2021年11月21日

私はベガルタ仙台の将来を楽観視している

 J2降格が決定した。
 今の感情を日本語化すると、どうなんだろう。空虚感と言うのだろうか。
 類似の感情は幾度か経験ある。2009年シーズンの入替戦の磐田、2003年シーズンの降格決定、1993年のドーハのアルアリスタジアム。もちろん悔しいし悲しい、胸が張り裂けそうだ。でも、胸は張り裂けそうだが、物理的に何かを失ったわけではない。誰かが肉体的に傷ついたり、もちろん命を落としたりもしていない。多額の資産を失ったわけではない。
 改めて思う。それでもここまで感情が揺さぶられるのだ。改めてサッカーのすばらしさを感じている。 

 今シーズン、ベガルタ仙台にとって最も重要な活動は、将来に渡りクラブとして存続できる体制再構築だった。そして、クラブは昨シーズンの債務超過問題を1年前倒しで来年度までに解決する目鼻を立てた。佐々木社長以下、ベガルタ仙台はその最大目標はしっかりこなしてくれた。また地味ながら、スポンサの増加や、広報活動の充実など、過去思うように進められなかった活動も、一定以上の成果を出している。
 そして今シーズン、2番目の目標はJ1残留だった。残念ながらそれに失敗したわけだ。
 J2降格は、クラブとしては衝撃的な出来事だが、クラブを未来永劫存続させるための、最優先とされる活動は成功しつつあることは忘れてはいけない。もちろん、この降格に伴い、直接ベガルタに関与している方々の収入などに残念な影響がある恐れはある。そのような方々に一介のサポータが無責任なことは語れないが、もっとも重要なのはクラブの永続的存続なのだ。

 元々、J1クラブの中では経営基盤の小さいクラブ。戦闘能力が優れた選手を集められているわけではない。また、上記した債務超過問題もあり、前向きな投資(特に補強面)が行いづらい状況もあった。数年前より改善されているとは言え若年層チームからの選手補強も、まだまだ不十分だ。
 その中で、約10年前に我がクラブで格段の成果を残し、五輪代表監督としても成果を見せた手倉森氏に託した今シーズン。結果は出なかった。
 J1残留に失敗したチーム戦略での失敗要素は、いくつも挙げられる。
 4-2-2-2を基本布陣としたが、いわゆる攻撃的サイドMFは、関口大老と新人の加藤以外のタレントは機能しなかった。移籍加入した氣田と秋山、シーズン中チームを去ったクエンカとマルチノス、潜在力は高そうだが負傷ばかりのオッティ。今シーズンも目立った活躍できなかったユース出身の至宝佐々木匠。シーズン前期待したタレントの多くが機能しなかった。終盤、中原や西村をこの位置に起用し機能させるに成功したのは確かだが、あまりに泥縄だった。湘南に先制点を許した場面、敵主将の右MF岡本がまったくフリーで前線進出しているのに、左サイドMFの西村は遥か彼方に位置取りしていたのが典型だった。
 中盤戦で、引き分けられる試合にもかかわらず、試合終盤に無理に勝ちを狙いに行き勝ち点を失ったのも痛かった。敵地札幌戦や、ユアテック福岡戦、清水戦がその典型。開幕直後は、様々な要因でチーム力が上がらず惨敗を繰り返す時期があったが、4月以降はいずれのチームと相応の戦いができるようになっていた。この3試合の終盤を丁寧に戦い、1試合でも勝ち点1を拾うことができていれば終盤戦の様相は随分と変わっていたはずだ。
 終盤、残留争いチームとの直接対決にことごとく敗れたわけだが、一方で神戸や名古屋など上位を争うチームとは相応の戦いができていた。これは最近の潮流となっているスカウティングによる各試合の対策が不十分だったとしか言いようがない。
 しかし、上記のような戦略不備は、一方で将来を見据えた各選手の成長・チームとしての基盤戦闘能力向上に寄与した可能性もある。来シーズンはJ2での戦いを余儀なくされるし、今シーズン経験を積んだ中心選手をどこまで保持できるかの問題もあるのだが。

 J2の戦いは非常に厳しいものがあるだろう。J1経験あるクラブがJ3に降格する事例もあるし、短期のJ1復帰が容易ではないことは自明のことだ。またCOVID-19影響で、基盤観客動員数が大幅に減ってしまった回復からの再スタートとなる。クラブ経営、若年層育成、補強、やらなければならないことは無数にあるだろう。、多くの企業の合同経営体制、曖昧な責任体制など、経営の根底にかかわる問題も山積している。多くのサポータが、悲観的な発言をしているのは理解できなくもない。
 けれども、私は楽観的だ。何故ならば、上記した通りベガルタ仙台の経営層は、今シーズン最大の難題を解決しつつあるからだ。直近の問題に対し、優先度をつけた実績を挙げている経営陣は信頼できる。
 ともあれ、サッカーなのだ。目先の試合に勝つことが重要なのは言うまでもない。まず今シーズンのまずは残り2試合、どのような戦いを行い、結果を出せるか。まずはそこに注目したい。この2試合をしっかり戦うことができるかどうかは、来シーズン、いや将来のベガルタにとって重要なはずだ。

 改めて、12年に渡りJ1を維持し、ACLも経験させてくれたすべてのベガルタ関係者に感謝したい。
 今シーズンも、ここまで結果も内容も思わしくない試合が多かったが、私としてはサポータ冥利に尽きる経験を積むことができた。残り2試合を丹念に戦うベガルタを楽しみにしている。そして来期は来期で、じっくりとベガルタを楽しめる。
 故郷にプロサッカークラブがあり、毎週末その奮闘を楽しむことができる。どんなに空虚感に襲われても、私は幸せだ。
posted by 武藤文雄 at 23:54| Comment(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする