2016年01月06日

守備が強いバルセロナ

 いささか古新聞ながら、昨年末のクラブワールドカップを見ての思いを語りたい。

 メッシとネイマールを擁し神仏に喩えられて久しいバルサ、16,000サポータ共々質実剛健そのものだったリーベル、ここ数年財力の差により我々にACLで不快な思いを提供し続けている広州恒大。そして、ここ数シーズン、日本で最も安定した成績を収めているサンフレッチェ。これらの4クラブを丁寧に比較できて、とても愉しい大会だった。
 今日のところは、まずはバルセロナを論じたい。

 今回のバルセロナは、従来のシャビとイニエスタを軸に中盤で精緻なパス回しをするチームとは、随分趣を異にしていた。ずばり、マスケラーノ、ピケ、ブスケツの守備中央3人の強さが格段のチームだったのだ。

 ゴールキックの際に、CBのマスケラーノとピケが、ペナルティエリア両横に開いて、そこから展開するのをスタートとする。サイドバックのダニエウ・アルベスとジョルディ・アルバは前方に進出。言ってみれば、後方から2-3-2-3と言う配置になっている。これは1925年にオフサイドルールが変更になる以前のフォーメーションに先祖返りしたのではないかと。
 冗談はさておき、これは世界最強チームの展開地域が、より後方になって行いくことを示唆しているのではないか。やたら中盤のプレスが厳しくなって、ピルロが中盤後方から展開するようになった2000年代。そして、2010年代半ばになり、とうとうマスケラーノは、最終ラインからの展開を始めたと言うことだろうか。1970年代のベッケンバウアに戻ったと言う話もあるか。あ、また話がずれました、すみません。

 決勝戦、リーベルの速攻は鋭くいやらしかった。しかし、マスケラーノの読みの鋭さは格段。リーベルのシュートポイントに何の躊躇もなく飛び込み、押さえ込んでしまう。マスケラーノの守備振りは、全軍を指揮して敵の攻撃を弱めておいて自分が一番危ないところで待ち構えるフランコ・バレーシとも、チームメートの挙動を見ながら自分の個人的守備能力で一番危ないところを止め切るカンナバーロとも違う。マスケラーノは、チームメートを一切頼らず、己の判断のみを頼りに、一番危ないところを押さえ切ることのみを考えているように見えた。
 一方でピケ。リーベルの後方の選手が、バルサのプレスが甘くなった隙を逃さず、ぎりぎりのロングボールを入れてくる。しかし、ピケは丁寧にそれをはね返す。ピケもよい年齢になってきたのか、強引な攻め上がりがなくなり、ストッパとしてしつこく守り、格段の個人技で正確にはね返す能力は格段。
 そして、マスケラーノとピケが防いだボールを、ブスケツは丁寧にさばき展開する。この世界最高峰CBコンビでも、さすがに敵の攻撃を防いたボールゆえ、タイミングやコースはブスケツの処理しやすいところへ来ない。けれども、ブスケツは何の雑作もなく、的確にボールコントロールしてしまう。しかも、南アフリカワールドカップ制覇時に見せた、中盤での守備範囲は、さらに広さを増していたし。

 もちろん、メッシとネイマール。リーベル戦の1点目のネイマールの折り返しとメッシのトラップからのシュート。3点目のネイマールの芸術的アシスト。
 この2人以外のバルセロナの名手たちの個人能力が超越しているのは間違いないが、マスケラーノもピケもブスケツもイニエスタもスアレスも、素質に恵まれた人間が、環境に恵まれ、適正な指導を受け、凡人には耐え難い努力を積めば、もしかしたら到達できるかもしれないとは思う。しかし、メッシとネイマールの能力には、そう言った常識を超越した何かを感じる。ホモサピエンスを調達した何かを。ペレ、クライフ、ディエゴに感じ、ロナウジーニョに期待し外れた、何かを。

 それでも。
 しつこいが、今のバルセロナの強みは、最終ラインの3人にあった。シャビを失ったバルセロナは、たとえ、メッシでも、ネイマールでも、イニエスタでも、もちろんスアレスでも。分厚く人数をかけた守備をする敵に、ぎりぎりのパスを引っ掛けられ、逆襲速攻に襲われることもある。
 もちろん、リーベルもそれを狙っていた。
 そのリーベルの狙いのすべてを、マスケラーノとピケとブスケツは、未然に防いでしまったのだ。

 16,000人のサポータが支えるリーベルの質実剛健な逆襲速攻。それを、この3人が、90分間戦い続け、押さえ切った。すばらしいエンタテインメントだった。
posted by 武藤文雄 at 00:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする