2023年09月12日

冨安健洋でドイツに完勝

 冨安健洋と言う最高級選手の存在が勝負を分けた。
 もちろん、大迫敬介は少々高いボールへの安定感に欠けたが落ち着いた処理を見せた。事実上2アシストの菅原由勢は守備の安定感も申し分なく、酒井宏樹不在の不安を払拭してくれた。板倉滉は失点時に前進対応に課題はあったが、1対1の強さを存分に見せた上、フィードの鋭さも相変わらずだった。伊藤洋輝は、さすがにレロイ・サネと正体すると苦戦していたが、総合能力の高さを見せてくれた。遠藤航は相変わらず圧巻の存在で、当たり前のように中盤を封鎖してくれた(一瞬PKを取られるかと心配させられたが)。守田英正も的確に中盤で奪い、落ち着いて持ち出し、隙を見て敵陣への進出を果たしてくれた。鎌田大地は前半の2得点で伊東との絶妙なポジションチェンジと菅原との連係が見事だったが、それ以外の場面でも気の利いた展開を見せてくれた。伊東純也は特別の存在、26年W杯で33歳になる伊東が、この俊足、献身、そして格段の得点力をあと3年間維持してくれるのかは心配だけれども。上田綺世については、とりあえず代表でのPK以外の初得点を祝福しようか。三笘薫は、長駆後の美しいうなぎドリブルは相変わらずだし、短い時間帯最終ラインに入った時を含め守備も安定していた(もうこの選手は直接得点にからまないと、不満に思ってしまう)。谷口彰悟はカタール移籍後も一切衰えていないことを再証明、後半序盤からのDFライン加入と言う難しいタスクをこなしたくれた。浅野拓磨は70分の決定機を外したのはご愛嬌だったが、相変わらず精力的に最前線の数的不利状態での守備をこなし、得点も決めた。田中碧は、得点そのもののヘディングは鮮やかだったが、クローズに起用されたと考えると不満が多いが、別途語りたい。久保建英も2アシストは見事だし、明らかな成長を感じさせてくれたが、クローズと言う視点での不満は同じ、これも別途語りたい。

 お互いがコンパクトなサッカーで中盤を抜け出すのに苦労していた序盤。日本はドイツの前線プレスを巧みに外し、遠藤(だと思った)が左サイド三笘に通す(以下左右はすべて日本から見て)。三笘はうなぎドリブルから、ペナルティエリアに進出した守田を使おうとするも、かろうじてドイツDFがつかまえクリア。そのクリアを、冨安が身体を開き、無理な体勢をとりながら、右サイドの鎌田にダイレクトパス(最初、私は冨安のミスキックかと思った)。鎌田は絶妙な溜めの後菅原へ、菅原は見事なスピードで縦抜けして好クロス、ニアで(鎌田とポジションチェンジしていた)伊東がアントニオ・リュディガーの鼻先で見事に合わせ先制。
 同点に追いつかれた直後、ドイツの前線プレスが少し緩んだところで、冨安が左足で右サイドの伊東に40m級のフィードをピタリと合わせる。伊東は中央の鎌田につなぎ中央へ、鎌田は再度絶妙な溜めの後右外を疾走する菅原へ、菅原は中央に進出した伊東に、伊東はジャストミートできなかったが、上田が素早い反応からサイドキックでキッチリと合わせネットを揺らした。
 2得点とも、冨安の視野の広さと技術の高さが起点となり、鎌田や伊東が受けたところで勝負あり。その時点で右サイドに数的優位確立。菅原はトップスピードで切り込むスペースを獲得できた。さらにドイツCBの視点が左右に大きく移らざるを得ない状況で、上田と三笘のみならず、守田も伊東も敵視野から外れた状態でペナルティエリアに進出する時間を獲得できた。このようなロングパスを通すことができれば、世界中のどんなチームからも得点できる。

 複数回、サネを止めたプレイについては、再三VTRがテレビニュースでも流れたが、冨安の守備貢献はもちろんそれにとどまらない。反転の速さ、単純な足の速さ、上半身を当てる強さ、タックルの鋭さに加え、味方DFと敵FWの相対位置をよく考慮した適切な読みが再三冴え渡った。
 森保氏は、サネが右側で遊弋し、再三好機を許したのを嫌い、後半から5DFに切り替えた。必然的に、後半は日本が引く展開となった。しかし、危ない場面は皆無、と言っても過言ではないほど守備は安定。これは、冨安の圧倒的な存在感があってのことだった。

 この日の冨安を見ていると、なぜアーセナルでフル出場していないのかまったく理解ができない。言葉のコミュニケーションの問題、負傷が多いこと、今シーズンはアジアカップで長期離脱が確定していることなどが、要因なのだろうか。もっと格上のクラブ(そんなクラブは世界にほんの少ししかないのだがw)でも中心選手として君臨するのが当たり前にも思うのだが。
 もちろん、過去も冨安は代表では圧倒的存在感だった。しかし、昨年のカタールW杯、一昨年の東京五輪、いずれも負傷がちでフル出場は叶わず。1人の優秀なDF程度の活躍しかできなかった。冨安も11月には25歳となる、もう決して若手DFではなく、全軍指揮官になってもらわなければならない年齢だ。このドイツ戦は、W杯4回優勝国に完勝したと言う意味でも、日本サッカー史に記憶される試合となるだろう。しかし、後年この試合は以下のように記憶されるのではないか。
 冨安が日本代表で遅まきながらも圧倒的個人能力を発揮し強国を叩きのめした試合、と。
posted by 武藤文雄 at 02:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月09日

ラグビーW杯開幕2023

 トゥールーズと言う街は、日本のサッカー狂たちにとって特別な存在だ。理由は簡単、ちょうど四半世紀前の1998年6月14日、私たちはこの街で、生まれて初めてW杯本大会の試合を味わうことができたから。そう、あのバティストゥータにやられたアルゼンチン戦を。
 ゴール裏で君が代を歌えた感動、井原正巳を軸にした組織守備が機能した喜び、0-1で終盤まで凌ぎ終盤幾度か好機をつかんだものの決められなかった嘆息。試合後、ビールや葡萄酒と共に堪能した名物料理のカスーレ。

 ラグビーW杯、日本は明日の初戦を、そのトゥールーズでチリと戦う。
 毎週、ベガルタ仙台の試合を追いかけ、世界最強に駆け上がりそうだった熊谷紗希と仲間達の不運に切歯扼腕し、バスケットW杯で富樫勇樹と仲間達の颯爽たる五輪出場権獲得に熱狂、そして、姫野和樹と仲間達の初戦の半日前には、遠藤航と仲間達が戦うドイツ戦(先方にとっては10ヶ月前の復讐戦!)。贅沢なことだ。
 前回日本で行われたラグビーW杯は本当に楽しかった。あの静岡でのアイルランド戦の歓喜、日本敗退後の準決勝以降の国歌斉唱時の空虚感。大会をサッカー狂の視点から振り返ったこのような文章を書かせてもいただいた。 

 正直言って、ラグビー代表の今大会準備のテストマッチを振り返ると、内容も結果も芳しいものではなかった。そのため、前々回、前回のような好成績を収めることができるのか、とても心配だ。ただし、そこには多くの錯綜した事情があったのは、ラグビーシロートの私にも理解できる。
 まず前大会と比較すると、今回の代表チームは準備期間が短い。前大会は9月の大会に向けて2月から代表候補選手を集中強化していた。しかし、今大会の強化合宿は6月からだった。おそらく頻繁にテストマッチを行っていた7月はフィットネス系の鍛錬を相当行っていたはずで、各選手のコンディションが整っていなかった可能性が高い。
 しかし、これは落ち着いて考えれば健全なことだ。ラグビーを本質的に日本に定着させる目的で作られたリーグワンが2シーズン目を迎え、5月まで熱戦が繰り広げられていたのだから。クボタスピアーズ船橋・東京ベイが、主将立川理道の信じ難いキックパスで、埼玉パナソニックワイルドナイツを破った決勝戦など、すばらしかったではないか。
 前大会、準々決勝で南アフリカに敗れた最大の敗因は、選手層の厚さだった。前半互角の攻防を続けていた日本だが、後半両軍が選手交代を重ねるにつれ、FW戦の劣勢が明らかとなり、次々に失点を重ねた。控え選手のレベルが相当違っていたのだ。代表チームの選手層を厚くするのは、長期の代表合宿では不可能。長期的には普及活動をして選手人口を増やすしかない。一方で短期的には国内リーグのレベルを上げて、優秀な選手を増やすしかないのだ。そのあたりについても、このような文章にまとめたことがる。
 前大会、あるいは前々大会、日本ラグビー協会は、地元W杯を控えていたこともあり、単独チームに相当迷惑をかけながら、長期強化合宿で成功を収めた。しかし、そのようなやり方は続かない。結局単独チームの強化がおざなりになり、選手層を厚くすることはできないからだ。
 
 強化合宿が短かったことの他にも障害があった。選手の負傷が多かったことやベテランの退場劇である。
 若手の大型ロックとして期待されているワーナー・ディアンズや、頑健で瞬足な若手ウィングのシオサイア・フィフィタは、テストマッチにまったく出場できず、ほとんどぶっつけ本番で大会に臨むことになる。ロックの中心選手ジェームス・ムーアは大会直前に離脱。同じくロックのアマト・ファカタヴァは一度離脱したが治療がうまくいったのか、直前の復帰に成功。本当に全選手がよい体調で大会を迎えられるのかと言う不安は尽きない。この激しい競技で負傷はつきものでしかたがないのかもしれないが、
 また、サモア戦でのリーチ マイケルとフィジー戦でのピーター・ラブスカフニの退場も痛かった。最近のルール改正で、意図的ではなくても結果的にタックルが相手の頭に向かって行われると無条件で一発退場となったらしい。代表主将を務めたことがあり、経験豊富な2人が対応し損ねたのだから、選手達には順応が難しいルール変更なのだろう。この2件の退場劇は、単にテストマッチの勝敗と言うこと以上に、その試合での連係成熟と言う視点で痛かった。さらにラグビーは、一度退場となると、続く複数試合退場になるので、一層連係成熟が難しくなる。

 上記した要因を考えると、テストマッチでの内容や結果が芳しくなかったのはしかたがないことなのだろう。肝心なのは明日から始まる本大会なのだから。今大会、前大会と比較して多くの外乱を抱えることになったジェイミー・ジョセフ氏がどこまでチームを仕上げることができたかは、神のみぞ知ることだ。少々怖いもの見たさもあるが、それらの不安が裏切られ、4年前同様の歓喜が連続することを期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | サッカー外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ドイツとの再戦

 早いもので、カタールの興奮から1年近く10ヶ月が経った。
 一方でW杯予選やアジアカップも近づいてきている。48国出場と言うおよそ緊張感のないW杯予選、優勝以外考えられないアジアカップと、何とも味わい深い相違はあるが、代表の試合が楽しいことだけは変わりない。
 そして、今回の欧州の強豪ドイツ、トルコとの2連戦。欧州各国がクローズな地域対抗戦を重視するようになり、なかなか有効な親善試合が組めなくなっている中で、良好なマッチメークを行った日本協会にも敬意を表したい。そして、11月には早くもW杯予選が2試合。その後、アジア制覇奪回をねらい選手達は1年ちょっと振りにドーハに降り立つ計画。落ち着かない楽しい日々が続くが、ありがたいことだ。
 まずはドイツ戦。親善試合とは言え、先方からすればカタールの復讐戦。さらに言えば、最近の試合でドイツはすっかり不調(W杯終了後、1勝1分3敗)とのこと。この手の親善試合では珍しく、先方がどうしても勝利を挙げたい事情が強い。これは、難しいが楽しいタフな試合が期待できそうだ。もちろん、ドイツは強いのは間違いない。特にここ10年くらいのドイツサッカーは、昔の無骨さがなくなり、柔軟で洗練されたパス回しを見せてくる。ドーハでも前半、当方が相当引いていたこともあったが、パスの強弱を巧みに使い分け、押し込まれたことが記憶に新しい。
 加えて、続いてトルコ戦。「トルコ」と聞くとついつい「21年前故郷宮城の復讐戦だ!」と言いたくなりますね。しかし、あのドーハの歓喜からもう10ヶ月経ったのも驚きだが、あの雨の利府の絶望からも既に21年が経ったのか。時の経つのは、本当に速いものですね。

 アジアカップに向けて、森保氏は様々なトライアルを行いたいことだろう。
 負傷がちだった冨安健洋が復活したところで、どのような守備網を構築するのか。ここまでの森保氏の起用のやり方を見ていると、右から菅原由勢-冨安-板倉滉-伊藤洋輝をベストと考えているように思うが、ドイツ戦の先発はどうなるのか。また、少々手薄完がのある左DFをどう考えているのか。ただ、ここは中山雄太が負傷から回復すれば問題なくなるのかもしれないが。DFラインでちょっと不思議なのは、瀬古歩夢の不選考。ここまでの起用方法を見ている限り、CBは冨安は別格として、板倉、谷口に続く序列は瀬古なのかと思っていたのだが。まあ。吉田麻也、長友佑都、酒井宏樹と言った大ベテランは事実上代表を去ってもなお、幾多の人材がいるのだから、文句を言ったらバチが当たりますね。
 中盤後方の選手選考が少ないのは、以前も講釈を垂れたが、森保氏の方針か(笑)。今回も川辺駿は呼ばれていない。合わせて気になるのは田中碧、東京五輪時点では日本代表全軍の指揮官獲得の時は近いと期待していたのだが、ドイツの2部リーグのチームから中々転身できないのはどうしたことか。結局リバプール入りした主将の遠藤航と守田英正を軸とすることになるだろう。しかし、このポジションはそれなりにタレントは多数いると思うのだが、森保氏は断固として多数を呼ばない。このポジションだけは妥協を一切許さず、自分の水準を超える選手しか選ばない方針なのだろうか(笑)。
 前線のタレントは本当に潤沢。現状では、両翼に伊東純也と三笘薫を並べるのが最強布陣かと思うが、その場合真ん中の2枚を8人が争うことになる(笑)。さらに今回は、ドラミ相馬勇紀と最近好調が伝えられる南野拓実が不選考なのだから贅沢なものだ。

 私がサッカーをはじめた半世紀前。
 ドイツ(当時は西ドイツでしたが)と戦うことはもちろん、勝つなどと言う概念は存在しなかった。いや、W杯に常時出場することや、アジアカップで常に優勝をねらうなども、およそ想像すらできなかった。
 アジアカップを初制覇したのが31年前か。以降90年代、日本は驚異的な右肩上がりでサッカー界の地位を上げていった。その右肩上がりは、いつか止まるだろうと思っていた。しかし、もちろん上がり下がりはあったし、微分値こそ小さくなったが、今なお右肩上がりは継続している。気がついてみたら、W杯本大会でドイツやスペインに勝ってもおよその驚きはなくなり、欧州のトップクラブで当たり前のように日本人選手が活躍している。多くの有為なタレントが欧州に流出しても、Jリーグは常にスキルフルな選手を多数抱え熱狂的な試合が、日本中のどこでも見ることができる。
 などと半世紀の思いを抱えながら、ドイツを返り討ちにするのを、じっくり楽しみたい。
posted by 武藤文雄 at 01:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月08日

バスケットボール五輪出場決定!

 バスケット男子W杯、日本代表が五輪出場権獲得。
 テレビ桟敷でたっぷり堪能させていただいたが、まことに見事な娯楽。すばらしい戦いを演じてくれた富樫勇樹と仲間たちに感謝したい。

 1990年代半ばから2010年代半ばまでの約20年間、日本バスケットボール界は絶望的な状況に追い込まれていた。そのあたりは、友人でもある大島和人氏がこちらで、鮮やかに文章化してくれている。同書を読んだ時、私が感じたのは吐き気だ。同書に実名で登場するバスケット人、上記絶望的な20年間日本のバスケットボール界を牛耳っていた幾人か。彼らば、バスケット界の発展ではなく、己の権益のためだけに見苦しい活動を繰り返す。さらには、後年もそれらを恥じることなく語っている。
 私も散々サッカー界の権力者を批判してきた。例えばこれとかこれね。もちろん、前者の方はバスケット界に超大貢献したのですけれどもね。
 しかし、同書に登場する絶望的なバスケット人の質の低さはそんなものではない。日本バスケットの発展など何も考えず、己の短期的権益しか考えていないのだ。さらに言えば、Bリーグが設立し、日本バスケット界の立て直しが進んでいるにもかかわらず、当時の活動を恥じていない。正直言うが「ああ、サッカー狂でよかった、バスケットの方々はどんなにつらかったことか」と再確信したのが、正直な読後感だ。もちろん、同書にはすばらしいバスケット人も登場する。長年日本協会とJBLを支えた吉田長寿氏や、bjリーグに参画した滋賀レイクスターズ社長の坂井信介氏など。

 今大会の成功は、これら悲しい過去の歴史を完全に払拭するものとなることだろう。

 大会前から、消息通には悲観的な予測が渦巻いていたようだ。
 日本の目標は、五輪出場権獲得。そのためには、アジアの出場国でトップの順位になることが必要だと言う。このレギュレーションは、直接対決がないだけに、組み合わせ抽選の運不運が大きい。ところが、日本のグループはドイツ、フィンランド、豪州と、強力国がズラリ。一方で、ライバルとなる中国、フィリピン、イランなどは、日本と比較して楽なグループに入ったとのこと。そのため、彼らがベスト16に入るリスク?もそれなりにあった模様。さらに、全アジア国が下位順位決定戦に回ったにしても、日本は1次ラウンドで全敗のリスクが高く、ライバル諸国は1勝する可能性が高いなど、かなり悲観的予測の文章を目にした。

 実際、初戦のドイツ戦は63-86で完敗。チームのねらいの3ポイントシュートが外れてはリバウンドを奪われ、結果的に攻撃機会をドイツに提供することになり、じりじりと点差を広げられてしまった。
 しかし、2戦目のフィンランド戦。98-88で、鮮やかな逆転勝利。第1クォータこそリードしたものの、第2クォータに逆転される。その後も終盤までリードされる。しかし、第4クォータ、大エースのホーキンソンに加え、河村勇輝と富永啓生が冴え渡り、第4クォータ単独では35-15、正に鮮やかな大逆転。ドイツ戦で空席が目立ったチケットコントロールが改善され、満員となった沖縄アリーナ。ブースターたちの熱狂的声援が、富樫勇樹と仲間たちを支えたのは感動的だった。考えてみれば、沖縄は日本では屈指のバスケットが盛んな地域。日本中、ほとんどの地域で、プレイヤ人口はサッカーが最大だと思われるが、沖縄だけはバスケットのプレイヤ人口が、サッカー以上に多いのではないかと言われている地域だ(笑)。言うまでもなく、ゴールデンキングスは現状のBリーグ王者だし。
 3戦目の豪州戦、89-109で敗れた。ともあれ、負けたとは言っても、フィンランド戦で負傷し思うように活躍できなかった渡邊雄太がフル回転。渡邊とホーキンソンを軸に、この強豪に堂々と渡り合ったが、相手が強かった。それでも後半(第3クォータ+第4クォータ)のスコアは52-54、互角の攻防を見せてくれた。

 その結果、日本は1勝2敗で、下位順位決定戦に回った。しかし、1次ラウンドを終わってみれば、日本を除くアジア諸国はみな全敗。日本だけが、1勝しており、かなり優位な状況で下位順位決定戦に対応することとなった。上記の悲観的予測は、無事?外れたわけだ。

 ベネズエラ戦は、86-77の勝利。
 最終スコアを見ただけではこの試合の感動は伝わらない(笑)。第3クォータ終了時点で、53-62。攻防そのものは互角の展開だったが、大エースのホーキンソンのシュートが決まらないこともあり、点差を詰めることができない。複数回、後一歩で追いつける2、3点差に詰めたことはあったが、その都度突き放される。イヤな雰囲気は第4クォータ半ば過ぎまで継続した。
 この苦しい試合を救ったのが、大ベテランの比江島慎だった。第4クォーターだけで17得点を決める超人的活躍。あと2分しか残っていない時間帯から逆転に成功した。最終スコアの11点差だけ見ると、この試合の興奮は理解できない。バスケットのおもしろさでしょうな。ちょっと、うらやましい(笑)

 そして最終のカーボベルデ戦。勝てば五輪出場権獲得。正直言うのですが、世界中ほとんどの国は、サッカーを通じてどんな国なのか、ある程度知っているつもりだった。しかし、カーボベルデがどこにあるのかは、この大会で戦うまで知識がなかった。そうかアフリカ西部の島国、大航海時代に発見された無人島だったのか。エンリケ航海王子か。
 今大会はじめて(笑)、序盤からリードを奪い優位に試合を進める日本。ところが、気持ちよくテレビ桟敷で試合を楽しめたのは、第3クォータまでだった。73-55で迎えた第4クォータ、突然日本に点が入らなくなり、どんどん点差が詰まってくる。多くの報道は、五輪出場権獲得が眼前に迫った故のプレッシャによるものと議論されている。一方で、私のようなシロートからすると、渡邊とホーキンソンを引っ張りすぎ(結局この2人はこの試合40分間フル出場だったとのこと)、彼らが疲労困憊だったが痛かったように思えた。これだけ点差が開いていたのだ、3ポイントを無理に狙わずとも、敵ゴール下に進出し2点ずつ点をとって点差を広げられないことが重要。ところが、敵ゴールに進出し個人能力で得点を奪える渡邊とホーキンソンが疲弊してしまい、どうにもやりようがなくなってしまった。気がついてみたら、終了間際には74-71の3点差まで詰められてしまう。しかし、この苦しい局面を打開してくれたのは、やはり大エースのホーキンソンだった。ホーキンソンが、終盤あと1分のところで連続ゴール、気がついてみたら9点差とするのに成功。歓喜の五輪出場権獲得とあいなった。いや、めでたい。

 それにしても、ホーバス監督の手腕は見事だった。
 東京五輪時の女子監督での銀メダルもすばらしかったが、今大会のチーム作りも鮮やか。3ポイントを軸に、上記のスター達と守備力が高いスペシャリストを組み合わせ、目標を達成してくれた。まあカーボベルデ戦終盤の采配は不適切だったと思うが、まあそれはそれ。
 ホーバス氏が最初に来日したのは、プレイヤとして2000年だったと言う。その後、指導者として2010年に再来日。その後も女子の指導を中心に指導者として経歴を磨いたと言う。言い方を変えれば、冒頭に述べた暗黒時代でも、日本のバスケット界はホーバス氏のような有為なタレントを受け入れる土壌はあったことになる。上記したように当時、バスケット界には残念な首脳も多かった。しかし、心ある優秀な方々も現場には多かったと言うことが、このホーバス氏の大活躍で理解できた。
 今大会の成功は、そのような心あるバスケット人達の勝利と言うことだと思ってる。

 パリ五輪には、八村塁も参加することだろう。ホーバス氏率いる最強の日本代表が、どこまで上位進出できるのか。五輪の楽しみが一つ増えたのが嬉しい。
posted by 武藤文雄 at 00:56| Comment(0) | TrackBack(0) | サッカー外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする