2008年08月20日

アルゼンチン決勝進出

 アルゼンチン3−0ブラジル。アルゼンチンにとって全てがうまく行った後半戦だった。

 先制点は、メッシをおとりに使う中央突破。非常に狭いスペースで前を向いてドリブルを開始できるメッシがゴール前にウロウロしていると、敵守備は相当厳しいマークをする必要がある。そして、ブラジルの守備がメッシを気にして中央に集まった瞬間に、マスケラーノ(だと思った)が左外のディマリアに鋭く速く正確なパス。このディマリアと言う選手は、日本との準備試合でもそうだったが、マーカよりやや外側を走り、僅かな空間で事で強いボールを蹴るのが実に巧い。メッシを気にして、ほんの少し絞り過ぎていたブラジルDFを前に余裕綽々強烈なグラウンダのクロス。ディマリアがここに蹴り込んでくると確信していたアグエロは胸を捻って叩き込んだ。
 飛び切り巧くて、判断力のよい連中が連携すると、ここまで簡単に崩せると言う美しい得点。

 2点目は敵陣近いFKが起点。普通のチームにとって、敵陣前のセットプレイと言うのは「敵陣近いところでフリーで狙ったボールを蹴る事ができる」のがメリットなのだが、リケルメとメッシのいるチームにとっては「敵のマークが薄いところから、ドリブルを開始できる」メリットもあると言う事だ。コチャコチャとつないでいるうちに、メッシが斜めのドリブルでペナルティエリアを切り裂き、アグエロが全くのフリーになってしまった。
流れや形が全く異なるが、90年ワールドカップの1/16ファイナルでの、ディエゴの引き付けからのカニージャの得点と同じ概念の得点だな。

 1点目、2点目、それぞれの直後にブラジルもポストを叩く強シュートを放っているのだが、いずれかが入っていれば、状況は随分代わっていたのだが。1本目はGKロメロの超ファインプレイ(僅かにボールに触った事で、ボールはポストに当たり、それがゴール中央ちょっと前に跳ね返ったのを、冷静にかつ素早くキャッチした)。2本目はロナウジーニョの直接FK、こぼれたボールを巧く拾ったクロスを、パトが決めたかに見えたが、オフサイド。まあ、ついていない時はこんなものだろう。心なしか、ドゥンガの咆哮も元気がないように見えた。

 3点目のPKの判定を見て、マスケラーノは完全に「この主審は空気が読めない」と判断したのだろう。以降、独特の抑揚をつけたドリブルで、ボール奪取をしたい若いブラジル選手からファウルを誘引し、次々と退場者を導き出した。スキルフルなシメオネの後継者とでも呼んだらよいだろうか。
 2人目にマスケラーノの策にはまったチアゴ・ネービスは随分出世したものだが、今後はどのくらい成長するのだろうか。コパアメリカでも活躍し、欧州トップクラブからの引き合いも盛んだと言うが、興味深く見守りたい。20歳そこそこで技術は完璧に近いが、J2で戦うにも判断力が今十歩くらいだった選手。それでも、世界レベルのプレイヤに成長するのだとしたら、我々にとってもスーパーな攻撃選手育成方策の指針になるように思うからだ。

 スコール下の準備試合で完敗した際に、改めて思った遥かなる差。本大会に入り、バチスタ氏はそのチームに、「どんなチームからも点を取り切る」ためにメッシを加えた。遥かなる差は、再び広がったのだが、まずは遥かなる差をいかに詰めるかを考えるべきだろうな。それについては別途。
posted by 武藤文雄 at 23:41| Comment(1) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ベンチに、おそらくはコーチであろうブラウンの姿がありましたね。
バティスタ監督やディエゴとともに世界一に上り詰めた、いわゆる『メキシコW盃組』。
先制ヘッドと、肩を傷めながらも戦い抜いた決勝・西ドイツ戦での雄姿が思い出されます。
「他にも、誰かいるのでは?」と、決勝でも監督の周囲をチェックしてみましょう。
Posted by 19番ゲート at 2008年08月21日 11:23
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