2015年11月29日

明日なき死闘を満喫するも

 チャンピオンシップ準決勝、ガンバが延長終了間際にレッズを振り切った。
 両軍とも疲労困憊した延長終盤、これまで見事な強さと気迫でレッズの猛攻をはね返し続けていたガンバ丹羽が信じ難いバックパスミス。ここまで奇跡的なセーブで再三チームを救っていた東口が「間に合わない」と判断し、自暴自棄なオーバヘッドキックを試みるも空振り。「この見事な試合が、こんな終わり方をするのか」と誰もが思った瞬間、ボールはポストを叩いた(東口が触ってポストに当たったという説もあるが)。直後、東口は素早く前線にフィード。その逆襲速攻から藤春の得点が生まれた。
 40年以上サッカーを見ているけれど、こう言った展開は記憶にない。決定機が双方に相次いで訪れて、劇的に勝負が決まるのは幾度か体験しているけれども、あれほど間抜けな自殺点もどきが起点になるとは。まあ邪推すれば、レッズイレブンがこの「棚からぼた餅」による決定機にぬか喜びしてしまい、わずかに切り替えが遅れたとも言えるかもしれない。
 けれども、このような試合で、このような講釈を垂れることは野暮と言うものだろう。
 あの丹羽のあり得ないミスも相当だったが、一方でガンバの先制点もレッズの那須の軽率なミスパスからだった。これ以外にも、両軍のゴールのポストやバーの活躍が幾度もあり、さらに東口と西川は再三のファインプレイを見せてくれた。また、ガンバ阿部のシュートを防いだ宇賀神の対応は鮮やかだったし。さらに、そのガンバ阿部はレッドカードを出されてもおかしくなかった。また、レッズはズラタン、関根が、ガンバは藤春が、ペナルティエリアで倒されたが、主審の松尾氏は笛を吹かなかった。
 まあ、サッカーと言うことなのだろう。見事な試合を堪能させてくれた両チーム関係者に感謝したい。

 と言うことで、改めてチャンピオンシップと言う制度について、講釈を垂れたい。
 以前から述べているように、私はチャンピオンシップ導入には反対だ。年間の真のチャンピオンは、総当たりのリーグ戦で一番勝ち点を獲得したクラブに与えられるべきだと考えているからだ。このレッズ対ガンバがそうだったように、これほど偶然に左右されるサッカーと言う競技においては、総当たりで得られた勝ち点数で決められる順位が最も価値のあるものだ。ガンバがこれから行われるH&Aのチャンピオンシップ決勝でサンフレッチェを破ったとしたら、2015年シーズンは、1シーズンかけて積み上げた勝ち点で11低かったチームが年間王者を誇ることになる。さすがに、これには抵抗がある。
 しかし、短期的な観客動員やキャッシュインの増加を目指すなり、中長期的な世間のJリーグ注目を高めるために、このような方式導入を行うことを否定する気はない。たとえば、北米のプロスポーツが、様々に工夫したプレイオフで大きな人気を獲得していることを参考にするのは、客商売と言う視点でも重要なことだろう。そして、我々はレッズとガンバのおかげで、実際にすばらしい試合を観ることができたのは確かだ。
 そして、このような試合が演じられたのは、「明日なき戦い」と言う舞台だったからなのは間違いない。毎週行われるリーグ戦とは、まったく異なった魅力が、このような試合にはある。
 けれども、この柏木たちの前に東口らが立ち塞がったような凄絶な120分間の死闘は、チャンピオンシップでなければ見られないのだろうか。言うまでもなく、そうではない。別な機会はあるのだ。このような死闘は、カップ戦と言う環境があれば、見ることは可能なのだ。実際、過去も条件に恵まれれば、天皇杯でもナビスコカップでも、私たちはこのような死闘を堪能してきたのだ。
 リーグ戦の試合を毎週じっくり堪能するのと、カップ戦の「明日なき死闘」を堪能するのは、それぞれ異なる愉しさがある。そして、後者の刺激は、あまりに素敵であるが故に、再現なく増やしていくことは自重されなければならないのではないか。残念なことに、チャンピオンシップの導入により、そのバランスは崩れようとしている。
 今シーズンについては、チャンピオンシップ終了後、クラブワールドカップをはさみ、天皇杯が残っている。シーズン終盤、後から後から、特定チームのみが登場する「明日なき死闘」を期待するレギュレーションは、健全なものとは思えない。もし、Jリーグ当局が、チャンピオンシップを継続したいと思うのならば、ナビスコカップや天皇杯を含め、その他の大会の全面的な交通整理をすべきであろう。過去幾度も述べてきたが、18チームによる1部リーグと、ACLの上位進出と、複雑で2週にわたるチャンピオンシップと、クラブワールドカップの自国開催と、元日の天皇杯決勝と、すべてを総取りしながら、真っ当な日程を構成することは不可能なことは認識すべきだ。繰り返すが、シーズン終盤に、後から後から「明日なき死闘」を期待した大会を複数組むことで、1つ1つの試合の価値を下げてしまっては本末転倒なのだ。
 遠藤爺のように、それらすべてを愉しもうとする偉人がいることに、感謝しつつも。
posted by 武藤文雄 at 23:05| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月15日

呪縛から脱却したハリルホジッチ氏


 日本代表は、シンガポールに敵地で3対0で快勝。結果も内容も、そこそこ、まあまあだった。ともあれ、この試合は何よりハリルホジッチ氏が、埼玉シンガポール戦の呪縛から脱した試合として、今後の大きな分岐点となるのではないか。

 先般のシリア戦、結果的には3対0と快勝し、2次予選のトップ突破を事実上確定することができた。
 けれども、特に前半は、何とも重苦しい試合だった。中盤を制しながらも、崩し切れない展開。蒸し暑い気候の中、明らかに体調の悪い選手達。フィジカルに優れるシリアDF陣を振り切れない前線のタレント。そして、後方の選手の信じ難いミスにより、シリアに許す決定機。それでも、後半立ち上がりに岡崎が倒されてPKを奪った以降は、無事に戦闘能力差を発揮し、結果的には大差で勝利できた。
 ハリルホジッチ氏は、埼玉シンガポール戦の自からの油断と無策と知識不足による引き分けと、シリアがシンガポールに勝ったことで、勝ち点勘定的に2次予選突破に暗雲が漂うような錯覚にとらわれたのだろう。ために、先般のシリア戦は「安全」を考慮し、体調の必ずしもよくない岡崎、本田、香川を起用した。上記のように前半の試合内容は、何とも重苦しいものだったが、体調が悪いなりに勝負強さを発揮した岡崎のPK奪取を起点に快勝することができた。

 これで事実上、次のラウンド進出を決めたことで、氏はすっかり落ち着いたようだ。この敵地シンガポール戦では、体調のよい金崎、武藤、清武、柏木を起用した。さらに言えば、シンガポールが引いてくることが自明だったので、柏木がほとんどフリーでプレイできることも、埼玉の失敗を含めたスカウティングの成果だったのだろう。かくして、序盤から日本は次々と変化あふれる攻撃で好機を作り、前半半ばに2点を奪い勝負を決めてしまった。
 あのシリア戦の前半疲労が顕著な選手を無理に引っ張り苦闘した試合とは好対照。まずは、ハリルホジッチ氏が、自ら招いた呪縛から脱したことを、素直に喜ぼう。
 
 もちろん、細かな突っ込みどころは無数にある。
 長友と本田は明らかに重かったが、そこまでメンバを替えるのは冒険が過ぎると言うもの。それでも、長友は、カンボジア戦などで見受けられた、無意味で強引な前進がなくなり、落ち着いて左サイドの守備を固めてくれた。本田は、せっかく酒井宏樹が攻め上がっても使わない悪癖が見られたのはご愛嬌だが、しっかり得点にからんだのはさすが。後半、明らかに動けなくなり攻撃をギクシャクしたものにしてしまったが、これは素早い交代を行わなかったハリルホジッチ氏の責任だろう。
 ハリルホジッチ氏の交代策は、本田を引っ張った以外にも疑問は多かった。交代策はいずれも前線の選手、宇佐美、香川、原口だったが、後半攻撃が停滞した要因は、中盤での変化が不足したためだったのだから、あまり有効ではなかった。むしろ、山口蛍なり遠藤航を中盤に起用し活動量を増やして、上下の変化をつけるべきだったのではないか。

 ただロシアに向けて、攻撃はそれほど不安はない。年齢的に岡崎と本田が2人揃ってロシアを迎えることが可能かは微妙だが、後を継げる有為なタレントが多数いるからだ。最近の選考に、大迫も柿谷が漏れる事そのものが選手層の厚さを示している。一方で、後方は不安だ。最近登場したタレントは、遠藤航くらい(「遠藤が出て来ているのだから、文句を言うな」と言う向きがいるかもしれないが)。
 実際、このシンガポール戦でも、再三守備ラインがほころびかけた。吉田麻也は得点を決めたし、相変わらず後方からの攻撃の起点としては有効に機能した。しかし、突然見せるミスは相変わらず。前半、飛び出した西川と交錯した場面、不用意に敵にCKを与えたあたりは残念だった。森重は、ほぼ満足行くプレイを見せてくれたが、1回だけ敵セットプレイでマーク相手を見失った。
 最大の失望は酒井宏樹。若い頃は、右サイドからの強く踏み込んだクロスが最大の魅力だったのだが、この日はフリーで再三抜け出しながら、有効なクロスがほとんどなかった。丁寧な守備振りはよかったが、肝心なところで敵に出し抜かれてフリーでヘディングを許した。
 サッカーにミスは付き物だ。けれども、日本代表がロシアで好成績を収めようとするならば、丹念に小さなミスも見逃さない積み上げをしていく必要がある。残念ながら、現状は厳しい。新たなタレントの発掘と言う意味でも、既存の選手の安定感と言う意味でも。

 ともあれ。
 南アフリカの重苦しい惨敗後、我々はようやくロシアに向けて踏み出すことができた。アギーレ氏の弱気過ぎる采配が招いたアジアカップの早期敗退(せっかく短期間でよいチームを作ったのに)。そして、アギーレ氏との別れ。ハリルホジッチ氏の埼玉シンガポール戦の失態。そんなこんなを愉しんでわけだが、この敵地シンガポール戦で、私はロシアへの道筋をようやく見出すことができたように思う。
 まずは、道筋が明確に見えてきたことを素直に喜びたい。
posted by 武藤文雄 at 00:38| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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