したがって犬飼氏が、欧州のトップチームは大変な試合数をこなすが各国代表クラスの選手を2チーム分近く抱えている事、それらのチームはそう言った超名手がターンオーバで試合をしている事、アジアにおける国際試合の移動時間や時差は欧州と比較にならないくらい厳しい事、中2,3日の連戦の継続は選手のパフォーマンスを落す事、などサッカーを愛好している人にとっての、常識的な知識、理解がない事は、もはや驚きではない。「ドイツではバックパス禁止云々」についても、知識不足の一環と捉えるべきであろう。
しかし、ここ最近の犬飼氏発言の報道を読むと、さらに暗澹たる気持ちになる。いくつか氏の発言の特徴を列記してみよう。
(1)法令順守の気持ちに欠けている
明文化されているルールを守っているにもかかわらず、処罰する事が可能だと発言するなど、法治国家に住んでいる事を理解していない。
(2)理論的裏づけがない事を口にする
例えばシーズン制見直し問題については、私は過去私は幾度もその非現実性を論じた。私のような「素人」でも、簡単にわかる理屈すら全く考えずに、「秋春制にすればすぐに解決する」と理論的裏づけのない発言を繰り返す。上記3エントリを読んでいただければ「秋春制への切替は日程問題を一層深刻にする」事はすぐ理解いただけるはずだ。
ちなみに「ナビスコカップ23歳以下云々」については、Jリーグチームの年齢構成すら確認せずに発言している事の証左と言える(ちなみに本件に関して「スポンサの了解云々」との発言もあったようだが、これは未決定情報のリークと言う意味でかなり拙い)。
(3)論理的整合が取れていない
以下、具体例を箇条書きする。
−「天皇杯に(犬飼氏自身が納得する)ベストメンバ揃えろ」と言っておいて、天皇杯とワールドカップ予選をバッティングさせている。
−ハンス・オフト氏のように長年日本サッカーに貢献した人に対して、「外国人は自分の成績をあげればいいだけだから云々」と語る(もっとも犬飼氏は、レッズ監督としてのオフト氏しか知らないのかもしれないが)
−オシム爺さんや岡田氏のような「玄人」の発言は重要だと言いつつ、シャムスカ氏やミラー氏のような「玄人」の行動はケシカランと言う。
−「秋春制推進は選手休養のため」と言いながら、主力選手をターンオーバ的に休ませる事には反対する。
上記3点に加え、氏は「スポーツ誌の記者達は『氏のご高説を賜りたくて集まっている』のではなく『氏の発言を面白おかしく取り上げて、新聞をたくさん売りたい』から氏の周りをウロウロしている」と言う事にも気がついていないフシがある。
かくして、連日連夜スポーツ誌には、「犬飼暴言」があたかも連載かのように掲載されている次第。
氏の一連の発言に対して「氏に何がしかの深謀遠慮があるのではないか」と推論する向きが多いようだ。たとえば、日本代表のスポンサ確保が主目的だとか、野球のオフシーズンの冬期のスポーツ露出を意識した構想の一環だとか、(それらを含めた)広告代理店の意図だとか、(氏が以前社長を務めていた)浦和レッズへの利益誘導だとか、さらにはAFCやFIFAとの政治的取引実現のためだとか、強引にシーズン制を改定しようとするための芝居だとか。
そんな事ある訳ないではないか。
既に氏が喋れば喋るほど、「シーズン制は見直ししない方がよいのだ」と皆が考えるほど、氏の発言の信頼性は失われているのだ。氏は、上記した一連の課題を持つ、大変正直な人なのだろう。たとえば「『落雷対策』『猛暑期の試合を無くす事』などが狙い」と言っておいて7月開幕が原案になると言う時点でもうアウトだろう。
犬飼氏には甚だお気の毒だが、ご自身のお立場を考えるべきだと思う。発言には責任が伴うものであり、不適切な発言を連続すればするほど、自らの立場は悪くなるし、自らの意見は通らなくなる。実際、記名記事で氏の発言を肯定する事は事実上不可能なほど、氏の発言は信頼を失っているではないか。
それでも、我が国のサッカー協会の会長なのだ。「過ちて改むるに憚ることなかれ」なり「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」と言うではないか。済んでしまった事は、しっかりと反省いただき、詫びる事は詫びて、信用を取り戻し、職務に励んでいただきたいものだ。
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前者は現時点で2つしかないですからね。
一連の件で感じたのは、犬飼発言を、よくもまぁここまで何の批評もなしに垂れ流したスポーツ新聞の記者たちのあほらしさ。
「犬飼会長の考えている秋春制」は非合理的であり非現実的なことはみんな分かっているので置いときまして、
しかしながら「日本協会・Jリーグ将来構想委員会が考えている秋春制(夏春制)」はそれなりに現実的だと思います。
具体的にはウィンターブレイクを大幅にとる7月下旬開幕〜5月下旬閉幕という案です。
これだと犬飼案などとは違い賛成する人も少なくないのではないかと思いますが、武藤さんはどうでしょう。
どうやら紛れもない事実のようですね。
そういえば政治の方もそうらしい。
暑い時期に開幕してる時点でシーズン移行の数少ないメリットが
なくなってしまいます。
どちらにせよ、日本の実情(サッカー界、気候など)を考えると
シーズン移行は不可能です。
武藤さんも論じられてるように、議論が深まれば深まるほど、
シーズン移行論は妄想の類、というのが明らかになってます。
もう誰からも信頼されないでしょう。
議論を促すための発言みたいな擁護してる人もいたけど、
そういう人間がただ無知で聞く耳を持たないなだけの人物を
会長みたいな大事な地位まで登らせるんでしょうね。
・ベストメンバー規定はクラブ間格差を避けるため
大枠ビジョンは正しいんですけど、政治家としての実行力がなさすぎてダメですね。これでは抵抗勢力とは戦えない。残念です。
シーズン初めのフレッシュな時期に夏の試合を消化するのとでは大幅に違うと思うけどなあ
会長への諫言については同感なのですが
下記の一文に疑問を感じたのでコメントしました。
>そんな事ある訳ないではないか。
「根拠もなく考えるな」ということだと思いますが、ここで考えることを放棄するのもよくないように感じます。
ご存知だと思いますが、「秋春制移行案」はネクスト10でも議題とされ、またオシム発言の後鬼武チェアマンが賛同の意を表しましたが、雪国クラブを考慮した議論の結果、棚上げにされたという経緯があります。
その上で、今まで否定されていた「秋春制移行案」を「会長一個人の意向」だけで、また公に持ち出されたことを奇妙に感じる人が多いのも当然かと思います。
一般人には断片的な情報しかないので推測の域は出ず、正誤の判別もつかない稚拙な説かもしれませんが、この案が再出された文脈(協会がどんな意図をもって今後動こうとするのか)を考える意義は十分あると思います。
一連の会長発言には論理的でないにしろ「協会中心主義的」で「代表ビジネスの存続」を図ろうとする意図が十分感じとれます。想像の域を出ないとは言え「W杯誘致」「協会立直しをはかる広告代理店のプレゼン」などの説は個人的にはやはり考慮する価値があると感じています。協会をチェックする上で今おかれている状況を考えることはサポーターにも必要ではないでしょうか。
「協会=悪」という短絡的な考えではないつもりですが、Jリーグ軽視の現状を慮ると「会長発言の稚拙さ」のみを批判するだけでは足りないように思います。
陰謀論としてしまうとミスリードする恐れがありますが、協会とサポーターのあり方を考えるキッカケとして「裏を読む」議論はもっとあってもいいのではないでしょうか。
「“これがベスト”なんてばかなことをいわず、正直にいえばファンも納得するし、天皇杯(の権威)も否定されない」(by サンスポ) みたいなこと言ってるけど、ベストメンバー制の本当の理由ってのを言ってからそういうことを言って欲しいと思う人、多いでしょうね。誰もが気付いている「スポンサー対策」だと。
しかしながら「日本協会・Jリーグ将来構想委員会が考えている秋春制(夏春制)」はそれなりに現実的だと思います。
まあ確かにそうですが、「犬飼がすごい適当な人間だった」、ということに変わりはないですよね。
マスコミが会長に擁護的なのは、メディアにとっては「ネタだらけでありがたい会長」だから、ということでしょう。
>シーズン初めのフレッシュな時期に夏の試合を消化するのとでは大幅に違うと思うけどなあ
それは単に夏場の疲れが秋に持ち越されるだけじゃないのかなあ。
最近の彼の発言は、もしかすると彼の傀儡かとも思わせます。ぶち、大丈夫かなあ・・・
賛否は抜きにして、理路整然とした人に代わってほしいなあ。
いやそこまではすることない、と、この会長言ったとか。
一連の発言(つまりトップの方針)を受けて行動するのは部下として当たり前ですよね。
この会長は、そういうことも予見(わかってなかった)していなかったのか?
というか、トップとしての職責の自覚がないのですよね。
自分は非常に見識が高く人格も高潔な人物であるから、皆が従っているのだと思っている。
一般の会社もいますよね。自分の地位と権力は職責を果たすために与えられたと言うことが理解できずに、
自分の人格と見識に対して与えられたと勘違いしている人物が。
そのようなものが往々にして、頓珍漢なことをしゃべって周りを混乱させるのです。
書いているとほんとうに胸糞が悪くなる文章です。
すいません。
自分の失政をごまかす為にバカタレを後釜に据えたんだろう。
あるいは、自分が再登板するために仕組んだじゃないか。