2014年04月29日

反転の準備は整ったか

 64分、両軍のプレスが緩くなった時間帯。ベガルタの右サイドを、レナトが引き裂く。菅井が降りちぎられ、渡辺広大のカバーが間に合わず、センタリング気味のシュートを許す。逆サイドから、大久保が飛び込んでくる。思わず、悲鳴を上げたくなる場面だった。けれども、大外に開いて「消えようとした」大久保の位置取りをしっかりと見ていた石川が身体を張ってクリアしてくれた。
 広大が引き出され、中央の角田、左サイドの石川が、それぞれ右にスライドしていた。それでも、石川はしっかりと首を振り、自分の左外側に進出した大久保を冷静に観察していた。だからこそ、石川は対応できたのだ。前節、状況は若干異なるが、エスパルスに右サイドから逆サイドに振られて崩された。それに対する修正がしっかり行われていた事が嬉しかった。

 ベガルタはホームユアテックでフロンターレと0対0で引き分け。ホームの試合だけに引き分けは悔しいが、チーム再生のために必須の守備の修正が着実に行われている事に納得できる試合だった。もちろん、3試合連続無得点、いや10試合で4得点は寂し過ぎる。しかし、一度どん底に落ちたチームなのだから、慌てず守備を再組織する最優先改善事項が的確に進んでいる事を素直に喜ぶべきだろう。J1は過酷なリーグ戦だ。今の17位と言う厳しい順位から抜け出すためには、一過性の手段では対応できない。骨太にチームの戦闘能力を高め、抜本的な対策を打たなければならない。
 既にリーグ戦の1/4が終わってしまったのは確かだ。しかし、いたずらに短期的な成果を求めるのは極めて愚かな判断だ。だからこそ、最大の課題の守備の再構築が的確に行われている事に安堵したのだ。

 序盤、中村憲剛を捕まえ損ね、幾度も危ない場面を作られる。しかし、関のファインプレイや、DFが粘り強い対応を繰り返すうちに、前半半ば過ぎから互角に近い展開に持ち込む事ができるようになった。
 また、フロンターレが得意とするサイドで人数をかけてボールを回して、大久保が飛び出す攻撃に対しても、的確なラインコントロールとポジションチェンジにより、しっかりと対応できていた。前々節には、サガンの揺さぶりに崩された場面が多々あったが、ここでも改善が見受けられた訳だ。
 もちろん、憲剛が一瞬の駆け引きでフリーとなり、悪魔のようなラストパスを狙って来る攻撃への対応には課題が残った。しかし、これはどうしようもない領域。特に大島が心憎いプレイで憲剛のサポートを演出、粘り強いキープを見せる事で、幾度も憲剛に前向きでボールを持たれてしまった。大島が、ここまでいやらしいプレイを見せてくれたのは、手倉森さんにとっては大きな喜びだろう(棒読み)。そうなると、憲剛は止めようがなく、最終ラインの駆け引きで憲剛のパスを受けるFWを止めるしかなくなってしまう。
 そう考えると、憲剛の恐怖に対して、関が適切な飛び出しでよく止めた事を素直に喜ぶべきだろう。関がこの試合で飛び出しの感覚を体感してくれ、改善されつつある浅いバックラインとの連係が磨かれば、守備は一層安定するはずだ。

 攻撃にはまだまだ課題が山積されている。
 もちろん、よい材料も多かった。太田の長駆と赤嶺の前線での粘りを基盤に速攻が有効になってはきている。富田のみならず、武井がよくボールを拾っていた。相変わらず、梁の落ち着いた展開も有効だった。
 しかし、両サイドバックの押上げが、まだまだ遅い。だから、最後のラストパスを受ける人数が少なく、崩し切れていない。菅井は途中交代を余儀なくされたように、体調が十分ではないのだろう。石川は堅実な守備は上々だが、やはり本来はCBの選手のように思える。そう考えると、武井の右サイド起用、二見やノリカルの一層有効な起用方法等が検討されるべきだろう。
 武藤は久々のスタメンでよくはやったと思う。もちろん、相変わらずプレイが不安定なのは確かだ。安易なパスを引っ掛けられる悪癖は相変わらず。また、縦に強引に抜け出すべき場面と、内側に切り込む選択肢も適切とは言えない。ただ、ラストパスにせよ、シュートにせよ、勝負どころで丁寧にボールを蹴ろうとする意志は感じられるようになってきた。ムラが大きい事を思い悩んでも仕方あるまい。よいプレイの頻度が増える事を期待したい。
 そして、武藤がよいプレイの頻度を増やしてくれれば、ウィルソンと赤嶺の負荷も減ってくるはずだ。また、山本も空回り気味ではあったが、身体の強さを次第に見せてくれるようになっている。こちらも我慢して使い続けたい。
 
 こう言った攻撃への改善も、ようやく守備が計算できるようになったから、具体的に検討できるようになってきたのだ。悩み山積とは言え、渡邉監督が迷わず着実に守備の改善を積み上げている事を評価したい。
 次節は敵地でのヴォルティス戦。全敗を続けてきたヴォルティスは、今日敵地のヴァンフォーレ戦で歓喜の初勝利を挙げたと言う。地元で連勝を狙うヴォルティスとの戦いは、容易なものにはならないだろう。だからこそ、安定してきた守備を前面に押し立て、攻撃への積み上げを行った上での勝ち点3を期待したい。
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2014年04月28日

勝てないねえ

 ベガルタは敵地でエスパルスに0対1で苦杯。後半半ばに失点するまでは、悪くない内容だっただけに、非常に悔しかった。
 先日のレッズ戦で0対4で木端微塵にされた時のように内容が悪くて勝てない状況ならば修正も容易だろう。しかし、今日のように上々の内容の試合で負けるとなると、結構つらい。しかし、ここは内容が向上している点に納得し、我慢すべき時だと見る。

 前半のベガルタは上々だった。攻撃の一層の改善を狙ったのだろう、オープン攻撃だけではなく、梁が強く低いパスを頻繁にウィルソンや赤嶺に当てるなど、前線に早いタイミングでボールを入れる攻撃を行った。赤嶺が絶品で、前線で身体を張ったキープでよく持ちこたえたので、幾度かよい形をつくる事ができた。このような攻撃は、これまでの試合では中々見る事ができなかっただけに、期待は高まった。
 一方で、このような攻撃にはリスクが伴う。キープし損ねたり、前線で無理を仕掛損ねたりして、幾度か逆襲速攻を許してしまった。しかし、ベガルタは素早い帰陣と連携のよさで、エスパルスにほとんどシュートを打たせなかった。
 この守備の充実は本当に嬉しかった。守備が安定すればする程、攻撃に力を割く事ができる。そして、上記の通り、今期中々見せる事ができなかった後方から早いタイミングで低い縦パスを入れる攻撃を成功しかけた。そして、そのようなトライをして失敗して速攻を許しても、守備が崩れなかったのは大きい。
 さらに言えば、この試合開始直前にベガルタはウォーミングアップ時点で負傷した鎌田に代えて佐々木を起用。ボランチ起用予定の角田をCBに下げ、サイドMFの梁をボランチに下げた。このような直前の変更にも関わらず、梁は前線にボールを突き刺すし、角田は最終ラインをしっかりと締めていた(もっとも、角田は丁寧につなごうとして、エスパルスFWに引っ掛けられ危ない場面を演出をしていたが、これは仕様だな)。直前の変更にもかかわらず、組織的なサッカーに成功していたのだから、チーム全体の意思統一のレベルアップが着実に進んでいる事になる。

 後半に入ってもベガルタはよい展開を継続する。好調時のベガルタは、こうやってよい守備に支えられた攻撃を繰り返し、敵の疲労を誘い終盤に得点を奪って勝ち切るケースが少なくなかった。

 しかし、ベガルタは先制を許す。この先制場面、エスパルスも見事だったし、ベガルタのまずさもあった。
 この場面、エスパルスのCBヨンアピンが(ベガルタから見て)右サイドに進出、少々強引なアーリークロスを上げる、ベガルタ守備陣がはね返したボールを拾ったヨンアピンが再度ファーサイドに実に美しいクロス、トップのノヴァコヴィッチを越えたボールは逆サイドに進出した高木長兄にピタリ。高木が丁寧に折り返したグラウンダのクロスを河井が見事に合わせた。前半は高木が中央、河井が右サイドだった位置取りを、後半から入れ替えたゴトビ氏の采配が見事だった事もあるが、それ以上に感心したのはヨンアピンの勇気だ。ベガルタの執拗な攻撃に押し込まれ、幾度か危ない場面を作られながら、苦しい状況を打開するために左サイドに進出し、鮮やかなクロスを上げた。あのまま、押し込まれるにまかせていたら、エスパルスは相当追い込まれてしまう。局面を打開するためには、ある程度無理を承知の攻撃が必要と判断したのだろう。このような判断ができる選手がいるチームは強い。それにしても、実に鮮やかなクロスボールだった。くそぅ。
 一方でベガルタの守備もあの場面は拙かった。クロスを跳ね返したところで、ペナルティエリア内に進出していたエスパルスの3人へのマークがずれたのにもかかわらず、修正が遅れてしまった。角田と広大がボールサイドに引っ張られたものだが、左DFの石川がもっと厳しく2人に修正の指示をしていれば対応できたはずだ。J1のトップレベルの守備組織を再建するためには、そのような小修整をこまめに行う必要がある。そして、ベガルタが上位進出を狙うためには、そう言った守備組織が不可欠なのだ。

 失点後、渡邉氏は左MFの佐々木に代えて武藤を起用。ところが、武藤が左サイド前方に張りすぎるので中盤が薄くなってしまった。そのため、ボールがうまく回らなくなり、攻撃が機能しない。
 交代直前にウィルソンの持ち出しから始まった攻撃をエスパルスDFがクリアしきれず、こぼれ球を佐々木がペナルティエリア内でボレーで狙いながら、押さえ切れずにボールが浮いてしまった決定機があった。この日の佐々木はいかにもベテランらしく、左サイド後方で中盤のボール回しに参加しつつ、ここぞと言う場面で前線に飛び出し、エスパルス守備陣を悩ませていた。ところが、武藤は前線に張り過ぎるために、攻撃の変化を少なくしてしまった。交代直前に佐々木が決定機を掴み、武藤が空回りを継続したのは偶然とは思えなかった。もはや若手とは言えない武藤と、経験豊富ななベテランとの差を見るのは、ちょっとつらい。
 渡邉氏はさらにマグリンティを太田に代えて右に投入。しかし、選手達は左前方に張り出す武藤にこだわり、マグリンティにボールが集まらない。マグリンティは冷静に右外側に開き、よい位置取りだったのだが。
 これは、もう選手達の焦りなのだろう。確かに中々勝てないはつらい、つらいのは間違いない。だからこそ、苦しいからこそ、冷静に落ち着いて攻めたいのだが。
 
 しかし、失点するまでのベガルタの試合内容と進め方は、ほとんど完璧だった。これでよいのだ。このサッカーを続ければ絶対に結果はついてくる。たとえ勝ち点を取り損ねても、ブレる事なく現状の方式で戦い続ける事だ。今は我慢の時なのだ。
 次節はユアテックに好調のフロンターレを迎える。よい試合回りだと思う。光り輝く憲剛と大久保に対し、ホームで細心の注意を図った守備を軸にした試合を進める事。よい結果を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月20日

厳しい現実との最高の戦い

 ベガルタはユアテックでサガンに0対3で完敗。
 試合内容そのものは悪くなく幾度も好機を掴んだが決め切れず。一方で、サガンの豊田のポストプレイとサイドチェンジを活かした連係がよくとれた攻撃を止め切れず失点を重ねてしまった。現状のチーム完成度の差がはっきりとでた完敗だった。

 まず攻撃。結局無得点に終わった。
 ベガルタのボール奪取は今季初勝利を挙げた前節よりさらに改善された。前半、幾度も高い位置でボールを奪ってショートカウンタでフィニッシュまで持ち込む事に成功、赤嶺やウィルソンが再三好機をつかむ。しかし、決め切れない。2シーズン前には幾度も揺らしてくれた、2トップだったのだが。
 決め切れないのには理由がある。もちろん、2人共2年の歳月を経た事により、若干ながら切れがなくなった事もあるかもしれない。しかし、それよりも大きいのは、周囲に湧き出してくる選手が足りず、敵DFを分散させられない事がある。2011年、12年シーズンJ1で上位を確保した際は、いや2009年シーズンにJ2で優勝し天皇杯ベスト4まで進出したシーズン以降、ベガルタの最大の強みは「湧き出る」速攻だった。しかし、残念ながら今のベガルタは「湧き出て」来ないのだ。改めて、あの「湧き出る」連携を取り戻すための努力を重ねなければならない。

 一方の守備。3点取られたのは悔しいが、少なくとも1点目、3点目は相手が見事過ぎた。
 先制点はサガンに「恐れ入りました」と言うしかない「揺さぶり」をされてしまった。もちろん、安田への太田のマークは改善の余地があったかもしれない。またトヨクバと池田に、石川と広大がちゃんと付いていたのに二見が前に引っ張られ後方の守備を怠ったのも悔しかった。けれども、あれだけ素早く左右展開を継続されては、マークがずれても仕方がない。サガンの攻撃がよかったのだ。
 3点目は、石川直樹がしっかりとマークしていたにもかかわらず、トヨクバにしっかりとヘディングで早川にボールを落とされてしまった。これは完全に個人能力差。もちろん、抜け出そうとする早坂に対し、鎌田が飛び込まず並走する選択肢もあったかもしれない。しかし、それでも交代直後でフレッシュな早坂を鎌田が追い切れただろうか。
 2点目は、交代で左DFに起用された直後のノリカルの位置取りの誤りがなければ防げたと思う。けれども、ベテランとは言え、攻撃力強化のために途中起用された直後の選手を責めても仕方がないようにも思う。実際、その後もノリカルは(残念なミスパスも散見されたが)よく左サイドをえぐっていたのだから。

 そうこう考えると、ホームでの完敗は悔しいが、「現状では仕方がないのかな」とも思う。今は粘り強く闘いながら、チーム力の基盤を高める段階なのだ。
 速攻を仕掛ける際の意思統一のレベルアップを図り、後方の選手が前線の選手を信じて「湧き出る」速攻を可能にしなければならない。少々揺さぶられても、粘り強く全選手が頭を働かせて位置取りを修正し、僅かな穴も見せる事のない守備組織を目指さなければならない。まずは、好調時の攻守を取り戻すべく、慌てず騒がず強化を継続する事だ。完敗とは言え内容は改善している。アルディージャ戦やガンバ戦とは、状況は異なる。

 ただし、現実は極めて厳しい。
 攻守の連係のレベルアップは可能だろうが、多くのレギュラ選手は皆30代、あるいはそれに準じる年齢になりつつある。現状のベストメンバで攻守の整備に成功したとしても、それは2シーズン前のチームが2年分老齢化して再生したに過ぎない。それで、十分な反撃体制と言えるかどうか。
 過去思うように進まなかった若返りを平行して進めなければならないのだ。と言っても、そう多く若手と言える選手はいない。したがい、シーズン途中の補強の検討も必要だろう。解がないかもしれない極めて難解な方程式。しかし、ベガルタならばやれるはずだ。
 そのような総合チームマネージメントを問われる最高のシーズンをじっくりと堪能してきたい。
posted by 武藤文雄 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月13日

過酷なシーズンが改めて幕を開けた

 55分過ぎ。負傷のため足を引きずり始めた角田に代えるために、ベガルタは武藤がスタンバイしていた。
 ベガルタは中村俊輔のミスパスを拾って梁がドリブルで速攻を仕掛けたものの、小林祐三の素早い帰陣により攻め切れず遅攻に切り替える。そして、最後尾に引いた角田がドリブルで持ち上がり、梁を狙いクサビを入れる。しかし、足を痛めていたため、踏み込みが甘く、中町?にカットされてしまう。逆襲速攻を食らいそうな、「イヤな」取られ方だった。しかし、富田が落ち着いてディレイ、他のベガルタのフィールドプレイヤは素早く帰陣、全員が的確な距離感をとった守備網を早々に築く事に成功した。

 安堵しました。

 この場面は、ベガルタの組織守備が帰ってきた事を如実に示すものだった。久々の勝利は本当に嬉しかった。しかし、もっと嬉しかったのは、試合内容だった。J1の中で必ずしも戦闘能力が格段とは言えないベガルタが、この厳しいリーグで戦い抜くためには、組織的守備を機能させるしかない。それが帰ってきたのだから。
 組織守備と言うと、選手がロボットのように固定した位置取りをするかのような表現をする向きがいるが、サッカーは常に相対的で流動的。重要なのは、選手が常に頭を働かせて適切に位置取りを修正し続ける事。そして、味方のカバーリングを信頼して、厳しい当たりをする事だ。敵の得意とする攻撃を出させないために、先方の中心選手を厳しくマークするのも当然の事だ。そして、ベガルタはそれを徹底する事で、かつて予想もしなかった好成績を収める事ができた。
 ところが、その組織守備が、ここ最近完全におかしくなっていた。それを就任後僅か数日で修正に成功した渡邉新監督の手腕は「お見事」としか言いようがない。選手達の動きが生き生きと戻っていた。長きに渡り、手倉森氏のコーチングスタッフとして機能していたからと言って、それだけでこの短期修正が叶うものではない。渡邉氏はよほど怜悧な目でチームの現況を見極めていたのだろう。このような人材を抱えていた事そのものが、ベガルタ仙台と言うサッカークラブの勝利だった事になる。
 一方で、これだけ短時間での修正に成功した事は、皮肉な事に前監督アーノルド氏が相応に適切な指導をしていた事の証左でもある。いくらベテランで経験豊富な選手達とは言え、キャンプイン以降芳しくない指導を受けていたとすれば、渡邉氏はここまで短期に修正はできなかったはずだ。思い起こせば、3節のガンバ戦では、非常に質の高いサッカーの片鱗を見せていた。ところが、続くアルディージャ戦で攻撃志向を強めたところ、守備ラインにあり得ないようなミスが続いて大量失点を重ねた事もあり、完全に狙いが狂ってしまっていた。前節のレッズ戦は、最近とみに単身突破に猛威を振るうようになっている原口へのケアを怠り、中盤で強力な守備力を誇る阿部がいるにもかかわらず正面から強引に攻めかけようとして、守備が崩壊してしまった。崩壊そのものも悲しかったが、後半半ばにアーノルド氏自身が戦意を喪失してしまい座り込んでしまったのだから残念だった。
 長期のリーグ戦の序盤戦で重要なのは目先の勝ち点を積む事ではない。よい内容の試合ができるようにチームを磨き上げる事だ。アーノルド氏はAリーグで豊富な実績を誇る監督だった。しかし、海外での指導経験は初めてとの事。約3ヶ月に渡り丹念に積み上げてきた指導だったが、「勝利」と言う結果が思うように出ない状況で、目先の勝利を拾おうとするあまり、迷走に落ち込んでしまった。

 渡邉氏は、就任後僅かの準備で、よい内容の試合ができたのみならず、勝ち点3の獲得にも成功した。正直言って、レッズ戦の内容があまりに酷過ぎたので、何がしかの修正を加えれば内容が相応に好転するのは、そう難しい事ではないと思っていた。しかし、想像以上の内容好転に加え、セットプレイをうまく活かして赤嶺が久々に猛威を振るった事で勝ち点3もしっかりと獲得できた。まことにめでたい事だ。
 けれども、「勝ち点3を獲得できた」と言っても、それだけの事だ。元々、豊富な運動量が戦いの基盤となり、さらに平均年齢も高くなっているチーム。毎年、夏季には調子を落とす傾向があり、春先の貯金が重要だった。今年はそれがない。加えて、若手選手が伸びてきていない実情も変わっていない。
 今シーズンはJ1残留が現実的な目標となるかもしれない。そして、そのために渡邉氏がやらなければならない事は無数にある。マリノス戦で取り戻せたように思える組織守備の定着。元々得意と言われていた速攻やセットプレイの交通整理。速攻が利かなくなった場合の遅攻の段取り。若い選手の積極的起用。これらの厄介な仕事をやり切る事が決して容易ではないのは言うまでもない。
 「過酷なシーズンが改めて幕を開けた」と言う事だろう。まこと、サポータ冥利に尽きるシーズンである。
posted by 武藤文雄 at 21:24| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月10日

ベガルタ、アーノルド氏を更迭

 ベガルタがアーノルド氏を更迭、渡邉晋ヘッドコーチの監督就任を発表した。仕方がない判断なのかもしれない。
 
 アーノルド氏は、チーム作りの能力は十二分に持っていたと思っている。開幕戦のアルビレックス戦は内容に乏しい試合だった。しかし、アントラーズ戦を経て、3試合目のガンバ戦は、非常に質の高いサッカーを見せてくれたからだ。ところが、残念な事にナビスコをはさんだ4戦目のアルディージャ戦に、勝ちを急ぎ過ぎたのか後方をおろそかにしたやり方で臨み、守備陣の信じ難いミスも重なり惨敗してしまう。これで、精神的に完全に追い込まれてしまったのだろう。5戦目のヴァンフォーレ戦は、今期丁寧に積み上げてきたものを放棄し、昨年の基本ラインナップに戻すやり方を採り、結果的に勝ちきれず。これにより、いよいよプレッシャに溺れたのか、レッズ戦では、敵地の強豪戦にもかかわらず、無謀な前掛かりで臨み、再度惨敗を喫してしまった。
 思えば、あのアルディージャ戦の、ほんの僅かなボタンのかけ違えが、ここまで状況を悲惨なものにしてしまった事になる。

 驚いたのは、レッズに対し前掛かりで戦い、注文通りの逆襲速攻で2点差とされた時に、アーノルド氏が絶望的な表情で座り込んでしまった事だ。そりゃ、悔しいのはわかるし、勝ち点3、いや1ですら獲得するのが非常に難しくなった事は確かだ。けれども、いかな強豪相手の難しい試合で、自軍の得点力に疑問があるからと言って、0対2の時点で勝負を諦められてしまっては困るのだ。
 おそらく、チーム作りの能力はあっても、勝負師的な才覚にはやや欠ける人だったのだろう。

 ベガルタのように経済的に潤沢とは言えないクラブにとって、監督解任は非常に重い決断となる。違約金の経済負担が非常に重いからだ。しかし、上記レッズ戦の、氏の絶望的な表情を思い出すと、仕方がないのかなとも思えてくる。
 もっとも、かつてベルデニック氏への違約金で大損した経験のある我がクラブ、勝ち点が思うように積みあがらなかったケースでの違約金免除条項を契約に織り込んでいた可能性もある。逆にその条項を生かし違約金損失を最小にする目的もあっての急ぎの解任だったのかもしれない(何となく、アーノルド氏の異様な焦りも、違約金条項適用を避けたかったからではないかと邪推したくもなるのだが)。

 とは言え、決断は下された。
 まずは、結果的に歓喜をほとんど共にはできなかったのが残念だが、短い期間とは言え我がクラブのために心血を注いでくれたアーノルド氏に改めて感謝の意を表したい。そして、氏の今後の監督生活での成功を祈念するものである。

 そして、この難しい状況で監督就任の決断をしてくれた渡邉氏に期待したい。
 まずはフロントが、「暫定監督」的な中途半端な判断をしなかった事を喜ぶ。悠長な事を言っていられない、苦しいチーム状況ではあるが、決めた以上は渡邉氏にすべてを託すのが適切なやり方だ。
 現実的に状況は極めて厳しい。元々、平均年齢がすっかり上がってしまっているチーム、強力で実績ある若手がいる訳でもない。また、チームの持ち味だった連携と精神的な粘り強さは、すっかり消えてしまったようにも思える最近の試合内容。監督が変わったと言う「カンフル効果」がどこまで有効か、甚だ疑問の状況にある。
 しかし、先日述べたように、採るべき施策は明確だ。まず、しっかり守りを固める事だ。そして、過去調子がよかった時の「組織的守備感覚」さえ取り戻す事ができれば、状況は飛躍的に好転するはずだ。
 渡邉氏の手腕に大いに期待するものである。
posted by 武藤文雄 at 01:48| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月06日

とにかく守備の再構築を

 ベガルタはレッズに0対4で完敗。結果も悲しかったし、内容も乏しいものだった。しかし、それ以上にこの難敵と闘うべきゲームプランに失望した。

 レッズと敵地で戦う。難しい試合になるのはわかっている事。ただ幸い、ペトロビッチ氏は相手によって極端にやり方は変えてこない。だから、相手のよさを消す試合をするのが定石と言うもの。ところが、ベガルタは思うように勝ち点を上げられていないためだろうか、あまりに自分本位のゲームプランで試合に臨んでしまった。
 レッズの攻撃は3シャドーの連係と、両翼が張り出す所に特徴がある。中でも脅威は言うまでもなく原口。昨季終盤よりすっかり安定感を増し、長いドリブルの後の細工が絶妙になってきている。どんなチームでも、原口を加速させないように注意して試合に臨んでいる。そのためには、柏木なり興梠を厳しくマークし、原口にボールを出させない工夫が必要。って、どこのクラブで心がけている事だよな。それでも、最近の原口は止め切れない事が再三あるのだけれども。
 レッズの守備ラインの選手の個人能力は非常に高い。相対するチームとしては、中盤を抜け出そうとする際に、DFラインの前に位置取る阿部をいかに外すかが最大の問題。また、しっかりと守備ラインに引かれると3DFの単純な強さは中々で、安易なクロスはボールを失うだけになる。
 と言った当たり前の事を考えずに、「勝ち点3が欲しい、欲しい。」と漫然と攻めに行ったら、そりゃやられるわ。2点目の柏木も原口も見事だったけれど、レッズの注文通りに安易なクロスを入れてしまっては。
 アルディージャ戦の0対4の敗戦とは意味が違う。あの完敗は、ベガルタ守備陣がミスを連発したが故の完敗だった。しかし、このレッズ戦は、当初から無謀な戦いを挑み、理論通りにしっかりと敗れた試合だった。実に理に叶った完敗だったのだ。

 それにしても、原口は本当に素晴らしい選手になってきた。くそぅ。齋藤学と原口、ザッケローニ氏はどちらを選ぶのだろうか。両方とも選ぶかもしれないが。

 アーノルド氏が監督として有能か無能かどうかは、まだ結論を出すのは早いと思う。しかし、この人がかなりナイーブな人な事は間違いないようだ。そりゃ、ベガルタ関係者は皆勝ち点3が喉から手が出るほど欲しいさ。でも、だからと言って、敵地のレッズ戦であそこまで正直に戦ってはいけない。また、2点差とされた後に凍ったような表情になってしまうのには困ったものだ。勝ち点3を目指すのは大事だが、思うように試合が進まない時も、諦めずしたたかに戦い続けてもらわなければ。
 さらに、氏は現実をまだ理解していないようだ。確かに我々は一昨シーズン2位となり、昨シーズンはACLに出場した。ACLでも相応の戦いを演じる事ができた。けれども、我々はJの中でも決して経済的に潤沢なクラブではないのだ。そして、一連の好成績により、我が軍の英雄たちに早々のサラリーを提供する必要があり、思うような補強ができていないクラブなのだ。勝てない事だってあるさ。
 アーノルド氏の更迭云々の話も出てきてもおかしくない。しかしながら、悔しい事に、我々は監督更迭を自在にできるような経済的潤沢なクラブではない。まずは丹下強化部長が、アーノルド氏に「Jの現実」をレクチャする事を期待したい。

 そして、アーノルド氏が今やるべき事ははっきりしている。守備の再整備だ。確かに攻撃の連携損失は苦しい。けれども、このレッズ戦のように無理やり勝ち点3を目指すのは愚の骨頂なのだ。極論すれば、当面ホームだろうがアウェイだろうが、すべての試合で無失点を目指すべき。得点できなくても、いずれの試合でも勝ち点1を確保し続けるくらいの気持ちで戦えばよいのだ。いや、先に失点しても0-1の負けを覚悟するくらいの度胸で戦うべきだろう。守備が安定してくれば、いくらでも活路は開ける。我々にはウィルソンも梁もいるのだから、チーム全体の調子が揃えば、相応に得点はできるはずだ。まずは、その機を待つのだ。
 中盤での激しさとバランス、左右のスライド、こぼれ球への意識、悪い取られ方をしない攻撃、昨シーズンまでの好調時にできていた守備面の連係をまず再確認すればよい。もちろん、攻撃で手を加えたい事も多々ある。しかし、今は我慢すべき時。セットプレイの工夫と、ウィルソンを裏抜けさせる事くらいに絞り、他は捨てるくらいの覚悟があってよい。
 
 J1はシビアなリーグだ。連敗しているクラブは、徹底して狙われる。強引に勝ち点3を狙って前に出てくるところを、皆が冷徹に待っているのだ。だからこそ、不振を極めているクラブは、守備を固める必要があるのだ。
 幾度でも繰り返す。まずは守備の整備だ。
posted by 武藤文雄 at 23:21| Comment(3) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月05日

リトルなでしこ世界制覇

 気持ちよい世界制覇でした。

 何とも日本らしい、判断力と技巧を活かしたボール回し。組織的な守備。よいチームだった。
 ただこのチームが従前のチームと異なっていたのは、いつもいつも特に若年層で日本の欠点とされているGK、CBの中央が、非常に強かった事。ベストGKに選考された松本の安定感、大熊と市瀬の的確な読みと位置取り、様々な世代、様々なレベルのチームでよく見られた「自陣前における不測の事態」が、ほとんどなかったのが、このチームの強みだった。
 一方で、敵陣近くでの変化あふれる攻撃もまた見事。トップから降りてくる小林の受けの巧さを軸に、長谷川と杉田が技巧あふれる展開を見せる。
 とても、とても、よいチームだった。

 先制弾は、小林が1度裏に抜け出し打ちきれずに戻したボールを、トップ下の長谷川が巧みに落とし、右MFの松原が狙い澄ましたシュート、バーに当たって跳ね返ったところを、左MFの西田が詰めたものだった。ゆるやかなパス回しで敵DFを前に引出し裏を突く。そこからさらに執拗に丁寧なつなぎと崩し。よい攻撃だった。
 以降も、日本は小林を軸に幾度も攻め込むが、スペインの4DFが粘り強い守備を見せ、隙を見せず前半は1-0で終了。
 スペインの4DFの守備の見事さにも感心した。日本は素早いパス回しでスペインDFを引き出しておいて、小林なり長谷川が裏を狙うやり方。しかし、スペインのCBは身体を後方に向きながらも粘り強く、日本の裏を狙うバスに対処。さらに両サイドバックが的確な絞りから、さらにその後を的確にカバー。中盤で劣勢となるチームとしては、この守り方は非常に有効。早々に先制を許しながらも、粘り強く点差を開かせない献身は実に見事だった。スペイン代表と言うと、最近のシャビとイニエスタの攻撃芸術がよく取沙汰されるが、20年から30年前はイエロとかカマーチョみたいな選手の献身的な守備が魅力だったのを思い出したりして。

 一方でスペインの攻撃は、さほどの脅威を感じなかった。日本の素早い切り替えによるプレスも適切な事に加え、アンカーの長野の適切な位置取りが有効。パス回しで中盤を抜け出せないので、後方から頑健なトップに長いボールを入れ強引な突破を狙う事になった。しかし、そこには上記の通り、大熊と市瀬が待ち構えている。
 男子の代表は色々な世代で、スペインや中南米の所謂ラテン系の国を苦手としている。理由は簡単で、日本の持ち味である判断力と技巧によるパス回しで、先方を上回れない状況に陥るから。余談ながら、よく「ブラックアフリカや北欧のチームのパワーにやられる」と大騒ぎする人がいるが、日本がしっかりと準備する時間的余裕があった試合でフィジカル負けした試合はほとんどない。やられるのは、いつも先方の高度な技巧からなのだ。
 そして、この日のリトルなでしこは、技巧でスペインを完全に圧倒。まあ、女子サッカーのランキングを考えれば、当たり前の事かもしれないが。

 65分過ぎには両軍とも疲労からガクッと運動量が落ちてしまい、試合は一層単調なものとなり、正直見ている方がつらくなる展開。決勝含めて7試合の過負荷と言う事もあったかもしれないが、この世代の女子選手に90分試合が適切なのかどうか、議論が必要かもしれない(あ、審判については...)。
 ただ、日本は負傷退場した遠藤に代わってトップに起用された児野が豊富な運動量で攻撃を引っ張り、攻撃を活性化させる。そして、77分には児野が鮮やかな2点目を決め突き放しに成功した。
 疲労困憊で迎えた後半30分過ぎ、2点差になったら、普通のサッカー選手なら諦めるよな。けれども、この日のスペインの娘さん達は諦めないのだから恐れいった。ボール回しでも崩せない、裏を狙ってもカバーされる。「もう君達には攻め手はないだろ!」とテレビ桟敷で思ったのだが、その状況でも、アディショナルタイムの48分まで、諦める事なく闘い続けた。正直、感動しました。おかげ様で、日本の優勝は一層感動的なものになったのも確かです。本当に、本当にスペインの選手たちの気持ちは、素晴らしかった。

 何が嬉しかったって、高倉麻子さんの笑顔だな。
 50過ぎのおじさんにとって、「シニアなでしこ」の歓喜は堪えられないのだよ。児野が2点目を決めた瞬間、そして優勝直後のインタビューの高倉氏の笑顔。高倉氏を支えた大部氏の満面の笑み。解説を務めた、酒井氏じゃなかった加藤氏の、優しくも厳しい一言、一言。
 この日珠玉のプレイを見せてくれた若者達の存在もすばらしい。しかし、高倉氏、大部氏、加藤氏、彼女たちの存在が、日本の女子サッカーをこれまで以上のレベルに高めるために重要なのは言うまでもない。
 資源は着々と増強されている。じっくりと、精悍な若き女性のプレイを愉しんでいけるのがありがたい。
 
 おめでとうございます。ありがとうございました。
posted by 武藤文雄 at 22:49| Comment(4) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする