大昔から国内の代表戦に援助し続けて来てくれた酒精メーカ様も、これまた大昔から年末の公式世界戦を支えて来てくれた自動車メーカ様も、やはり以前よりもリーグ戦の充実に力を提供してきてくれた菓子メーカ様も、すべて尊重するのは、よく理解できる。いずれも、本当に重要で、感謝してもし切れない恩人達なのだから。そして、この災害下、その恩人達から提供いただけるキャッシュは、短期的にもとても重要なものになる。
けれども、あの悲劇は我々からシーズン中の約40日の貴重な日々を奪ってしまったのだ。時間と言う資源は、ある意味最も高価なもので、買い戻す事は不可能なのだ。したがい、その貴重極まりない資源を失った以上は、何かを捨てる必要がでてくる。と、言って自分たちの本分である全国リーグが最優先である事は言うまでもなかろう。
だから、今回だけは信頼できる遠方の友人に、未曾有の自然災害ゆえに不義理する事を容認してもらう必要があったのだ。たとえ、その友人が、日本の放送局からの多額の放映料金を期待していたとしても。しかし、その友人を説得できず、逆に説得されてしまい、その最も現実的な道も自ら閉ざしてしまった。
残る道は非常に少なく、かつ一層険しいものとなる。いくつか具体的に挙げてみよう。以前から述べているように、本来代表チームの選手選択はザッケローニ氏が行う訳で、出場の方法論を先に考えるのは意味のない事だ。しかし、ここまで切れるカードがなくなっている以上は、数少ないカードを具体的に並べてみるしかないような気もする。
(1)国内のトップ選手及びクラブが容認した海外所属のトップ選手をアルゼンチンに連れて行く。その間のJリーグは彼ら抜きでそのまま当初のレギレーションで行う(J2落ちなども当初予定通りにそのまま)。
(2)国内のトップ選手及びクラブが容認した海外所属のトップ選手をアルゼンチンに連れて行く。その間のJリーグは彼ら抜きでそのまま行う。ただし、今年度に限り降格はないものとし、来期のJ2からの昇格もなきものとする。
(3)国内のトップ選手及びクラブが容認した海外所属のトップ選手をアルゼンチンに連れて行く。その間のJリーグは彼ら抜きでそのまま行う。ただし、今年度に限り降格はないものとし、来期のJ2からの昇格も認め、来期のJ1を20あるいは21クラブで実施する(来期の日程破綻は水曜日消化を増やし、一部のリーグ戦を代表選手不在で行い、大量の降格クラブを出す)。
(4)国内のトップ選手及びクラブが容認した海外所属のトップ選手をアルゼンチンに連れて行く。その間のJリーグは中断する。そして、今期の天皇杯は中止として、その分や平日開催でリーグ戦を消化する。
(5)コパアメリカには国内トップ選手は連れて行かず、クラブが容認した海外所属のトップ選手と、その他選手(たとえ日本代表とは呼びづらい選手でも)を連れて行く。
これまた以前も述べたが、97年のようにリーグ戦の権威を損ねるのは私は賛成できない。と言って、およそ日本代表とは呼び難い選手を並べて、せっかくの南米の公式戦に出るのも反対だ。そして、これ以上日本のトップ選手を疲弊させるべきではない。
とすると、まだ(4)の策が最も現実的に思えるのだが。とても残念だが、他よりはこの案が一番被害が少ないように思える(もちろん、それでも日程は厳しく、平日開催が増える可能性があるので、リーグの収入が減る怖れもあるし、リーグの権威も少々損ねられてしまうのだが)。それにしても、コパアメリカの出場を辞退する方策の方(もちろん、コパアメリカを辞退したとしたら、これまたとても残念だったのは言うまでもないが)が、(4)よりはよかったと思う(もう言っても仕方がない事だが)。
また、これまた以前より語っているが、この機会に天皇杯を2年越しの大会にしてしまう(とにかく今年、正確には来年の元日、には決勝はなし)と言う抜本策が方策(4)の延長線にはある。これは、かなり前向きな提案となる。
何かを選ぶと言う事は、別な何かを捨てる事でもある。唯一我々が捨てられるのは、国内の伝統ある大会なのではないか。とても残念な事だけれども。