2009年02月03日

西野監督について(中)

 随分前に書いた西野監督論の続きです。できれば(上)を読んでから、こちらをお読みいただくと嬉しいです。

 ガンバ監督に就任してしばらくの西野氏の監督振りは褒められたものではなかった。絵に描いたように、五輪代表、レイソル時代に問題視された事態が繰り返されたのだ。具体的には硬直した采配と、一部選手の造反連発である。しかも、レイソル時代と異なり成績も芳しいものではなかった。
 まず選手の配置とやり方に関して、自分好みの3−5−2に固定、しかも二川、遠藤と中盤に創造的な選手がいるにも関わらず、長身FWのマグロンに拘泥しロビング戦法に拘泥したのだ。具体例として、圧倒的戦闘能力差にも関わらず、西野監督采配の拙さで得たこの勝ち点3は個人的には忘れ難い思い出である。また、3−5−2に当てはめるために、強引に二川をサイドMFに固定しこの名手を守備で消耗させた采配にもあきれた。
 さらにフォーメーションの拘泥のみならず、吉原、新井場、都築と言ったタレントが反旗を翻すなど、選手の造反も相変わらずだった。まあ関西のスポーツ記者は、選手の愚痴を拾い出す能力に長けているから、割り引いて考える必要はあったかもしれないが。
 04年シーズンまでの西野氏は、90年代の問題点が何ら改善されずに苦闘していたのだ。しかも、ガンバは稲本、宮本以降も優秀なタレントをユースが次々と生み、外国人、日本人含めトレードでそれなりのタレントを獲得、メンバ的にも最高とも思える編成だったにも関わらず。

 しかし05年シーズン、西野氏は見事にリーグ制覇に成功する。
 代表チームの切り札に成長した大黒を軸に、アラウージョ、フェルナンジーニョが個人能力を発揮、後方から遠藤が自在に展開し、二川の長期離脱の穴を若き家長が3トップを的確にサポート。宮本、シジクレイ、山口、橋本らが固める後方。強力な攻撃タレントをバランスよく並べて奔放な攻撃を許し、堅実で知的な後方タレントがバランスを取る布陣が機能。このあたりの奇跡的勝利からチームがすっかりまとまり、ナビスコでも決勝進出。決勝ではPK戦では苦杯するもののオシム爺さんとの攻防は実に見事だった。終盤、二川や宮本の負傷などの苦境もあり、一時は苦しい状況に追い込まれたが最終節で劇的な逆転優勝に成功した。
 このシーズンの西野氏は「こだわり」の対象が、芸術的な攻撃サッカーになり、そのよさを前面に押し出したリーグ制覇は感動的ですらあった。

 翌06年シーズン以降、ガンバフロントの補強と、西野氏の采配は見事に噛み合い始め、完全なJを代表する強豪チームとなる。大黒がイタリアに、アラウージョがカタールに、それぞれ去った後にはマグノ・アウベスと播戸を加え、さらに明神、加地と言う大駒を獲得。このフロントの大仕事を受け、西野氏は巧みにリーグチャンピオンの再編成に成功。レイソル時代から信頼厚い明神により後方強化、マグノとフェルナンジーニョのコンビの充実など、チーム全体の戦闘能力は一層強化された感があった。このシーズンあたりから、攻撃サッカーへの「こだわり」は残しつつ、守備ラインを柔軟に組み替えた試合を見せるなど、チーム作りの質的変化も感じられた。
 ただしタイトル獲得には失敗。ACLはワールドカップ準備などとのバッティングもあり厳しい日程下で苦杯。シーズン終盤には、遠藤が病気で、ストライカとして成長した播戸は負傷で、それぞれ離脱する不運。リーグ戦は終盤レッズに追いすがったものの後一歩及ばず。天皇杯も決勝戦で駒落ちのレッズに圧倒的攻勢に立ちながら、我慢のしすぎで終了間際に失点し敗退。シーズン途中に控えに回ったフェルナンジーニョが反旗を翻すなど選手造反と言う西野氏らしい事態もありつつ、サッカーの内容は魅力的だったが、結果は出ないシーズンだった。

 07年シーズンガンバフロントはは、フェルナンジーニョが去るならばとバレーを獲得。3年連続のメンバ変更にもかかわらず、強力な攻撃陣を編成する西野氏の手腕には恐れ入った。う〜ん、段々誉めるしかなくなってきて面白くないが。このシーズンになると分厚い選手層を活かした攻撃はますます冴えていた。そして、サイドバックに抜擢した安田の活躍もありナビスコを制覇。この決勝戦は、加地のCB起用など、かつての西野氏には考えられない大胆な采配も見せてくれた。

 そして08年シーズン。前シーズン終了直前にマグノが、さらにシーズン途中にバレーが、それぞれ中東に去ると言う事件があり、さらに遠藤がまたも病気で播戸が負傷でそれぞれ離脱するなど難しいシーズンとなった。しかし西野氏は、ルーカス、山崎、佐々木と言った補強選手を巧みに戦力化。橋本、遠藤、二川、明神、ルーカス、佐々木、さらには安田と言ったポリバレントな選手を、様々なポジションで手変え品変えする鮮やかな采配でアジアを制し、拡大トヨタカップで3位になり、最後は満身創痍の状態に耐え天皇杯を制したのは記憶に新しい。

 こうして振り返ると、優勝を決めた2005年シーズン以降の4シーズン、西野氏とガンバは着実な成長を遂げながら、ユナイテッド戦を迎えた事がよくわかる。
 過去西野氏の問題点と私が指摘してきた「こだわり」、「選手の造反」と言った問題は、現状の西野氏において結構なプラス面になっているように思えるのだ。「こだわり」は特にここ数シーズン顕著な「信念」であり、戦闘能力が高いチームの方向性を明確にしている。「選手の造反」の経験は、各種の事情による選手の離脱への柔軟な対応となっている。昨期のバレー、播戸の不在時にやりくりしながら、山崎と佐々木を成長させた手腕など大したものだった。
 そして、能力は高かったが少々地味な印象が強かった遠藤と言う選手が、監督とチームの実績と同期して、アジア最高クラスのスーパースターに成長してきた。西野氏の成功には遠藤の能力が不可欠だったし、遠藤の成長には西野氏の信頼と起用が重要だった
 若くしてアトランタ五輪出場の出場及び本大会での健闘、ナビスコカップ制覇と成果を挙げてきた監督としての才覚は、多少のギクシャクや試行錯誤を経ながらも上記の経験を積み、見事に花開いたと言うべきなのだろう。西野氏嫌いにとっては恐れ入りましたと言うしかないのである。

 では今後の西野氏はどうなって行くのだろうか。

(以下続く)
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(9) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
水本裕貴の造反が入って無いのは意図的なものですか?
Posted by tamaiziri at 2009年02月04日 04:57
去年の播戸離脱は病気が原因じゃありませんでしたっけ?
Posted by yuki at 2009年02月04日 05:05
事実誤認ばかりですね
Posted by 通りすがり at 2009年02月04日 15:25
さすがの分析力です。
Posted by Bomber at 2009年02月04日 21:30
播戸は春に負傷、夏に肝機能障害で入院。2回離脱してます。

>自分好みの3−5−2に固定
就任当初は4バックで、上手くいきませんでした。
で、3バックに変えた途端一気に波に乗ったのですよ。

事実誤認と言うか、よくぞここまで歪んだ評価を
下せるものだとむしろ感心します。

02-04年に苦労しながら、まだ若かった現主力を
丹念に育てたからこそ今のガンバがあるのに。
武藤氏のみならず、西野嫌いな方々は絶対にその辺を
評価しませんよね。誰それを切ったの干したのと逆恨みばかりで。
Posted by 柏市民 at 2009年02月05日 00:51
アラウージョはカタールに去ったのではなくセレソン復帰を目指してブラジルに移籍しました
移籍直後に大怪我をしてW杯出場の夢破れた後にカタールへ移籍したのです
Posted by hiro at 2009年02月05日 23:26
遠藤以上に、明神との関係が深い監督ですよね。
武藤さんは明神のことは激賞という表現が当てはまるほどお気に入りなのに、西野監督をそこまで嫌いなのは不思議ですね。で、僕なりに考察があるんですがそれは西野監督について(下)にて。
Posted by at 2009年02月06日 00:02
素晴らしいフィルターのかかった内容ですねwww
よくもここまで事実誤認出来るなと感動を覚えました。

3バックは当初4バックに挑戦したが上手くいかず、変更しただけ。
都築・新井場・吉原に関しては後の雑誌インタビューにおいて、都築「まだ自分が若かった」吉原「今になって西野監督が言ってた事が理解できた」と述べています。
アラウージョはW杯を目指してブラジルへ帰国し、その後カタールへ移籍。

このあたりの間違いは修正されないのでしょうか?叩くなら事実確認をしっかりしてから書かないと意味ないですよ。

加えて、西野就任前からチームに在籍している選手(遠藤・二川・橋本・山口)らも就任時には今のような絶対的な選手ではなかった。それを成長させてきたのも西野監督の手腕の賜物。
選手の入れ替わりにも柔軟に対応して、あっさりと新加入選手をフィットさせるのも監督の手腕。

この辺どう評価されてるのかぜひ聞きたいですね。
Posted by at 2009年02月08日 01:34
>西野氏嫌いにとっては恐れ入りましたと言うしかないのである。

その観点からの分析・評論ですね。
結論も説得力がなさすぎてお笑いですね。
これからもある意味、楽しみにさせていただきます。
Posted by まさ at 2009年02月08日 02:01
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