2017年08月18日

苦闘続くベガルタに、中野嘉大の勇気

 ベガルタ1-0サンフレッチェ。
 私にとっては、久々のユアテック詣でのこの試合、ベガルタは8試合ぶりの勝ち点3を獲得した。
 前半は残念な内容だったが、ハーフタイムの修正が絶品(詳細は後述)。後半は完全にペースを確保し、51分に奥埜が先制。以降は、再三すばやい速攻から分厚い攻めを見せ、好機をつかんだのだが追加点は奪えず。終盤、サンフレッチェのパワープレイに苦しめられたが、何とか守り切った。
 いや、1点差でリードし、終盤危うい場面に絶叫し、選手と共に戦い抜くのは、サポータ冥利の1つ。中々生観戦しない不良サポータが、このような快感を味わえたのだから、ありがたいことだ。

 前半のベガルタは攻守ともに機能しなかった。
 出場停止の平岡に代わり中央のDFに入った大岩が、判断よくラインを上げるのだが、左DF増嶋と左MF中野の反応が鈍く、オフサイドラインが上がらない。ために、サンフレッチェのワントップのパトリックに幾度もよい体制でボールを受けられて、難しい状況を作られた。チームとして、分厚い守備的なサッカーをねらっているのではないのだから、ラインを上げる勇気は必須なのだが。
 さらに悪いことに、攻めに転じたところで、左サイドでボールを受けた中野が前を向いて仕掛けようとせずに、内側を向いてボールを受ける。そのため、せっかくボールを確保して前に出ようとした他の選手の前進が止まってしまう。そうなると、せっかくタッチライン沿いでキープしたボールを、ピッチ中央に戻すことになり、敵MFにカットされ、いわゆるショートカウンタを食らうリスクも高まる。中野のような個人技で敵を抜き去る能力が高い選手は、前に出ようとするだけで、敵を警戒させ後方に押し下げることが可能になるのだが。やれるはずのタレントが、消極的なプレイに終始したのが、もどかしかった。

 しかし、後半状況は劇的に改善された。
 中野が勇気を発揮し、前を向いてボールを受け、前進するようになったのだ。そうすれば同サイドの増嶋も、ラインを上げられるようになる。すると、センタの大岩も一層前に出ることができる。結果として、中野の対面の丹羽は中野の突破を怖れて後方に下がり、戻りの遅いパトリックとアンデルソンロペスを孤立させることに成功、以降は完全にベガルタペースで試合は進む。51分の先制点も、動きがよくなった中野の前進から、西村が強シュート、GK中林がはじいたボールを、詰めていた奥埜が決めて先制したものだった。
 その後も試合はベガルタペースで続く。大岩を軸とした最終ラインの押し上げが効果的で、おもしろいように、中野、三田、富田、古林の4MFがルーズボールを拾い、左右のDF増嶋と椎橋がそこに加わり、効果的なボールが前線に入る。石原のいやらしいキープと、西村と奥埜の長駆も効果的で、ベガルタは幾度も好機をつかむ。しかし、どうしても2点目が奪えない。
 問題はこれだけ攻勢をとりながら、追加点を奪えなかったこと。まあ、こう言ってしまうと、身も蓋もないのだが、各選手のシュート力に課題があるのだ。特に、中野、古林、(古林に代わった)蜂須賀らが、アウトサイドから中央に切れ込んで、ほぼフリーでミドルシュートを狙うのだが決めきれない。どうしてもカットインしてのシュートと言うものは、敵GKからはシュートコースを見極められやすいものだから、GKのタイミングを外すなり、読まれづらいコースを狙うなりの工夫が欲しい。
 また、シャドーを務める西村だが、相手を抜ききる前にもっとシュートを狙う意識を高められないものか。強引な持ち出しは、ここ2〜3か月、ますます凄みを増している。そこに加えて、持ち上がろうとする時点で、どこに持ち出し、どこでシュートを打ち、どこに決めるのか、もっともっと意識を高めて欲しい。今シーズン着実に上昇する西村だからこそ、要求が贅沢になってくる。もちろん、シュート力と言う意味では最高のクリスランがいる。しかし、クリスランは、ボールを収める力が弱いだけに、フルタイム使うのが難しい。そうこう考えると、西村の一層の向上と工夫に期待したくなる。頼むぞ。
 余談ながら、元サンフレッチェの石原と、かつてのチームメートの千葉と水本との丁々発止は、何ともおもしろいものだった。お互い長所短所や、プレイイングディスタンスを知りぬいているのだろう。絵に描いたような、騙し騙されの攻防は、実に見どころが多かった。さらに余談、石原のボールの受け方、ターン、身体の入れ方などを集めた映像を、どなたか作ってもらえないだろうか。サッカーの難しさがわかってきた小学校上学年や中学生に、恰好の教材となると思うのだが。
 最後の10分、サンフレッチェはパワープレイに転じる。パトリック、アンデルソンロペスに工藤が並ぶFW陣は、中々強力ゆえ、ほうりこまれるとさすがに劣勢となる。こういう時こそ、ラインを高くして、パワープレイをさせないように中盤を機能させたいところだったが、うまくいかず最後は押し込まれるままとなってしまった。それでも、各選手の献身的努力と、シュミットのファインプレイで何とか零封に成功、何とか勝ちきることができた。やれやれである。
 このあたりは、ボランチの運動量確保に課題があるように思う。渡邊監督の、主将富田とゲームメーカ三田への信頼は絶大で、(それは結構なことなのだが)2人が少々疲弊しても、交代しない。しかし、このように単純な方策で押し込まれてしまう欠点の改善は必須だ。2人をどうしてもピッチに残したいのならば、三田を一列上げて、梁や藤村をボランチに起用し運動量を確保する手段もあると思うのだが。

 ベガルタにとっては、本当に貴重な勝ち点3確保となった。結果も嬉しかったが、試合内容、特に後半の内容がよかったからだ。
 6月後半から7月上旬にかけてのホームでのセレッソ戦、ガンバ戦は、かなり質の高い攻撃ができたのは確かだったが、守備はガタガタだった。さらに、続くヴィッセル戦では、名将ネルシーニョ氏に両翼を的確に抑えられ有効な攻撃はできず、守備面の弱点も執拗に狙われ完敗し、中断期間を迎えた。さすがに渡邊監督も、まずいと思ったのだろう、中断期間は守備の修正に多くの時間を割いた模様で、レイソル戦以降、守備はかなり改善された。ところが、その背反か、攻撃はほとんど機能しなくなっていた。
 レイソル戦の終了間際の同点弾は、どう考えても幸運の賜物。続くアントラーズ戦は、濃霧と言う不運はあったものの、シュートは僅か1本。そして、連戦で行われたジュビロ戦は、敵の組織的なフォアチェックを抜け出せず、「よくもまあ失点しなかったものだ」と言う超幸運な0対0だった。
 そうこう考えると、後半完全にペースをつかみ、幾度も好機をつかみ勝ち取ったこの勝利は本当に重要だ。しかも、守備面で大きな破綻もなかったのだし。

 今シーズン、従来のいわゆる4-4-2から、3-4-3に配置を切り替え、両サイドを前面に押し出すやり方を採用したベガルタ。その前面への押し上げが奏功し、相手の監督から、お褒めの言葉を頂戴した試合もあった。しかし、落ち着いて振り返ってみると、明確な成果を発揮した試合は案外と少ない。守備面で大きな破綻がなく、良好な攻撃ができた試合は、敵地で3-0と快勝したエスパルス戦と、同じく敵地で押し込みながら1-1の引き分けに終わったマリノス戦くらいではなかったか。
 今後、このサンフレッチェ戦のように、守備面の課題を丁寧につぶした上で、いかにマイボールを大事にして人数をかけた攻撃をしっかりやり遂げることができるか。ベガルタが、上位進出を目指すためには、サッカーの質を上げていくしかないのだ。
 続くのは敵地での、アルビレックス戦、コンサドーレ戦。共に今シーズンは苦闘しているクラブだが、試合内容は悪くなく、選手の個人能力も我が軍とは、ほぼ互角と関げてよいだろう。彼我の戦闘能力差、残留争いの星勘定、そして敵にとってホームゲームであることを考えれば、両クラブともベガルタから勝ち点3を獲得することを目指してくるのは自明だ。
 その難敵を相手とするときに重要なのは、試合内容の充実に尽きる。ようやく獲得しつつある攻守のバランス、両翼の勇気、シュートの改善、終盤までの運動力の確保。これらを、しっかりと行うことが、今後の上位進出はもちろん、この2試合でのより多くの勝ち点獲得にも重要なはずだ。
 よい成果を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 20:26| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月04日

石川直樹との別れ

 石川直樹が、コンサドーレに完全移籍した。
 今シーズンに入り、スタメンの座を奪われていた石川。したがって、他クラブからオファーがあれば、石川が移籍の決断をするのは不思議ではない。ベガルタにとっては貴重な控え選手ゆえ、戦闘能力と言う意味でも痛いし、何より石川がいなくなると考えると寂しい。しかし、ここは快く送り出すしかない。そして、新たな環境での活躍を期待したい。ベガルタ戦以外でだが。
 それにしても、この4年半の貢献には感謝しても感謝しきれない。特に2014年シーズンに、我々がJ1に残留できたのは、石川の八面六臂の活躍があってのこと。あの難しい時期のベガルタを支えてくれた石川のプレイ振りを、私は忘れることができない。

 石川は、ベガルタにACLに出場したの2013年シーズンに、ベガルタに加入した。
 当時のベガルタは、菅井、梁、関口、富田と言った2000年代前半に加入した生え抜き選手に加え、J1再昇格の2010年シーズン前後に獲得した、林、鎌田、角田、太田、赤嶺、そしてウイルソン、さらには朴柱成と言った、移籍で獲得したタレントの個人能力を存分に発揮させることで輝いたチームだった。こう言ったピンポイントの移籍選手獲得の格段のうまさと、手倉森監督の格段の手腕により、我々はACL出場の栄冠をつかむことができた。
 けれども、そこには背反があった。それぞれの選手たちは、みな己の選手としてのピークを迎える年齢、つまり20代後半にベガルタにやってきた。そのため、2014年シーズンには一気に反動が来た。チームの老齢化が隠しようがなくなったのだ。
 その2014年シーズンに常時出場し、チームを支えたのが、石川だった。石川はベガルタの一番難しい時期を支えた存在だったのだ。そして、翌2015年シーズンより、ベガルタは奥埜に代表される自前の若手選手を次々に登場させ、新たなステージに移ることができた。

 石川はセンタバックもサイドバックもこなし、左足のキックが魅力。その左足は、センタバックでは高精度のロングフィードに、サイドバックでは好クロスに活かされる。左利きで、いずれの位置もこなせるタレントは日本では珍しい。私的には、日本のマルディーニなのだ。
 守備においては、いわゆるスピードは今一歩だが、敵の攻撃を読む能力に秀でている。ただし、昨シーズンあたりから、年齢的なこともあるだろうが、単純なスピード不足で敵のサイドプレイヤに突破を許す頻度が増えてきて、「そろそろサイドバックは難しいかな」と言う印象だった。
 そして、ベガルタが今シーズン3DFを採用したこともあり、石川はいわゆる左のセンタバックで起用された。ところが、そうなると局面によっては、サイドでの守備が必要となり、上記したスピード不足の課題を露呈することもあった。そのため、敵FWへの応対が丁寧な増嶋に定位置を奪われた格好となっていた。
 それでも、石川はルヴァンカップでは主将を務め、2次ラウンド進出を支え、ベガルタにとっては、貴重な貴重な控えの守備者った。そして、勤勉な石川のことだ。丁寧に自分の長所短所を整理し、レギュラ奪回を狙っていたはずだ。その奪回劇を堪能させてもらう前に、コンサドーレからのオファーが届いたと言うことだろう。

 石川の移籍が発表された日に行われたレイソル戦。同じポジションに椎橋慧也が抜擢された。椎橋は、落ち着いたポジション修正、敵の縦パスへのはね返し、正確なフィードを見せてくれた。そして見事なドリブルの攻め上がりから、石原に決定的なラストパスも通した。もちろん、加速したクリスティアーノや伊東に、後方を突かれるなど、肝心の守備はまだまだ課題は多い。それでも、椎橋のプレイは我々に大きな期待を抱かせるものだった。石川が去ることにより、椎橋は機会を得た。そして、椎橋と同年齢の小島や常田に機会が訪れる可能性があるだろう。さらには、3日には新しいブラジル人CBのヴィシニウスの獲得が発表された。去る者があれば、来る者もいるのだ。

 改めて、4年半の間、ベガルタのために粉骨砕身してくれた石川直樹に感謝したい。ありがとうございました。
posted by 武藤文雄 at 01:23| Comment(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする