2008年08月27日

どう得点を奪うのか 五輪代表ピッチ上の問題(中)

 今回の抜本的な敗因は「オーバエージを選ばない」日本協会(あるいは反町氏)の不首尾であり、勝敗を分けたポイントは「判断」や「工夫」の欠如だったと論じてきた。それに加えて、どうにも「イライラ」させられる時間帯が非常に多かった。

 今回手合わせしたチームは、いずれも大柄な選手を揃える国だった。過去の世界大会では、往々にしてこの手の相手には、単純なぶつかり合いを避け、素早いパスワークで勝負をかけないと、押し込まれるケースが多かった。ところが、今大会は、単純なぶつかり合いに悩まされたケースは少なかったようにも思う。たとえば、豊田の高さは3国全てに通用していた。水本、森重、細貝、谷口の4人は、競り合いにも相当な強さを発揮していた。いや、あの本田圭も単純な競り合いには、ほとんど負けていなかった。いや、ほとんどの選手が同等に競り合っていたではないか。
 そして、これはいつもの世界大会同様に、ボールを回す技術も他国と比較して遜色ない。さすがに厳しいプレッシャの中で突破する事は思うに任せなかったが。つまり、ボールを争う局面ごとにはほとんど負けていなかったのだ。
 それなのに、中々攻め切れないものだから、再三「イライラ」させられたのだと思うのだ。

 いささか逆説めく話。この大会最も「イライラ」しなかったのはナイジェリア戦で2失点した時間帯ではないか。ここでのナイジェリアの迫力ある速攻は「さすが」としか言いようがないもので、「先方が明らかに上手」と感じざるを得なかった。そのくらい差がハッキリしていれば、どんなに悔しくても「イライラ」とは感じないものだ。
 特に2点目を取られた際は、逆襲から3対2を作られたたが、森重、水本、西川の3人が、創意に満ちた巧い守備を見せ、角度のない所に敵FWアニチェべを追い出して西川がコースを消したのだが、アニチェベは完璧なトラップと鋭い反転で西川を破ってしまった。こう言うのは、心底絶望的な気分にはなるが、「イライラ」とは言わない。ところが、このように「さっぱりと殺していただける」時間帯は今大会においては、非常に少なかった。
 それ以外の時間帯は、いずれの試合でも「局面ごとには負けていないのに攻め切れない」と言う「イライラ」感に襲われる事が多かった。

 そして、攻め切れなかった要因は、合衆国戦にも指摘した「『どうやって点を取るか』が曖昧」と言う事に尽きるのではないか。内田や長友や安田の外をえぐり、豊田の空中戦、本田圭のプレイスキック。いずれも中々の武器なのに、そこから得点につなげようとする連動が見受けられないのだ。
 典型的な場面は、オランダ戦の前半の好機(になりかけた場面)。梶山が長友(だと思った)を見事に追い越し、右サイド全くのフリーに、今大会には珍しくペナルティエリアには多数の選手がなだれ込んでいる。「これは決まりそう」と期待した瞬間に梶山がボールをこね回し、結局よいボールは入れられず、逆に悪い形で奪われて逆襲を食らいそうになった。あの瞬間冗談抜きに、「このチームはサイドを突破する練習は積んでいるが、サイドから点を取る練習はしていないのではないか」とすら思った。大会直前の懸念がそのまま出たと事だろうか。
 さらに、考えてみれば、このチームは結成して2年近く経つものの、パスワークの妙からの得点は非常に少なかった。ほとんどがセットプレイと選手の個人技の披露によるもの。唯一の例外が、先日の豪州戦の香川の先制点だったのだが、あれはぬか喜びだったのだなと。

 そう言う見地で対照的だったのは女子代表だ。とにかく得点への筋道は明確だった。
 澤と阪口が精度のよいボールを縦に入れ、永里のキープと大野とすり抜けを使った中央突破。
 宮間が個人技で、近賀が後方からタイミングよい攻め上がりで、丸山が短い距離のダッシュの速さで、それぞれサイドを破り、センタリングを入れる。ただし、タッチ沿いから強いボールを鋭角に蹴る脚力はないので、敵DFを完全に抜き去りペナルティエリアあたりまで切れ込む必要があるが。
 女子代表の攻撃は、基本的には以上の2方法の併用。そして、いずれの攻撃を選択するか読まれないように、4人のMFがあちらこちらに顔を出して変化を付けていた。
 佐々木監督が就任したのが今年の1月なのだから、半年強でここまでチームを作り上げたのだから、大したものである。

 もちろん、チーム完成途上期ならば「『どうやって点を取るか』が曖昧」と言う状況もあるだろう。しかし、言うまでもなく、五輪本大会がこのチームの目標だったのだから、言い訳の余地はない。
 と言う事で、極めて月並みな議論である、反町監督批判に続きます(って、あと1回で終わるのだろうか)。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(12) | TrackBack(1) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
梶山の特徴を挙げてゆくと何故かこのチームと全て被りますよね
兵藤や増田がライバルになれなかったのが問題でした
実はあのチームそれだけで大分変わっていたのではないかと思います
Posted by at 2008年08月28日 02:57
あの場面に関しては、梶山が中に切れ込んでいくのは仕様です。

ただ、いつもスタジアムで梶山を見てる身としては、反町が梶山と心中したわりには梶山を生かすようなチームづくりをしたようには思えませんでした。
Posted by カジヤマニア at 2008年08月28日 10:49
武藤師があげた女子の選手は阪口以外ベレーザ関係者です。
丸山は中学までメニーナ、宮間は高校途中までベレーザ。
近賀はベレーザで育ったわけではない(横須賀シーガルズ→湘南学院)
ですが、周りと合わせられないような選手をベレーザが採るわけありませんし。
子供の頃から同じサッカーを学んだ者同士ですから、
監督に言われなくても合わせられる部分は多い。その点、
寄せ集めチームを率いていた反町さんより佐々木さんが
有利な立場にいたのは確かだと思います。

なにより大きいのは、女子代表がどういうサッカーを目指すかについて
選手と首脳陣の間で意思統一が出来ていたということではないかと。
上田女子委員長が監督をやっていた時代から軸がぶれていないんですよ。
アテネのときと変わったことと言えば、選手個々が上手く、強くなって、
アテネの時には出来なかった事が北京では出来るようになっただけでしょう。

反町さんの下で働いていた選手は、監督が何を目指しているのか
最後まで分からなかったんじゃないかな。
Posted by masuda at 2008年08月28日 12:19
澤と坂口の縦パスは全く通っていないだろう・・・あれが通らないから苦しくなったんだよ。

結論ありきだから、間違うことになる。日本人の悪い癖だね
Posted by シンガリルドルフ at 2008年08月28日 14:35
梶山だけでなく、それは本田にも言えるのではないでしょうか。
結局反町はこの2人をずっと重用しながら予選では軸にはせず、
OA招聘失敗を経て本番ではいきなり、ぶっちゃけ勝ちに行くん
だかなんだかわからない中途半端な布陣をお前達が仕切れよ..と
投げたように見えたのは気のせいでしょうか。
Posted by 桃 at 2008年08月28日 20:49
今になって気付くトルシエの偉大さ。(最後は大失敗したけど。)
少なくともオートマティズムは確立されていましたよね。
オランダ戦は選手全員が監督の指示を無視していたらしいので、皮肉にも監督には責任がほとんど無いとも言えるかもしれません。

色々考えましたが、決勝戦を見てすべて考え方が変わりました。「この2チームとは百回対戦しても百敗するだろうな」と。
だからといって腐った協会と無能な反町が免罪されるわけではありませんが。
Posted by Steven Davids at 2008年08月28日 21:51
個人的にはサイド攻撃一辺倒でボール回しはうまくいってないと感じました。
今回の五輪代表に限らず若い世代のボール回しがうまいと感じることが年々少なくなっています。
黄金世代を頂点に下がり続け、ボール回しがうまいと感じたのは、ムービングサッカーを
標榜した西村監督が率いたアルゼンチンワールドユース世代まででしょうか。
下がり続けたは言い過ぎました、大熊氏が率いてロングボール戦術を採らされた
UAE世代よりはましでした。
若い世代のボール回し低迷の原因は、田島専務理事が技術委員長だったころ、若年層の
指導方針として15秒ルール等のカウンター戦術を推奨したことが大きいと思います。
ユースでも五輪でも結果を出していないのに、責任も取らず、なんでこんな人が専務理事になっているのか。

今回の五輪代表は決定力不足が批判されましたが、批判されるほど決定的な場面は少ないと
感じました。
悪かったのは中盤でのパス回し、内田頼みサイド攻撃パターンのみ、
遠藤がいればだいぶ変わったと思いますが、そもそも遠藤と同じ仕事をこなせる人材が、
若い世代に皆無なのが問題です。
個人的には名波、遠藤の系譜の視野の広いボランチが若い世代にも出てきて欲しい。
日本は、運頼みのような決定力のあるFWを生み出すことより、時代遅れといわれようとも
リケルメを中心としたアルゼンチンのようなサッカーを目指して欲しいです。

Posted by at 2008年08月29日 01:57
新潟で攻撃はブラジウ人頼みの3トップ
7バックサッカーをやっていた反町さんを
監督に選んだことが間違いだったわけですね
Posted by まさみ at 2008年08月29日 02:23
先日のエルゴラで全日少年サッカー批判記事(あの年代ならゴール前にエイヤと
蹴り込んでぐちゃぐちゃやっていれば、FWの前にボールがポロッと転がって
シュート!で点が取れるが、そんなサッカーを指導してたら若い世代のレベルが
向上するわけねえだろ常識で考えて、という主旨)が出ていましたが、
結果的には「ボールを奪ってから15秒」理論には合致しているわけですな。笑
って全然笑えませんが。
Posted by 決勝戦は楽しめた人 at 2008年08月29日 14:16
>ボールを回す技術も他国と比較して遜色ない
 そうですか?
中盤でのパスとトラップが、とんでもなく異様に雑だったと思いますけど。(^_^;)
相手にパス、とか、前に蹴るだけ、というのがざらで、ボールを簡単に失っては追っかけて走っている姿を見てイライラしましたw。
Posted by vp at 2008年09月01日 03:27
>そして、これはいつもの世界大会同様に、ボールを回す技術も他国と比較して遜色ない。

そのとおりですね。
相手のプレスのない時は結構上手い選手たちでした。
でも、ただそれだけでしたね(苦笑)

>さすがに厳しいプレッシャの中で突破する事は思うに任せなかったが。

ここが一番大切なことじゃないのかなぁ。
厳しいプレッシャの中で何ができるかがすべてでしょう(苦笑)
つまり、その程度の選手を反町が選択していたということ。
「強い選手」と「上手い選手」は別ということですね。
どうも、日本の指導者は「上手いだけの選手」がお好きなようです。
強国では「強い選手」が基本。ほんで「強くて上手い選手」が3〜4人いる。


Posted by at 2008年09月01日 21:51
↑は天邪鬼の投稿です。
すみません。名前記載を忘れました。
Posted by 天邪鬼 at 2008年09月01日 21:52
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Weblog: 俺もないけど心配するな
Tracked: 2008-08-28 23:30