首位横浜FCが勝点57、得失点差+13、2位のアルビレックス新潟が勝点56、得失点差+24、そして我がベガルタ仙台が勝点55、得失点差+20で3位。4、5、6位のファジアーノ岡山の勝点・得失点差が48・+12、Vファーレン長崎が47・+6、ロアッソ熊本も47・+4。このあたりまでが自動昇格権の2位以内に入れる可能性があるチームだろうか。
ベガルタとしては、残り12試合粛々と勝点と得失点差を積み上げ、2位以内に入ることに向け全力を尽くすこととなる。何とも重苦しい残り2ヶ月半の間、胃が痛くなるような週末を、ライバルクラブ関係者と共に楽しむことになる。正にサポータ冥利に尽きる充実した日々ではないか。
もっとも、勝とうが負けようが、調子がよかろうが悪かろうが、毎シーズン「サポータ冥利に尽きる」と講釈を垂れている私が言っても、説得力がないかもしれないがw。
簡単に今シーズンのベガルタのこれまでの戦いを振り返ってみる。
まずは、ベガルタ強化部門の慧眼。
降格した昨シーズンのメンバから、スウォビィク、アピアタウィア、上原、関口、西村と言った中心選手が抜けた。一方で降格し予算も厳しかろう状況で、杉本、若狭、金大鉉、内田、デサバト、大曽根、名倉、鎌田、遠藤、中山と実効的な選手の補強に成功し、それらの選手がみなチームに貢献している。さらにリーグ開幕後に中島も獲得。加えて、先日若狭が重傷を負った直後に佐藤瑶大を獲得。もはや中島はチームの大黒柱だし、佐藤もすぐCBとして出場している。今シーズンの強化部門の手腕は見事しか言いようがない。
もちろん、原崎監督の手腕も讃えられるべき。
4–2-2-2あるいは4-2-3-1の並びでサイドMFが中央に絞りサイドバックを前に出すのが基本布陣。前線からの組織守備で中盤でボールを刈り取り、ショートカウンタを仕掛ける。序盤戦はこう言った速攻が目立ったが、シーズンも1/4過ぎたあたりから少しずつ、最終ラインから執拗にボールを回し敵DFのズレを誘った遅攻も有効になってきた。
昨21年シーズンのベガルタ。序盤戦の守備崩壊や外国人選手補強失敗などもあり、攻撃の道筋を作り込むことができず、J2降格。選手の入れ替わり以前に、チームの基盤から再構築しなければならない状態だった。したがって、J2の上位争いに加わるまでには相当時間がかかるのではないかと、私は危惧していた。実際、開幕戦のホーム新潟戦は0-0だったが、チームの成熟度の差は著しく、引き分けは幸運と言う内容だった。ところが、その後のチームの進歩はすばらしく、上記のように組織的な速攻と遅攻を使い分けることのできるチームを比較的短時間で作り上げることに成功した。
しかも、序盤戦から、目先の結果にとらわれることなく、ローテーション気味に選手を起用。現状の登録選手でまとまった試合出場がないのは、第4GKの井岡と、このオフに重傷を負った松下のみ。登録選手ほとんどを戦力化することに成功、結果的に負傷者や疫病感染者が出ても、決定的な影響なく試合に臨めている。リーグ序盤から、シーズン終了時点の歓喜を目指す姿勢が貫かれてきたのだ。
夏季の移籍期間では上記の佐藤以外に新規獲得はなかったが、これも現状の選手層が充実している賜物。実際いずれのポジションも穴はない。もし補強するとしたら現状の選手を凌駕した能力の選手を求めることになる。そのような選手と言うと、J1で中核を担っているようなタレントとなり、現実的ではない。それよりは、シーズン終了後に、J1復帰祝いとして各選手やスタッフにボーナスを提供する方がよほど健全なカネの使い方と言うものだ。
ではここから、いかに抜け出し、J1自動昇格を目指すか。
陳腐な言い方になるが、このまま1試合ずつ丁寧に戦いを続ければよい。既に我々の攻撃力はJ2最高だ。総得点60がトップと言う結果もそうだが、手変え品変え、多くの選手が関与する攻撃内容は相当なレベルに達している。もちろん、勝負ごとだから相手がある。先方も、スカウティング、当方準備を外す工夫、試合中の駆け引きなど、様々な手を打ってくる。だからこそ、シーズン序盤から原崎氏が指向していた、多士済済のタレントを併用させるやり方は、一層有効になってくるはず。いずれのポジションにもタイプの異なる交替要員がいるのは効果的だ。
そして何より、もうすぐ松下が戻ってくる。これ以上の補強があろうか。松下の復帰により、一気にオプションが広がる。フォギーニョ(あるいはデサバト)と中島のドイスボランチが現状のチームの基軸。ここに松下が加わり融通無碍の変化あふれる展開や前線へのラストパスが加わる。もちろん中島を一列上げる選択肢が増えるから、攻撃面で最も頼りになる遠藤の疲弊を防ぐこともできる。
とは言えちょっと気になるのは、原崎氏が「残りすべての試合を全勝する」的な発言をしているような報道を散見することだ。そりゃ、残り12試合勝点36とれば、昇格は間違いないですよ(新潟との直接対決も残っているし)。けれども、常識的に考えれば全勝せずとも優勝あるいは2位の獲得は決して不可能ではなく、ここから大事なのは徹底したリアリズムのはずだ。もっとも、原崎氏が選手達に向かって、「絶対全勝!」的な精神論を語るのも「勢い付け」と言う意味では有効だろうし、そもそもマスコミ受けしそうな発言をすることも監督の責務かもしれない。原崎氏自身も本気で12戦全勝が昇格ラインとは思ってもいないだろうが。
リアリズムの徹底と言う視点から言うと、チームとして疲労が重なり、中盤で敵を止められなくなった場合の戦い方にもう一工夫ほしい。そのような展開となったら、もう少し後方でゆっくりとボールを回せないだろうか。
例えば、敵地町田戦。攻守のバランスがよく、セットプレイをしっかり決めたこともありアウェイながら3-0とリード。ところが、交代策が遅れたこともあったが、中盤のバランスが崩れた終盤、ボールキープもままならなくなり、3-2に追い込まれかろうじて逃げ切った。大量リードしていたのだから、DFとMFは後方に引いて落ち着いてボールキープしたいところだった。
例えば、敵地琉球戦、前半リードし2点差以上に突き放す好機もつかみながら決めきれず。結果的に同点で終盤を迎えた。守備を固めた琉球に対し、終盤突き放そうと無理に攻め込もうとして、逆に全軍が間伸び、再三逆襲速攻から決定機を与えてしまった。GK杉本のファインセーブがなければ勝点ゼロに終わってもおかしくなかった。敵が引いて待ち構えていたのだから、引き出す工夫が欲しかった。
例えば、敵地山口戦。おそらく疫病の影響だろうか、控えにユースの山田をいれなければならない厳しい布陣。先制を許すも前半のうちに逆転に成功。その後2点差にできそうな好機もあったが決めきれずに迎えた終盤戦。後から投入した控え選手も体調がよくないようで、ノーガードの攻め合いにしてしまった。再三のピンチも杉本の候補でしのいだが、アディショナルタイムに(よりによって!)渡部博文に同点とされ、その後も危ない場面が再三、「勝点1を獲得できてよかった」と言う試合にしてしまった。控え選手の体調も今一歩だったのだから、後半半ばで無理をせず引いてリードを守りに行く手段もあったのではないか。
要は状況が難しくなったら、無理をせずにボールを回し、前に出て行かない勇気を持ちたいと言うことだ。双方が疲弊した試合終盤だ、敵の前線でのプレスも甘くなるはず。それでも敵が前線でボールを刈り取りに来たら、フォギーニョやデサバトのさばきから、金太鉉や中島や蜂須賀そして松下の精度高いロングボールで裏を狙えばよい。そのような展開下でベンチに温存していた皆川を起用すれば一発の裏抜け狙いはもちろん、オープンでの拠点も作ってくれるだろう。終盤苦しい時間帯に自陣で多くの時間を費やすやり方は精神的には楽ではないが、今のベガルタ各選手の判断力があれば十分にこなせると思う。
そうやって、勝点も得失点差も丹念に丹念に積み上げていく。極端な言い方をすれば、結果的に勝点3が取れなくとも負けるよりは引き分けの方がずっとよい、負けたとしても点差を詰める、冷静に冷静に考え、少しでも少しでも勝点と得失点差を積み上げる。残り12試合、1試合あたり約95分と考えれば約1140分、この約1140分間をそうやって綿密に綿密に戦い抜けば、J1復帰は必ずついてくる。