2011年08月30日

できない事は理解しているのですが

 こいつが、余計な心配をするから、真に受けた12号君の来訪の確率が高まっている。最新の天気予報を見る限り、2日21時(つまり北朝鮮戦の試合終了時)の暴風雨圏が本州の多くを覆いそうで、試合開催がかなり怪しくなっている。日本協会も、何とも言えないリリースを流している。もし、当日台風で公共交通機関(と言っても埼玉スタジアムへの公共交通機関は1種類しかないのだけれども)に影響があるようだったら、おそらく翌3日に試合を延期するのだろう。
 一見、仕方がない妥当な対応に思えるが、これは大変な事態である。9月6日にタシケントでのウズベク戦が控えているからだ(今回の予選で1番難しい試合はこの試合だろうし)。予定通り、2日に試合ができれば、3日にチャータ便を使ってタシケントに移動し、丸2日調整できる。けれども、3日に試合となれば、中2日、調整も1日と、非常に難しい試合となってしまう。この違いは、ものすごく大きい。ウズベキスタンは、距離的に近いタジキスタンとの敵地戦後にすぐ自国に戻って準備できるのだし。ついでに余談だが、5年前の味わい深い試合のような主審が出てくる可能性もあるな(いつも安定した笛を吹いてくれるイルマトフ氏が笛を吹いてくれる可能性もないし)
 もちろん、今の日本代表の戦闘能力の充実は抜群のものがあり、そのような難しい状況も、それなりには対応できるだろう。けれども、よい条件で試合を迎えられるならば、その方がずっとよいのは言うまでもない。不思議なのは、そのような報道が少ない事。決して不安を煽るつもりなど毛頭ないが、台風により「延期の可能性」と言う報道はあっても「難しい状況になる」的な報道が非常に少ないのは何故なのでしょうかね。

 (もちろん、そんな事はできない事は理解しているのですが)「だったら、いっそ1日前に試合をできないのか」とも言いたくなる事態だな、これは。
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2011年08月29日

女子代表への不安と期待

 女子代表五輪予選が近づいてきた。
 正直言って、その準備の状態を見る限り不安満載である。ワールドカップ優勝によるマスコミの異様な騒動で、的確に準備が行われなかったのではないかと心配なのだ。大会直前の貴重で重要な鍛練の機会だった岡山合宿が、完全公開でマスコミ報道の最中に行われた事を典型にして。

 今回の予選は、11日間で5試合の総当たり戦をセントラルで戦う、狂的な日程の非常に難しい大会である(まあ、五輪本大会の日程も五十歩百歩だが)。したがって、体調をベストに整えて臨む必要があるのは言うまでもない。そのためには、相当肉体的に厳しい負荷を加えた鍛練とリフレッシュが必須だったはずだ。
 そして、そのような鍛練と公開練習は、矛盾するものとなる。公開練習及び周辺にサポータが出没する環境そのものが、選手のリフレッシュを阻害するのは言うまでもない。いや、衆人環視の下で、どこまで選手達を追い込めたのかも不安となる。
 なでしこリーグ選抜戦直前の西が丘でのトレーニングが、公開になるのは、まあ一連のワールドカップ制覇景気の一環として、しかたないかなとも思っていた。けれども、岡山でのトレーニングに大量のサポータ(ギャラリーと言うべきか?)が集まった
と聞くと、真剣に準備が円滑に進むのか心配になる。落ち着いた温泉地で、じっくりと鍛練を積む段取りだったのだろうが、完全な思惑違いとしか言い様がなかった。
 もっとも、鍛練と無関係に大騒ぎするマスコミの排除は、日本協会も慣れたところのはずだ。昨年の南アフリカでも、ヒステリックに練習公開を要求する自称ジャーナリスト達を、柳に風と受けながした日本代表スタッフの手腕は、なかなかのものだった。と言うか、これは2006年ドイツ大会のいい加減な準備による大失敗の経験を活かしたとも言えたのだが。
 しかし、今回の女子合宿については、そう思うようには行かなかったようだ。だいたい今回の合宿の胴元は、これまで地味ながら女子サッカーを支えて来た湯郷温泉さんである。そして、湯郷温泉さんが、この機会に色々なイベントで、女子代表を盛り上げ、多くのサポータに代表に触れてもらい、さらに湯郷温泉も愉しんでもらうと考えたのも、これまた当然だろう。そして、湯郷温泉サイドが客を呼び入れようとしているのに対して、日本協会が「練習非公開です!」と野暮を言いづらいのも間違いないところだ(ただし引用したHPによると、必ずしも練習すべてを公開した訳ではないようなのだが)。

 女子代表の五輪予選が、決して楽な戦いでないのは言うまでもないだろう。
 おそらく日本の戦闘能力はトップだが、豪州、北朝鮮(ワールドカップのドーピング問題は相当影響が大きいだろう)、中国、韓国までの戦闘能力の差はそれほど大きくない。他国の国内大会のスケジュールはよくわからないが、ワールドカップでベスト8に進出した豪州を含め、いずれの国もこの五輪予選にピークとなるように強化、調整を進めて来るに違いない。油断は一切できないのは、間違いないところだ。
 上記した、準備時点でのマスコミ騒動が悪い影響を与えない事を祈るばかりである。

 ただしだ。準備面で万全を尽くせたかどうかは不安だが、予選全体を展望すると、そう悲観する必要もないようにも思えてくる。
 第1に予選が総当たり方式である事。このような総当たり戦は、最後の最後まで戦うと、自然に戦闘能力の高い順番になるものだ。もし日本がどこかで星を落としたとしても、日本に勝ったその国が他の国に確実に勝てるかどうか。いくつか番狂わせがあっても、総当たり戦で戦っているうちに、戦闘能力の順番に落ち着いて行くのはよくある話なのだから。
 第2に、この予選は2位に入るのが各国の目標なので、かえって最強の日本へのマークがゆるくなりそうな事。中国、北朝鮮、韓国の目標は、五輪本大会出場であり、1位をとる事ではない。すると、現実的な監督だったならば、最強日本に対して「どうこうする」よりは、2番手最有力候補の豪州を「何とかする」の方が現実的なはず。中国が最終日に日本戦を持って来たのも、「日本は最終日時点では出場を決めているだろうから、中国だけは気の緩んだ日本と戦える」と考えたからだろう。
 そして第3は女子代表が世界一になる事で獲得した、圧倒的な自信と、格段の経験である。たとえば、先日のなでしこリーグ選抜、代表の開始早々の圧倒的な攻勢はすばらしかった。いずれの選手も、「世界一」となった事で、相当な自信を持っているのだ。中でも、一番マスコミ関係から「お座敷」がかかっていただろう丸山が再三見事なドリブルで勝負を仕掛けていたのに感心。一番体調を整えるが難しそうだった丸山でさえ、ここまで充実しているのだ。世界一になった事で、選手達が大化けしたのではないかと思うのだ。

 以上、短期日程面からきた不安と期待を列記してみた。
 まあ、もし負けるような事があったとしても、「それはそれ」だと思っている。たとえ、五輪に出る事が叶わなくても、ワールドカップで世界一になった栄誉が薄まる事はない。そこまで割り切った上で、五輪予選と言うタイトルマッチに臨む澤と仲間達に、テレビ桟敷から声援を送る事にするか。
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2011年08月26日

みちのくダービー2011前夜、その2

 明日はユアテックでの東北ダービー、正に勝ち点3がノルマの試合となる。

 当然帰省して参戦すべき試合なのですが欠席する。理由は明白で、それより大事な試合があるから。実は明日、我が少年団は、神奈川県の公式戦でJリーグのプライマリチームと戦うのです、ほんの小さな少年団ですが、子供達が努力して何勝かして、いくばくかの幸運に恵まれれば、このような機会に恵まれるのです、いや、我々コーチ陣は、このようなよい想いをさせてもらえるのです、が正しいな。
 自慢話はここまで。今日は、行かれないダービーを展望しよう。

 ベガルタは前節の敵地ジュビロ戦、先制しながら引き分けた。映像は得点場面程度しか見られていないので、詳細をどうこうは言えないが、週中水曜日の敵地戦である。勝ち点1の獲得は上々と考えるべきだろう。しかも、角田、田村の負傷?退場で、交代カードを2枚切らざるを得なかったと言うから、なおさらだ。
 スポーツニュースで見た赤嶺の得点は、このタレントのストライカとしての、類い稀なる素質を見せてくれたもの。1得点で2度も鮮やかなヘディングで押し込んのだから、見ていても気持ちのよい得点だった。ベガルタは明らかに一時の底は脱した感があり、あちらこちらから好機を生む速攻もかなり機能するようになってきているだけに、フィニッシュを担当するこのストライカの復調は大変嬉しい。 
 しかし、明日のライバル戦、決して条件は楽ではない。中2日の条件は同じだが、先方は山形でホームゲームを戦い完全に地元で中2日調整が可能なのに対し、当方は磐田でのナイトゲーム後の中2日だからだ。ベガルタイレブンは、磐田で一泊後、木曜日の午前をかけて新幹線で仙台に戻ったのだろう。したがい、調整は木曜の午後の僅かな時間と、金曜日のみ。もちろん、このような運不運はいずこのクラブにもある事だから、弱音を吐くのは禁物なのだが。
 今期、モンテディオは、中々戦闘能力が揃わず、小林伸二氏の手腕を持ってしても、思うように勝ち点が積み上がっていない状態。しかし、戦闘能力が揃わないからこそ、小林氏は手練手管でのケタグリを狙ってくるに違いない。厄介な試合となるだろう。
 しかし、ベガルタとしても「絶対に勝たなければならない」試合である。選手達の疲労は相当だろうが、短い期間で可能な限りよい準備をして、うまくローテーションを組んだメンバを選考し、総合力でモンテディオを殲滅する試合を期待したい。

 ちなみに友人の小林健志氏が、いかにも彼らしい前向きな見通しを語っていた。私もそう思う。従来にない、質の高い攻撃的なカード、それも未だ見せてないカードを持ちながら、ダービーを戦えるのだから、贅沢なものだと思う。
 ただ、その反面、今期残り試合、手倉森氏には「前線の手駒の多さをいかにさばくか」と言う非常に難しい采配をこなしてもらわなければならない。現状定位置をつかんでいる攻撃選手は、梁、関口、赤嶺、太田だが、そこに控えとして松下、ディエゴ、柳沢、中島、中原、そして武藤!彼らの特長を引き出し、かつ出場できない時の不満を押さえながら、うまく使いこなす必要があるのだ。ただでさえ、氏はメンバを固定して臨む傾向があるだけに(それが氏の監督としての長所でもあり、短所でもあるのは、過去から散々講釈を垂れてきたが)、この厄介な愉しい課題をどうさばいてくれるか。不安と期待が混ぜこぜである。
 もう1つ。明日も角田が負傷で不在となるらしいが、そこの手当ても重要な課題だ。先制されて乾杯したユアテックアントラーズ戦も、先日の敵地ジュビロ戦も、角田不在時は、富田と高橋義希を並べて対応していた。富田の位置取りと展開、義希の射程の広さと飛び出し、それぞれ異なる持ち味のこの2人だが、いわゆる守備の強さには欠けるところがある。そこの対応をどうするのか。残念ながら、もう斉藤大介はいない。田村はサイドバックに使う必要がある。マックスは序盤戦こそ、ベンチ入りしていたが、最近の調子はわからない。最も期待していた島川は不運な負傷で長期離脱中。分厚い選手層になってきたベガルタだが、ここのポジションだけはタレントが足りないのだ。

 まあ、悩み始めると悩みは尽きない。けれども、悩んでいるのは我々だけではない。震災による夏場の試合集中を含め、皆が悩んでいるのだ。
 いや、悪い予感がするのだよ。
 「あれ、武藤さん?来てましたよね。武藤がデビューして、あの鮮やかな決勝点を決めた試合に、武藤さんがいなかった訳ないですよね。」
 ああ、お茶が怖い。
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2011年08月25日

憲剛復活

 ワールドカップ予選のメンバに、中村憲剛が復活した。
 元々、現状の代表には、大黒柱として遠藤(80年1月生まれ)が君臨している。そして、遠藤より若い憲剛(80年10月生まれ)、闘莉王(81年4月生まれ)を、代表に選考せずにアジアを制した事そのものが、ザッケローニ氏と勝負勘と胆力を示していたのは、過去も再三講釈を垂れた通り。しかし、ワールドカップ予選がはじまるこの時点で、ザッケローニ氏は憲剛を呼び戻した。闘莉王を選考しなかった事と合わせ、氏の真意を邪推するのが、今日のお題。

 ズバリ、憲剛はベンチに置く事ができるが、闘莉王はそうは行かないと言う事情だろう。
 今の日本のセンタバックは今野と吉田麻也。もし、闘莉王を招集したとすれば、控えと言う訳にはいかず、今野と共にスタメンとなり、麻也はベンチとなる。ブラジルに向けて、最終ラインには高さとフィードのよさを持つ若いCBは不可欠。現状守備の大黒柱の今野は高さに難がある以上、麻也が完全に一本立ちする事がとても重要だ。そして、麻也は文句を言えばキリはないが、代表でもVVVでもそれなりの結果を出し始めている。そう考えると闘莉王は選びづらい。
 しかし、憲剛は違う。現状、中盤の定位置は、遠藤、長谷部、岡崎、本田、香川の5人。この5人ならば、憲剛は(内心はおもしろくなかろうが)ベンチで機会を待つ事を受け入れる事ができるだろう。そして、本当の厳しい勝負どころでどうしても点を取りたい時、あるいは遠藤が壊され攻撃に変化をつけたい時に起用される...
 言わば、憲剛はそのライバル達が充実しているが故に呼び戻され、闘莉王はそのライバル達が今一歩だから呼ばれなかった、と言う事ではないかと思うのだ。何か矛盾しているようにも思えるが、ザッケーローニ氏はの冷静な判断を評価するものである。
 もちろん、先日の日韓戦での、家長のできが今3歩くらいだった事、柏木がもう1つ調子がはっきりしない事(シーズンも半ばを過ぎたあたりから活躍が目立つが、リーグ序盤の柏木はひどかった)も、一因だとは思うけれど。

 五輪代表からは、清武が生き残り、原口が新たに選出された。清武は、先日の日韓戦で上々のできで、アシストも記録しただけに、当然の選抜だろう。また、原口はJリーグで、強引な突破と思い切りのよいシュートが目立っている。これも、そう驚きではない。
 ただ、酒井宏樹も選考されるのではないかと期待していたのだが。もっとも長友が間に合わないとして、内田のバックアップとしての伊野波、駒野のバックアップとしての槙野を選び、CBの控えが栗原と考えると、酒井の今回の見送りも仕方ないかと思えてくる。次の機会を期待しよう。

 北朝鮮とのホームゲーム、ウズベキスタンとの敵地戦。勝ち点4を獲得するのが最低目標となる。Jリーグでの疲労蓄積も多かろうが、まずは体調を整え、圧倒的な戦闘能力を見せつけてくれる事を期待したい。
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2011年08月21日

柳沢と共に戦える喜び

 ベガルタは実に久しぶりに勝ち点3を獲得した。しかも、相手は過去未勝利だった首位グランパス、それも敵地戦だったから、喜びもひとしおだ。内容も悪くなかった。グランパスのパワープレイに崩されかけた危ない場面も多かったが、整然とした組織的守備でよく守り、次々に逆襲速攻を成功させかけた。決定機の数はベガルタの方が多かった。
 ストイコビッチ氏は、双方の戦闘能力を分析し、ベガルタの弱点を突くような事はせず、正面切っての殲滅戦を意図したようだった。しかし、ベガルタは前々節のアルディージャ戦の後半以降、持ち味の逆襲速攻に人数をかける仕掛けを取り戻している(前節のアントラーズ戦は、完敗ではあったが、後半梁が起用されてからは、相応に攻める事ができていたし、何より角田が不在だった)。逆襲の道筋ができれば、守備の組織も安定する。序盤からのグランパスの強引な攻めは、今のベガルタには幸いだった。
 グランパスの両サイドバックのアレックスと田中隼磨は精度もタイミングも見事だが、クロスを急いでくるので、林、曹秉局、鎌田、角田が落ち着いてはね返す。特に角田はすばらしかった、見事な読みでグランパスのボールを次々にカット、精力的にカバーする富田と合わせて逆襲の起点となる。両サイドバックの菅井と田村の絞り込んでのカバーも特筆もの。もちろん、中盤で溜めを作ったり、外に人数をかけられれば、苦しくなるのだが、(ここのところ、グランパスでもようやく仕事場を見出した感があった)永井にはボールはほとんど行かず、藤本は相変わらず消極的なプレイを連続し、比較的単調な攻撃が継続する。グランパスは水曜日にも試合があり、中2日なのも幸いした。
 そうこうしているうち、CKの第2波から太田が強シュート。闘莉王は明らかなハンドで防ぐが、それが全くフリーの菅井にこぼれ、冷静に流し込んで先制。一瞬、菅井はオフサイドかと思ったが、映像を見直すと、アレックスが完全に残っていて、完全にオンサイド。ローテーション的に起用したベテランの戦術的ミスでの失点は、ストイコビッチ氏にはつらいところだろう。シメシメ。ともあれ、闘莉王のハンドには、イエローが最低でてもよいと思ったのだが(これとその後のオフサイドへの異議と合わせて、退場とすべきだったな)。
 以降も押し込まれるが、ベガルタの速攻が冴える。ただ、どうにもこうにも、ボールはネットを揺らさない。関口のドリブル突破後のシュートも、梁の狙いすましたシュートも、太田の落ち着いたシュートも、角田の強烈なシュートも、どうにもこうにも入らない。今のベガルタには多々課題はあるが、やはり上記各選手がこの決定機を決め切れない事が、最大の課題なのではないか。もちろん、赤嶺が不在だった事もあるし、菅井の得点力は抜群なのだが。梁、関口達も、どうして、あれだけの決定機を活かせないか考えるべきだし、手倉森氏も「この壁をいかに破るか」を熟考すべきだろう。
 それでもベガルタは粘り強く守り、ケネディの決定期が枠に行かないなどの幸運にも恵まれ(敵の決定機逸機は「幸運」と考え、当方の決定期逸機は「課題」と捉えるのは何故なのだろうか)、零封に成功した。体調がベストではなかったと言う曹秉局の代わりに、渡辺広大が入っても、守備組織が揺るがなかったのは嬉しかった。

 久々の勝ち点3を素直に喜ぶべきだろう。でも、あれだけ逆襲を成功させながら、1点に終わった攻撃をどう捉えるべきか。人数が揃い崩せるようになった事を喜ぶ。完全に崩しながら、赤嶺と菅井の他のシュートが入らない現状を嘆く。いずれも、愉しいな。



 で、本題の柳沢に移ろうか(笑)。
 前半終盤の2つの決定機は、まあ常識の範囲内。左サイドでフリーになった梁が右から上がってくる関口に高精度のグラウンダクロスを入れ、関口の狙い済ましたプルバックを打ち切れず。太田が敵DFのミスを引っ掛け、中央全くフリーでボールを受け、落ち着いて狙ったボールが枠外に。
 まあ、ここまでは、単に「シュートが入らない」と言う常識の世界だった。 でも、後半終盤のアレは...あの瞬間、グランパスGKの高木は、柳沢のはるか後方にいた。何も慌てる必要もないし、単にサイドキックでボールを叩けばよいだけの場面。あれをインフロントで狙い、しかも枠を外す感覚。あれは、凡人にはできない所業だ。
 もちろん、この試合、久々にスタメン起用された柳沢の、質のよい動きと、後方からのボールの引き出しの巧さは見事だった。ベガルタが、逆襲速攻から幾度も決定機を掴めたのにも、柳沢は大いに貢献していた。また、柳沢は代表でもアントラーズでも幾多の見事な得点を決めている。たとえば、01年埼玉イタリア戦、稲本のフィードを受けてダイレクトで叩き込んだ一撃は今なお記憶に新しい。98年ワールドユースでの幾多の得点、さらには同年Jリーグで32試合で22点決めた得点能力。若い頃は抜群にシュートの巧い選手だったのだ。
 今回の柳沢の逸機は、この03年セネガル戦での逸機や、例のドイツクロアチア戦のナニと並び、記憶され続けるものになるだろう。これだけ技巧に優れ、フィジカルも強く、動き出しが早い、サッカー選手としてはほぼ完璧と言ってよい選手が、どうしてここまでシュートがヘタなのか。さらには、若い頃決まっていたシュートが何故に決まらないのか。
 サッカーと言う競技の魔力なのだと思う。

 そして、何より、この魔力そのものと言った柳沢を、自クラブの英雄として応援できる事の幸せを噛み締めていきたい。
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2011年08月18日

日韓戦から見る、ワールドカップ予選への準備

 ホームグラウンド、先方はチーム再編成途上などの要因があったとは言え、韓国を子供扱いしてしまった日本代表。そのため、すっかりワールドカップ予選への準備と言う本質問題の議論がおろそかになってしまった。今日はそのあたりについて講釈を垂れたい。
 現実的に、今の日本は川島、内田、今野、長友、遠藤、長谷部、岡崎、本田、香川の9人が定位置をほぼ確保。センタバック1枚とトップが、吉田と李が有力と言うのが基本布陣。短期的な課題と目されるのは、以下3点だろう。
(1)トップを誰が務めるか
(2)センタバックの編成、特に長身選手が多い敵と戦う場合は、今野の唯一の欠点である「高さ」も重要な課題となる
(3)各ポジションのバックアップ
 もちろん、中長期的には、中軸そのものの大黒柱の遠藤の後継者問題があるが、これは日本のサッカー力そのものの問題であり、戦術的にどうこう議論できる問題ではないのは言うまでもない。この件の議論を色々な視点で行うのも、また何とも愉しい作業になろうが、これは別な機会に。
 以下上記3問題を、簡単におさらいしてみよう。

 まずトップの問題だが、日韓戦の李忠成は前半は今一歩のできだった。もちろん、香川の先制点を生んだヒールパスは見事だったが、何か全体に積極性に欠け、後方から自由奔放に進出する香川、本田、岡崎に、遠慮しているように見えた。しかし、後半キックオフ直後、本田の縦パスを受けて強引に縦前進をした場面以降は、持ち味の積極性が出てきた(これはザッケローニ氏の喝が効いたのではないかと思うのだが)。結果的に得点はできなかったが、後半の敵陣へのアプローチは上々。今期のJでの実績と併せ、北朝鮮戦のスタメンは、確保したのではないか。
 ただし、李にはライバルが無数にいる。ベテラン前田、今期こそ出場機会に恵まれそうな森本、類まれな瞬発力とシュートの巧さを具備する永井。さらには中盤に別タレントを起用して、岡崎を最前線に起用する手段もある(ここでの「中盤の別タレント」も、松井、大久保と言ったベテラン、細貝、谷口、柏木と言った仕事場が後方の選手たち、清武、山田直輝ら前途有為な若者と、質量ともにそろっている、もちろん中村憲剛と言う切り札中の切り札も)。
 そういう意味では、日韓戦の後半に積極性を取り戻した李が、色々と議論になりそうな北朝鮮戦で、直接的な結果を出してくれる事を期待したい


 センタバックについて。吉田は序盤にセルフジャッジで危ない場面を作られてしまったり、大差がついた終盤にミスを連発したりするなど、期待に外れた内容。このポジションは、以前から述べて来たように、ここ数年日本が悩み続けているところ。吉田の強みは前線へのフィードの良さに加え、欧州の難しい環境で定位置を確保して中心選手として経験を積み上げている事。よほどの事がなければ、北朝鮮戦は今野と共に吉田が中央を固めるはず。まずは守備面で秀でた結果を出して欲しいところなのだが。

 バックアップはどうか。駒野の2点目における鮮やかなドリブル突破、あるいは序盤の冷静な守備。駒野は、長友離脱の難しい時に「南アフリカ戦士がいかに役に立つか」を示してくれた。この駒野の充実は、酒井宏樹や高橋峻希や酒井高徳と言った若者たちへの強烈なメッセージにも思う。
 短期的には、それで問題は解決する。ベテランの圧倒的な経験は抜群だ。一方で、長期的視点となると、また別な議論が必要となる。幾度も述べているが、ザッケローニ氏は、驚くべき胆力で、闘莉王と憲剛を呼ぶ事を我慢し続けている。この4年後への布石と、短期的対処のバランスこそ、監督の手腕が問われるところ。
 まずは、世界中のあちらこちらで戦う、いわゆる北京世代の中堅選手たちが、この予選中にどこまで「自己確立」を、ザッケローニ氏に訴求できるかどうか。

 いたずらに危機感をあおる事は意味のない事だ。これだけ充実した代表チームで、ワールドカップ予選に臨むのは、史上初めてだろう。素直に戦闘能力の充実を喜び、圧倒的な強さで予選を突破する事を期待したい。
 油断をするとか、敵を軽視するとか、そう言う意味ではなく、己の戦闘能力を確信し、淡々と勝ち進む代表を観たい。そして、そこに少しずつ経験を積んだ、ロンドン五輪世代の若者が割って入り、2014年のブラジルでは、かつてない成績を。
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2011年08月12日

後半からの復活

 ベガルタは、明日ユアテックにアントラーズを迎える。先日、敵地で0−3とボコボコにやられたアントラーズを。
 前節、敵地アルディージャ戦、前半2点を先制されるも、後半追いつくことに成功。同点後も複数回決定機をつかめた事もあり、逆転できる雰囲気もあった。ともあれ、(先日のナビスコを除くと)リーグ戦では実に5試合ぶりの得点を決めた訳で、久々に非常に明るく試合を終える事ができた。この勢いで、いまだ調子も勝ち点も上がってこないアントラーズを叩きたいところなのだ。

 もっとも、前節のアルディージャ戦の前半は、内容も結果も最悪だった。
 つい2週前のユアテックアルディージャ戦で顔面骨折した菅井がスタメン復帰(しかもフェースガード無し)。高橋義希も久々に先発出場。この季節ゆえ、幾人かスタメンを代えてくるのは納得できる采配だ。
 一方のアルディージャは、加入したばかりのロドリゴ・ピンパォン(どうしても、ピンポンパンと呼びたくなる選手だ)をいきなり先発起用。ラファエルと2トップに並べてきた。驚いたのは、東をベンチに下げ、李天秀を藤本と並べて攻撃的中盤に起用してきた事。外国人選手(あるいはベテラン選手)に気を使ったのだろうか。少なくとも2週前のアルディージャ戦を見た限りでは、東を外すなどあり得ないと思ったのだが。鈴木淳氏の意図をくみかねる采配だ。まあ正直シメシメと思ったのだが。
 しかし、甘かった。中盤に下がった李が実に巧みな動きで、朴柱成を翻弄。ピンパォンの巧みなダイレクトパスにも悩まされ、おもしろいように幾度も左サイドを崩され、先制を許す。何がシメシメだ。
 その後も、前線の選手の動きが乏しく、思うように攻め込む事すらできない。ボールを受ける動きに欠けるため、前がかりになっては、アルディージャの逆襲を許す。関口と角田?の連携不備から食らった李のドリブル突破からのシューはポストをたたいて救われる。しかし、遅攻を試みた際に、鎌田のあり得ないようなミスパスから、青木?の好フィードを食らい、ラファエルの突破を許し、逆サイドからフリーで飛び込んできたピンパォンに決められ2点差に。その後も角田が自陣で、軽率にラファエルにボールを奪われるなど、危ない場面が続出。ベガルタは集中力を問いたくなるほど、ひどい展開だった。
 ちなみに、前半終了間際、当方のグダグダ感が、アルディージャに伝染したのだろうか、敵守備が甘くなり、赤嶺のパスから太田がフリーで抜け出すもポストに。このような幸運をいかせずに、2点差で前半を終了。何とも重苦しいハーフタイムとなった。アルディージャは、ベガルタのここ数試合の前線の動きの少なさを、しっかりと把握していたのだろう。守備ラインの選手が、自身満々アプローチしてきて、迷わず前線にボールをつないでくる。このままだと、後半はどんな悲惨な展開になるのだろうと、思う内容だった。ちょうど試合前は、全天に美しい稲光が飛び交っていたのを思い出し、「雷で中止はどうでしょう」と言いたくなる試合だった。
 ところが、後半。ベガルタは息を吹き返す。梁、太田、義希らの移動距離が格段に大きくなり、パスの選択肢が増え、次々に好機、いや決定機を作り出したのだ。相変わらず、シュートが入らないので、決定機の数の割には得点にはならなかったが。それでも大きな揺さぶりから、梁のクロスを赤嶺が強烈に決め、1点差。その後も猛攻を仕掛け、CKから曹秉局のヘッドがポストをたたき、その跳ね返りを菅井が寝たまま押し込み同点に。敵地で2点差を追いついたのだから、ここで自重するのがセオリーだし、過去安全策をとる事が多かった手倉森氏だが、終盤には角田まで外し、松下、梁と言う冗談みたいなドイスボランチにして、ノーガードの猛攻を仕掛けた。最後の5分は、ベガルタの決定機:アルディージャの決定機=2:1くらいの、荒れ試合(いや、こっちの方が決定機が多かったと、言いたいだけ)。熱狂と興奮の中、2−2で試合終了。

 余談ながら、前半、鎌田、角田にミスが連発し、チームが完全に浮き足立った時の曹秉局のプレイがすばらしかった。落ち着いた位置取りで、一切裏を突かせない。クロスにも再三勇気を発揮してはね返す。いや、すごいわ、さすがに韓国代表。

 なぜ、後半ベガルタが立ち直ったのかを考えると、改めてサッカーの深さを感じる。理由が見つからないのだ。相当数の選手の走る距離、動き出しの早さが、後半になって突然改善されたのだから。メンバ交代があった訳でもない。「負ければ終わり」のトーナメント戦だった訳でもない。
 手倉森氏が喝を入れて選手が精神的に立ち直った?喝をいれて立ち直るならば、ここまで長期に渡り、低迷はせんだろう。それで改善されるならば、もっと早く喝を入れてもらわなければ。
 コンディショニングの問題?毎シーズン、ベガルタは夏場に調子を落とす。では、トレーニングを軽めにすべきかと言うと、そう簡単ではない。実際ベガルタは、秋口になると、むしろ全選手の体調が揃い、よいサッカーをする事が続いている。夏場にしっかりと鍛える事をやめないから、秋口から逆襲できると言えるのだ。で、この日、突然後半から多くの選手が、長い距離をいとわず空走りするようになったのだが。
 敵との相対的関係?確かに序盤、李天秀の狡猾な位置取りに、ボコボコにやられた訳だが、後半に入り李の運動量は激減。結果的に、アルディージャは、ピンパォン、李、藤本と、前半ベガルタを蹂躙した名手達を次々に交代させた。そこで、終盤登場した東がすごければ、関塚氏は大喜びだろうが、ベガルタの勢いに押されて本領を発揮できず。終盤のノーガード状態でも、金久保のスキルフルなドリブルは脅威だったが、藤本不在の中盤は、それほど恐ろしくなかった。
 色々な要素があるのだろう。

 はっきり言える事は、ベガルタの各選手が、同時に複数長駆してくれた事。それが後半45分継続した事だ。あれを、時間帯を見ながら、90分間継続してくれればよいのだ。もちろん、高温多湿の夏場だ、うまくサボるべき時には、うまくサボって欲しいところだが。
 ユアテックにアントラーズを迎える試合が、簡単な試合になるとは誰も思っていない。だからこそ、アルディージャ戦の後半に見せた精力的な運動量を、あらためて期待したい。そして、アントラーズを粉砕する事も。
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2011年08月10日

韓国の健闘を称えて

 昨日も述べたが、今の日本と韓国を単純に比較するのは公平ではない。
 先方はアジアカップでのピーク狙いでチーム作りをしていたのに対し、当方は既にブラジルに向けて積み上げて来ているのだから。そう言う意味では、PK戦に持ち込まれると言う失態を演じたものの、アジアカップ準決勝で勝利していた訳で、今日完勝するのは、当然だったと言えよう。
 むしろ、3点差になってから、よく粘り、ポストの助けも借りながら、日韓戦史上はじめての4点差試合を阻止した、韓国イレブンを称えるべきだろう。だいたい、韓国にしても、ワールドカップ3次予選で日本と戦う訳ではないし、いたずらに悲観的になる必要はない。もちろん、前半で岡崎を壊し損ねていたら、もっと悲惨な内容と結果になっていただろうが。

 趙広来氏も、この日の完敗は覚悟していたの違いない。現役時代から、サッカーの全てを知り尽くしたかのようなプレイを見せてくれた男だ。現実が見えてない訳はない。立場上、昨日の記者会見のような虚勢をはる必要があったのだろう。まあ、趙広来氏には災難だったが、仕方がない。相手が悪かったのだ。それを証明するために、韓国の失点場面を振り返ってみよう。
 1点目。ガンバのチームメート李根鎬から見事にボールを奪った遠藤、呼応した長谷部の判断よいフリーラン、このアジア最強ボランチコンビが、2人で韓国選手4人を引きつける。その上で、遠藤が丁寧なパスを李に通し、李のヒールを受けた香川の舞い。国際試合において、ペナルティエリア内で、あのような点の取り方ができる日本人選手は、香川がはじめてではなかろうか。あの個人能力ならば、世界中いずれの国からも得点できるだろう。だから、韓国は落ち込む必要はない、あれを防げる守備者など、世界にそうはいないのだから仕方がないのだ。まあ、中澤や長友なら防げたかもしれないが。
 2点目。右サイドのスローインから、長谷部が高速ドリブルで右サイドを前進。韓国守備陣を引きつけておいて、香川に展開。香川は余裕綽々、左サイドから上がった駒野へ。駒野は鮮やかなドリブルでマークしていた朴主永をペナルティエリアで股抜きし、強烈なシュート。本来はここで勝負ありだが、GK鄭成竜が好セーブ。拾った清武の冷静なラストパスを本田が決めた。鄭成竜にとってはよい経験だったろう、ワールドクラスに至るためには、あれはしっかりとCKに逃げる必要がある。ともあれ、あの場面の駒野のドリブルは最高級。Jでセンタバックをやっている選手や、ピークを過ぎた元FWをサイドバックに先発起用するしかない韓国が、どうこう抵抗できる訳はないのだから、仕方がない。もっとも、日本は、駒野と同等以上の長友、内田がいて、さらに若手の酒井宏樹も控えているけれど。
 3点目。遠藤と香川の絡みで自陣でボールを奪い速攻。遠藤ならではの早いパスを李が受け、体勢を立て直した香川に、香川は右サイド大外の清武に完璧なパス。この時点で、清武の選択肢はニアの本田、中央の香川、ファーの李と3方向。これだって、防ぎようがないではないか。もちろん、最初の奇誠庸のパスの甘さや、受け手の朴主永(たぶん、確認しきれず)の受けの拙さは課題だ。でも、奇も朴も韓国屈指のタレントなのだ。あれ以上のタレントがいないのだから、これまた仕方がない。もちろん、遠藤や岡崎ならば、あのような軽率なプレイはあり得ないが。
 もちろん、趙広来氏もわかっているはずだ。これで、最後まで岡崎がいたら...

 日本にとっては反省の多い試合だった。特に守備の几帳面さの不足は問題。ブラジル本大会で南米、欧州の列強と戦う意識を常に持って欲しいのだが。
 立ち上がりに香川が絞り過ぎ、車ドゥリの前進から危ない場面を作った時間帯。前半無理をする必要がない状況でミスパスから逆襲を許した事。駒野が李根鎬に削られて倒れた直後のセルフジャッジ。さらに3−0となった後に、幾度かフリーのシュートを許した事。
 やはり吉田麻也には、もっと反省して欲しい。わかっているとは思うが、ダメならばザッケローニ氏は簡単に決断するよ。いつだって、グランパスの彼は牙を磨いでいるのだから。
 また、今野はもっと厳しく守備陣をまとめて欲しい。遠藤がピッチを去る時に、腕章を自分ではなく、本田に託した事そのものが、悔しくないのだろうか。

 ザッケローニ氏の凄みをいくつか感じた。
 まず、李忠成の後半立ち上がりの積極性。正直言って、前半の李のプレイには不満があった。香川へのアシストは見事だったが、顔を出す回数も、シュートへの消極性も不満。はっきり言って、香川、本田、岡崎は圧倒的存在なのだ。後方の選手を増やして、この3人を前に並べたって何の問題もない。松井も控えにいるし、前田も大久保もブラジルを目指している。清武を筆頭にした五輪世代の豊富さは言うまでもない。ところが、後半の李。キックオフ直後に、本田の縦パスを受ける場面を筆頭に、動き出しのよさが目立った。後半立ち上がりに、日本が韓国を粉砕したのは、この李の動きの改善が大きかったように思う。4点目を李が決めてくれていれば完璧だったのだが、贅沢は言うまい。その分、李はワールドカップ予選でボカスカ点を取ってくれる事だろう。
 阿部勇樹の起用にも感心した。再三述べているが、闘莉王と憲剛を呼ばない胆力にも感心する。しかし、一方で阿部を呼んでおいてクローザに起用する。これは、9月からの予選で、極めて重要なやり方だし、細貝に対する「早く定位置確保せよ」と言う叱咤にもなっている。そして、阿部がいれば、短期的に遠藤なり長谷部に何かあっても、確かに安心だし。
 岡崎が削られての、清武起用もさすが。松井も柏木も森本もいるのに、若手の成長株を起用するのは重要だ。清武が少々消極的だったのは残念だったが、2点目、3点目のアシストで存在感を見せてくれた。いずれも、周りが見えるが故のラストパスだったし。

 ワールドカップ予選に向かっての悩みも確かにある。
 特にここまで攻撃力がしっかりしてしまうと、作戦の立てようがなく、そのままで試合に臨む選択肢をとるしかないように思えてくる。当然、北朝鮮もシリアもウズベキスタンも、それを読んで戦ってくる事だろう。少々厄介な戦いが待っているのは確かだ。もっとも、厄介など気にせず、選手達の技巧と献身と即興、ザッケローニ氏の采配と勝負度胸、それぞれに託せば、何も問題ないだろうが。

 まあ、はっきりしている事を結びに。札幌に行かなかった私を含む、あなた達。みんな負け組。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(27) | TrackBack(1) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月09日

日韓戦前夜2011その2

 元々の過密日程に加えて、震災による中断期間もあり、ワールドカップ予選前の準備試合は、明日の日韓戦を残すのみとなった(予選初戦の北朝鮮戦前に、もう1試合行うと言う噂もあるようだが)。この手のノンタイトルの親善試合は、敵がどのようなメンバ、モチベーションで来てくれるか(あるいは当方を待ち構えてくれるか)が、とても重要。時に、全くコンディションが整わないチームや、ベストにはほど遠い編成のチームがやってくると、およそ有効な準備ができなくなってしまうからだ。
 けれども、韓国と戦う分にはその心配は一切無用だ。元々の戦闘能力は互角だし(いつか、「当方ほどではないが、悪くはないし」と見下してやりたいが、まだ時期尚早だな)、モチベーションは心配ないし、一部メンバが抜けても相応にベターな編成で、戦ってくれる(同じ事を先方も思っている事だろうが)。今年に入ってからは2度目、ザッケローニ氏が就任してからは3度目の、手合わせとなるが、いずれも試合は引き分け(もちろん、アジアカップではPKで粉砕してやった訳だが)、やはりそろそろ90分で決着をつけたい思いは強いな。
 
 ただし、アジアカップへの臨み方が若干違っていた分、お互いの現況は異なる。
 先方は、ワールドカップから日が浅かったと言う事もあろうが、アジアカップには結構ベテランを大量に起用していた。前線には意欲的な若者を大量に起用していたものの、最終ラインは、皆30過ぎとなり、少々栄えを過ぎたタレントが多かった。 
 そして、朴智星と李榮杓が代表そのものから引退してしまった。特に李榮杓不在は、チームに魂を伝えるべき精神的支柱の穴をどう埋めるのかが、最大の注目となるのではないか。また、李青龍と池ドンウォンが、負傷と移籍直後と言う事で不在だが、アジアカップを負傷で棒に振った朴主永がいる事を考えれば、戦闘能力はアジアカップに比べれば、そう落ちていないかもしれない。また、不在の選手の代わりに、Jで活躍している李根鎬、゙永哲、金英權らが活躍するのを見るのも愉しいはずだ。
 一方、日本はアジアカップの時から、ザッケローニ氏が「ある程度、世代交代を意識した」チーム作りをしてきた。典型的なのは、闘莉王と中村憲剛を招集していない事だと思う。このあたり、安易に勝利を臨まずに、チーム全体としての発展性を考慮しているあたりは、さすがだ。
 そうこう考えると、準備の状況、ホームである事を考えれば、僅かながら、当方が有利と考えるべきだろう。

 注目したいのは、やはり定位置争い。今の日本は、川島、内田、今野、長友、遠藤、長谷部、岡崎、本田、香川、と9人までは、事実上定位置を掴んでいる感がある。だから、まずは残り2つの選手を確定させたい(そう考えると、シツコイですが、闘莉王と憲剛呼んで、岡崎をFW起用すれば、ちょうど11人になるのだが)。そこの2人枠で、誰が機能するかを見極める試合となりそうだ。
 何にしても、恒例の事だが、難しい試合になるだろう。そこを新しい選手の活躍で勝利できれば理想的なのだが。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月04日

もう土下座の機会は来ない

 いつも、いつも、私の期待を、全く予想外の斜め上に外してくれる選手だった。そして、最後の最後まで、信じられない外し方をして、私たちから去って行ってしまった。
 いつも、いつも、「おい、何をやっているんだ」と野次を飛ばしたくなる選手だった。そして、最後の最後まで、「おい、何をやっているんだ」と叫ばれながら、私たちから去って行ってしまった。
 いつも、いつも、「まだやれる、もっとやれる」と思わせてくれる選手だった。そして、最後の最後まで、「まだやれる、もっとやれる」と皆から支えられ、私たちから去って行ってしまった。

 私がはじめて、松田直樹を見たのは、1993年の日本開催のワールドジュニアユースだった。敵FWと正対して自分得意の間合いに詰めるうまさ、敵のパス方向を適切によめる読みのよさ、いわゆるフィジカルの強さを活かした強い当たり。まだ16歳の若者が、ここまでできるのだ。そして、前年のアジアカップ制覇、この年の春のワールドカップ1次予選突破、そしてJの開幕を思い起こし、順調過ぎるまでに発展する日本サッカー界の象徴を、この若者に見たものだった。
 実際、この若者はすごかった。95年マリノスに加入すると同時に定位置確保。それも、井原と小村が組むCBコンビの右側に位置取りし、時に右サイドバック、時にセンタバックと、位置を内外に移動しながら、守備ラインを固めていた。さらにサイドに開いた際は、しっかりとドリブルで持ち上がり、センタからはタイミングと強さそれぞれが上々のロングボールを繰り出す。高校を出たばかりの若者が、この難しい守備のタスクを、易々とこなしているのだ。当時は井原の全盛期だったが、早くもその後継者が登場した事が、本当に嬉しかった。日本が初出場する(はずの)フランスワールドカップで、井原と共にCBを務めるのは、松田だと思ったのだ。

 以降は、期待を高めては裏切られる、愉しい歴史が積み重ねられる。
 その歴史は、適宜検索ウィンドウに「松田」と入力いただければ理解いただけると思う。
 紆余曲折ありながら(当初の期待より随分と時間がかかったが)、トルシェ氏率いる日本代表の中心選手になるまで。そして、トルシェ風3DFにおいて、森岡と松田のいずれが中央を務め、いずれが右に開くかの議論。これは愉しい議論だった。松田の組織構成力をとるのか、前線へのフィードのよさをとるのか。あれこれ試した上で、トルシェ氏は松田にセンタを任せる危険性を確認したようだったが。いずれにしても、松田は己のゾーンに進出した敵を押さえ込むのだけは、変わりなかった。
 マリノス時代、幾度も幾度も見せられる、戦略性欠除のプレイ振り。敵FWに挑発されての、無断なファウル、警告、退場。無用な攻撃参加の代償としての失点。そのようなマイナスを全て打ち消す、丁寧なロングボール、敵の隙をついた強引だが的確なドリブル前進。厳しい状況、特に数的不利でも動じない的確な守備対応。
 日本最高級の戦術的能力が、その的確な守備能力と、たまに見せる攻撃力を美しいものにしてくれた。そして、幾度、その感情に赴くままのプレイによる戦略的能力の欠除を嘆いてきた事だろう。
 その戦略性の欠除の顕著たるものが、ドイツワールドカップ予選、埼玉バーレーン戦で、ジーコのやり方にプッツンして、代表を去った事だろう。本件、気持ちは理解できる。ここまでの日本代表は、田中誠ー宮本ー中澤の3DFを基調に戦って来た。そして、このバーレーン戦直前の、テヘランイラン戦。田中が警告累積で出場停止。ジーコ氏はこのイラン戦、CBを一枚減らして4DFで戦ったものの、結果的には右DFの加地、後半から起用された左DFの三浦淳、それぞれのミスで失点し日本は苦杯を喫する。そして、直後の埼玉バーレーン戦前に、ジーコが「田中誠がいないから4DFで戦った」とマスコミに口を滑らす。プライドの高い松田が代表合宿を去ったのは、理解できなくもない。ただし、この一瞬のプッツンによる離脱で、松田は全盛期で迎える2006年ドイツワールドカップを棒に振った。もう少し我慢をしてくれれば、ドイツで中澤と松田のCBコンビが見られたはずだったのに...
 まあ、いかにも、松田らしいのだが。
 南アフリカ前、中澤と闘莉王のCBのバックアップ不在が幾度も議論された。おそらく、岡田氏は「いざとなったら松田がいるさ」と考えていたのではないか。けれども、松田自身の膝の重傷により、この夢は叶わなかった。

 期待して、期待して、裏切られる。私は松田が大好きだった。

 まだ34歳。あまりに早過ぎる。これから、山雅で堂々たるプレイを見せ、J1まで復帰し、マリノスに復讐戦を演じるはずだったのに。
 この男に対する論評は常に、「ごめんなさい、私が間違っていました」と、土下座する事を期待するものだった。そして、土下座をする機会は永久に失われてしまった。
 もっともっと語りたかった。もっともっとイヤミを言いたかった。そして、いつかいつか土下座をするはずだったのに。
 
 ちょっと思うのだ。この男とは、センタバックとしては会うべきではなかったのではと。たとえば、センタフォワードなり中盤の選手として、知り合いたかったと。そうすれば、上記した(たっぷりと愉しませてもらった)戦略性欠除に悩まなかったかもしれない。実際、マリノスの最後の2シーズン、いわゆる8番の中盤選手としてプレイした松田を見るのは、本当に愉しかったのだし。
 でも、いいんだ。日本のセンタバックとして、世界列強を圧倒するはずだった松田を思い続ける日々はとても愉しかったのだから。

 松田を初めて見た1993年はJリーグ開幕の年だった。そして以降、日本サッカー界は信じられない勾配の右肩上がりで、世界サッカー界内の地位を確立する事に成功する。そして、昨年のワールドカップで堂々とベスト16進出。今年のアジアカップで完璧な優勝。そして、女子代表はとうとう世界一にまで駆け上がった。
 その超右肩上がりに、常に松田直樹はいた。夢のような18年間だった。

 でも、早過ぎるよ。
 ご家族の悲しみはいかばかりか、心よりお見舞い申し上げます。
 そして、松田直樹さん。18年間、本当にありがとう。とても愉しかった。夢を幾度も見せてもらった。心よりご冥福をお祈りいたします。繰り返します。本当にありがとうございました。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(22) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする