今回の自然災害の直接被害を被った方々への支援は最優先事項なのは間違いないが、再三繰り返しているように日常の回帰は必須であり、それによる経済活性の回帰がなければ、被災地の復興もない。そして、サッカーは「人々に元気を与える」以前に、「多くの人を食わせる立派な一大産業」なのだ。その一大産業がしっかりと機能し、多くのキャッシュを生み出し、たくさんの人がそれで生計を成り立たせる事は、「人々に元気を与える」のとは全く異なる次元で、被災地復興の重要な礎となる。
Jの公式戦が行えずとも、各クラブのキャッシュフローは、スポンサ料(支払いタイミングは契約次第だが)や、年間チケットの前払分で、当面は何とかなるかもしれない。けれども、試合をしなければ、追加のキャッシュは入って来ない。いつかキャッシュは尽きる(金融機関とか親会社がカネを貸してくれればつながりますが)。そうなれば、選手への(もちろんスタッフへの)給料が払えなくなる。また、Jリーグを周辺で支えるスタジアム内外のビジネス(駐車場、周囲の居酒屋、各種交通網等々)も、試合がなければ、キャッシュインはない。試合がなければ、各マスコミ媒体も売れ行きは伸びず、出版社のみならずライターの方々の収入も伸びない。放映権を持つスカイパーフェクトも、つらいところだろう。以上のように、試合が行えなければ、多くのサッカー人にとって深刻な事態になっていく。早期の再開は必須なのだ。
だから、あるポイントを決めて、Jの再開を目指すの全面的に正しい。被災地はもちろんだが、首都圏の鉄道網もまだガタガタから完全に抜け切らず、たまに余震などもある現状を考えると、再開を1ヶ月後に設定したのは、現実的な対応だと思う。さらに「これ以上後ろ倒しにすると、夏期にナイトゲームを多数実施しなければならず」と言うのも、切迫した理由だったのだろう(これについては、正式にチェアマンも言及している模様)。
もう1つの手段として、東北、関東を除く地域で、より早く再開する方策もあったと思うが、そうなるとかえって日程調整が難しくなる。何とか、日程を揃えて消化していく方が、やりやすいと言う判断だろう。
もちろん、付帯的に非常に厳しい日程となる今期をどうこなすかは、正に知恵の出しどころだ。Jリーグはもちろんだが、コパアメリカ、五輪予選、拡大トヨタカップ、天皇杯、ナビスコ、そして何より10月より始まるワールドカップ予選。これらをいかに、巧みにこなすか、ただでさえ破綻している日程がさらに苦しくなった今、正に皆の知恵が試されるところだ(具体的提案は別途述べたいと思う)。
再開日程が確定した以上、ベガルタは再び立ち上がらなければならない。
準備が整わない場合、ベガルタ(アントラーズもホーリーホックも)日程を後ろ倒しにする選択肢もあり、との報道だが、できれば再開に間に合わせたい所だ。再開の後ろ倒しは、結局終盤に厳しい日程となるだけだ。もちろん、そのためには再開までのトレーニング場所の選定や、滞在費などの問題もあるのだが。ただでさえ、収入の少ないクラブが、今回の災害でこうむった金銭被害は小さいものではなく、さらに今期の見込み収入源を考えると頭の痛いところだ。でも、解決しなければならないのだ。
また、「ベガルタが早期のユアテックでの再開を目指している」旨の報道も見受けられた。けれども難しいのではないか。震災の被害状況を見る限り、ユアテックの修理の優先順位は、とても高くなるとは思えないからだ。したがい、残念ながら、他地域を含めた別会場でのホームゲームを検討するのが、現実的と思う。
しかし、何がどうあれ、現実に織り合いを付け、準備をしなければならない。戦える喜びは、何よりも大きいのだから。