2021年10月09日

四半世紀振りのヒリヒリ感

 正直言います。腹が立ってしかたがないが、久々に心底興奮しています。

 埼玉スタジアム豪州戦。24年ぶりに我々に帰ってきたこのヒリヒリ感。何があっても、同格の相手から勝ち点3獲得が必須のワールドカップ予選。
 1993年10月25日カタールドーハはカリファスタジアムでの韓国戦(1-0で快勝しUSAへのチケットを確保したように思えたのだが…)、あるいは1997年10月26日国立競技場でのUAE戦(1-1で引き分け、自力でのフランス大会出場権は消えてしまったが、当のUAEがその後ウズベキスタンと引き分け、日本は生き返りジョホールバルへと…)。ここまで追い込まれ、ヒリヒリする予選は四半世紀振りではないか。
 私は試合直後に、当然田嶋会長は森保氏を更迭すると思っていた。あるいは森保氏が自ら辞任すると思っていた。けれども、今のところ、そのような動きはないようだ。
 おかげさまで、我々は豪州戦で最高のエンタテインメントを楽しむことができる。すべては、森保氏と、森保氏をクビにしない田嶋幸三氏のおかげである。

 それにしても、森保氏の学習しない能力には感心する。
 このサウジ戦、高温多湿の敵地戦ゆえ難しい試合となることは自明だった。守備重視の試合をしたのは正しい選択だったと思う。長友も酒井も無理に前に上がらず、落ち着いて試合を進めた。序盤のセットプレイで許したピンチを除けば、ほとんどサウジに好機を与えない。前半半ばで主審の癖をつかみ、自陣近い場所でのファウルもあまり取られなかった。各選手の知性の顕われと言えるだろう。
 しかし、後半序盤から柴崎の不振は明らかだった。幾度もボールを奪われ、サウジに好機を提供し続ける。体調の問題もあるだろうし、年齢的な問題もあるだろうし、最近のプレイ環境から強度が落ちている可能性もある。何より、ロシアで見せてくれた世界屈指の射程の長いパスは、もうほとんど見せてくれなくなっている。ともあれ、守備的に戦う試合で、柴崎に拘泥する理由がわからなかった。ボール奪取力と言う意味では守田が、飛ばすパスでの展開では田中碧が(いや田中碧の方がプレイ強度も柴崎より高いな)、明らかに柴崎を上回る。もちろん、柴崎の豊富な経験は守田や田中碧を凌駕するところはあるのだが。
 そして…

 驚いたのは失点直後の交代劇だ。すぐに柴崎に代えて守田の投入。失点直前に守備能力に長けた守田の交代を準備していたのだろう。これは引き分けでも構わない展開だったのでおかしくはない。しかし、リードされてしまったのだ。状況は変わったのだ。点を取りにいかなければならないのだ。ここは田中碧だろう。
 森保氏は、局面の修正能力が低いだけではない。一度決めた交代が、状況が変わったのにかかわらず修正できないのだ。五輪でも類似の下手くそな采配を見たのを思い出した。
 完勝した中国戦に指摘した通りのことが再現されただけだ。執拗だが繰り返す。
選手の体調を見極められないこと、選手交代について計画性がないこと、勝っている試合のクローズが稚拙なこと。そして、五輪での最大の失敗である選手の消耗対応を反省していないこと。要は森保氏は、1試合ずつ丁寧に勝ち切る用兵が決定的にお粗末なのだ。
 
 失点以降も各選手は知恵の限りを尽くして崩しを狙った。しかし、守田、遠藤航、原口、古橋、阿道、大迫では崩すパスや変化をつけるタレントに欠けた。落ち着いたキープも叶わなかった。試合終了直後、DAZNが田中碧を映していたのは、高額の放映権料を支払ったこの企業からの、せめてもの森保氏に対するイヤミだろう。

 森保氏は監督として全面的に無能なわけではない。
 選手を見る目はあり、丹念に準備してチームの選手層を厚くしてきた。また、このサウジ戦各選手にリスクを避けた試合を指示する判断力は持っている。
 けれども、選手の個性の組み合わせ、選手の体調の見極め、試合の機微を見た判断、そう言った能力が格段に低いのだ。これは今更、私が指摘するまでもなく、五輪からこのワールドカップ予選までのこの3ヶ月の真剣勝負で、田嶋氏を除くすべての人々に明らかになっている。ここまで明確になると、選手達にも森保氏の欠陥が明確に伝わってしまっていることだろう。

 10月12日、埼玉スタジアム2002、19時10分キックオフ、日本対豪州。
 日本サッカー史上最高級の選手達。
 そして彼らはまったく信頼できない監督と共に勝ち点3を獲得しなければならない。もちろん、我々サポータは全力を尽くし、選手達を支えなければならない。この疫病禍下、声は出せなくても、選手達を支えなければならない。繰り返すが、何があっても、選手達を支えなければならない。

 もう2度とこんなヒリヒリ感を味わう機会はないと思っていた。
 サッカーを愛していてよかった。
posted by 武藤文雄 at 00:40| Comment(2) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月02日

ベガルタまだまだ大丈夫だ

 ベガルタはこの文章を書いた直後にガンバに3-2で勝利。「シメシメ、俺様の言った通り」と思っていたら、エスパルスに1-2、ヴォルティスに0-1で苦杯。いよいよ尻に火がついた状態になってしまった。
 この連敗は、順位が近く僅かに当方より上位にいるクラブとの直接対決での敗戦。どんどん残留争いが苦しくなってくるわけで、勝ち点勘定的には本当に痛い。特にヴォルティス戦については、ホームで慎重に戦い、先方にほとんど好機を提供せずに戦い続け、何とか得点奪取を目指しもがき続けたところで、アディショナルタイムにCKから失点し苦杯。何とも味わい深い敗戦を味わうことができてしまった。

 いや、サポータ冥利に尽きるのですがね。

 このヴォルティス戦の失点は、先方に加入したばかりと言うノルウェー人ストライカのムシャガ・バケンガを福森がマークしきれずフリーでヘディングを許し、こぼれを第ベテランの石井秀典に決められたもの。先方はさぞや盛り上がるだろうなと思いに加え、さすがに「ここまでキッチリとバケンガは押さえてきたではないか」と愚痴を言いたくなるような失点だった。
 いやエスパルス戦の失点も中々だった。前半、エスパルスは鋭いフォアチェックが鋭く、サイドバックが押し下げられ、思うようにボールをキープできない。こうなると我慢するしかないのだが、焦りからかサイド攻撃の起点の蜂須賀が無理に持ち出そうとしては裏を突かれ、結果的にCKを与えての失点。「大事な試合で、どうして前半から無理をするのだ!」と言いたくなるものだった。
 さらに後半序盤に、守護神スウオビィクが無理なボールキープをひっかけられ追加点を許してしまった。我らが名手は、少々足下が怪しいところはあるが、ここまで明らかなミスは珍しい。ここまで幾多のピンチを救ってきてくれたクバに不満を唱えるつもりは一切ない。しかし、どうしてこの名手がこんなミスをしてしまったのか。
 結局のところ「勝ちたい、絶対に勝ち点3を獲得したい」と言う焦りが、守りを固めるべき時間帯に、攻めることまで考慮してしまい、空回りしてしまったと言うことだろう。
 もう済んだことだ。しかたがない。改善すればよいのだ。組織守備は十分に機能している。守らなければならない時は、そこに専念すれば大丈夫だ。

 もちろん攻撃には改善の余地がある。思うように好機を作れない、点が取れない、そのような焦りが上記の守備での不備を産んでいるのだし。
 苦しいのは攻撃的MF(言い換えればサイドMF)の層が薄いことだ。大ベテランの関口老と新人の加藤以外決定的なタレントがいない。残念ながら今年切り札として補強した秋山と氣田、ユース出身の佐々木、いずれも思ったように機能しないようだ。けれども、視野を広げれば、状況は改善する。例えばサイドバックでずっと起用されている真瀬や石原を1列前に使う手段もある。幾度か成功しているが中原をサイドMFで使う手もある。フォギーニョを起用し上原、松下をいわゆるインサイドMFに起用する4-3-3も有力な選択肢になるだろう
 幸い前線のタレントは揃っている。F・カルドーソはエスパルス戦でようやく点をとってくれたが、後方からの低いボールの受けは格段にうまい。今夏に補強した富樫はシューターとしての魅力は十分。赤崎は体質的に仕事の連続性に課題はあるが、最前線のどこにおいても知的なプレイを見せてくれる(西村をトップ下に下げ、赤崎にひたすらゴールを狙わせるのも有力なやり方もあると思うのだが)。
 そして、西村が豊富な運動量、長駆後にも仕事ができるフィジカル、他の選手へのスペース作りなど、J屈指のFWであることも間違いない。後はこの苦しい状況の中、屈指のFWから、屈指のストライカに化けてくれるだけでよいのだ。

 以上、ここ2試合連敗したベガルタを分析した。大丈夫だ。手倉森氏が前線の交通競位を適切に行い、後方の選手がいたずらに焦りをなくせば。

 無意味に楽観論を語るつもりはない。
 けれども、チームとしての練度は十分に整理されてきた。後は結果を出すだけなのだ。我々サポータは、それを信じて応援すればよいのだ。
posted by 武藤文雄 at 01:23| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする