2010年05月24日

動いて戦わなければ勝てない

 開始早々、朴智星に力強いドリブル突破を許し敢えなく失点。この時期にちょっと認め難い失点だ。朴が挙動を開始したときに正対していた阿部(今野?両方?)の弱々しい当たり方に失望。さらに横にいてカバーすべき遠藤は、油断していたのだろうか、対応が遅れた。ワールドカップまでわずか3週間と言うのに、あまりに残念な失点。まあ、朴の個人能力はさすがとしか言いようがないし、「恐怖の快感」を相当感じたのも確かなのだが。

 リードした韓国は守備ブロックを作り、じっくりと守ってくる。不愉快だし残念だが、視点を変えれば、強い相手がしっかり守ってくるのに対し、逆襲をケアしながら崩せるかどうかを試す格好の場が提供された訳だ。
 ところが、ボールが回らない。選手が動かないからだ。俊輔、遠藤もだが、期待の本田もほとんど「受け」の動きがない。岡崎と大久保だけは身体の切れがあるようだが、これでは連動は生まれないし、後方の選手も前に出られない。前半散発的に長谷部、長友が強引な長いドリブルを試みた場面があったが、受け手が少ないが故の無理と見た。
 唯一ダイナミックな連携になりかけたのが左サイドの大久保と今野、しかし守備的にくる韓国はそこに2、3枚選手を並べ、徹底してフタをしてくる(どうでもいいが、車ドゥリって最近サイドバックやっているのね)。そうなると、韓国の守備のバランスが少し崩れる訳で、そこで他の選手が顔を出して、サイドを変えるとかできれば、好機にもつながろうと言うものだが、相変わらず運動量が少なく、うまく行かない。
 唯一の好機は、今野がハーフウェイライン近傍で奪ったボールを受けた大久保がドリブル突破。縦突破をねらうフェイントから中に切り返してシュートをねらった場面。大久保のプレイはよかったが、あれが枠に行くか行かないかが(悔しいけれど)朴智星との差か。

 ハーフタイム、岡田氏は動かず、まずは選手の奮起を期待したのか。
 後半すばらしかったのは中澤、前半は朴を含め動き出しの早い韓国FWに対して慎重に対応して後手を踏んでいたが、後半すばらしい出足と激しいタックルで次々と敵をつぶす。同様に長友も敏捷性と激しさを発揮し、朴智星をよく押さえる。そして、長谷部と岡崎を軸に日本は挽回を狙う。
 前半の俊輔は運動量も少なかったが、敵とのコンタクトプレイを恐れたかのような軽い受け方、タメのないパスが目立った。後半、岡田氏から指示されたのか、中央にも顔を出しフィジカルコンタクトも辞さなくなった。けれども、体調がよほど悪いのか、下半身が不安定で次々にボールを奪われる。調子が悪いとか、衰えたとか、そういう表現よりも、身体が全くできていない印象だった。3月のバーレーン戦ではずっと身体も切れていたし、マリノスのプレイ振りも絶好調とは言い難いがまだましだったように思う。元々この選手は、ボールを半身のよい体勢で受ける事ができれば、深い切り返しを含めて簡単に取られない事でタメを作り、高精度のパスを操るところに妙味がある(細身に見えるが鍛えられた上半身など相当強い)。しかし、この日の俊輔は全くボールを保持すらできなかった。パスを出す以前の問題である。状態は深刻かもしれない。
 俊輔に代わり森本投入。遅いが妥当な交代だ。岡崎と森本の2トップにするのかと思ったが、本田を中央に残し、岡崎はサイドに開く。森本は力強く前進を試みるが、岡崎ほど引き出しは巧くないので、かえって攻撃が停滞。そこで岡田氏は本田に代えて憲剛を投入する。
 本田圭佑。残念ながら、この日は以前からの欠点である身体の向きのまずさに加え、引き出す動きの乏しさが目についた。後方の選手がルックアップしても、本田のもらう動きが乏しい。さらに悪い事に、岡崎が本田との前後関係を考慮して、動きの量(と言うか距離)が小さくなってしまっていた。ちょうど、本田が後方と岡崎の間にフタをしているような状態。ただし、もらう体勢が悪かろうと、1度ボールを受けたら強引に振り向いて仕掛けるのはこの男の本領。幾度か強引にシュートまで持ち来んだのはさすが。しかし、カメルーン、オランダ、デンマークの守備者達に「強引」が通用するだろうか。「知恵」と「技巧」をもう少し前面に押し出すべきではないのか。現実的にはポジションを後方に下げるべきなのだろうか。
 憲剛が入る事で「動けて技巧が冴えた」選手が前方に入り、幾度か好機を掴む雰囲気が出てきた。憲剛をもっと早い時間帯で遣っていれば、状況は改善したのではないか。しかし、別な問題も出来した。前線に森本と岡崎が張る事で、後方の選手が森本にロングボールを当て始めたのだ。森本はよく頑張るがドロクバやミリートではないのだ。以前平山を起用した際にも指摘したが、前線に強い選手が登場すると、ついロングボールを入れてしまう(困った事にスタンドはそれで盛り上がる)のは絶対に避けるべきだ。岡崎にしても森本にしても、斜めへの速い動き出しをさせて、そこに低いボールを当てるならば活路は開けるはずなのだが。そうすれば、サイドアタックへの展開もやりやすくなる。今日の韓国のように第一波のサイドアタックへのアプローチを止めに来たら、その分中央は空くのだから、そこから展開すればよい。そのような我慢を、今後の集中的なトレーニングでいかに徹底させられるか。
 私は後半早々に遠藤に代えて憲剛を入れるのかとさえ思っていた。そのくらい遠藤の出来も悪かった。とにかく、ボールを持った時に、独特の間合いで落ち着いているのがこの選手の妙味。そして、落ち着いてギリギリのパスを通してしまう。しかし、その落ち着きもギリギリも今一歩だった。そのため、上記の通り、ボールは回らないわ、森本が入った以降DFはロングボールを狙うわで、攻めあぐんだ。今日はガンバサポータの友人と観戦していたのだが、「今期の遠藤はこんなもの」との事。確かにJでもACLでも、まだスーパー遠藤をほとんど見ていないな。これは大問題だ。少なくとも中盤後方から、遠藤が落ち着いて展開するのが、今の日本の基盤なのだから。20日後に合わせるために、今体調を追い込んでいるからだと、ここは前向きにとらえたい。
 ロスタイム直前。森本が巧くボールを受け憲剛に落とす。憲剛が右サイドから低い好クロス。飛び込む岡崎が引倒された(ように見えた)。笛はならない。一方、その後の韓国の逆襲。楢崎がよい飛び出しで防いだ(ように見えた)。笛がなった。不愉快極まりない判定だった。

 俊輔、遠藤、本田、日本が期待する大駒3枚が、あそこまで動けず、いきない敵エースのズドーンを許し完敗した試合。その他の選手の内容は比較的よかったし、組織守備も相応に機能はしていた。そのあたりは別途述べたい。
 日本がワールドカップで戦うためには、他国よりも運動量で上回り、粘り強く集中して守り、それを基盤に技巧を活かし、変化をつける工夫をする事に尽きる。運動量が足りない、集中した守備ができていない。レギュラがどうしたとか、采配がどうしたとか、それ以前で負けているのだ。1年前にできていた事すらできずに。

 岡田氏にも、選手達にも望みたい。誇りを持って、骨身を惜しまずに動き、粉骨砕身戦って欲しい。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(14) | TrackBack(1) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする