2021年03月30日

東京五輪代表チーム、めでたくアルゼンチンに快勝

 アルゼンチンを迎えての東京五輪強化試合。味の素での初戦の0-1の敗戦後、今日は3-0での快勝。
 何より、この難しい疫病禍下に、よい準備試合を企画した関係者に敬意を表したい。いわゆるインタナショナルマッチデイをうまく使って、本腰で金メダルをねらっている世界最強国を招聘。双方とも強化が難しい中、欧州と自国の選手を集め、2試合180分間強化試合を行えた。そして、我々サポータも、Jやアルゼンチンや欧州で世界最高峰をめざす野心的な若者たちの奮闘を楽しめた。
 初戦はアルゼンチン各選手は長旅の影響をあまり感じさせず、球際の強さを発揮。日本はアルゼンチンにかまえられると、単調なロングパスや強引なドリブルを目指すことが多く、攻めあぐんだ。加えて、アルゼンチンの4DFの粘り強さは相当なもの、スコアこそ0-1だったが完敗だった。

 ところが今日の第2戦は状況が一変。立ち上がりから、日本はハイプレスでアルゼンチンに自由を与えない。アルゼンチンもさすがで、激しいチェックを受けて立ち、球際の強さと各自の前進力で対応、見応えのある試合が展開される。
 そう言ったせわしないくらいの試合で、圧巻だったのは田中碧。22人の若者の中で、ただ一人圧倒的な存在感を見せた。アルゼンチンの寄せが厳しいと、ペアを組んだ板倉なり、両サイドDFの古賀、原に早々にはたき、巧みにリターンを受ける。フリーで前にスペースがあればスッとドリブルで前進し、追いすがるアルゼンチン選手を押さえるコースを取り、ファウルを誘う。林や久保や相馬がよい位置取りに立つと素早く正確なパスを通す。
 前半終盤の先制点。CBの瀬古がまったくのフリーで狙いすましたロングフィードから、売り出し中の林が見事な動き出しで抜け出しGKと1対1、ワンフェイントいれて見事なグラウンダの一撃。アルゼンチンは瀬古にプレッシャをかけられないだけでなく、最終ラインも中途半端に上げるでもなく、2CBのカバーリングもおかしかった。これは、その直前の田中碧がしかけた崩しがポイントだった。冴えわたる碧は、中盤で4人に囲まれながら、巧みな抜け出しから、バイタルの食野(だと思った)にいやらしい縦パスを通した。アルゼンチンDFは、この日本の攻撃をかろうじてかき出したが、それを2CBの町田と瀬古が拾ったわけだ。これだけ、中盤でバランスが崩れれば、前線のプレスも、最終ラインのラインも、そりゃうまくいかんわな。
 今日の碧のプレイで唯一不満を感じたのは、後半アルゼンチンのストライカのガイチにミドルシュートを許した場面。自陣バイタル近くで、バルガスとガイチとのからみを止め切れなかった。あそこはキッチリと守って欲しかった。かつて、ベッケンバウアーやファルカンやレドンドやピルロは、あのような局面で、絶対にやられなかったよ。
 来年のワールドカップ本大会、遠藤航、守田、田中碧のトレスボランチは確定なのではないかと思わせるプレイ振りだった。遠藤爺の再来と言うのは簡単だが、遠藤爺が日本の中盤に君臨したのは20代後半だった。碧はまだ22歳。まこと、めでたいことである。
 まあ、Jリーグでの活躍を思い起こせば、この程度のプレイは当然なのかもしれないけれど。

 碧の存在だけで、初戦とはまったく異なる展開となった。そのため、五輪に向けてのメンバ選定と言う視点では、この2試合目に起用された選手が、圧倒的に有利なことになってしまった。先制点を決めた林、原、瀬古、町田、古賀の4DFのタフな戦い、食野と相馬の献身。

 ここで注目すべきは、2試合連続スタメン起用された久保と板倉である。
 久保はプレイが雑なことが気になった。試合が終始日本ペースで進んだこともあり、アルゼンチンの守備がかなりラフ。さらにこの日お主審が手を使うプレイに甘いことはあって難しい状況だったことは理解できる。しかし、プレイを常にトップスピードで行おうとし過ぎるのだ。例えば、前線に残っていて後方からフィードを受ける場面で、敵DFのプレッシャからのがれようとして斜め後方に急いでダッシュし過ぎて、結果ボールがうまく収まらない。持ち前の変化あふれるドリブルやフェイント直後に、急ぎ過ぎるのか、パスが非常に雑になる。後半序盤、久保が見事に右サイドを崩し、相馬に出したラストパスの場面(直後相馬がシュートをポストに当てた)。ラストパスのボールは、相馬がトラップしやすいやや前方ではなく、僅かに後方に流れ、相馬は加速をシュートに乗せられなかった。とにかく、もっと丁寧にプレイしてほしいのだが。
 考えてみれば、スペインリーグでも同様な印象がある。右サイドで相手を見事に出し抜いた直後に、味方へのパスが決まらない場面が多い。まあ、スピードと丁寧さのバランスは、どのような選手でも永遠の課題。まして、久保はまだ19歳で、このチームの中でも若いのだからしかたないのかもしれない。
 ただし、この五輪代表でFWと攻撃的MFの議席は6枚程度だろう。そのうち1枚はオーバエージに使われる可能性がある。そして、FWは先制点を決めた林、今回もハードワークでがんばった田川。そして、負傷で選考外になったがJで実績を残している上田と前田がいる。さらに攻撃的MFは、(このチームは田中碧のチームなので、同じクラブの)三笘の選考は有力。そうなると、久保は堂安、食野、三好、相馬らと僅かな残り議席を争うことになる。
 などと文句を言っていたら、CKから板倉に見事な2アシスト。マスコミがキャーキャー騒ぐのはさておき、やはりこの男は何か持っているのだろうな。
 一方今日腕章を巻いた板倉。オランダでかなりの実績を残したとのことで相当期待していた。しかし…
 初戦は失点時に、バルガスに簡単に抜かれた淡泊な対応に失望した。さらに、時折やらかすミスパスも相変わらず。これでは、ベガルタ時代に再三見せてくれた「俺たちの板倉」と変わりないではないかと、何とも嬉しいような悲しいような何とも微妙な気持ちを抱いたものだった。
 2戦目は、すべてがうまく行った。田中碧と組んだボランチでは、碧に自由にプレイさせるように、位置取りを修正しながら、目の前の敵を刈り取ればよい。板倉はその献身を90分継続し、東京五輪本大会で田中碧と中盤を組む第一候補になってしまった。しかも、CKから2得点。セットプレイからよく点をとるのはベガルタ時代もそうだったから、やはり「俺たちの板倉」には変わりないのですけれど。

 と、まことめでたくアルゼンチンとの協会試合を終えたわけだが。では東京五輪(開催されるとしたらですが)への準備は順調と言えるかと言うと結構微妙に思う。
 元々、今回の五輪代表チームは予選がなく、さらにA代表との中途半端な混合強化を行なった事もあり、ベストメンバすら曖昧だった。そして、せっかく今回アルゼンチンを呼んだ強化試合を組んだが冨安、堂安、前田、上田らが不在。田中碧も1試合しかプレイできず、さらに今回選考外にもJで相当の活躍をしている選手がいる。このように厚過ぎる選手層から、どのように選手を取捨選択するのか。
 贅沢な愉しみだと、ここは素直に喜んでおくか。
posted by 武藤文雄 at 01:11| Comment(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月26日

痛恨のあと1点

 1974年、西ドイツワールドカップの年だから、もう47年前になるのか。今60歳の私は、当時中学2年だった。日韓定期戦、日本は釜本邦茂の2得点などで、4-1の完勝。テレビ桟敷で完勝を堪能した私は、「韓国に勝つこともあるんだ、それも3点差だ」と、子供心にも素直に感動していた。
 しかし、その後もほとんど韓国に勝つことのできない日々が続く。あの赤いユニフォームを見る度の忌々しさ。その思いが経ち切られたのは、オフト氏が監督就任した92年。ダイナスティカップ(日本、韓国、中国、北朝鮮の4か国の大会)。日本(これまでこの大会で、万年最下位だった)は3チーム総当たりの上位2チームでの決勝の日韓戦、延長戦の2-2の死闘からPK戦でこの厄介な難敵を倒し、初優勝したのだ。以降、我々はアジア最強国の一角となり、この厄介な隣国とは互角の足の引っ張り合いを演じてきたのは、皆さんご存知の通り。

 今日の日韓戦、キックオフ直後から両国の戦闘能力差が明らかなのは、誰の目にも明らかとなった。韓国の中盤選手は、日本の前線からの組織守備を、まったく抜け出せないのだ。考えてみたら、孫興民が負傷で不在、聞いたことのない若い選手も多い。「神童だ」、「MVPだ」と、ワーワーうるさい日本テレビのアナウンサによると、かなりの選手が五輪代表世代とのこと、そうか一軍半なのか。一方、昨日も述べたように、日本はほぼベストメンバ。勝って当然の試合だったのだ。
 かくして日本の猛攻は続く。そして16分、日本の右サイドからの崩しを、韓国がしのいだところで日本が前線で集中守備、大迫の優美なヒールパスから、攻撃参加後居残りの形になっていた山根がフリーで抜け出し強烈に決め先制した。
 ここで韓国は理解に苦しむ策をとる。先制し、いったん落ち着いて引いてかまえる日本に対して、ボールを回し前に出てきたのだ。中盤の遠藤航と守田の体調は十分、さらに後方は冨安と麻也。韓国の一軍半が、前半体力が残っていて後方に引いた日本をそう簡単に崩せるわけがないではないか。おかげさまで、日本は逆襲速攻を楽しめた。うまく刈り取った速攻から、大迫が知的にキープし、右サイドから鎌田が抜け出す。2点差、よしよし。
 攻勢をとる時間帯に、しっかり点をとれるかどうかが勝負を左右するのがサッカーと言うものだが、猛攻の時間帯の先制、敵を引き寄せての追加点。理想の展開だ。ハーフタイムの時点で、この試合の興味は、日韓戦史上初めての4点差にできるかどうかに絞られた。47年前を思い起こしながら。

 後半も日本ペース。これだけ戦闘能力差があると、韓国がとれる手段は唯一。後方を固め、無理に攻めず、マイボールになったら丁寧にボールキープ。そうすれば、2点差の日本は無理にはボール奪取には行かない。そうやって時計を進めれば、交通事故を含めた好機も生まれる。しかし、韓国代表監督ベント氏は、この親善試合にそこまでリアリズムを持ち込まなかった。
 結果、日本はおもしろいように好機をつかみ続ける。南野、江坂、浅野らが決定機をつかむが、後半から起用された金承奎がすばらしいセーブを見せ、中々3点目が入らない。南野はペナルティエリア内で、実に冷静なプレイを見せて(魅せて)くれたのだが、2度の決定機をつかんだが、シュートは枠にいかなかった。江坂の連続シュートを金が防いだ場面の評価はレイソルサポータの方々にお任せしよう。そして、リードした試合終盤に、大迫に代えて高速浅野を起用するのは有効なことが示されたけれど、決めろよ!
 日本のピンチは2回あったが、すべてミスから。後方で韓国のプレスを外し、前線に出ようとする際に、左DFの佐々木、交代出場した小川が、中央に不用意なパスをしてしまったところから。もっとも、先発の佐々木は終始安定した守備を見せたし、佐々木に代わって起用された小川は幾度もよいクロスを上げた。長友がよい年齢になってきているだけに、このポジションは重要。小さなミスを丁寧に反省して欲しい。
 日本の3点目はようやく83分。江坂のCKから遠藤航がヘディングで決めたもの。麻也が敵DFを引き付け、その裏にフリーで入った遠藤が見事なヘディングを見せてくれた。江坂の正確なキックは言うまでもなし。
 その後も日本は落ち着いて韓国を揺さぶる。古橋が2回決定機を得たが決め切れず。特に古橋は、シュートのうまさに定評がある選手だけに決めてほしかったな。2022年日本がベスト8以上に行くためには多産系の点取り屋が欲しい。それに一番近いのが古橋だと期待しているのです。

 かくして、4点差にはならず試合終了。47年間抱き続けた夢はまた叶えられなかった。まあ、いいや。夢は叶わないから楽しいのだしw。
 もっとも、今日は相手が弱かったことwと、山根と鎌田がキッチリ点をとってくれたことで楽勝となった。しかし、先日のメキシコ戦のように、序盤攻勢をとっても決め切れず、かつ相手が強いと、事態は混迷化する。今はそう言った難度の高い問題を気にしてもしかたがないかもいれないな。まずは弱い相手を軽くひねり、4点差にできなかった悔しさを肴に飲むのが楽しいな。グワッハッハッハッハ!

 でも、4点差にしたかったな。浅野も古橋も励め!
posted by 武藤文雄 at 00:33| Comment(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月25日

日韓戦前夜2021

 明日は日韓戦。チケットを取り損ねTV桟敷での観戦となるが、この疫病禍下、しかたあるまい。日本協会サッカー後援会から「今回は後援会特典はなし」との連絡がなかったのは相当不満だが、これは別途。
 今回のA代表戦は、何があっても勝たねばならない日韓戦(これは親善試合)、普通に戦えばまず勝ち点3確保は間違いないW杯予選モンゴル戦(これは公式戦、もっとも無観客試合だが)となる。どちらの試合を優先するのかと言う野暮な議論を含めて。

 これまで散々森保氏をからかってきた私だが、今回のメンバ選考は納得している。麻也、冨安、遠藤航、伊東、南野、鎌田、大迫、この7人は、これまでの森保ジャパンで確固とした活躍を見せてきたいわゆる中軸選手たちを欧州から選考。現実的に今回の選考外でA代表中核的存在なのは、酒井宏樹、堂安くらいではないか(柴崎と久保の評価は難しいが)。そこに、Jで活躍している名手たちを加わる。さらに、ここ最近セルビアでボコボコ点をとっている浅野と、昨シーズンJを席巻した守田。

 疫病禍前だが、森保監督が五輪代表を兼任しているため、A代表と五輪代表に選考される選手が混合し、代表チームそのものが何が何だかわからなくなっていた。若く未経験な選手が、森保氏の兼任都合でA代表に選考されるのは健全ではない。そのような選手が登場すると、TV局は大喜びするが、A代表の権威は下がってしまう。
 加えて、森保氏は準備試合で、複数の選手を総とっかえする傾向があり、健全なバックアップ育成がうまくいっていなかった。特に圧倒的な存在感があるCFの大迫のバックアップは、いまだ確立していない。たとえば、19年アジアカップ、北川や武藤をバックアップと考えるならば、いかに南野と組み合わせるかを考えるべきなのだが、そのような準備はほとんど行われなかった。アジアカップ後も同様。南野と鎌田が欧州で充実したプレイを見せているが、大迫不在時に彼らを活性化する工夫は見せてもらえなかった。たとえば鈴木武蔵を起用しても、大迫と全く異なるスタイルの武蔵を活かそうとするやり方をねらっているようにはとても思えなかったのだ。

 また今回も上記のフラストレーションを繰り返されるのかもしれない。采配に切歯扼腕しながら、TV映像には淡々とメモをとる森保氏w、とか。それはそれで、この監督の楽しみ方なのだろう。代表監督が、思うような選手を起用しないストレスも、サッカーの重要な愉しみなのだし。
 一方で、上記した通り今回欧州からはせ参じてくれた7人は、森保氏に選考されれば、常に相応のレベルのプレイを見せてくれていた。彼らを軸に、中谷、山根、川辺、江坂、古橋と言ったタレントが組み合わされての活性化は本当に楽しみ(個人的には坂元の離脱が残念なのだが)。もちろん、浅野も守田も。しかも、こう言ったメンバで戦う相方が韓国なのだから、堪えられない。
 もちろん、不安もある。6日間でA代表と五輪代表は4試合をこなさなければならない。過去も森保氏は、このようなA代表と五輪代表の試合が錯綜する日程下では、ひどい戦績を残していることだ。まあ、いいや、よくないけれどw。

 毎週毎週底辺でもがくJも楽しいけれど、やはり代表戦もいいな。
posted by 武藤文雄 at 00:47| Comment(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする