2008年09月10日

マナマ参戦記(上)

 ドバイ経由でマナマに着いたのは当日朝。空港から外に出た瞬間にまとわり着くような濃厚な湿気に襲われた。気温も相当だ。これは危ない。本当にこの環境で試合を観るのかと絶望的な気持ちになった。もっとも、こちらは観るだけだが、選手達はプレイしなければならないのだから、冗談を言っている場合ではない。
 余談ながら、試合翌日に、バーレーン唯一の世界遺産である「カラート・アル・バーレーン」を訪問して、灼熱の中トボトボと歩き回ったのだが、本当に暑かった。そして、ラマダン中と言う事もあり、外で水分を取る事がはばかられた事もあり、本当に危ないものを感じた。あれは人が生活できる環境とは言えない程の未経験ゾーン。ちなみにこの遺跡を散策中に、私1人友人達とはぐれてしまった。普段ならこのような状況を見逃さずチャータした車を発車させるであろう連中が、「1人武藤を取り残したら、本当に死んでしまうだろう」と危惧し、そのような嫌がらせを断念する程の超高温超多湿だった。車の温度計は摂氏50度を超えていたと言う(どうでもいいが、「カラート・アル・バーレーン」は悪くない遺跡ではあったが、これが世界遺産認定されているのを知ったら、世界遺産入りを狙っている鎌倉や平泉の関係者はムッとするだろうなと言う程度の遺跡だった)。
 と、前振りをしたが、試合は現地時刻21時30分キックオフ。この頃になると、さすがにグッと気温は下がり、僅かながら風も流れてきて、何とかサッカーを愉しめる環境に。それでも選手達は大変だったろうが、これならば日本における盛夏期のナイトゲームとそう変わらない環境と言えよう。昨日も述べたように、夏の中東でも夜遅くに試合をすれば、何とかなると言う事か。と考えると、改めて過日のマスカットオマーン戦での愚行に無性に腹が立ってきた。あの環境の試合を認めたと言う事だけで、前会長を許す事ができない(いや他にも「許せん!」は多いのですが)。

 試合開始。想像通りマチャラ氏には奇策は残っておらず、ある程度引いてカウンタを狙うと言う常識的な策で来た。埼玉での試合で、もはや長いボールが通用しない事がわかっていたのだろう。
 日本は遠藤を軸に素早い展開でボールを回し、松井、阿部のミドルシュート、内田のオーバラップから低いセンタリングを田中達也?が反転シュートなど、攻勢を取る。これらの両翼攻撃を繰り返した後に、中村俊輔が中央の玉田に低いクサビを当てると、たまらずバーレーン守備陣はファウル。そのFKを、俊輔が低く速い一撃をファーに、GKの反応よりも相当早い段階でボールはネットを揺らした。このGKは埼玉では見事に俊輔のPKのコースを読んだセーブを見せたが、さすがにFKでは「ヤマを賭ける」危険は冒せなかった。ここまでの時間帯、遠藤が4DFの前に位置取りして展開、長谷部が精力的に上下動、2トップの精力的なチェイシング、俊輔と松井がよくボールに触り、阿部と内田が適切に前進。完全にバーレーンを押し込む理想的な展開だった。
 その後は、昨日嘆いたように、内田の怠慢から好機を許し、バーレーンペースに(この場面は本当に腹が立った、前に出た後、しっかり戻らないとどんな痛い目に会うのか、あのナイジェリア戦の痛恨を忘れたのか)。贅沢を言えば、せっかくバーレーンが出てきたのだから、逆襲速攻から好機を掴みたいところなのだが、闘莉王の急ぎ過ぎや玉田の不安定なキープなどで、押し込まれてしまった。それでも、試合の流れをよく読んだ俊輔が、遠藤にボールを集めて試合を落ち着け再び日本ペースに。
 そして、左サイドで再び玉田が倒されFKを獲得。遠藤がグラウンダの速いボールを入れ、俊輔の強シュートから敵ハンドを誘引しPK獲得(反対サイドのゴール裏だったもので、このPKはよくわからなかったのだが、主審のはっきりしたジェスチャに歓喜した次第)。遠藤がコロコロを決めて2点差となった。
 前半半ばの悪い時間帯がありながらの2点差でハーフタイム。「いやあ、このまま終わってしまったら、大枚はたいて来た甲斐がないな」、「マチャラはこれ以上の惨禍を避けるためにもう無理をしないのではないか」など、明るい会話が愉しい。
 
 しかし、マチャラ氏は往生際が悪い。後半立ち上がり、2点差の難しい状況になっても、バーレーンは試合を捨てずに最前線からプレスをかけ、得点を狙ってきた。感心したのは、単純なクロスでは中澤、闘莉王、楢崎を破れない事が徹底されていた事。アーリークロスではなく、辛抱強く両翼をえぐってきた。それでも、日本守備網は揺るぐ事はなかったが、CKは幾度か提供。状況によっては交通事故もあり得る展開だった。これも昨日嘆いたのだが、あそこで中澤に頼るのではなく、何とか中盤でつないで敵の攻撃頻度を下げたいところ。この時間帯に俊輔や松井にもミスが散見されたのは多いに不満だった。
 しかし、やはり中澤はさすがで、この時間を凌ぎ切る。そして、日本の逆襲速攻が奏功し始める。遠藤のパスを受けて玉田が角度のない所から強シュート(玉田と言う選手は不満も多いのだが、この場面の低く押えた強烈なシュート、上記のファウルゲットなど、紛れもなく「素材」は超一級。ただもう28歳と言う年齢を考えると複雑に思うのだが、これは別途述べたい)。このあたりで、バーレーンはいっぱいになった感があり、後方の選手が押し上げられなくなってくる。3月に苦杯を喫した試合でも、終盤バーレーンの選手は動けなくなっていた(そこから点を取られたから激怒したのだが)。これは非常に重要な事で、バーレーンクラスのチームが日本に対して押し込もうとして無理をすると、90分持たないのだ。贅沢を言えば、このあたりの速攻で3点目が欲しかったのだが。
 そして、達也のドリブルを止め切れなかったモハメッドが2枚目のイエローで退場に。この場面、モハメッドともう1人のDFは完全に疲労から、達也の鋭いドリブルに対応できない状態になっていた。1人少なくなったバーレーンの足は完全に止まり、遠藤を軸にスローテンポながら確実にボールをキープ。面白いようにボールが回り、バーレーンを引き付けての猛攻開始。こうなると応援する方も「オーレ」と叫ぶのが愉しくなってくる。
 達也が左をえぐり、玉田が合わせ切れず(どうして、こう言うところでこの男は淡白なのだ!)、逆に流れたボールを長谷部が奪い取り全くのフリーでバーに当て(これは決めなければいけない)、こぼれを拾った達也が鋭角の切り返しからまたもバーに当てた(こちらは切り返した分、仕方がないか)分厚い攻撃は圧巻。そして、松井に代わって入っていた憲剛が、強烈なミドル、敵に当たってネットを揺らしたが、当たらずとも入っていたのではないか。

 と言う事で、「大枚はたいて来た甲斐がある終盤」にもつれ込むのであった。
 1失点目は、昨日も述べたとおりあきれかえるミスの3連発。ボールを受けたバーレーンのDFが、憲剛の論外位置取りによってあれだけフリーだったにもかかわらず、疲労困憊で縦に出る事ができず(あれだけ辛抱強く皆でえぐりを狙っていたのに)、ヤケ気味に強く低いクロスを蹴る。すると、今野の役立たず、内田の間抜けと2連発が巻き起こるのだからサッカーは面白い(いや、面白くない、でも終盤こそ愉しめたのだが、いったい何を言っているのだろう)。ただ、この1失点目の時は、バーレーン選手が皆「さあ、行ける」と言う雰囲気ひとつ見せず、ノタノタと自陣に帰るほど疲労困憊していた。2点差になっても、彼らすら追いつけるなどとは思っていなかったのだ。
 2失点目は闘莉王個人の問題。楢崎との連携云々も重要だが、そもそも何を狙ったヘディングだったのか。バックパスならばゴールを外さないのは大馬鹿だし、つなごうとしてヘディングが狂ったのならばド下手と言う事になるのだが。おい、頼むよ。
 こうなったら、バーレーンは気持ちだけは乗ってくる。ただ、体力的にはいっぱいなので、無謀なシュートを狙ってくれて助かった。しかし、とにかく打たれれば間違って楢崎の手の届かない所に飛んでいく可能性もあるのだから、ちゃんとキープしなければ。ここで情けなかったのは、交代した3選手。今野にせよ、憲剛にせよ、他の選手よりは動けるのだから、しっかりつながんかい。さらに寿人にはガッカリ。確かに起用されたタイミングでは、まだ2点差であり、疲労困憊した敵に裏を突くのが狙いだったのは正しい。しかし、事がこうなった以上は、無理に裏を狙わずに、確実にボールを受けてくれよ。終盤裏を狙ってオフサイドになった場面には激怒。
 と、すっかり愉しませてもらって試合終了。

 ラマダン最中と言う事で、酒精の入手性が極端に悪い中でのホテルでの祝杯。何かしらモヤモヤを愉しんだ訳だが、同行いただいたサッカー狂会の大先輩が乾杯時に語ってくれたセリフが全てであろう。
 「3以上の勝ち点は取れない、敵地の初戦なのだから100点満点」
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(16) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>埼玉での試合で、もはや長いボールが通用
>しない事がわかっていたのだろう。

って,しっかり通用して2点取られてるんですが。w
Posted by at 2008年09月11日 04:27
ウズベキスタン−オーストラリアの試合を見ててこの時間・・・。

ウズベクの左サイド(日本の右)の選手15番はいいね。

相対するボウヤが,後半バテバテだとサクサク抜かれそう。

鍛冶を追い出したツケが回ってきたね。

オーストラリアは攻守に人数かけてスゴイわ。


Posted by at 2008年09月11日 04:45
DF陣3人は、低いクロスをペナルティエリア内で待ち構えていたのだから、前の方と中盤が頑張って追いかけなければ。
Posted by 相談役 at 2008年09月11日 08:31
>>埼玉での試合で、もはや長いボールが通用
>>しない事がわかっていたのだろう。
>
>って,しっかり通用して2点取られてるんですが。w

何言ってんの。
「埼玉でダメだったからマチャラは序盤スタンダードな戦略を選んできた」っていう文意の序盤時点の回想なのに、なんでわざわざ試合終了まで織り込んで書かなきゃいけないのさ。

やれやれ、こんな簡単な文章読み誤る人の教育は疲れる。ていうか正しい句読点使って。
Posted by at 2008年09月11日 08:58
リーグ戦初戦のアウエーゲームで、後半20分過ぎて2-0で、相手が10人で、暑くて疲れているならば、選手交代の目的はゲームを終わらせることだし、それをチーム(相手チームにも)に伝えることだと思います。少なくとも、先発して疲れている選手たちはそれを期待するのではないでしょうか。だとすれば、中盤の交代選手は松井→今野(長谷部を上げる)、FWの交代選手は巻が解りやすい。攻撃に力を発揮する選手が攻撃的ポジションで交代すれば、攻撃で良いところを見せようとしてしまうでしょう。実際、憲剛は試合後のインタビューでも攻撃について多く語っています。憲剛がお利口さんであったとは思いません。武藤さんは選手に厳しいコメントを残しました。では、岡田さんの意図はどこにあり、それははっきりと表現されていたのでしょうか。岡田さんの手腕で勝ち点3を拾ったのか、あぶなく落としかけたのか、微妙な感じです。
Posted by ひき at 2008年09月11日 09:56
遠征お疲れ様でした。

さて、今後のとして・・・

OGはアウェーでどこまでやれるかですね。
今のままだと怪しいと考えます。
カタール・バレンは今後蓄積してくるイエロー/レッドカードとやっぱりアウェーに耐えられるとは考えにくい。
ウズベクも前半もたついたままだと取り返せないでしょう。
ウズベクは伝統的にホームで滅法強い。
3次予選も無敗。
(サウジ、レバノンに共に3-0!)
しかしアウエーで伝統的に・・・


次のホーム日本が勝てば早くも突破は堅くなる。
さらにカタールとも引き分け以上なら当確マークだしてもOKでしょう。
Posted by GK20 at 2008年09月11日 10:32
ウズベクは早くもアンダードッグになりかかってますね。
埼スタでしっかり叩き落してもらいましょう。

一番上のコメントの人は、著しい読解力不足なので他人の片言隻句にケチつけることしかできないんでしょうきっと。
前のエントリに「『許さん』とかまで言ってるし。w」て書いてるのもこの人だろうし。
相手にするだけ無駄無駄。
Posted by at 2008年09月11日 12:33
岡田監督の評価としては
「交代に失敗した」
ということでしょうね。

反町が同じことをしたら,一体何と言われることやら。

「直前の練習試合に呼ばない選手を急遽召集。
  そのあげくに呼んだ選手はベンチからはずして,
   選手交代失敗。。。」

どっかで見た風景だなぁ。


そうそう,「正しい句読点」と騒いでいる人がいるけど,サッカーとおんなじ世間知らずだね。

FEPに「,。」が何故登録されているか勉強しなさい。w



Posted by at 2008年09月11日 12:47
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2008/09/12/08.html

前に、FIFAと電通はイザというときは、ライバル国にドーピング疑惑でもデッチあげて引きずり落とし、カネづるである日本代表だけは絶対アフリカに行かせる、っていったけど、な〜んだ、このテがあったのか(爆)

いずれにせよこんな茶番の上で思考停止して、無邪気に浮かれ、W杯参加国としての何がしかのプライドを見出している連中と、同じ日本人であることが恥ずかしくてしょうがねえや。
Posted by 新野芽衣華 at 2008年09月12日 08:40
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2008/09/12/08.html

FIFAと電通は、イザという時には、ライバル国にドーピング疑惑でもデッチあげてでも、カネづるである日本だけは絶対にアフリカに行かせる、っていったけど、な〜んだこのテがあったのか・・・(爆)

いずれにせよこんな茶番の上で思考停止し、無邪気に浮かれてW杯参加国としての何がしかのプライドを見出している連中と、同じ日本人であることが恥ずかしくてしょうがねえや。
Posted by 新野芽衣華 at 2008年09月12日 08:45
>FEPに
プププ
役立たずの古狸理系www
Posted by at 2008年09月12日 09:20
>「直前の練習試合に呼ばない選手を急遽召集。
>そのあげくに呼んだ選手はベンチからはずして,
>選手交代失敗。。。」

本選での監督の用意はできてるのかな。
新会長さん。。。
Posted by at 2008年09月13日 00:40
> 「3以上の勝ち点は取れない、敵地の初戦なのだから100点満点」

えっ?
「得失点差」で予選敗退した過去を・・・。(絶句)

そこまでして青メガネを・・・。
Posted by at 2008年09月14日 01:15
浦和の日本代表FW田中達也(25)が精密検査の結果「右太腿の筋膜炎」と診断され、
13日の大分戦、17日のACL準々決勝・敵地アルカディシア(クウェート)戦を
欠場することが決まった。エンゲルス監督によれば、負傷したのはW杯アジア最終予選バーレーン戦中。
「これは批判じゃないけど、達也は長くケガをした後だった。
僕はそういう(発症させない)ために途中交代をさせてきたのに」と、
過酷な条件下でフル出場させた岡田監督の采配をチクリ。

田中達の負傷離脱は既に今季5度目で復帰は早くても21日の大宮戦。
左足首痛のMF鈴木もクウェート遠征回避が決定し、浦和のアジア連覇に暗雲が立ち込めてきた。
http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2008/09/12/09.html
Posted by at 2008年09月14日 01:18
ちゅーか、なんで岡ちゃんが監督やると
こんなにけが人が多くなるのかな。
マリノスの時もいっつもけが人が多かったけど。
寺田も離脱ですってね。
いったい何人の選手が怪我したんだろ?
練習でも試合でも、選手に無理させてるってこと
ないですか?
あまりに多いので、疑っちゃうよ、もう。
今の代表、ほんとダークなイメージしかない。
どうして、こんな代表になっちゃったんだろう。
http://kintofbblog.seesaa.net/article/101137152.html
Posted by at 2008年09月14日 02:27
今の代表って、フィジコいるんでしたっけ?
Posted by ドーハ at 2008年09月14日 07:36
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