今回の予選は、2次予選をホーム&アウェイで戦い、勝ち残った12チームを3グループに分けて、これまたホーム&アウェイの総当たり戦でトップが出場できると言うスタイル。2位になると、3チームがセントラルの総当たり戦を戦い、アフリカ代表とのプレイオフと言う、何とも魅力的なオプションとなる。
各ラウンドのチーム数は、都度変っているが、おおむね毎回同様の予選方式が続いている。ワールドカップ予選よりも、アジア枠が小さい事もあり、各ラウンドとも1位抜けが必要。その分だけ、「番狂わせの怖れ」が高いので、戦闘能力で優位に立つ日本にとってはリスクが高いとは言えるだろう。
クウェートとの対戦と言うのは、A代表でも非常に少なく、過去の相性もよくない。
クウェートは82年スペイン大会に出場、フランス戦では王族が試合中に判定にクレームを付け、得点を取り消させると言う、ワールドカップ史に残るスキャンダルを演じたりした。その後も、アジアの強国として活躍、日本も86年のアジア大会の1次ラウンドで0−2に完敗している。けれども、湾岸戦争の影響で、チーム力は弱体化。以降、アジアのトップと言える活躍はしていない。
けれども、96年のアジアカップの準々決勝では0−2の完敗。この試合は、その後幾度も手合わせをする事になる「我らが親友」とも言うべきミラン・マチャラ氏との初対決でもあった。日本の中盤のプレスをかいくぐるロングボールで攻められ、守備の弱点である相馬直樹を執拗に狙われ、GK下川健一にもミスが出て2失点。攻撃の中核と期待されていた前園真聖の不振もあり、そのまま完敗してしまった。この試合は、日本が本格的にアジアカップに取り組むようになった92年以降唯一の2点差負けでもある。
以降は、重要な公式戦での対決は記憶になく、不思議に縁がない国だ。ただ、フランス、ドイツのワールドカップ予選では最終ラウンドに残っているし、アジアカップでも本大会には出てくる事もあり、中東の2番手国と言う地位は保っている。言わば、UAE、カタール、バーレーン、オマーンなどと同レベルと見る。したがって、もう少し手合わせの機会があってもよかったようには思うのだが、縁のおもしろさだろうか。
そして、一連の最近の地位、実績から考えても、結構厄介な相手だろう。
関塚氏が率いる今回の五輪代表は、(戦った選手たちには、やや失礼な言い方になるが)過日のアジア大会で堂々と優勝を飾り、順調なスタートを切っている。実際、アジアカップに出場しなかった選手を含め、香川を筆頭に既にJでもチームの中核を担うようなよい人材が非常が非常に多い。
唯一不安と言えば、現状ではセンタバックに決定的なタレントが不足感があるくらいか。アジアカップで中央を薗田淳と鈴木大輔が固め上々の守備を見せた。先日のウズベク遠征では、村松大輔、濱田水輝らが起用された。皆よい素材だが、村松を除いてはJでの実績がまだ乏しい。唯一実績が豊富な村松は、好調時の1対1の粘り強さは格段のものがある好素材だが、上背が低く、またエスパルス移籍直後でチームで地位を確立したとは言えない点がやや不安(村松の体格はカンナバーロとそう変わらないから、上背が低い事ごときでマイナス評価をするのは失礼千万なのだが)。北京の時は、水本裕貴、青山直晃と言った実績のある選手がここを固め、チームの中核を担っていたのだが。もっとも、当時チーム安定の源泉となっていたこの2人は伸び悩み、当時まだまだ不安定だった他のポジションの選手たちがどんどんと成長し、既にA代表の中心選手となっているのだから、選手の成長曲線というものは難しいものだ。そういう観点で見れば、今回の五輪代表は、たまたまCBに早熟な選手が少ないと言えるだけで、予選本選と戦っているうちに問題なくなっていくような気もする。
クウェート戦は決して簡単な試合にはならないだろうが、一方でそのような戦いで若い選手を伸びていくはずだ。それがタイトルマッチの醍醐味と言うもの、どのような戦いになるか期待したい。