2008年12月20日

明神とC・ロナウド、播戸とルーニー

 驚いたのはガンバMFの構成。遠藤をボランチに明神と並べ、橋本とルーカスを攻撃的MFと両翼に開かせた。二川と佐々木の離脱と言う苦しい状況で、遠藤の個性と能力を最大限に活かす事に活路を見出そうとしたのだろう。そして、播戸と山崎の2トップは双方の動きをよく意識した連動で前線にスペースを作ろうとする。
 そして、立ち上がりユナイテッドの守備が落ち着かない時点でガンバは仕掛ける。安田のクロスを2トップが巧く受けて明神がミドルシュート。続いて安田が見事なドリブルでG・ネヴィルを抜いて思い切りよいシュート(枠に飛ばせ、お前は代表選手だろうが)。加地の速いセンタリングに2トップが絡み、流れたところをルーカスがロブで狙うも枠を捉えきれず。そして、最大の決定機、ユナイテッドのFK崩れから逆襲、遠藤の完璧なパスから播戸が抜け出すも、ファン・デル・サールに止められる。そして、ガンバが「勝とうとする」ならば、ここまでで先制しなければならなかった。
 以降はガンバが中盤でボールをキープしても、ほとんど突破は叶わなくなった。それでも、橋本の飛び出し(動き出しが実に的確)あるいは明神の長駆に遠藤なりルーカスが展開すれば、相応に攻め込む事はできていた。しかし、この序盤の攻防で、G・ネヴィルは安田のまたぎを、エヴラは加地の加速タイミングを、ファーディナンドとヴィディッチは山崎と播戸の横の連動を、それぞれほとんど把握してしまった。格の違いと言ってしまってはそれまでだが、よほどの事がない限りガンバが得点しそうな雰囲気はなくなってしまった。ユナイテッドは以降、落ち着いて様子を見ながら丁寧に時計を進める。
 
 ガンバのサッカーの特長は、遠藤を軸にしたボールキープにあり、両サイドバックを加えた8人の選手が変幻自在の攻撃を見せる事にある。今期はバレーの離脱により、最後のフィニッシュに少々苦労した面はあったものの、中盤で優位に立つのがこのチームの考え方。そして、ACLでは敵地の試合を含めいずれの試合でも、その優位性で栄冠を掴んだ。
 そう言う意味では、ユナイテッドはガンバが、ここ数年で初めて対する「中盤で優位に立てない」チームだった。またガンバのCBは必ずしも「強く」ない。山口も中澤もよい選手ではあるが、山口は単純な強さや速さに、中澤は身体の入れ方や技巧に優れた選手への対応に、それぞれ課題がある。とすれば、ガンバがユナイテッドに「勝とうとする」ならば引いて最終ラインで粘るやり方は適切ではない。マイボールになれば中盤で素早くつなぎ攻め切る、攻め切れずとも悪い形でボールを奪われない。それにより、ユナイテッドによい形で攻め込まれる時間帯を最小限にする。そして、ボールを奪われた直後に可能な限り早く切替え、前線の選手はプレスをかけ、後方の選手は位置取りを修正する。そして、明神と遠藤の読みのよさを軸に速攻を止める。そしてボールを奪ったら全員で押し上げて、再びキープして振り出しに戻る。この攻守を知力と体力の限りを尽くしてくり返す事が、ガンバが「勝とうとする」最も適切な手段だった(そして、おそらく日本代表がワールドカップで列強に勝利するためにも)。そして、西野氏はそれを狙った布陣を敷き、選手達も忠実に西野作戦を遂行した。
 しかし、ファーディナンド、エヴラ、アンデルソンあたりのロングバスの早さと長さと精度には恐れ入る。僅かにプレスがずれると、逆サイドに開いているC・ロナウドなりナニなりにピタリ。加地と安田はテベスとギグスが中央にいるだけにある程度の絞りは必要ゆえ、この両翼に密着はできないため、この攻撃だけはどうしようもない。しかし、加地はナニに対して我慢を重ねた丁寧な対応で何とか破綻をきたさない。安田は安田で、勝負どころでC・ロナウドに思い切りよいタックルを仕掛け、大きな切り返しでかわされる事で山口にカバーリングする時間を稼いだ。これはこれで、中途半端に抜かれるよりは格段によい対応だった。

 けれども前半CKから2失点。
 1点目は山口がヴィディッチに完全に競り負けた。ヴィディッチの完璧な位置取り、ジャンプのタイミング、ギグスの完璧な精度のボール。守備を見事に引き締めていた山口、決して空中戦に弱いとは言えない山口が完敗したのだから、もうどうしようもない。正にガンバとユナイテッドの差そのものが出た1点目ではないか。
 2点目は明神がC・ロナウドに駆け引きでやられ、競りかける事もできなかった。見事な陽動動作、ギグスの完璧な精度のボール。中盤を見事に引き締めていた明神、執拗に敵に絡む能力に関しては日本屈指の明神が完敗したのだから、もうどうしようもない。正にガンバとユナイテッドの差、いや日本とワールドクラスの差そのものが出た2点目ではないか。
 もうどうしようもない、どうしようもないのだけれども、このどうしようもない差を何とかしないと、真っ当な抵抗はできない事になる。この西野氏の痛恨は、小柄で俊敏な選手を軸に戦おうと言う日本代表の岡田監督にも同じ問題として降りかかってくるのだろうか。

 現実的に前半で2点差をつけられてしまっては、「勝とうとする」機会は極めて小さなものになった。いよいよガンバは遠藤を軸に前に出るしかない。たださすがにユナイテッドも、2点差と言う事で無理をしなくなった。試合は微妙な均衡状態に陥る。
 ファーガソン氏は、スコールズに代えフレッチャー、負傷したヴィディッチに代えエヴァンス、そしてテベスに代えルーニーをそれぞれ起用。なんとまあ豪華絢爛なベンチな事だ。ただでさえ戦闘能力差が格段にあるのだが選手層の厚みも全く違うのだな。西野氏は終盤に寺田を起用するくらいのカードしかなかったのに。
 ルーニーが起用された直後、橋本の見事な走り出しと遠藤の見事なパスでガンバは3対2を作り出し、橋本→山崎で見事に1点差に追いつく。粘り強くボールをつないでいたが故に作れた見事な攻撃だった。

 これでユナイテッドにギアが入った。3点目、フレッチャーがガンバCBの裏にボールを通し、ルーニーが中澤を振り切って一発。あのようなボールがガンバの最大の弱点なのだが、どうやらユナイテッドはしっかりと調査をしていたようだ。4点目、これまでほとんど前進していなかった(加地の突破を警戒していたのかもしれない)エヴラが前進するや、パスコースが増えたユナイテッド、加えてこれまた自重してされていた2.5列目(フレッチャー)の前進。5点目、ルーニーの完璧なトラップ、前半の決定機に得意の右足に持ち出せなかった播戸との差。
 ちょうど1点を奪った直前にルーニーが交代出場していた事が、ユナイテッドのギアシフトとピタリ合ってしまった(ルーニーの交代そのものがユナイテッドの守備の隙を作ったとも理解可能だが)。中澤もせめてユナイテッドにギアが入る前に1度ルーニーと対応していればと思うけれど。

 遠藤のPKに対して最後まで動かなかったファン・デル・サール。3点目のフレッチャーの狙い。明らかにユナイテッドはガンバをしっかりと調べていた。
 ベンチで待機する選手を含めた圧倒的な戦闘能力差、その差はC・ロナウドと明神の競り合い、ルーニーと播戸の勝負どころのトラップ能力、それぞれに顕著に見出された。それに加え、しっかりとガンバを調べていた準備。「勝とうとする」事がほとんど難しい試合だったのだ。

 それでも西野氏も山口とその仲間達も決然として戦った。4点目を奪われた時にオーロラビジョンに大映しになった悔しそうな西野氏の表情、痛いほど気持ちが伝わってくるいい表情だった。
 だったのだけれども...
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(11) | TrackBack(2) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
世界選抜vs日本+ルーカス

まだ真剣勝負する力はなかったけど、見せ物としては楽しめた。

日本人の特徴を最大限にのばした二川と佐々木がマンU相手にどこまでやれるか見れなかったのは非常に残念。
Posted by at 2008年12月21日 10:03
「だったのだけれども...」
結びの文句がスンゲー気になるんスけどw
Posted by たまいじり at 2008年12月21日 13:53
マンUて世界レベルというか世界一の天才軍団ですからなあ。
プレミアでもサンダーランドとかちんちんにやられてたし、
世界の中でも今、「別格」なクラブではないでしょうか。
そんな中にパクという東アジア人がいるというのも凄いですが。
確かに「勝つ事が難しい試合」ではありましたが、ドイツW杯以来、
世界との距離がぼやけて日本の位置がどこにいるんだか分からなくなってしまっていたのが、
再び目に見えた気がしました。
いまのJにはガンバと同様、攻撃的スタイルを志すチームが多くなりつつあるし、
日本サッカーのターニングポイントになればよいですね。

Posted by at 2008年12月21日 23:48
タレントという部分ではどうしょうもなかったですね。
シジとバレーがいたら、もう少し結果が違うだろうな
と試合を見ながらも思いました。

オシムが日本の選手はパス精度が低いのを嘆いていましたが
マンUが2、30mのパスを正確につなぐだけでプレスをかわすので
ガンバの守備はDFがふんばるしかないんですよね。

ガンバとマンUはプレースタイルが似てるので差がよくわかりましたが
やっぱりオシムが言っていた「日本化」が一番通用しやすいのかな?と思いました。
去年の浦和のスタイルではジーコの二の舞でしょうね。
Posted by at 2008年12月22日 17:03
>去年の浦和のスタイルではジーコの二の舞でしょうね。

言ってる意味がわかんねーよ。
ジーコのサッカーと浦和のサッカーのどこに接点があるんだよ?
死ねよ、ボケ。
Posted by at 2008年12月22日 22:32
Posted by at 2008年12月22日 22:32の人荒れてるー、こわいー。

Posted by ミスター名無し at 2008年12月23日 15:39
ジーコのような敗戦を招くということ?
でもジーコのときの方が、岡田よりまだ可能性を
感じた。

今の日本代表、オーストラリアと競り合うことができるかどうかすら怪しい。

ガンバに大久保や松井を入れるとおもしろいかな。
Posted by at 2008年12月23日 21:06
>ジーコのときの方が、岡田よりまだ可能性を感じた。

ジーコのサッカーじゃWCで通用しないというのは
まともなサッカーファンなら誰でも考えていたけどね。
去年の浦和はよく似てたじゃん。
個人任せの後ろに人が集まってるサッカー。
Posted by at 2008年12月24日 04:16
さすがに浦和とジーコのサッカーが似てると言うのはちょっと・・・
Posted by at 2008年12月25日 00:53
浦和とジーコの共通点は、それぞれのスタイルを極めても世界のトップとは肩を並べられそうにないってことじゃないかな。決してサッカーが似ているってことじゃなく。

ジーコなんか敗因に選出のうまさとか技術の差じゃなく体格の差を挙げてたし。
Posted by at 2008年12月25日 12:58
浦和のスタイルとジーコのサッカーの共通点


ブラジル人をいっぱい帰化させないと成り立たないw
Posted by at 2008年12月25日 13:46
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