2008年07月28日

アルゼンチン五輪代表戦前夜

 昨日の日程破綻に関するエントリに、早くも多数の反応をいただき多謝。中でも、秋春制の具体的日程案を提示いただいたNOさんには、改めて事実上秋春制が実施不可能である事を示していただき、感謝の言葉もない。ウィンタブレークの代わりにオフを短くして、かつ代表の活動期間とウィンタブレークを一致させなければ、日程消化すら困難な事をわかりやすく説明いただいた。提示いただいた案のように、新チームの選手契約の時間がほとんど取れないくらいのトリッキーな日程を作っても、ワールドカップ予選がある年への対応は困難な事、ACLに出場するクラブが地獄の日程をこなさなければならないのも、よく理解いただけるだろう。

 さて、明日は五輪代表のアルゼンチン戦。
 2年の月日をかけてじっくりと選手選考し、最後の2週間だけで連携を強化する独特の...(おっと、これは禁止したのだった)馬鹿を言っている場合ではないな。豪州戦では特に攻撃面で顕著な進歩が見られたが、今度は世界最強国にどこまで通用するか。今まで個の能力に頼ってきた(しかしアジアでは圧倒的な強さを見せていた)守備力が、いかに組織化されリケルメやアグエロに対抗できるのか。大変愉しみな試合だ。

 いくつか思い出話。

 まずは監督のセルヒオ・バチスタ氏。おお、あの史上最高のトヨタカップのアルヘンチノス・ジュニアーズの、あのバチスタではないか。
 あのアルヘンチノスの鋭い攻撃は、今なお、目を閉じれば思い出す事ができる。最前線の高速ギアチェンジが冴え渡る若きエース、クラウディオ・ボルギを軸に、次々と後方から選手が湧き出してくるアルゼンチン独特の攻撃の美しさ。そして、中盤後方でその攻撃を組織していたのが、バチスタだった。当時若手の有力代表候補だったバチスタは、その後もどんどんと昇進し、翌年のメキシコワールドカップでは、ディエゴの後方を支え世界チャンピオンに。90年イタリア大会でも、負傷者、出場停止者山積のチームで冷静な球さばきを見せ、決勝進出に貢献した。
 その後、バチスタはPJMフューチャーズで来日するなど、日本にも縁が深い。当時の自分くらいの年齢の若者達を率いて、ミシェル・プラティニ、故ガエタノ・シレア、アントニオ・カブリニらと、美しい攻め合いを演じた国立競技場に23年振りに立つ時、セルヒオ・バチスタは何を思うのだろうか。

 アルゼンチン五輪代表との手合わせは4回目。
 最初は東京五輪。私はまだ幼く全く記憶がない頃の話。川淵の決勝点で日本が逆転勝ち(日本はA代表、先方はユース代表クラスだったのだろうが、強い相手に勝ったのだから素晴らしい実績だ)。ちなみに引退後も川淵氏は外国人代表監督の招聘など、日本サッカー界に多くの貢献を行ったが、晩節を汚し、心あるサッカー人達から軽蔑されているのは皆さんご存知の通り。しかし、どんなに馬鹿にされても、このようなプレイでの記録だけは色褪せない。
 一方、一番最近は98年トルシェ氏就任直後の練習試合。A代表のエジプト戦に続いて、トルシェ氏は独特のフラット3を披露。稲本のクサビを福田が落とし、俊輔がこれ以上ないと言う芸術的なループで決勝点を決めた。ループの軌跡の美しさ、このような強豪を技巧で崩すことができる時代が到来した事、いずれも忘れ難い思い出だ。
 88年ソウル五輪。異様な守備戦術で出場権を逃した日本のA代表は、ソウル入りする前の強豪国の調整相手として格好で、アルゼンチンとソ連の五輪代表と国立で手合わせを行った。当時のA代表は、不可解な3−3−2と言うフォーメーションを操る監督が率いる暗黒時代。しかし、選手の能力はそれなりに高く、若き井原正巳を軸によく守り、A代表のレギュラを多数抱えるアルゼンチン五輪代表とよく戦い、終盤まで0−0で試合は進む。そして終了間際にGK松永のいかにも彼らしいファンブルで失点し敗北。強いチームにはどうにも勝ち切れない頃だった。

 ともあれ、過去も様々な因縁があるアルゼンチン五輪代表。好試合を期待したい。
 もっとも、私の願いは明日ではなく5回目の対決となる北京本大会。「44年目の返り討ち」に乗じて、大嫌いな川淵氏が偉そうに現役時代を振り返る映像を、待ち望むものである。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
(誤)店
(正)魅せ
Posted by 11031 at 2008年07月29日 03:39
面白い試合でしたね。前半は眠い感じでしたが、後半梶山が高い位置に来たあたりから一気に盛り上がって。「先制できるかも」と淡い期待を持った直後に凄まじい個人技で決められて、ガクっときたか。
でもアメリカとナイジェリア相手にならそこそこやれるんじゃないかな、とも思いましたよ。
Posted by j at 2008年07月29日 21:35
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