最初に私の見解を述べておく。
コパアメリカには出たい、それも遠藤を含むベストメンバで。しかし、健全な国内リーグの継続は、それよりも重要だ。コパアメリカに、遠藤を含めたJのトッププレイヤを連れて行くならば、Jを中断するしかない。そして、中断できないならば、コパアメリカを辞退するか、Jのトッププレイヤ抜きでコパアメリカに臨むしかない。そして、Jの中断ができないのは、日程的に間違いない。優先すべきはJなのだ。
理由は明白。いつか、我々がワールドカップに優勝するためには、短期的な代表チームの強化よりも、長期的にリーグを繁栄させる事が重要だから。トップリーグの最中に、トッププレイヤが不在となっては、リーグ戦の権威が損なわれてしまう。
過去、唯一の例外は、97年のワールドカップ予選だった。あの時は、まだ日本がワールドカップに出た事もなく、(個人的には日本でやろうがやるまいがどうでもよかったが)02年大会の韓国との共催が決まっていると言う怪しげな状況。全てを打ち捨てて、本大会初出場を狙うべき、と言う理屈に賛同する人は多かった(まあ、まだ2部落ちもなかったのだが)。
しかし、現状は全く異なる。コパアメリカに出場すれば、代表は多くの経験を積む事ができて、ブラジル大会でよりよい成績が期待できるだろう。けれども、長い目で見れば、それはカンフル剤に過ぎない。日本のサッカー力を本質的に高めて行くのは、充実した国内リーグを継続し、後から後から優秀な人材を輩出できる環境を作り上げるのが最も重要なはず。どちらを優先するかと言えば、Jの健全な継続を優先すべきなのだ。
逃げの手段がない訳ではない。J開催中に、コパアメリカにもJのトップ選手を出す。しかし、今期に限りJ2落ちを無くすと言う手段だ。この手段は、Jの充実と言う意味では問題だが、J1の各クラブを納得させる事はできるかもしれない。しかし、これはダメだ。J2のクラブがこれをよしとはしないだろう。さらに、超法規的措置で、来期のJ1のクラブ数を増やすと言うウルトラCもあるが、これは別な意味で現実的ではない。過去幾度も述べて来たように、既に18チームがJ1にいるだけで、日程が破綻しているのだ。J1のクラブ数はこれ以上増やす事はできない。
繰り返すが、Jが中断できない以上は、コパアメリカを辞退するか、Jのトッププレイヤ抜きでコパアメリカに臨むしかない。
では、Jのトッププレイヤ抜きで、コパアメリカに臨めるのか。
この手の議論は、つい個別の方法論にはまりがちである。曰く「外国クラブ選手+αで編成すれば大丈夫」とか、「Jの各クラブから一人ずつの選抜を」(これがダメなのは上記した通り)とか、「FC東京からたくさん選ぼうぜ(笑)」(意見は色々あろうが、J2のクラブは日本代表と日程がバッティングするのは前提となっているから、これは問題ないと言う考え方はあるかも)とか。これらは、方法論としては、それなりに現実的(もっとも、ゲスト招待されているコパアメリカで、欧州各クラブが出場を諾としてくれるかと言う議論は別として)ではある。しかし、これらのように方法を先に述べると(たとえ、その方法の筋が悪くなくとも)、目的あるいは本質から、段々ずれていく。
代表チームのメンバを決めるのは、ザッケローニ氏なのだ。小倉氏でも、大東氏でも、原氏でも、あなたでも、私でもない。何より重要な事は、「J1の選手は一切連れて行けない。それでも、コパアメリカやれるか」と言う判断を、ザッケローニ氏にしてもらう事なのだ。原氏が、そうやってザッケローニ氏の説得に成功すれば、外国クラブ所属選手+J2+学生で、A代表を編成し、コパアメリカに挑戦する。氏が「それじゃダメ」と言ったら、潔く辞退。それが、一番CONMEBOLにも迷惑をかけない。今回は、状況が状況なのだ、わかってもらえるさ。
さらに言えば、結果がどちらになっても、今年の後半からはワールドカップ予選が始まる。この苦しい日程下で、できる限りの準備をすればよい。それはそれで、やれるはず。
もう1つ。この震災の苦しい時期だから、「コパアメリカで皆に勇気を」と言う考えについて。
気持ちは理解できる。でも、「皆に勇気を」与えられるのは、代表だけではない。各クラブが、Jを充実させて「皆に勇気を」与える事の方が大事ではないか。いつもいつも、代表に頼るのはいかがか。もう、1月のドーハと、先日の森島スタジアムで、彼らに頼るのは十分ではないか。