めた場面があったのも気に入らない。
 一方の得点場面以降も、鄭はワントップでボールをよく収め見事な活躍、完璧に北朝鮮の中核として活躍した。フッキの復活で、フロンターレでは控えに回るのではないかと言われているが、関塚氏にも相当なアピールになったのではないか。鄭の調子が継続すれば、2010年北朝鮮の「44年振り」が現実的な目標となってくるだろう。唯一の不安は、昨シーズン天皇杯準決勝まで戦ったにも関わらず、2月中旬のこの時期にここまで体調がよくて大丈夫かと言う事くらいか。

 日本は序盤劣勢を余儀なくされた。
 要因はチームのバランスが悪かった事だろう。憲剛が発熱したと言う事で、中盤は啓太、遠藤、羽生、山岸、トップは田代と播戸。前の6人に技巧派が少な過ぎる事で、立ち上がりに北朝鮮が元気良くプレスをかけてきたのをかわし切れなかった事にあったと見た。山瀬の体調も今一歩だったようだが、せめて前田を開始から出していれば、問題は随分と解決したと思うのだが。こうなると、オシム氏以降1度も招集される機会がない小笠原が気になってきたりして。
 少々バランスが崩れたこの布陣で戦った事で、羽生と山岸の差が一層明らかになった。
 山岸はもう厳しいのではないか。よく動いて引き出そうとするのだが、受けようとする場所が敵陣近くではないのでクサビ的な効果は薄いし、オープンで受けても勝負をしようとしないし。確かに大久保や山瀬や羽生に無い体重と言う魅力のある選手なのだが、気が弱いのだろうか。いっそもう1枚下げて、人材難の左サイドバックに起用するのも一案か。案外大枚をはたいて山岸を購入したフロンターレの狙いはそこかと、好調の鄭大世を見ながら思ったりして。
 羽生は存在感をアピール。この選手は山岸と異なり、ボールを引き出してからシゴトをはっきりと狙ってくれるので機能する。もう少しシュートやラストパスを急がずに蹴るリズムを身につければ(これは20代後半に入ってからも可能なはず)非常に面白い存在になると思う。山瀬との並用なども面白いと思うのだが。

 とは言え、遠藤が冷静にボールを散らす事で、日本がペースを次第に確保する。遠藤は、憲剛がいない分、溜めも展開も一手に引き受ける事になり、古典的なゲームメーカとして活躍。何の脈絡もないが、74年のオヴェラーツを思い出した。啓太がボンホフ、羽生がへーネス。
 評価されるべきは内田。A代表4試合目でようやく地位を確保した感。守備面では、早い位置取りの修正を見せ、前進しても再三攻撃の起点となっていた。重要な事は、啓太、遠藤、羽生らが内田が右サイドでキープした際に、しばしば追い越しなり後方のフォローアップを、機能的に行なっていた事。これらの動きは、タイ戦までは思うように見られなかったのだが。内田は、ようやく海千山千のタレントの信頼を得たとも言える。
 一方逆サイドで加地が慣れぬ左サイドで苦戦を継続していた。前半の加地の苦闘を見て「幾ら何でもこれは無理だろう」と思っていたのだが、岡田氏はヒネリを加えてきた。安田を山岸に代え、MFで起用したきたのだ。以降の加地の活躍は面白かった。ドリブルで中に進出するのが好きな安田と巧くバランスを取り、時に左サイド、時にセンタバック、時に啓太をカバーするボランチ。昨年のナビスコ決勝で、西野氏が3DFの一角に加地を起用したのを、ちょっと思い出した。日本には珍しい脚力と身体の強さを前面に出せるこのタレントは、岡田氏の下相当多用な労働で貢献してくれそうな息吹を感じる事ができた。若い頃はその守備の拙さで我々を悩ませたタレントがこのように成熟してくるのは実に愉しい。一方で、加地のフラストレーションは相当だろうな。終盤まで難しい仕事をさせられ、ようやくライバルでもある駒野が起用され「得意の右サイドに行ける」と思ったら、駒野が右サイドに。案外今シーズンは、岡田氏と西野氏が、競って加地に色々な仕事を強要するシーズンになるのかもしれない。
 もっとも、岡田氏が安田を1枚前に起用したのは、単に負傷者続出だったためのようにも思えるが。

 トップで起用された3人。
 播戸はよかった。時に両翼に開き、好機を演出。内田を軸にした右サイドからのクロスにも巧く合わせ、再三好機を掴んだ。とにかくこの選手は、常に敵陣を狙い、工夫する姿勢が素晴らしい。素早いクロスが、田代には合わず、播戸に合いそうになるのは偶然には思えない。播戸としては、「敵DF陣が疲弊する終盤までフィールドにいられれば」と思った事だろうが。
 田代は微妙。後半半ばに前田が準備した時は、当然田代が代えられると思っていたのだが、岡田氏は田代をフィールドに残した。岡田氏がこの試合を「テスト」として捉えていたのがやくわかる采配振りだった。このあたりまでは、後方からのフィードを受ける際の打点の高さ、左右に流れた際のボールキープの2点は評価されたが、とにかくシュートまで行こうとしない姿勢が不満だった。しかし、終盤は田代は相当強引に好機を狙っていた。巻のポストプレイと矢野の前進能力を具備するとも見れるプレイ振りだった。韓国相手にどこまで持ちこたえられるか、シュートまで持っていけるか、見てみたい選手だ。
 前田の負傷は心配だが、とにかく治療を。この選手は少ない起用時間で着実に点を取っている。これは、山瀬と共に高く評価されるべき。共に技術が正確で、落ち着いて(急がずに)ボールをさばけると言う特長の賜物か。

 安田に戻ります。
 あの「またぎ」から、必ずしも足の速くない選手が突破して、身体をギリギリに捻った左足のセンタリング。「ある人」を思い出しませんでしたか。ただ、そうなるとトップに使わなければならないのだが。
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2008年02月14日

ベガルタ選手の狼藉について

 ベガルタの選手が、キャンプ中途の宴席で飲み過ぎて狼藉を働いたと言う。
 大変残念な事件だ。しかし、その事件そのものも大変残念だが、ベガルタ(東北ハンドレッド)の事件処理能力の低さはもっと残念だ。
 誤解しないで欲しいが、「私は処分が甘過ぎる」と言いたいのではない。まず、このような事件ではいかほどの処分を受けるべきかの判断が難しい。しかし、それ以前に、名川社長の記者会見を読んでも、実際にどのような事件が起こったのか全く理解できないのが問題なのだ。以下に具体的な引用、
(前略)酒も入っていたようでありまして、その時に金子選手が具合が悪くなって吐いたということです。外に行って吐いたのを介抱にいった三人というのが、富田・細川・一柳の三選手という報告です。 そこまでは何もなかったのですが、一般駐車場に停めてありました車の屋根に、金子選手を押し上げるようなかたちになり、その屋根の部分にへこみをつけてしまった、ということです。
これで、何が起こったか理解するのは不可能で、「甘い」も「厳しい」も「妥当」も何も判断のしようがない。実際、この記者会見時点で、名川社長は、実態を正確に把握できていなかったのだろう。
 まず、複数の報道機関から批判されているが、事件後数日経ってようやく社長が「何かがあった事」が伝わった事が情けない。きっかけは某巨大匿名掲示板への投書だと言う噂もあるが、本当なのだろうか。いずれにしても、手倉森監督や強化部長が、コンプライアンスの重要性を全く認識していないと言う事としか思えない。これは、彼ら個々の問題ではなく、クラブ全体として管理職に対する教育に問題があったとしか言いようがないではないか。
 また、上記した通り、名川社長は記者会見の時点で完全に事件の全貌を把握しているとは思えない。もちろん、それも大きな問題だが、部下の報告が不適切だった場合(そうならないように事前に手を打つのも社長のシゴトなのだが)に状況の把握に時間がかかるのは(褒められた事ではないが)仕方が無い部分もあるかもしれない。しかし、そうである以上は、まず社長は事態を正確に把握すべきだろう。少なくとも「金子選手を押し上げるようなかたちになり」と言う話のレベルでは、事態の把握とは言えまい。それなのに、何故に早々に処分を決定してしまったのだろうか。
 インタネット上の一部の掲示板などでは「選手を解雇すべき」などとの意見も目立つ。少なくとも、私は報道を見る限りでは、それほど大きな罰を受ける失態には思えないのだが、正確な情報がない以上は何も言えない。むしろ、適切な報告が無かった事がいらぬ憶測を生み、実際以上に事態を悪化させているようにすら思う。
 名川社長には、改めて正確な状況の把握と、再度の報告を期待したい。それが、ベガルタの株主、スポンサ、サポータを含むステークホルダのみならず、日本中のサッカー人への誠意になる。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(22) | TrackBack(0) | Jリーグ

2008年02月11日

シーズン早々から破綻する日程に思う

 以前より再三述べてきた話だが、今日の日本サッカー界のトップレベルの日程は破綻状況にある。

 ようやくワールドカップ予選のタイ戦が終わったと思ったら、今度は東アジア選手権に突入である。韓国、北朝鮮は日本以上に寒い国であり、中国はだだっ広いがやはり寒冷地は多い。4国ともこの時期にタイトルマッチを戦う意味があまりあるとは思えない。ワールドカップ予選だけはAFC(なりFIFAなり)の共通日程だから、2月に試合をするのは仕方がないのだろうが、どうしてわざわざ東アジアのタイトルマッチを今の時期に行なうのだろうか。
 と、最初は考えていたのだが、冷静にJリーグや日本代表の日程を見直すと、「日程消化」と言う観点から考えると、2月の開催の意味が見えてきた。ここで「日程消化」をしておかないと、どの時期に開催しようが、結局Jリーグの日程にしわ寄せが行くだけなのだ。つまり、東アジア選手権に参加するためには、2回の週末を含めた10日+αが必要。もし、シーズン中に本選手権を持ってくると、Jリーグ2試合を水曜開催にしなければならなくなる。今ならば、各Jクラブの強化には大いなる阻害にはなるが、試合日程を過密にせずに日程は消化できるのだ。もちろん、これは日本の都合であり、他の国の事情は不明だが。
 こうなってくると、誰もが「もう東アジア選手権など参加しなくてもよいではないか」と言いたくなる。いや、日本が参加しなければタイトルマッチとして成立しないのだから、「実施しなくてもよいではないか」が正しいか。実際、他3国にしても「どうしても実施したい」と思っているようには見えないし。
 そう考えてくると、東アジア選手権は開催しない訳には行かない事情があるのだろうと推測できる。
 おそらく、アジアの他地域との相対発言力の確保なのではないか。アジアには東アジア選手権の他に、地域大会が4種類あるが(東南アジア、南アジア、西アジア、ガルフ)、東アジア連盟の大会が他地域と同様にコンスタントに(かつ熱狂的に)開かれる事が必要との判断があるのだろう。もし私の推測が正しいならば、これは少なくとも、欧州や南米などの他地域では全くない現象であり、ただでさえ日程問題が破綻している日本にとってはつらい事になる(いや、協会首脳の天下り先が必要だとか、2002年大会共同開催決定時の裏取引だとか、他の大会を含めたスポンサとの契約だとか、他の理由かもしれませんが)。
 私の推測がどの程度当たっているかどうかは知らないが、日本協会は東アジア選手権出場の意義をはっきりと考えるべきではないか。ガンバの西野監督が
北京五輪へのシミュレーションにもなるし、五輪代表が東アジア選手権へ行った方がよかったのでは
語ったと報道されたが、これなどは実に的確な意見だと思う。
 いや、私の推測が当たっておらず、真っ向から「東アジア一を決める事が決める事が日本あるいは東アジアサッカー界の強化に重要だ」と信念を持っているならば、もっとよい季節にやればよいのだ。

 さらに状況をややこしくしている事態が2点。五輪代表の米国遠征と、ガンバのパンパシフィック選手権出場だ。

 まず五輪代表。
 反町氏の気持は痛いほどわかる。本田と水野が欧州に行き、家長が重傷と言う事態。個の強さだけで予選を勝ち抜いたチームだけに、早い段階でチーム作りを進めたいのだろう。しかし、本大会では当然オーバエージを使うのだろうし、さらにレギュラ確定に近い水本、内田、柏木、さらに本田と水野を抜きに、急いで遠征をしても、それほど有効な強化になるとは思えない(それにしても、反町氏は本当に谷口の事が嫌いなのだなと)。
 反町氏は、岡田氏とじっくりと話し合い、オーバエージやA代表の選手を自由に選考できる期間を確保し、強化を図るべきだと思うのだが。「岡田さん、水本と内田を貸しますから、○月は憲剛と前田と...」と言う取引をする方が、よほどメダルに近づけると思うのだが。

 そして、ガンバのパンパシフィック選手権。
 西野氏だって愚痴は出るよな。これだけレギュラを抜かれてしまっては、このタイトルマッチはどのような意味があるのすら、わからないではないか。ただ、ガンバの今シーズンの補強は非常に実効的なので、残留メンバを並べても、藤ヶ谷、山口、福元、ミネイロ、佐々木、明神、二川、ルーカス、バレイと、9人までは知名度が高く優秀なタレントが揃うのだな。ガンバならば、残り2人は優秀なユース出身のタレントがしっかりと埋めて機能するように思える。
 サポティスタ(最近の煽り過ぎはいかがとは思うが)などで、代表とクラブの対立、クラブによる負担の相違などが、相当議論されている。ACL出場の3クラブを比較すると、確かにガンバの負担は酷い(不思議にガンバとレッズの比較のみ議論され、アントラーズとの比較がなされないのが興味深いが)。日本協会がいささかケアに欠けている(あるいは岡田氏や反町氏がガンバと西野氏に甘えている)感は否めない。
 ただ、(とりあえずレッズとガンバの比較に問題を卑近化するが)各選手の視点に立つと、違う絵も見えてくるように思う。坪井は「自らゲームを降りた」のだから例外事項。レッズで今回重慶に行かない高原、阿部、闘莉王の3人は、「今回辞退しても、次回必ず呼ばれる」と確信を持っているはず。一方、ガンバの選手はいかがか。遠藤は別格、加地も当確だが、他の橋本、播戸、水本、そして追加召集の安田は、A代表に僅かに出場する機会すら逃したくないと思っている事だろう(ちなみに五輪代表の寺田も細貝も同様に五輪代表での僅かな機会も逸したくないと思っている事と推定する)。
 リアリストの岡田氏は、チームの中核である中澤、啓太、遠藤、憲剛、駒野は連れて行けるのだから、後は当落線上の選手達を3試合で試すよい機会だと思っているのだろう。阿部の離脱は誤算だろうが、上記の5人さえ揃っていれば、バックアップを試すよい機会だと割り切れるはず。
 西野氏のつらさは、遠藤と加地以外は、配下のタレントが代表で地位を確保できていない事なのだ。いや、加地だって、内田の参入で...

 全く無関係なホンネ。パンパシフィックで、ベッカムを削る安田を見られなくて残念。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(10) | TrackBack(1) | 海外

2008年02月10日

福田健二の苦闘

 リーガエスパニョーラの2部のラスパルマスで活躍する福田健二を採り上げたテレビ番組「情熱大陸」を見た。
 昨シーズン、同じく2部のヌマンシアで10得点を上げた事が結構話題になった。つい先日には、宇都宮徹壱氏が福田のインタビューを行ない、その導入部で
いよいよ南アフリカへのチャレンジが始まる今年、まるで地下水脈がわき出るかのように、ファンの間で「福田健二待望論」が静かに、しかし確実に広がりつつあるように思えてならない。
とも述べている。個人的に、福田の代表入りの可能性などは考えていなかったし、そのような考えを持っている人がいるとの話も聞いた事がなかったが、「氏がそこまで言うならば、相当な活躍をしているのだろう」と期待して、テレビ桟敷に座った。
 しかし、そこに流れてきた映像は移籍後、負傷が続き、思うように活躍ができない福田健二の苦闘ぶりだった。ラスパルマス移籍後は僅か1得点、しかも負傷がちで出場もままならない。ちょうど映像に出てきた試合では後半から起用されながら、僅か8分で負傷交代。さらには番組のクライマックスとも言える最後の場面では試合終了間際に自ら倒されて得たPKを失敗。少なくともあの番組を見た限りでは、代表チーム入りの可能性など微塵も無いだろうし、このままでは来シーズン以降のプレイの場さえ危ぶまれる悲惨な状況だった。

 福田健二のデビューは鮮やかだった。96年シーズンに習志野高からグランパスに加入。小倉の負傷などもあり、いきなりJ開幕直前のゼロックススーパーカップで、ピクシーと2トップを組み、得点を決めている。98年にはシドニーを目指していた五輪代表にも選考される。この五輪代表のFWは、高原、柳沢、平瀬、それに吉原あたりが争う事になる訳だが、このチームの立上時においては、福田も相当高い評価を受けていたのだ。当時から福田の持ち味は、打点の高い空中戦と強いインステップキックのシュート。いわゆるストライカらしいストライカとして期待は大きかった。
 ただ、このあたりのチャンスを活かせるかどうかは、結構、運、不運が左右する。例えば、五輪最終予選の国立タイ戦。福田はスタメン起用されたが、守備を固めたタイを日本は攻めあぐむ。後半福田に代わって起用された俊足の平瀬が2得点を上げる活躍をするのだが、前半福田がガツガツ行って、敵の守備を消耗させた貢献などはどうしても目立たなくなっていた。そうこうしているうちに福田はトルシェ氏に選考されなくなってしまう。
 さらにグランパスも呂比須やウェズレイなど強力な選手を補強した事もあり、もう1つはっきりした活躍ができぬままにFC東京に移籍。そこでも今一歩で、当時J1残留にもがいていたベガルタに移籍。個人的には上記の経験もある福田が、我がベガルタで相当な活躍をしてくれないかと期待もした。
 けれどもそうはならず、福田はベガルタに保有権を残したまま、中南米、スペインのクラブを転々とする。冒頭に述べた通り、ヌマンシアで活躍した福田は相応の評価を得たのだろう。「情熱大陸」でも言及された通り、ラスパルマスは結構な移籍金を払って福田を獲得したとの由(つまりその移籍金はベガルタにも入ったのだろうが)。
 
 以上クドクドと書いてきた通り、私は福田と言う選手には結構期待してきた。各国転戦後は、映像を見る事も叶わないでいたので、この番組は貴重なものだった。内容は重苦しかったけれど。
 2部リーグのクラブが、他のクラブでそこそこ活躍した外国人ストライカを獲得する。しかし、そのストライカは怪我が多いは、PKは外すは、と言う状態。これは例えば、ベガルタが、昨シーズンホーリーホックで活躍したニュージーランド人のストライカを雇い、その選手がほとんど活躍できていないようなものだな(そう言えば、ラスパルマスのユニフォームはベガルタのそれに似ていたし)。これはさぞや居心地が悪いだろうな(さすがに仙台では、奥様や娘さんが周囲から「何やっているのよ」と非難はされないだろうが)。

 福田健二がこれからどのような活躍をしてくれるかはわからない。年齢的にも柳沢の同期にあたる福田(つまり中村よりも高原よりも年長)が、今後A代表に召集される可能性は極めて低いだろう。しかし、欧州の2部リーグでグレードアップを狙うストライカがいる事は、日本サッカー界をより分厚くする事だけは間違いない。何とか負傷を克服し、結果を出して欲しいものだ。
posted by 武藤文雄 at 23:59| Comment(3) | TrackBack(1) | 海外

2008年02月09日

プレミアの海外開催案について考える

 プレミアリーグが、日本を含む海外での公式戦開催を検討していると言う。これが実現すれば、ある意味で、ボスマン判決以上に世界のサッカーシーンを変える可能性がある案である。私が探した限りでは日本の報道ではもう1つ詳しい情報を見つける事ができなかった。そこで、自分が参照にしたのはこちらこちら、もし興味があれば。

 最初に私の考えを述べておく。私はこの案には感情的には99%反対である。そして、理性的には90%反対だが、10%程度迷いがある。以下理由を述べる。

 私の感覚が古いのかもしれないが、サッカーの基本は国内リーグの充実につきると思っている。原則ほぼ隔週で自分のクラブのホームゲームとアウェイゲームが交互に訪れるリーグ戦が、機能する事がその国のサッカーの健全な発展を支えるのだ。
 プレミアが、イングランド国内にとどまらず世界中を市場にして稼ごうとするのは、ビジネス的には不思議な事ではない。これまで、世界中に映像やロゴマークを販売する事で、ある程度その成果は出ていたのだろう。現実的に、英国のかつての植民地だった一部のアジアの国で、国内リーグが盛り上がらない理由の1つに、プレミアの人気が高過ぎるからと言う現象が起こっているとも言うし。つまり、映像を流布し、Tシャツを売るだけで、一部の国の国内リーグの活性化の阻害となっているのだ。そして、プレミアの今回の計画通りに、他国で試合などした日には、どんな混乱が起こるか。
 FIFAは「各国のサッカー界を健全に発達させる」と言う名目で各国のサッカー界を一元的にコントロールしてきた。サッカー協会を1国1つに制限しているのが、最も顕著な例である。同時今回のプレミア案のように、他国の「興行権」を守る事に神経を注いできた。(最近のFIFAがどの程度「大所高所」に立っているかどうかはさておき)少なくとも前のFIFA会長の時代までは、全ての国が独立して充実した国内リーグ戦を持つ事が世界のサッカーの発展につながると言うコンセプトで、世界のサッカー界が運営されていた(もちろん、スタンレー・ラウス氏時代までは純粋に「発展」が重視され、アベランジェ氏になってからは「経済利益のための発展」に置き換えられた印象もあるが、まあそれはさておき)。
 私は、このFIFAの発想は基本的には正しいと思っている。これが感情的に99%反対する理由だ。 
 もっとも、日本においてプレミア進出はそれほど深刻な事態にならないような気もする。現実的に日本でプレミアの試合が行われたとしても、Jリーグへの営業妨害につながる可能性は非常に少ないように思えるからだ。Jリーグのサポータと、日本でプレミアが開催された事を喜ぶセグメントは、ほとんど重なりがないのではないか。それと別に、自分自身も、日本代表とベガルタとその他のJリーグと少年団の行事と本業に重ならなければ、直接見に行ってみたい気持ちもあるしな。だから、感情的には1%は否定できないでいる。
 本件については、早々に日本協会も反対の意思表示をしたらしい(この意思表示についても、日本語の記事を見つける事ができていないのだが)。妥当な反論だと思う。
 
 一方で、プレミアの具体案には相当無理がある。さすがにホーム&アウェイの原則は崩せないので、通常の総当たりリーグ戦の他に全チーム1試合ずつ増やし、その試合を世界中で行おうと言う魂胆らしい。これでは、さすがに不公平だろう。総当たり2回戦の他に、抽選でもう1試合行う試合を決め、その試合を世界中の津々浦々で行う企画が正常とはとても思えない。と言って、海外開催でカネを稼ぎたい気持ちは山々でも、ホームゲームを減らしたら、本国で暴動が起こるだろうし。
 さらに実行面でも疑問は多い。上記したURLのIndependent誌によると、開催時期候補は1月、候補都市はシカゴ、ニューヨーク、ヨハネスブルグ、北京、そして東京などが挙げられている。この季節は、イングランドの各都市も寒いだろうけど、(ヨハネスブルグ以外の)これらの都市も相当寒いよ。いくら、金儲けのためとは言え、本国で試合をすれば楽なのに、わざわざ遠路はるばる旅をして公式試合をするのでしょうか。タイ代表のチャンウィット監督が聞いたら、呆れ果てる事だろう。
 そう考えると、これらの計画は実現性にも問題がある。このような無理を強行してロクな事はないのだ。だから、理性的にも90%はこの計画に対し反対。そして、実現も相当難しいだろうなと思う。

 ただし、理性的に考えると、10%程度考えてしまう事があるのだ。
 FIFAの各国保護行政は、本当に将来の世界サッカーの発展にとって正しいのだろうかと。
 少なくとも、通常の産業においては、何がしかの国家保護政策が行われる事は、長期的に見てロクな事はない。あまりあけすけに書く事ははばかられるが、現在の日本で青息吐息の企業の多くは、国が(短期的な視野や圧力団体におもねる事で)余計な保護(や干渉)を行い、結果的に競争力を失った場合が多い。そう考えると、迷ってしまうのだ。一切の保護が無い状態での競争こそ健全ではないかと。
 言い方を変えようか。たぶん、私が生きているうちは無理だと思うが、時間は多くの物事を変えるはずだ。22世紀も間近になった頃には、日本はブラジルやアルゼンチンと同格の世界屈指のサッカー強国になっているかもしれない。その時、世界最強クラブの1つのベガルタ仙台の公式試合を、ロンドンやマンチェスターやリバプールのサッカー好きが見たいと思うかもしれないではないか。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 海外