ただ、今シーズンは、体調が上がらず出場機会を失っており、復調が待たれるところでの退団発表。帰国の検討、他のJクラブへの移籍希望など報報が錯綜しているが、定位置を失った現状を鑑み、新たな道を求めたと言うことだろう。
もちろん、私たちベガルタサポータにとって格段の思い出を残してくれた選手だった。特に絶頂だった19年シーズンは、他クラブのサポータにも相当な印象を残したのではないか。そのくらい格段の守備能力を見せてくれたから。
そう絶頂時の島尾は最高の守備者だった。
敵フォワードに対し、自分の間合いに入るや否や、体重が乗った激しいスタンディングタックルでボールを奪う(もちろん、ボールにのみ当たるフェアなタックル)。あるいは、フォワードとボールの間に強引に身体を入れボールキープしてしまう。
鍛え抜かれたフィジカルが島尾の武器だったのは、皆さんご存知の通り。しかし、肉体的に強いセンタバックの多くとは一線を画した強みを誇っていた。普通の強靭なセンタバックは前線に差し込まれたボールのはね返しや敵フォワードを振り向かさないプレイを得意とする。絶頂時の島尾は、もちろんはね返し力も、振り向かさない守備も見事だった。しかし、島尾の武器は、そこにとどまるものではなく、自ゴールに向かってくるフォワードからのボール奪取が格段にうまかった。足がそれほど速いとは言えないだけに、その奪取力の鮮やかさは光った。そして、島尾のその長所は「よし取れる、よしマイボールにできる」との判断、選択、決心の適切さにあった。決断力に富む守備能力とでも言おうか。言い換えると、速くはないが早い守備者だったとでも言おうか。
日本サッカー界にとっても、島尾のプレイは示唆に富むものだった。島尾のようなボールを奪取し自分のものにする能力に特化したセンタバックは、最近中々出てこないように思うのは私だけか。Jリーグ黎明期には薩川了洋、大森征之のように敵FWを止めるのが滅法うまいセンタバックが結構いたのだが。ただでさえ、最近のサッカー界はセンタバックに期待される能力は複雑化、多岐化しているので、対人守備能力に特化した選手は出てきづらいのかもしれない。
いずれにせよ、島尾は古典的な対人守備能力に特化したセンタバックだった。もっとも、ベガルタ加入直後は少々怪しかったラインコントロールも最終ラインからのつなぎも、着実に上達してくれたけど。
今シーズン、島尾の体調は中々上がらなかった。そうなると、格段の決断力も裏目となり、簡単に逆をとられたり、ファウルから決定的な失点にからむことも増えてくる。
その典型が4月のヴィッセル神戸戦だった。ベガルタが中盤でボールを失うや否や、守備ラインの裏に飛び出す古橋亨梧。島尾は気鋭のこのストライカへ後手を踏み。敢えなく裏をとられ開始早々に失点してしまう。さらにコーナキックから売り出し中の神戸センタバック菊池流帆に完全に振り切られ追加点を許した。島尾本人にとっても屈辱的な失点だったと思う。このあたりから、島尾はスタメン落ち、ベンチに入ることも少なくなっていた。冒頭に述べたように、島尾本人が異なる道を考えることにしたのだろう。
改めて、ベガルタへの貢献に感謝。ありがとうございました。カニマンボ。
次の活躍の場所と機会が早々に見つかることを期待したい。そして、あの鮮やかなボール奪取を、私は絶対に忘れない。