2009年01月30日

加藤望引退

 レイソル、ベルマーレで活躍した大ベテランの加藤望が引退すると言う。39歳、本当に長い間見事なプレイを見せてくれたものだと思う。だいたい同じ大学の同期生が澤登正朗と磯貝洋光なのだから。お疲れ様でした。

 私が初めて加藤の噂を聞いたのは、彼が東北学院高校在学時。この東北学院と言う学校は、高校でも大学でも常に我々の眼の上のタンコブ的な忌々しい存在だった(もっとも先方は、当方の事など歯牙にもかけていなかっただろうが)。仙台に帰省した折に、宮城県協会がらみの知人が興奮して語ってくれた。「ボデェバランスがすんごぐよぐでなあ、ユースでも外国人相手にドリブルが通用すたって、えれぇ高い評価されたんだ。親父さんがなレスリングの先生でな、望も腹筋が強えからでねえかって。」思わず私も「んだっだら、期待できんなあ、名前も加藤だすなあ、日本リーグさ来んの愉すみだべ」と反応したものだった。当時、宮城県出身選手としては、加藤久が日本最高のプレイヤとして君臨しており、鈴木淳(当時フジタ...今のベルマーレ)、茂木一浩(住友金属...今のアントラーズ)が日本代表まであと一歩と言う立場で活躍していた。彼らの後を継ぐ郷土の逸材と期待したものだった。
 東海大に進学した以降も、相応の評価を受けた加藤は、92年に日立(後のレイソル)に加入。最初の1,2年はレイソルがJリーグに不在だった関係で中々去就が追えなかったが、レイソルがJに昇格した以降は中心選手として活躍し始めた。抜群の運動量に加え、重心が低いドリブル、格段の突破力や局面打開力がある訳ではないが、突破するべきタイミングとキープするべきタイミングの選択が的確なので、非常に効果的な攻撃タレントだった。
 加茂監督時代にに代表に呼ばれた事もあったが、定着も出場も叶わなかった。当時はカズの全盛期だったからこそ、プレイ選択の的確な加藤望のようなFWは使い勝手がよかったように思うのだが。たとえば、勝っている試合を閉じようとする時とか、同格の相手と引き分け狙いで戦う時とか、非常に有効だったのではないか。加茂氏はそう言うタレントをあまり評価しない人だったのが、残念だった。
 その後、西野氏を監督に招聘しスター選手をかき集める作戦に転じたレイソルには、黄善洪、北島らスター選手が揃い、ベテランとなった加藤は定位置を譲る機会が増えてきた。それでも、起用されれば貴重な活躍をした加藤は、スーパーサブ的な役目を含め、丹念に連続出場記録を更新し続けた。
 その連続出場が131で途切れた試合がまた劇的だった。今なおJリーグ史に残る屈指の名勝負として語り継がれる00年Jリーグの後期最終節、アントラーズ−レイソル戦。レイソルは勝てば、アントラーズは引き分ければ、それぞれ後期制覇となる直接対決だった。アントラーズの時間稼ぎを含めた執拗な守備に対し、西野氏は点を取らなければならない延長戦を含めた終盤(当時Jにはまだ延長戦があったのだ)、幾度も加藤を起用すべきと思われる節目があったが動かず。試合は0−0で終わり、レイソルは涙を飲み、加藤の連続出場記録も途絶えたのだった。この試合前までの西野氏の采配を見た限りでは、氏の加藤への信頼は相当高いものがあったように見えたのだが、とても残念だった。私はこの試合で西野氏が一層嫌いになったのだな(笑)。ともあれ「あそこで加藤を起用していれば」と言うのは結構語り継がれる「IF」だとは思う。
 
 その後も貴重なベテランとして機能していた加藤だが、2004年にレイソルをクビになり、ベルマーレ入り。故郷のベガルタに来てくれないかと思ったのだが、加藤はベルマーレ入り、ちょっと残念だった。当時のベガルタには、既にベテランのFWとして大柴克友と言う精神的支柱たるタレントがいた事が、仙台出身のこの名選手と、仙台のクラブの出会いに影響したのかもしれない。
 そして、この仙台出身の大ベテランは、絶えずベガルタの前に立ち塞がる事になる。中でも一昨年終盤、ベガルタが必死の思いでJ1を目指してもがいている際のあの試合での加藤のプレイは実に素晴らしいもので、忌々しい事この上なかった。さらに昨年もこの試合での美しい直接フリーキックには心臓が止まる思いすらさせられた。

 その加藤がとうとう引退すると言う。40歳近いとはとても思えない身体の切れと運動量、そして正確な技巧と老獪な判断力、まだまだやれると思う。もっともっと忌々しい思いをさせて欲しかった。加藤の引退により、ベガルタサポータは、心底尊敬の念を持ってブーイングできる対象を失ってしまった。そして今思えば、昨期の件の直接フリーキックは、加藤望の最後の公式戦得点となる。それを直接見て、恐怖し、落胆できたのは、本当に幸せな事だったのだ。
 加藤氏が豊富な経験を活かし素晴らしい指導者になる事を期待したい。手始めに氏はベルマーレのトップチームのコーチに就任したと言う。最後の勝負を賭ける反町新監督にとって頼りになる右腕となる事だろう。うん、何かまた悪い予感がしてきた。

 まだ望が、おらぃらの前さ、立ち塞がんでねぇかって。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ほだごど言っだっで、望のおんつぁんば倒して上がっだ時の、酒の味考えだら、気ぃ張って応援するしかあんめぇよ!


晩酌のほろ酔いと、活字の母国語!に、仙北の血が騒いでしまいました(笑)
Posted by KOHJI at 2009年02月01日 01:12
加藤望、凄く好きなのですが、このエントリを見てひとつの疑問が浮かびました。

武藤さん(世代)にとって加藤ってFWなんですか?
僕(80年生まれです)にとっては加藤はゲームメーカータイプのMFなのですが。
驚異的な運動量とテクニック、ゲームメークセンス、得点力を兼ね備えたMFだと思っていました。

藤田のテクニックやゲームメイクセンスを10、運動量を8、森島のテクニックやゲームメイクセンスを8、運動量を10とするなら、加藤はともに9点をつけられるようなMFだと認識しています。

なんだか面白いですね。
Posted by so-san at 2009年02月04日 16:44
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