2023年08月15日

貴女たちはアルゼンチンやブラジル

 女子代表、スウェーデンに苦杯し、準々決勝敗退。
 終盤圧倒的に押し込んだ場面で明らかなように、選手の総合的な知性と技術はスウェーデンを圧倒していた。ただ、スウェーデンの前半に強引に仕掛けて先制逃げ切りをねらう作戦にはまり、不運な判定のPKもあって、悔しい敗戦となってしまった。
 悔しさと言う快感を噛み締めると共に、すばらしい戦いを見せてくれた熊谷紗希と仲間達に感謝したい。ありがとうございました。

 試合前から予想された通り、スウェーデンは非常に厄介な相手だった。
 スウェーデンは「普通にやったら勝てない」との自覚の下、強引な作戦をねらってきた。前半からスタミナ切れ覚悟で、中盤でプレスをかけ、パスコースを限定し、押し込んできたのだ。それでも、一度だけ裏を狙われた時に熊谷紗希が処理を誤り危ない場面を作られたが、それ以外はピンチらしいピンチもない。中盤の組織守備が機能していたからだ。一方で、スウェーデンの守備もGKが広範囲にDFラインの裏を警備し、日本がプレスを回避した裏抜けを狙っても決定機を作らせない。
 ところが、先制点を奪われた以降、清水梨紗と杉田妃和の両翼が消極的になってしまい前進できなくなってしまった。そのため、長谷川唯や宮澤ひなたが中盤でボールを保持しても出しどころがなく、幾度もスウェーデンMFにボールを奪われショートカウンタを許すことになった。山下杏也加のすばらしいセービングがなければ、前半で2点差にされてもおかしくない展開だった。それでも前半を0-1でしのいだ直後の後半立ち上がりに、微妙な判定でPKを提供するとは。
 しかし、最前線に植木理子を起用し前線からの守備を整備し、スウェーデン各選手の切れが落ちるにつれ、日本が圧倒的攻勢をとり猛攻をしかける。終盤、スウェーデン各選手も、疲弊しながら創意工夫して抵抗。日本は幾度も好機をつかむが、PK失敗など最前線での焦りも目立ち、同点には至らず試合終了。
 スウェーデンの注文相撲にはまり、不運な判定もあり悔しい敗戦。もちろん、スウェーデンが見事で日本に足りないものもあったが、この敗戦は極めて不運だった。熊谷と仲間達は世界最高峰の戦闘能力を持ちながらも力尽きた。

 これがサッカーなのだ。

 スウェーデンとしては「日本に勝つにはこれしかない」と言う戦いを完璧にやり遂げた。悔しいけれどお見事でした。
 前述のように前半から後先考えず厳しい組織的プレスで日本に簡単に攻めさせない。FK崩れから日本の明らかなミス(後述する)を突き先制。日本の動揺を見てとると、組織的プレスを強化する。微妙な判定でPKで2-0とした後は、疲労が顕著ながら割り切って粘り強く守りを固め。日本の攻め込みのこぼれ球に対しては、速攻は狙わず極力ファウルしないように丁寧に身体を入れて、焦る日本の無理な裏抜け狙いだけは防ぐ。笛が鳴ると、したたかに時間稼ぎ。
 以上冷静に振り返れば、50分で0-2となる展開は(おそらくスウェーデンも期待はしていただろうが、実現するとは思っていなかった)信じ難い事態だった。その後、日本はいくつかの稚拙さはあったが、体勢を立て直し猛攻をしかけた。でも1点しかとれなかった。
 繰り返すが、これがサッカーなのだ。交通事故も起こるし、敵守備がすばらしくシュートが入らないこともあるし、PK時に露骨な時間稼ぎしているGKに経験足りない主審が警告を出さないこともある。日本は、それを乗り越えて勝利の確率を少しでも上げる駆け引きが足りなかった。
 おそらく、日本とスウェーデンが10回試合をすれば、5勝4分1敗くらいとなるだろう。その1/10を大事な準々決勝でやられてしまった。繰り返すが、スウェーデンの勝負強さに敬意を表したい。しつこいが繰り返そう。これがサッカーなのだ。

 余談ながら。あのPK判定は疑問だ。ルールブックによると、
手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れる。手や腕の位置が、その状況における競技者の体の動きによるものではなく、また、競技者の体の動きから正当ではないと判断された場合、競技者は、不自然に体を大きくしたとみなされる。競技者の手や腕がそのような位置にあったならば、手や腕にボールが当たりハンドの反則で罰せられるリスクがある。
と記述されている。あの場面、長野風花の手の動きのどこが「不自然」だったのか。広げた手に当たった訳ではなく、方向が変わった正面に飛んできたボールがバランスをとろうとしていた手に当たったに過ぎないのだが。最後の判断は主審に任せるしかないわけだが、日本はとても不運だった。

 一方で日本は稚拙な戦い方をしてしまった。戦術ミスを列挙しよう。
 先制されたFK崩れ、山下のパンチが弱かった。しかし、それ以上に田中美南と清水梨紗の押上げが遅れたのが残念。特に田中が最後までゴールライン上から動かなかったことで、オフサイドラインが形成されなかったのは痛かった。傍から見ると、田中の個人的な判断ミスに見えたが、セットプレイ崩れの後の守備網構築はどのような約束事だったのか。
 先制点失点後、あそこまで押し込まれたのを修正できなかったのも痛かった。スウェーデンは主に日本のシャドーとサイドMFにプレスをかけてきたが(上記の通り、そこで清水と杉田が消極的になり前進できなくなったのが痛かった)、もう少しCBの南萌華と高橋はな、CFの田中がうまくサポートする、あるいは割り切ってロングボールで逃げておくなど、回避の手段はいくつもあったと思うのだが。ちなみに後半立ち上がり、PKを誘引した敵CKも、清水がせっかくハーフウェイライン近傍でボールを受けながら、逃げのパスを打ち、そこから逆襲されて提供したものだった。つまり、このCKも先制失点後の消極性によるもので、ハーフタイムでも修正し切れなかったことになる。
 体格差を気にし過ぎ、セットプレイを凝りすぎ、CKや敵陣近くでのFKでトリックプレイを狙い過ぎたのはいかがだったか。結果的にスウェーデンに読まれ、好機を作り損ねた。長谷川にしても藤野あおばにしても高精度のボールを蹴ることができる。普通にニアかファーに高精度のボールを入れ熊谷らの空中戦に期待し、たまにトリックプレイを使っていれば、好機はもっと掴めたのではないか。戦っている選手達にとって、単純な体格差(特に体重差)は大変厳しいものなのはよく理解できる。しかし、素早い左右の動きと精度の高いボールを組み合わせれば、もっと変化を作れたように思う。
 池田氏の交代が明らかに遅く、終盤疲弊した敵を追い詰めるのが遅れた事も痛かった。5人交代制においては、後半元気な選手をどのようなタイミングで入れるかが勝負を分ける。ところが、池田氏はハーフタイムに杉田に代えて遠藤純を、52分に田中に代えて植木を起用した後、中々動かない。80分過ぎに、宮澤と長野に代えて、清家貴子と林穂之香を起用。攻撃活性化に成功したが、いかにも遅かった。ノルウェー戦までの戦いですばらしかった宮澤と長野を代えることに躊躇があったのだろうか。せめて、もう70分あたりにこの決断ができなかったものか。
 もう一つ、終盤に秘密兵器?の浜野まいかを起用したが、これも唐突感があった。もし、この勝負どころで投入するならば、浜野をノルウェー戦でプレイさせておくべきだった(アディショナルタイムで浜野を起用しようとしたが、ピッチに入る前にタイムアップ、これは池田監督の単なるヘマとしか言いようがない)。さらに常識的に考えたら、ここは経験豊富な猶本光の投入だったと思うのだが。まあ、ここまで来ると完全に結果論だが。
 もっとも、池田氏の采配が外れた、と言うのも違うような気がする。スタメンに杉田を起用したのは前半は消耗戦を覚悟したためだろう。実際、後半から起用された遠藤純はスウェーデンが疲弊した終盤、完全に左サイドに君臨していたのだから。1点差以下で後半を迎えていれば、「池田采配ズバリ!」と絶賛されていたかもしれない。

 上記の通り池田監督を批判したが、それは個別局面の戦術的課題。今大会の池田氏の手腕がすばらしかったのは言うまでもない。
 幾度も繰り返してきたが、前監督は非常に残念な監督で、池田氏が引き継いだチームの組織連係は非常に低かった。4年前のフランスW杯でも2年前の東京五輪でも、あまりに試合内容が悪かったのは記憶に新しい。あの残念だったチームを世界最高峰のレベルに引き上げたのだから、池田氏の手腕は本当にすばらしいものだ。
 大会直前に、池田氏は非常に大きな決断を実施、ベテランの岩渕真奈を外した。言うまでもなく、岩渕は熊谷と共に2011年の世界制覇メンバ。そして、残念だった東京五輪、組織的な攻撃ができない悲しいチームの中、圧倒的な個人能力でチームを引っ張ったのも記憶に新しい。あのカナダ戦終盤の同点弾は最高だった。その後、岩渕が欧州のクラブで中々出場機会が得られていないなどの報道は目にしていたが、池田氏は強化試合で岩渕を相応には起用していたので、不選考は驚きだった。しかし、その決断は正しかった。この大会を通じ、23歳の宮澤は格段の素質を開花させた、そして19歳の藤野はその圧倒的な潜在力を世界に見せつけた。
 もちろん、このチームが大会に入って急速に完成度を上げてきたのを忘れてはいけない。準備試合のパナマ戦、最前線の連係は今一歩。宮澤はシュート前のトラップが決まらず、藤野は強引さが空回りするばかりだった。そのため、長谷川が一仕事しなければ、崩せる形には中々持ち込めなかった。初戦のザンビア戦もその傾向はあり、ほとんどの得点は、長谷川の縦横無尽のパス回しを起点としていた。しかし、ザンビア戦、コスタリカ戦を通じ、宮澤はシュート前の走り込みとトラップの精度が格段に上がり世界最高のストライカになった。遠藤は的確なファーストタッチをものにし左利きと鋭い切り返しで世界最高のサイドアタッカになった。そして藤野は強引に行きながらタイミングのよいパスを出せるようになり、世界最高の攻撃素材であることを示した。今後、世界中のサッカー狂が、藤野が澤穂希の域に達するかどうかを楽しむことになる。そして、スペイン戦、ノルウェー戦、スウェーデン戦の終盤、屈強な欧州のDF達をおもしろいように崩す連係が完成した。
 ただ、そうやって築き上げられた連係だが、各選手に経験の絶対量が足りなかった。この経験不足は、もちろん選手個々の若さによるものもあったが、もっと大きいのはチームとして勝ち続けた自信ではないか。どうしても前任者への愚痴となってしまうが、数年間に渡り非組織的なサッカーを行い強国に負けるのが平常化してしまったことが、経験不足を招いてしまった。20代前半や10代の選手は仕方がないが、長谷川、田中、清水と言った20代後半以上のタレント達も代表での勝利経験が浅いのが痛かった。

 このような強力なチームができ上がったのは、各選手の創意工夫、それらの選手を育んだ環境、池田氏の手腕、選手達と池田氏を支えたスタッフ達、多くの人々の努力によるものだ。それらすべてに感謝したい。
 勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。しかし、負けても最高峰のレベルのチームを所有している喜びも格段のものなのだ。
 もちろん、女子サッカーの強化については、多くの課題がある。一方で、FIFAやUSAサッカー界が、現実的とは思えない、無謀な市場拡大を進めている現実もある。そのような矛盾を踏まえながら、女子サッカーの活性化に尽力している方々の現場の苦労は相当なものだ。そう言った多くの尊敬すべき方々が努力を重ねている現場に、不肖講釈師も触れる機会を得ており、少しずつ真面目に作文していきたいと思っている。

 今回の悔しい敗戦について、国内のあちらこちらから「スウェーデンのように大柄な選手を発掘しないと勝てない」とか「スウェーデンにのような強国には日本の能力が通用しない」とか「スウェーデンの方がポジショナルサッカーの理解が高かった」とか、次々と熊谷と仲間達を貶める発言が出てきている。サッカーに浸って半世紀経つが、この国のサッカー評論界には「何があっても日本サッカーを卑下しなければいけない」と考えている向きが、後から後から出てくるのだ。そして何より、このような評論は、リスクを負って勝負を賭けて成功したスウェーデンに対しても失礼なのだが(そのような発言をしている方々に、日本を貶めたりスウェーデンに失礼と言う自覚がないから、一層厄介なのだが…)。
 そのような発言を気にしてはいけない。
 もちろん各選手にも課題はあった。強国との試合で相手ペースで展開する時にどう我慢し打開するか、フィジカルの強い相手に対し無理に前に行ったり逃げのパスを出さずにボール保持できないか。さらには、明らかな時間稼ぎにどのように冷静さを保つか。
 しかし、そうだとしても、このチームが世界制覇する戦闘能力を保持していたのは間違いない。だからこそ、選手達は誇りを持って欲しい。
 男子のサッカーを思い起こそう。アルゼンチンが昨年世界一を奪還するのに32年の月日、8回のワールドカップが必要だった。ブラジルは、ここ21年間、5回のワールドカップで世界一となっていない。両国ともワールドカップに世界最高峰の戦闘能力を持つチームを送り込み、常に優勝候補たるプレイを見せながらも。そして、もはや貴女たちはアルゼンチンやブラジルなのだ。これがサッカーなのだ。
 また1年後の五輪についても、思いがないわけではない。しかし、ワールドカップにすべてを賭けて戦った貴女達に対して、次の大会について語るのは失礼と言うものだろう。今は、このワールドカップの悔しい敗退のみを振り返るべきだろう。

 ありがとうございました。悔しい。でも貴女たちのプレイは世界最高峰だった。すばらしかった。
 繰り返します、ありがとうございました。
posted by 武藤文雄 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月09日

好調の女子代表を俯瞰する

 笑いが止まらなかったスペイン戦の前半、いや、後半もでしたけれど。
 日本は、5-4-1でしっかりブロックを固め、スペインの攻撃を押さえ続ける。前半15分までは敵サイドバックのサポートへの対応に苦労してペナルティエリア内に進出されることもあったが、マークの受け渡しが決まった以降は、危ない場面はほとんどなくなった。この組織守備の指揮を貫徹した熊谷紗希が世界最高峰守備者であることを改めて認識できた。さらには先制点の起点となる完璧なロングパス。
 そして日本の逆襲が冴え渡る。ハーフウェイライン手前で、楢本光の巧妙な動きもありスペイン守備陣が薄くなった瞬間に、植木理子や遠藤純が巧みにボールを受けるや、宮澤ひなたがスペイン守備選手の誰よりも早く挙動を開始。ボールを受けた宮澤は、トップスピード後の正確なボール扱いを見せ、2得点1アシスト。主役を務めたのは宮澤だったが、全軍の意思統一がなければ、ここまで美しい速攻は幾度も成功できない。池田太監督の仕込みの巧みさは恐るべきものがあった。しかも、日本は世界屈指の攻撃創造主の長谷川唯と、世界屈指の好素材の藤野あおばを温存していたのだ。
 後半も同じペースで試合が進む。いや、日本の守備網の組織化は一層進み、スペインはシュートにさえ持ち込めない。唯一好機と言えそうな場面は清水梨紗が足をとられて転倒した場面くらいか。さらに終盤、疲弊したスペインDFを田中美南が個人能力で振り切りダメ押し点を決めてくれた。
 このスペイン戦、しいて残念なことを語るとすれば、4-0と完勝が確定し、スペインは崩壊していて、交代枠が1枚残っていたにもかかわらず、ゴールキーパを交代させなかったことくらいか。この手の大会は、ゴールキーパだけは複数選手の起用が難しく、控えのキーパは完全に裏方役となることが多い。ここは出場機会を得るのが難しい平尾知佳なり田中桃子を起用してもよかったと思うのだが。
 スペインとしては、悪夢のような試合だっただろう。技巧的なボール保持で丁寧に崩しを狙っていたところで、日本の完璧な速攻から失点を繰り返し、なすすべなく敗れたのだから。ゲームプランの全てが打ち砕かれる完敗だった。

 一方のノルウェーは日本に対し、ゲームプラン通りに戦い、単純な戦闘能力差で敗れた。スペインのゲームプランが崩れ去ったのは対照的だった。
 ノルウェーは、5-4-1でしっかりブロックを固め、日本の攻撃を押さえようとした。しかし、立ち上がりから清水と遠藤の両翼が広く開く日本の展開に苦しみ、組織守備は機能しない。日本にサイドで拠点を作られたこともあり、一番恐ろしい長谷川唯にプレッシャをかけることができない。
 それでも、前半ノルウェーは失点を自殺点の1点に押さえ、唯一と言ってもよい好機を活かし前半を1-1で終えることに成功。後半立ち上がりに突き放されるも、その後も複数回の決定機をしのぎ、3点目をとられずに70分過ぎまで時計を進めた。そして、1枚ストライカを入れて4-4-2に切り替え無理攻めに出る。熊谷を軸にした日本守備陣の落ち着きとGK山下杏也加の好守がなければ、同点の可能性もあった。これだけ戦闘能力差がある相手に対し、最後の20分で勝負を賭ける展開に持ち込んだのだから、大成功と言える展開だった。
 しかしノルウェーにとって、そううまくは事は運ばなかった。後方を薄くしたところで、藤野が格段の視野と正確な技術によるスルーパスを宮澤に通したのだから。そして宮澤が挙動を開始した瞬間に、世界中の誰もが得点を確信したに違いない。1対3、2点差。
 このノルウェー戦、日本視点から見て、かなり残念だったのは、ノルウェーがリスク覚悟で攻めに出てきた時間帯に、疲弊した選手を交代させなかったこと。疲労が目立ち始めた長野風花や遠藤純に代えて、林穂之香や杉田妃和を投入してもよい。もちろん、前線に楢本を入れて運動量を確保するとか、空中戦の強い石川璃音を起用するやり方もあったはずだ。結果的には上記した藤野→宮澤で2点差としたので、極端な不安感はなかったが、池田太監督の消極性は気になった。5人交代制のレギュレーション下では、疲労した選手に代えて元気な選手を起用し失点のリスクを最小にするのは必須なはずなのだが。
 ノルウェーとしては、完璧に近い試合だったのだ。日本の攻撃力を警戒し、全軍で守備的なサッカーを展開し、70分過ぎまで1点差で試合を進めることができた。そして、勝負に出て前線に選手を押し出し、複数回の好機をつかんだのだから。ただ、相手が強すぎた。

 スペイン戦の鮮やかな速攻の数々。それを見てのノルウェーの超守備的布陣。ノルウェーはそれでも守り切れずリードを許し、勝負に出て無理攻めに出たところで、宮澤の餌食となった。そう、ノルウェー戦の宮澤の一撃には、今後の対戦想定国のスカウティング担当の嘆息が聞こえてくるように思えた。後方を厚くして守備を固めても、両翼から崩される。両翼を警戒すると長谷川が必殺のパスを刺してくる。攻勢をとり押し込もうとすると宮澤を軸とした超高精度の速攻に襲われる。
 現実的な対応策としては、ノルウェーのように守備を固めた上で(それで失点を防げるかはさておき)、時間帯を限り前線に多数の選手を送り込み、変化や強さを活かした攻撃を仕掛けるか(それで熊谷を破れるかどうかはさておき)。あるいは体力が続く限り、前線からプレスをかけ長谷川を封印し(できるかどうかはさておき)、宮澤の逆襲の脅威はDFの対応力に賭けるか(それで対応できるかはさておき)。
 熊谷とその仲間達がどこまで勝ち進めるか、神のるぞ知ることだ。そしておそらく、ベスト8のいずれの国よりも戦闘能力は高く、残り3試合を全勝してくれる可能性がそれなりに高いことは間違いない。そして何より熊谷とその仲間達のサッカーは、効率的で攻撃的で、そして何より魅力的だ。現地に行かなかった己の先見性のなさを反省しながら、12年ぶりの世界一の歓喜を期待しつつTV桟敷で応援できるのはありがたいことだ。
posted by 武藤文雄 at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする