2018年09月03日

李承佑の才気 −アジア大会2018準優勝−

 延長前半3分のことだった。左サイドから強引に切り込む孫興慜に対し、日本のDF陣は慎重に間を測る。孫興慜がもうワンタッチしようとした直前、突然中央から進出した李承佑が孫興慜からボールをかっさらう形でダイレクトで左足で強シュート。孫の動きに集中していた日本DF陣はブロックすらできず、好セーブを続けていた日本GK小島の反応も遅れ、ボールはネットを揺らした。
 日本のDF陣も、孫興慜がシュートに持ち込もうとするフェイントから、ラストパスを狙うことは予測の1つに入れていたはずだ。しかし、大エースのドリブルを強引に奪って,、別な選手がダイレクトシュートを狙うとは。日本守備陣はもちろん、孫興慜を含めた韓国選手たちも、李承佑を除いては誰もが予測だにしていなかった。正に見事なアイデア、完全にやられてしまった。あんな攻撃をされたら、世界のどのようなチームの守備網でも崩されてしまうだろう。いったい、李承佑はいつどのようなタイミングであのシュートを発想したのだろうか。
 それまでの90分+αを、韓国は個人個人の1対1の強さの差で、日本を押し込んでいた。けれども、フィニッシュが単調なこともあり、日本は粘り強く守っていた。特に、後半半ば以降は、韓国にも攻め疲れが見受けられ、日本も散発的に好機をつかめるようになってきた。たまらず、韓国の金鶴範監督は、この日ベンチに置いていた李承佑を起用するが、チーム全体に疲労感が漂っており効果的な攻撃にはつながらず、試合は延長戦へと進んだ。日本のねらい通りだったのだが。

 毎回のことだが、日本はこの大会に次回五輪用の年齢的にも若いチームで臨んでいる。さらに、シーズン真っ最中と言う悪条件が重なり、各クラブからは1名のみ選考。しかも、直前まで各選手はリーグ戦を戦っているだけに、準備合宿もままならなず、戦いながら、体調も連係も整えていく必要がある。
 1次ラウンドでは、真っ当な連係にほど遠い状態のチームで、どうなることかと思わせた。けれども、2次ラウンドに入り、状況は格段に改善。少しずつ連係も充実。チーム全体として守備をしっかり固め、苦しい場面は我慢を重ね、後半に敵の隙を突きリードを奪い勝ち切る堅実な戦いで、決勝進出に成功した。
 ただ、決勝戦のチームは満身創痍だった。上記延長で先制された時間帯も、フレッシュな交替選手を起用したいところだったが、森保監督はギリギリまで交替に消極的だった。これは、負傷や体調不良で使えない選手もいたのみならず、準決勝まであまり戦術的に機能しない選手もいたためだったようだ。
 優勝できなかったのは残念だが、日本好素材の若者たちが、年齢的に上の韓国に苦杯すると言う、願ってもない失敗経験を積むことができたのだ。いや、単なる失敗経験にはとどまらない。あそこまで粘り抜いたことで、あの李承佑の神業ゴールを呼び込んだのだ。小島も立田も原も板倉も、あの神業をどうやったら防げたか、今後のサッカー人生で悩みぬき、糧としてくれることだろう。これ以上何を望むと言うのだ。
 各選手にもよい経験になった。森保氏も五輪の準備を進めることができた。我々サポータもよい試合を多数楽しめた。と考えると、とてもよい大会だった。めでたし、めだたし。

 などと冷静に考えれらるわけないだろう。
 一両日たった今でも、李承佑に、完璧な才気を見せつけられた悔しさから脱することはできない。この若者は、弱冠20歳と言う。今後も我々を悩ませる厄介な存在になっていくことだろう。
 板倉よ。「李承佑にやられた決勝戦」の悔しさを忘れるな。
posted by 武藤文雄 at 23:16| Comment(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする