2016年10月23日

ありがとう、ウイルソン

 ベガルタが、ウイルソンとの契約満了を発表した。
 31歳で、3シーズン続けて再三負傷での離脱が続き、年俸も決して安いとは言えないストライカとの再契約が、難しいのは予想していた。そして、その予想どおりとなったわけだ。クラブの経営と言う視点からは妥当な結論だ。
 また、あと2節を残しての発表そのものも、これだけ貢献してくれた選手との別れの機会を、我々サポータに提供してくれたクラブの判断に敬意を表したい。

 と、クラブの判断は適切だとは思うが、むしょうに寂しいのは言うまでもない。感情と言うものは、理屈では語り切れないのだ。
 ベガルタサポータとって、ウイルソンはあまりに大切な選手だった。今思い起こしても夢だったのではないかと感じるACL出場への貢献は格段だった。
 冷静な判断からの落ち着いたシュート。しっかりした前線でのボールキープ。広範な視野から速攻の起点となる。単身でも強引にシュートに持ち込み敵DFに与えるプレッシャ。そのような天才肌のストライカにもかかわらず、攻守両面の献身。
 最前線にウイルソンがいるだけで、ベガルタのサッカーはまったく異なるものとなった。そして、今シーズンも、復帰したアルビレックス戦やベルマーレ戦で、正にスーペルゴラッソとしか言いようのない美しい得点を決めてくれた。「まだまだやれる」と言う強い思いもあるのだ。

 監督就任後、実質3年目となる渡邉氏だが、この3シーズン、エースと期待され、実績も豊富なウイルソンがの体調が、シーズンを通してそろうことはなかった。それでも、コンディションさえ整えば、ウイルソンが一番頼りになるストライカだったことは間違いない。
 その中で、渡邉氏は丁寧にチーム強化を継続。特に今シーズンは、氏が監督に就任した14年シーズンに途中加入したハモン・ロペスが完全に「化けた」感がある。昨シーズンまで、左足の一撃は強烈だが、そこに持ち込むことができず、敵DFにつぶされていたばかりのハモン。しかし、今シーズン、後方からのボールをしっかりと収められるようになり、クロスに合せる呼吸が格段に上達したのだ。ベガルタのフロントが、「ウイルソンに頼らずとも」と、判断したのも理解できる。もっとも、このハモンに他クラブからのオファーが集まっているとの報道があるが、それはそれと言うものだろう。
 
 ウイルソンについて美しいな思い出は幾多もある。しかし、最も甘く苦い思い出はこれに尽きる。ウイルソンと世界屈指の名審判の、日本最高のスタジアムでの邂逅の悲劇。このような感情を味合わせてくれただけで、ウイルソンには感謝の言葉もない。

 来シーズン、ウイルソンはどこに行くのだろうか。負傷が続いた中で、ブラジルに帰るのか。アジアの他国にプレイ機会を求めるのか。それとも他のJクラブか。大好きなこのストライカのプレイを見続けたい思いは強いが、ベガルタゴールドとは異なるジャージを身に着けたウイルソンを見たくない思いもある。
 いや、ここはつまらない思いは捨てよう。ウイルソンの次の人生での幸運を祈りたい。ブランメルから始まり、ベガルタと言うクラブは、ようやく22年間と言う歴史を積み上げてきた。22年と言う歴史は、決して長くもないが、短くもない。その歴史を、ウイルソンは鮮やかに彩ってくれた。
 マルコスも、シルビーニョも、朴柱成も、幾多の歓喜を我々に提供し、母国に帰って行った。

 あと2試合ある。
 ウイルソン。さよなら、そしてありがとう。
posted by 武藤文雄 at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月13日

香川真司の今後

 ここのところ、香川真司は逆風下の状況に置かれている。ドルトムントでのプレイ機会が相当減っている。UAE戦でもタイ戦でも冴えが見られなかった。そして、イラク戦では代わって起用された清武が上々のプレイ。豪州戦でも清武のスタメンが予想されていた。
 しかし、豪州戦、ハリルホジッチ氏の選択は香川だった。両翼の原口と小林悠が相当引き気味に位置取りをする中、ワントップの本田と連係をとりながら、いわゆるファーストディフェンダとして、派手ではないが落ち着いたプレイを見せ、90分間フル出場をした。しかしながら、我々が香川に期待するところの、鮮やかな個人技による好機演出は、ほとんど見せてくれなかった。また、後半半ば、押し込まれた苦しい時間帯に、格段のボール扱いでチームを落ち着けることもできなかった。
 この日の日本の守備は見事なもので、その一員として、香川が機能したことは評価すべきだろう。ハリルホジッチ氏が、清武でなく香川を起用した意図は明確でないが、守備をしっかりと行うねらいの試合において、体調を整えた香川の方が清武より適切と言うことだったのだろうか。
 けれども、このようなプレイを望むのならば、香川よりもっとうまくこなせる選手が他にいるのではないか。例えば、昨日も述べたが、田口、倉田、矢島と言ったタレントならば、もっと巧みに守備もこなすだろうし、押し込まれた時間帯に的確にボールキープしてくれるのではないか。いや、もっと簡単な話で、そのようなシゴトは岡崎ならば完璧にこなすだろう。岡崎はボール扱いと言う面では、香川に遠く及ばないが、激しくファイトし自分に出されたボールを全身でキープする能力は格段なのだから。

 香川真司と言う選手は、これからどうあるべきなのだろうか。

 香川が格段の個人技を持つタレントであるのは言うまでもない。特に、2010年から12年にかけては、ドルトムントでも日本代表でもすばらしかった。トップスピードに乗りながらも正確にボールを扱い、ほんの小さなスペースで加減速や左右の変化を操るドリブルで、敵守備陣を崩し切っていた。
 ところが、マンチェスターユナイテッドに移籍したあたりから、少しずつ往時の切れ味が失われたような印象がある。そして、香川自身が、その往時のプレイを目指すのだが、思うようにならず、いらだっているように見えるのだ。ブラジルワールドカップでも、アジアカップでも、我々は「乗り切らない」香川を見ることになった。
 UAE戦が典型だが、香川は敵陣近くでボールを持つと、敵ペナルティエリアで難しいことを狙い過ぎる。確かに往時の香川は、敵ペナルティエリアに入ってからのわずかスペースから、巧みにボールを動かし、敵を崩していた。しかし、今の香川には、そこまでの切れ味がない。おそらくだが、往時の香川は20歳そこそこだったが、そこから身体が大きくなりバランスが崩れてしまったのではないか。
 しかし、香川は往時の切れ味を追い求め、当時のプレイを目指すが、今一歩うまく行かない状況が続いているのではないか。さらに、わずかなスペースでの細工を狙い過ぎるために、瞬間瞬間の刹那的なプレイの連続になる。もちろん、サッカーの最大の魅力は、トップ選手の瞬間的なヒラメキであることは間違いない。けれども、香川はヒラメキきらずに、難しいことをしてボールを失うか、敵DFを抜き切れないと判断するや外側に逃げるような持ち出しをする結果に陥っているように見えるのだ。

 香川は異なったスタイルを目指すべきなのではないか。たとえば、一枚後方にポジションを移し、いわゆるゲームメークを担当し、中盤でいったん持ちこたえ、時に広範な展開を狙い、時にラストパスを狙うなどできないだろうか、中村憲剛のように。あるいは、今のポジションのままで行くにしても、刹那的なヒラメキを狙うのではなく、事前に計画的に複数考えておいた崩しのいずれかを狙うことはできないだろうか、中村俊輔のように。
 香川はまだ27歳、もう若いとは言えないが、格段の技巧とこれまでの経験を活かし、新境地を開くことはできるはずだ。
 そうすれば、この豪州戦で見せた知的な守備もできるし、元々体幹が強いのだから、従来にはないスケールの大きな中盤選手に転身できるのではないか。
 私は、もっと光り輝く香川を見たい。しかし、今、香川が必死に尽力している方向の延長に、光り輝く香川が見えないように思うのだ。
posted by 武藤文雄 at 00:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月12日

やはり、我々が一番強い

 何より、守備がすばらしかった。相互の連係、前線からの追い込み、セーフティファースト。イラク戦での危なっかしさがほとんどなくなっていた。考えてみれば、UAE戦の守備は残念だったが、タイ戦は格段に改善されていた。今回も同じと言う事かもしれない。約1週間の強化期間が与えられれば、選手のコンディションも揃い(同時にハリルホジッチ氏も各選手の見極めができる)、氏も約束事を徹底できる、と言う事なのだろうか。
 開始早々に、原口が、自らのボール奪取を起点に本田の軽妙なボールさばきを受け先制したことで、完全に日本ペース。一見、攻め込まれているように見えるが、危ない場面はほとんどなく前半終了。ここまで、ハリルホジッチ氏は攻撃の整備や連係については、あれこれ工夫していたが、守備についてはあまり感心しなかったので、これは嬉しい驚きだった。「これだけやれるならば、もっと早くからやってくれ」との野暮は言うまい。
 原口のPK提供は、「我らがエースが、恰好の失敗経験を積んでくれた」と前向きにとらえればよいだろう。それにしても、あの豪州の速攻に、ちゃんとあそこに戻るのだから、大したものだなとも思うが。タイ戦以降のここまでの3試合、「もし原口元気が存在していなければ」と想像するだけで、何とも言えない恐怖感に襲われてしまうではないか。原口には、「自分が日本を支えているのだ」と、いっそうの自覚からの活躍を期待したい。
 ただ、同点にされ、押し込まれる時間が続いたあたりで、ハリルホジッチ氏が動かなかったのは疑問だった。豪州の攻撃は確かに単調だったが、あれだけ押し込まれれば、交通事故のリスクがある。タイ戦でも、疲労したDF陣が裏をとられかけ、西川の好捕に救われたではないか。負傷上がりとのことだが、献身と言う意味ではこれ以上にない岡崎がいるのだから、いくらでもやりようはあったと思うのだが。
 そういう意味では、技巧にすぐれ、中盤の前の方で使える、守備でも計算できるタレントの招集が必要なのではないか。田口、倉田、さらに五輪代表の矢島など。終了間際に、丸山を原口に代えて起用し守備固めを行い、その丸山が最前線に進出し空中戦から好機を作ったのには、笑ったけれども。
 ともあれ、最後まで交通事故になりかけることもなく、無事1対1で試合終了。守備で相当な自信を持つ事ができて、結果も上々。まことにめでたい試合となった。

 交代と言えば、ちょっと残念だったのは浅野。無理をせず引き分けでよい展開で、しっかり守りを固める場面、縦のスピードが格段の浅野を入れるのは、論理的な策に見える。しかし、浅野は2回早く出過ぎてオフサイド。さらに、上記した丸山が作った好機で、敵DFにマークされているのにかかわらず、オーバヘッドで狙いデンジャラスプレイの反則をとられてしまった。これでは、何のために起用されたのか、わからないではないか。いつまでも、このような青いプレイを続けられては困るのだが。

 長谷部以下の選手たちが悔しそうな表情をしているのは、よく理解できた。豪州に許した決定機は皆無。一方、当方は、前半の原口が作った本田のシュート、高徳のクロスからの小林のヘッド、終了間際の原口のクロスを浅野が狙った場面、と相当数回の決定機があった。勝つべき試合を落とした感のあるの試合だったのだから。
 次のサウジ戦だが、早くから集まり、オマーンと準備試合も戦える。しっかりとした準備を行い、完勝することを期待しようではないか。
 少々、感情の露呈が激し過ぎるハリルホジッチ氏だが、しだいに本領を発揮してくれてきたようだ。そして、この豪州戦を見た限り、やはり我々がアジア最強だと確信することができた。日本が、しっかりと組織守備を確立すれば、やはりアジア最強なのだ。まずは、体調が悪い時でも、今日のような守備をそれなりに安定して行えるよう期待したい。その上で、上記のような決定機を作る頻度を高める連係と判断力の向上を。予選段階から、これらを丁寧に積み上げていけば、本大会のベスト8を目指せるはずだ。
posted by 武藤文雄 at 00:41| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月10日

我々の目標はワールドカップベスト8

 必死の絶叫は継続していたし、あきらめるなど考えてもいなかった。終盤のパワープレイには疑問で、違うやり方の方が得点の可能性は高いと思っていたのは確かだが。それでも、麻也が左サイド奥深くまでボールを追いファウルを奪った時には心底感動した。そしてフリーキック。そして蛍!!!
 さすがにイラクに同点とされ、その後攻めあぐんだ時は「ヤバイ」と思いましたよ。
 変に偉そうで凝った態度をとったり、卑屈で斜に構えた姿勢をとるつもりはまったくないが、これだけしびれる予選は久しぶりだな。そして、それがアジアのライバルのレベルアップによるものだから、決して悪いこととは思わない。UAEのサッカーは単純な逆襲速攻狙いから大きく進歩している。タイも局地戦重視からチーム全体でのボールキープができるようになっていた。イラクも持ち味の技巧と判断が終盤まで落ちなかった、終盤時間稼ぎに終始したのは残念だったが。
 我々の目標はワールドカップのベスト8以上。予選で厳しい戦いをつむことができるに越したことがないではないか。

 立ち上がりから、守備の不安定さが気になった。伝統的にイラクの選手が技巧に長けており、フィジカルも優れているのは当然のこと。このような難敵には、厳しく腰を入れて当たらないと、技巧で外されてしまう。一方でイラクの選手は、スクリーンはうまいので、悪い体勢で強く当たればファウルをとられてしまう。ボールを奪えないならば、ウェイティングとカバーリングが重要となる。ところが、そこが何か全体に甘い。特に柏木、両酒井のプレイは残念だった。
 開始早々にFKからヘディングシュートを許しポストに救われ、前半終了間際には押し込みかけながら攻めきれずボールを奪わ速攻を許し、西川のファインプレイに救われるなど、芳しい守備とは言えなかった。失点時のセットプレイも、「ここを我慢しきれないのか」と言いたくなった。
 ただ、すべてが悪かったわけではない。結果的に、押し込まれる時間帯が増えたが、麻也と森重、たびたび最終ラインまで引く長谷部はセーフティファーストの意識が格段で、いわゆる危ない場面は上記のように数えるほどだった。
 結局バランスなのだと思う。ザッケローニ氏の時代は、ファウルを恐れすぎて無理に当たらず結果的にCKを与えてしまい、そこから失点することが多かった。今回は軽率にかわされり、慌てて与えたファウルからの失点が多い。思うように集合練習ができず、各選手のコンディションが揃わない中、どのようにバランスをとり、チーム力を上げていくか。守備のバランスがよくなり、より前でボールを奪えるようになれば、先制点のような鮮やかな速攻の頻度も上がるはず。
 そう考えれば、上記の通りアジアのレベルが厳しいほど、本大会に向けた準備ができるというものだ。

 攻撃については、なぜ単純にもっともっと原口を使おうとしないのかが大きな不満だった。今の原口の縦に出る能力は格段のものがある。当然イラクDF陣もそこは警戒してくるが、そこを工夫して、最強兵器をいかに生かすかがチームと言うもの。ところが、柏木は原口とはレッズ時代チームメートだったのに右サイド重視の展開、清武もせっかく原口が縦に出ようとしたときに前のスペースを消してしまうことが再三、酒井高徳も外にボールを引き出したうえで単純に原口を使えばよいのに細かな崩しに拘泥。
 結果、必ずしも体調がよいように見えない本田にボールが集まり、本田が一人でキープできないため岡崎がサポートに回り、崩し切れない場面が多くなってしまった。狙うべきは逆だろう。岡崎の粘りと清武の技巧で、原口を前に向かせてボールを持たせ、左から主に崩して、そこを岡崎や本田がねらう方が、得点の確率は格段に高まるのではないか。清武もあれだけ鋭い切れ味を発揮できているのだ。もう一工夫してほしい。
 攻撃については、よい意味で選手層が厚過ぎることが、災いしているのかもしれない。原口と清武が定位置確保としても、他にも多士済々。交代で起用された浅野、小林悠のほかにも斉藤学も武藤ももいるし、大迫も最近絶好調だと言う。岡崎と本田の経験は格段だ。これらのタレントを、いかに交通整理して強力な攻撃陣を編成していくか。

 チームとしての完成度はまだまだで、同グループで日本以外で最も戦闘能力が高そうな豪州と敵地戦をむかえるのは絶妙なタイミングと言える。強敵との試合は、やり方を間違えなければ格段にチーム力を向上させるものだからだ。イラク戦のアディショナルタイムは、間違いなくチームの雰囲気を明るいものにしているはずだ。UAE戦よりタイ戦の方が内容がよかったのと同様に、豪州戦はイラク戦以上に質の高いサッカーを見せてくれることだろう。時差と気候を考えても、サウジ帰りの豪州より、我々の方がコンディション的にも有利なはずだ。よい結果を期待したい。
 監督交代劇や、岡崎と本田の輝きにより、新旧交代とチーム作りが遅れている問題はある。また最前線にくらべて最終ラインに新しい選手を試していないのが心配だ。しかし、ハリルホジッチ氏の実績にせよ、次々に登場するタレントにせよ、我々の潜在力は、やはり相当なレベルにあるはず。目標は本大会ベスト8であることを忘れずに、よいチームが作られることをじっくりと見守りたい。
posted by 武藤文雄 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月05日

イラク戦を前に2016

 早々にUAEに敗れ、多くの選手が欧州の在籍クラブで控えに甘んじていることもあり、各種マスコミは悲観論が渦巻いている。まあ、負ければ「この世の終わり」、勝てば「ワールドカップ優勝」と、白か黒かのデジタル世界が、我が国のサッカーマスコミの論理なのだから、今さら始まったことではないのだが。
 思うようにならないから、サッカーと言う玩具は堪えられないくらいおもしろいと言うことを、多くのサッカーマスコミが理解する時代が来たとき、我々はワールドカップ制覇に大きく近づくことができるのだろう。その時代が、今56歳の私が生きているうちに訪れるのは、どうやら難しそうだけれども。

 ともあれ、何歳になっても、予選は愉しい。堪えられない人生の愉しみだな。

 もちろん、ハリルホジッチ氏に不安があることは否定しない。
 UAE戦については、逆襲速攻を受けづらい攻めを各選手に徹底しなかったことに失望した。しかし、それについては、タイ戦では明らかに改善が見られ、ボールを奪われた直後の守備はよくなった。「どうせだったら、最初からやれよ、本番のタイトルマッチだぞ」と、言いたくなるけれど。
 タイ戦、香川、長谷部、本田らが、疲労困憊にもかかわらず、交代が遅れたのにも失望した。西川のファインプレイがなければ、勝ち点を失う恐れすらあったのだ。おそらく、氏は、リードされると慌てるが、勝っているときは凍るタイプなのだろう。もちろん、UAE戦でひどかった香川をできるだけひっぱり、よい結果を出してもらい、自信を取り戻させることを狙ったのは理解できなくもない。けれども、それはまったくの裏目となり、香川は疲労困憊、自信喪失状態で、ドルトムントに帰ることになってしまった。
 裏目と言う意味では、UAE戦の交代もそうだった。宇佐美、浅野、原口、それぞれの投入は合理的なもので狙いもよくわかった。けれども、結果論としてはピッチを去った清武、岡崎、大島の不在が、投入された選手たちの活躍以上に、痛いものとなった。まあ、うまく行かないときはこういうものだな。
 また、明らかに欠点がある吉田麻也に拘泥し、新しい選手を試さないのも不安だ。麻也は決して悪い選手ではない。しかし、俊敏な選手との1対1で慌てる、たまに信じ難い大ポカをする、ゴール前の一番危ないところを読み切れないなどの欠点もある。年齢的にも決して若くないのだから、もう少し若い選手を試すのは一案だと思うのだが。果たして、タフな予選の戦いを継続しながら、氏がそのような英断をくだすことができるのかどうか。

 あれこれ、文句を並べたが、そもそも代表選手の責務は、「勝つこと」の次は「国民すべてから文句を言われること」なのだから。
 ただ、この監督は決して無能ではない。例えば、昨年の埼玉シンガポール戦は、トップ下の香川が強引にペナルティエリアに進出し、岡崎の妨害ばかりしていた。しかし、春の埼玉シリア戦では、香川が広範な動きを見せることで、岡崎と的確な連係を見せてくれた。少々時間はかかるが、選手の特長を組み合わせること、そのものはうまい監督なのだ。
 ただ、真剣勝負で細かな守備のディテールを徹底するとか、流れを読んで交代カードを切るのは、少々弱いのかもしれないけれどもね。

 冷静に考えれば、明るい話題は多数ある。
 まずは原口元気である。先日のタイ戦は、先制点はもちろん様々な面で格段の貢献だった。いわゆるウィングハーフとして起用された原口は、精力的にボールを引き出し、縦への突破を幾度も試みる。日本がボールを奪われた直後の守備への切替の早さも格段。
 タイ戦では、原口に引っ張られたかのように、酒井高徳、酒井宏樹の両サイドバックがすばらしかった。幾度も幾度も機会をもらいながら、代表で中々はっきりした活躍をしてくれなかった2人が、90分間安定したプレイを見せてくれたのだ。2人は欧州でも定位置を確保し、好調だと言う。
3人とも決して若いとは言えないが、いわゆるロンドン世代のタレントが、自クラブで中核として活躍し、代表で明確な地位を確保しつつあるのだから、結構なことではないか。
 大島、浅野、植田のリオ五輪メンバへの期待も大きい。大島はUAE戦で守備面でミスが出たが、中盤での展開は中々のものだった。もう少し、最前線に積極的に飛び出して欲しかった思いもあったけれども。浅野は、敵が厚い守備ラインを構成してきてもなお、後方を突くことができるストライカ。タイ戦で腰が引けてしまい、強引にゴールを目指さなかったは残念だったが、それでも点をとった。アーセナルと言うクラブへの選択は、過去ないがしろにされた選手たちを考えると、不安山積だけれども。植田はアントラーズで出場機会を得られていないと言うが、とにかく五輪での守備は見事だった。今の日本のセンタバック陣で、一番不満がある「とにかく敵のロングボールをはね返す能力」は格段のものがあるのだし。五輪の勢いで、一気に代表での定位置確保を目指して欲しいところなのだが。
 言い換えると、リオで示されたように、若く新しいタレントは続々と登場しているのだ。ハリルホジッチ氏は、(観察対象としては)興味深いところがあり、ベテランに拘泥するところもあるが、結構大胆に大島や浅野を抜擢するところもある。今後の氏の選手選択がどうなっていくのか、愉しく見守っていきたい。
 もちろん、自クラブでの出場機会が限られ、コンディションが不十分にせよ、岡崎と長谷部と本田が、常にギリギリまで戦ってくれるのは言うまでもない。

 イラクは、伝統的に判断力とボール扱いに優れた選手を輩出するが、国情からどうしても長期にわたる代表選手強化が難しい環境にある。だから、短期集中の大会は強いが、長期のホームアンドアウエー方式となると、力を発揮しづらい傾向がある。今回も、リオ五輪代表選手を多く含むかなり平均年齢の若いチームで来ているのも、その証左となっている。
 したがって、守備のミスを減らす試合運びを行い、丁寧に攻撃を仕掛ければ、相当高い確率で勝てるはずだ。
 その上で、次に控える敵地豪州戦に向けての準備はどうなっているのか。厳しいタイトルマッチでの勝ち点積み上げと、次に向かっての1つ1つの積み上げ。時にその積み上げがうまく行き、時に失敗する。
 その、あれこれを、たっぷり堪能できる。

 ワールドカップ予選は最高の娯楽なのだ。
posted by 武藤文雄 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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