2008年12月28日

今年のガンバと去年のレッズ

 拡大トヨタカップ終了後、約1週間が経ったが、気になる報道がある。それは「昨年のレッズは守備的に戦った(だからケシカラン)が、今年のガンバは攻撃的に戦った(だから立派だ)。」と言う議論だ。
 いくらなんでも違うだろう。
 確かに最終スコアは3−5と0−1。いかにも攻撃的な試合と守備的な試合のそれに思える。また両クラブのアジアチャンピオンになった際の最大の強みがそれぞれ攻撃力と守備力にあったのは確かだ。今年のガンバは遠藤を軸に両サイドバックを含めたボール回しで中盤を作り多くの好機を作るのが基盤。昨年のレッズは闘莉王や啓太を軸に分厚く守り少ない好機をワシントンあたりが活かすのが基盤。そして、両チームとも、その強みを最大限に活かそうとして戦ったのは間違いない。
 けれども、ガンバは守備を軽視していなかったし、レッズは攻めるべき時は攻めていた。

 たとえば、ガンバはしっかりとボールを回して押し込まれる事を防ぎ、ユナイテッドの逆襲に対しても素早い守備への切替で対抗していた。むしろ、守備を考えつつも(少ないながらも)「勝つ確率」を高めるのが、マイボールをしっかり回すと言う選択だったのだろう。
 また、ガンバの3−5と言うスコアは、一見点の取り合いで打ち破られたように見える。けれども、前半で2点差にされ、1点差に詰めたところで一気に突き放されて終盤2点を奪ったに過ぎないのだから、スコアとしては褒められたものではなく完敗と言うべき。試合後(試合中も)の西野氏や遠藤の憮然とした態度も、そのあらわれと言えるだろう。残念ながらガンバの攻撃的サッカーがユナイテッドを苦しめた訳ではなかったのだ。
 もっとも誤解されては困るが、上記のエントリでも述べたが、私はガンバの失点、特に前半のCKからの失点はどうしようもないものだったと思う。もちろん、あれらの失点を防ぐためにどうすべきかは熟慮されるべき。しかし、山口がもっと空中戦の腕を磨くこと、明神がC・ロナウドを押えられる駆け引きを身につける事、と言う何とも言い難い結論になる(この2失点を「集中力欠如」などと語るのは勘弁して欲しい)。また、ガンバが丁寧につないで、遠藤の好パスから幾度も好機を掴んだ試合内容も十分に評価されるべきだと思っている。

 一方で、昨年のレッズ。分厚く守っていたのは確かだが攻撃を軽視していた訳ではない。マイボールになったら、つなげるところは必死につなぎを狙っていた。大体、ボールを奪って即クリアを続ければ、ミランに圧倒的に押し込まれ、悲惨な試合になっていた事だろう。ミランの守備が落ち着く前の序盤の時間帯に、交通事故を狙い積極的にミドルシュートを狙っていたし、失点する後半半ばにしても、啓太や長谷部が押し上げから敵陣を伺っていた。唯一の失点は坪井とカカーの個人能力差によるものだったが、あの時間帯にレッズも相応に仕掛けていたが故の失点とも言えた。レッズは決して「引きこもっていた」訳ではないのだ。
 何か一部の論調を見ると、「日本サッカーは世界いずれの国と戦う際にも、攻撃的なサッカーをしなければならない」と語っているかのようだ。たとえば98年フランス大会で守備を重視してアルゼンチンに対抗した戦い方を否定するような暴論が語られるのも同様の例だろう。
 確かに日本の選手は、欧州、南米の列強と比較すれば「肉体的強さ」で劣る場合があるから、最終ラインで敵を止めるサッカーはあまり向いていない。したがい強敵と戦う際も、よくボールを回しできるだけ最終ラインの勝負を避ける方がよい結果に近づく確率を高められる事が多い。今後も日本のチームがが欧州、南米の列強と戦う際は、このような作戦を採る事になるだろう。そして、そう言った策を採りつつ、その時その時のメンバ構成で微調整が行われる。たとえば、闘莉王なり、98年の井原なり、欧州南米の列強と個人守備能力で相応に対抗できる選手がいれば、後方をある程度重視する策はそれなりに合理的なのだ。それでも、昨年のレッズにせよ98年の代表にせよ、啓太や長谷部、名波や中田が、しっかりと中盤を構成していたのだ。

 せめて報道関係者には、先入観や妄想的な理想論なく試合をしっかりと見る事を望みたいものだ。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
話はそれますが、今年のガンバの野戦病院化はあまりに痛々しい……
それは昨年のレッズ、今年に入って精彩を欠いている鈴木啓太や阿部らのダメージを連想させます。
ガンバも翌年は万全のシーズンとはならなそうな予感が……

いまの日本のクラブでは、レッズやガンバでもローテーションさせながらうまく乗り切るというところまで行っていないですし、今後も翌年にダメージが残るような状況が続くのでしょうか。
(そういえば、天皇杯優勝チームは翌年振るわない、というジンクスは、中坊さんとこのコラムで見たんだったかな)
Posted by yocc at 2008年12月31日 00:28
武藤様、いつも、貴殿の優れた文章を拝見させていただいております。

一点だけ。

昨年の浦和の失点は坪井の個人の能力の欠如によるものではありません。

チームとして常にケアをしていた、クイックリスタートの対応からの失点であると考えられます(それ故に坪井の対応が遅れた)TVの映像では確認できませんが、現場で見ていた限りそのように判断します。

坪井選手に対する尊敬を込めて、コメントさせていただきます。(この試合の坪井選手のパフォーマンスはすばらしかったと思います)

ご確認ください。
Posted by T.O at 2008年12月31日 01:07
>せめて報道関係者には、先入観や妄想的な理想論なく試合をしっかりと見る事を望みたいものだ。

これが海外サッカー好きの似非サッカーファンに要求するのと同等かそれ以上に無理難題なんですよ。サッカー専門にしてる人にも「食うためには仕方がない」仕事をしてる人が居るくらいなんでね。
Posted by at 2008年12月31日 02:09
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