2008年09月23日

まだ我々は何も掴んではいない...のだけれども

 私の手元の時計では47分を回っていただろうか。4審が提示したロスタイムは3分。ベルマーレ陣奥深くの左サイドでベガルタは、少々幸運なFKを獲得した。正にラストチャンス。交代したばかりの佐藤由紀彦がボールに向かい、岡山、木谷が敵陣に向かい走る。由紀彦独特のカーブのかかったボールは一番のファーサイドに飛び、大外から回り込んだ菅井にピタリ。菅井のヘッドで叩かれたボールはGK金永基とポストの中間を襲いゴールラインを越えたのが、私の見ている角度からよく見えた。
 私は両手を上げて歓喜の絶叫をしようとした瞬間、副審がフラッグを上に上げる、「え、オフサイド?」と思い絶叫を躊躇する、そしてその直後、副審のフラッグはハーフウェイラインを向き、その動作を確認した主審の吉田寿光氏は手をセンタサークルに向けた。

 ぅぐぉお〜〜〜〜〜〜〜る。

 もう絶叫と阿鼻叫喚と。

 J2も終盤が近づいてきた。残り8試合、勝ち点1差で迎えた直接対決。平塚競技場は1万1千を超える大観衆に包まれた。好調のベルマーレ、平塚市民に対する割引、遠来の仙台サポータに配慮したキックオフ時間17時。通常はバックスタンドの半分をアウェイチーム席に提供するのだが、この日は約半分の提供。それでもホームチームサイドはギッシリになるのだから、見事なマーケティング活動と言える。

 開始早々から、ベルマーレは攻勢をかけてくるには驚かされた。中2日、微妙な勝ち点差、残り8試合。常識的には、お互い「負けない事」が何より重要なはず。にもかかわらず、両サイドバックが押し上げ、積極的に人数を前線にかけるサッカーをしてきたのだから。このベルマーレの攻勢に驚きながら、各方面でベルマーレ菅野監督(この人の現役時代も、1度じっくり語りたいな)が「この試合は天王山」と各方面で語っていたのを思い出した。菅野氏は大観衆下のこの試合に、不退転の決意で臨んだのだろう。
 一方のベガルタは、ベルマーレの勢いに押され、かろうじてしのぐ展開。しかし、当然ながらベルマーレが前掛りに来るものだから、逆襲速攻は幾度か有効に機能する。と言う事で、この手の試合特有の陰々滅々とは全く異なる、両チームが攻め合い、敵陣を脅かす展開が継続した。
 30分過ぎだったか、ベガルタペナルティエリア外の直接FKを加藤望が狙う。ベガルタGK林はブラインドだったのか反応できず。しかし幸運にもボールはポストに大音響を残し、はね返った。
 このあたりから、ベルマーレに攻め疲れが見え、ベガルタが好機を作り始める。40分過ぎか、右サイドに開いた平瀬が落とし、千葉直樹から斉藤を介して左サイドの関口に展開、関口を追い越した田村がフリーからファーサイドにセンタリングを上げるも、合わなかった場面の攻撃は実に見事。そして、その直後同様に右から左に展開、今度は左サイドペナルティエリア外でフリーになった梁勇基が低く正確なミドルシュートを決めた。
 かなり強引に攻めかけてきたホームチームに対し、頻繁に逆襲を行いながら冷静に戦い、終了間際によい崩しから当方の主将が得点を決めたのだから、考え得る最高の理想の展開と言える前半だった。
 前半半ば過ぎ、9月の平塚競技場には珍しく富士山のシルエットがきれいに見えた。乾燥した冬場にはよく見えるのだが。言い換えれば、この日は珍しく低湿度。今思えば、中2日の苦しい日程ながら、この低湿度が幸いし、両群とも後半終盤まで走力が継続するよい試合になった。

 後半に入り、ホームで負けているベルマーレは一層の前掛りで同点を狙う。しかし、焦りからか後方から早めに放り込んだり、無理なパスを狙う事が多く、ベガルタ守備陣は冷静に対処。一方でベガルタは、再三逆襲から決定機を掴む。しかし、平瀬やナジソンのシュートが今一歩上ずり、中々フィニッシュが決まらない。
 そうこうしながら試合は進む。ベルマーレはトップの原に代えて阿部を投入し、圧力を高めてくる。そして、押し込まれた75分過ぎ、加藤望に今度こその直接FKを決められ同点に追いつかれてしまう。林は完全に逆をつかれたが、壁に当たったのだろうか。この直前にベガルタ手倉森監督も、ナジソンに代えて永井を投入、中盤を厚くして逃げ切りを図っていたのだが、完全に失敗したと言う事だ。
 以降は、完全にベルマーレペースに。比較的単純なロビング攻撃に押し込まれ、いつ逆転されてもおかしくない展開が継続した。それでも木谷と岡山を軸にしのぎ、冒頭の場面につなげた訳。

 この日は、ベガルタにとって、全てがうまく回った日だった。昇格争いのライバルであるモンテディオもセレッソも敗戦した。結果、1試合少ない状態で2位モンテディオと1勝ち点差の3位。非常に望ましい位置につく事ができた。
 けれども、我々はまだ何も掴んでいない。ベルマーレもセレッソもモンテディオも何も失っていない。そしてサンガは息を吹き返した。全てがうまく回る日が、最終節だったら何も文句は言わないけれど、残り8節残っている。この残り8節を戦い抜いたクラブだけが、歓喜をつかめるのだ。

 それでも、今日くらいは歓喜の酒を飲む事は許されるだろう。

 グゥワッファッファ!

 終始、何も盛り上がらないJ2生活を、それも数ヶ月しか送れなかったサンフレッチェ関係者に、心から同情と羨望と祝意を送るものである。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(8) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サンガじゃなくてサガンですよ.

武藤さんは甲府の可能性についてはどうお思いでしょうか?
Posted by at 2008年09月24日 00:50
サンガじゃなくてサガンですよ.

武藤さんは甲府の可能性についてはどうお思いでしょうか?
Posted by wh at 2008年09月24日 00:51
常に冷静な武藤さんとは思えないこの書き込み。
同じベガサポとして解ります。
何より選手の気持ちが伝わった試合でしたね。
ホームでは武藤さんの分まで声を出して応援します。
お任せ下さい。
Posted by ゴールドのかえる at 2008年09月24日 01:29
最近ベガルタの書き込みがなくて武藤さんの
ベガルタ愛が薄れたのかと心配でしたが
今日の書き込みをみて安心しました。
溢れんばかりのベガルタ愛が感じられ
なんだか試合の結果より嬉しいです(笑)
まだまだ苦しい戦いは続くし天王山は先にある。
私は最後まで愛するクラブと共闘します!!
Posted by ぼるさん at 2008年09月24日 01:34
「勝つべき試合」・・・いえ、「必ず勝って欲しい試合」での勝利って
いつ以来でしょう(笑)
さらに「ロスタイム劇場」でのゴール・・・、堪能しました(涙)

我が愛すべき黄金のチームは、逆境に追い込まれたことで
サポを含めて何かしら「吹っ切れた感」に満ち溢れた良い雰囲気です。

ここに来てスタメンがほぼ固定化されたコトで、各々の役割がより
明確になった様子で、「必殺仕事人」ユキヒコ投入での意識統一も
しっかり浸透した結果が昨日なのではないかと思っております。

ただ、心配なのが永井。
小難しい「テグさん理論」の数少ない実践者が彼なのだと思いますが、
周りのメンバーとの理解度の差が大きいので、どうにも噛み合わない(苦)
この三連勝が「状況がもたらした意識統一」であるとするならば、
武藤さんのおっしゃるような「勝負は最後の5試合」をどう采配していくのか、
楽しみでもあり、不安でもあります。

・・・が、
いつぞやの最終戦のような「歓喜」を味わえることを心から望んでおります。

最後に、寿人、おめでとう。
俺たちもすぐ追いつくよ!
Posted by 吉田@仙台 at 2008年09月24日 05:13
凄く虚脱感がありましたが、一晩経ち少し落ち着きました。あの最後フリーキックの場面、ベルマーレの誰がファウルしたのか見えませんでしたが(大山?)何となく嫌な予感がしてました。副審がフラッグを上げていたので最後の望みでオフサイドと叫んだのですが、無情にもゴールの笛・・・帰りもう一人のコーチ仲間と長男坊と「こんな負け方って・・」と落ち込んでると次男坊の「まだ試合残ってるから」の冷静な声、そうまだ八試合残ってるんです。
しかし、この二年やっと痺れる後半戦を迎えらるようになったチームとなんだかんだずっと痺れるシーズンを戦ってるチームの差がありますね。

追伸
もう一人のコーチとも話しました。「武藤さんがいなきゃベガルタに負けたとしてもただの負けなんだけど・・・、次回の練習嫌だなぁ〜」と、そういうことで仕事もあり、次回の練習休みます(笑)
Posted by 少年団コーチ仲間 at 2008年09月24日 07:25
我々はもう去年の今頃のことなんぞ忘れてますので、講釈師殿も我々のこといい加減に忘れてください。
Posted by サンガサポ at 2008年09月24日 11:17
こういう試合をモノにできるっていうのは
大きいですねぇ〜やっぱり。
勝てなかった時期が長かったですからね〜
その反動ってのも大きいみたいです。

実は無意味といわれた夏場の堅守速攻の形も
秋口になって仙台の攻撃のバリエーションの
1つとして成り立ってきてる感じもします。
Posted by ゴールドフラッグ at 2008年09月24日 12:21
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