女子代表五輪予選が近づいてきた。
正直言って、その準備の状態を見る限り不安満載である。ワールドカップ優勝によるマスコミの異様な騒動で、的確に準備が行われなかったのではないかと心配なのだ。大会直前の貴重で重要な鍛練の機会だった岡山合宿が、完全公開でマスコミ報道の最中に行われた事を典型にして。
今回の予選は、11日間で5試合の総当たり戦をセントラルで戦う、狂的な日程の非常に難しい大会である(まあ、五輪本大会の日程も五十歩百歩だが)。したがって、体調をベストに整えて臨む必要があるのは言うまでもない。そのためには、相当肉体的に厳しい負荷を加えた鍛練とリフレッシュが必須だったはずだ。
そして、そのような鍛練と公開練習は、矛盾するものとなる。公開練習及び周辺にサポータが出没する環境そのものが、選手のリフレッシュを阻害するのは言うまでもない。いや、衆人環視の下で、どこまで選手達を追い込めたのかも不安となる。
なでしこリーグ選抜戦直前の西が丘でのトレーニングが、公開に
なるのは、まあ一連のワールドカップ制覇景気の一環として、しかたないかなとも思っていた。けれども、岡山でのトレーニングに大量のサポータ(ギャラリーと言うべきか?)が
集まった
と聞くと、真剣に準備が円滑に進むのか心配になる。落ち着いた温泉地で、じっくりと鍛練を積む段取りだったのだろうが、完全な思惑違いとしか言い様がなかった。
もっとも、鍛練と無関係に大騒ぎするマスコミの排除は、日本協会も慣れたところのはずだ。昨年の南アフリカでも、ヒステリックに練習公開を要求する自称ジャーナリスト達を、柳に風と受けながした日本代表スタッフの手腕は、なかなかのものだった。と言うか、これは2006年ドイツ大会のいい加減な準備による大失敗の経験を活かしたとも言えたのだが。
しかし、今回の女子合宿については、そう思うようには行かなかったようだ。だいたい今回の合宿の胴元は、これまで地味ながら女子サッカーを支えて来た湯郷温泉さんである。そして、湯郷温泉さんが、この機会に色々な
イベントで、女子代表を
盛り上げ、多くのサポータに代表に触れてもらい、さらに湯郷温泉も
愉しんでもらうと考えたのも、これまた当然だろう。そして、湯郷温泉サイドが客を呼び入れようとしているのに対して、日本協会が「練習非公開です!」と野暮を言いづらいのも間違いないところだ(ただし引用したHPによると、必ずしも練習すべてを公開した訳ではないようなのだが)。
女子代表の五輪予選が、決して楽な戦いでないのは言うまでもないだろう。
おそらく日本の戦闘能力はトップだが、豪州、北朝鮮(ワールドカップのドーピング問題は相当影響が大きいだろう)、中国、韓国までの戦闘能力の差はそれほど大きくない。他国の国内大会のスケジュールはよくわからないが、ワールドカップでベスト8に進出した豪州を含め、いずれの国もこの五輪予選にピークとなるように強化、調整を進めて来るに違いない。油断は一切できないのは、間違いないところだ。
上記した、準備時点でのマスコミ騒動が悪い影響を与えない事を祈るばかりである。
ただしだ。準備面で万全を尽くせたかどうかは不安だが、予選全体を展望すると、そう悲観する必要もないようにも思えてくる。
第1に予選が総当たり方式である事。このような総当たり戦は、最後の最後まで戦うと、自然に戦闘能力の高い順番になるものだ。もし日本がどこかで星を落としたとしても、日本に勝ったその国が他の国に確実に勝てるかどうか。いくつか番狂わせがあっても、総当たり戦で戦っているうちに、戦闘能力の順番に落ち着いて行くのはよくある話なのだから。
第2に、この予選は2位に入るのが各国の目標なので、かえって最強の日本へのマークがゆるくなりそうな事。中国、北朝鮮、韓国の目標は、五輪本大会出場であり、1位をとる事ではない。すると、現実的な監督だったならば、最強日本に対して「どうこうする」よりは、2番手最有力候補の豪州を「何とかする」の方が現実的なはず。中国が最終日に日本戦を持って来たのも、「日本は最終日時点では出場を決めているだろうから、中国だけは気の緩んだ日本と戦える」と考えたからだろう。
そして第3は女子代表が世界一になる事で獲得した、圧倒的な自信と、格段の経験である。たとえば、先日のなでしこリーグ選抜、代表の開始早々の圧倒的な攻勢はすばらしかった。いずれの選手も、「世界一」となった事で、相当な自信を持っているのだ。中でも、一番マスコミ関係から「お座敷」がかかっていただろう丸山が再三見事なドリブルで勝負を仕掛けていたのに感心。一番体調を整えるが難しそうだった丸山でさえ、ここまで充実しているのだ。世界一になった事で、選手達が大化けしたのではないかと思うのだ。
以上、短期日程面からきた不安と期待を列記してみた。
まあ、もし負けるような事があったとしても、「それはそれ」だと思っている。たとえ、五輪に出る事が叶わなくても、ワールドカップで世界一になった栄誉が薄まる事はない。そこまで割り切った上で、五輪予選と言うタイトルマッチに臨む澤と仲間達に、テレビ桟敷から声援を送る事にするか。