前進意欲 大柄主将と言う並びです。本エントリに登場する固有名詞はこちらを参照ください。で、ベンチにIT社長、元ラガー、講釈師がいると言うことで。
無口強気 ラガー息子
センス抜群
中盤将軍
度胸坊主 猪突猛進
頑健俊足 沈着冷静
三男坊GK
中央大会。
元ラガーの調査によると、初戦の相手はかなりの強豪。チーム員も200人近くを数え、非常に堅固な組織で運営されているクラブとの事。指導陣にも学生時代全国制覇の経験がある方が複数名いるらしい。「いや、俺はワールドカップの決勝を生で観た事がある」と元ラガーには切り返したのだが。いずれにせよ、このようなチームと公式戦で対戦する権利の獲得そのものが「中央大会進出」の意義なのだ。さらに、もし次に進めれば何とJリーグの下部組織チームとやれると言う。
IT社長と私は、バクスター氏ではないが「勝負は切替」だと捉えていた。秋口以降、守備から攻撃への切替は中々素早くなり(守備陣の押し上げにせよ、中盤の展開にせよ)、よい攻め込みの頻度が増えた。しかし、攻撃から守備への切替は簡単ではない。子供たちにはいつも「周りを見て狙いがあれば、ドリブルでもパスでもOK」としか指導していない。相手が強いからと言って守備的に戦うとか、特別な作戦などこなせる訳がないし、いつも通りボールを大事にしたサッカーをするしかない。それでも、相手のレベルは相当高いから、それなりにボールを奪われるリスクも高い。攻撃から守備への切替が遅れれば、逆襲速攻の餌食となり、大差負けの恐れがある。逆襲速攻からのやらずもがなの失点さえなければ、勝負に持ち込めるだろう。
IT社長は練習のたびに「40分間集中を切らさず120%の力を出せば1回戦の突破も可能だ」と言い続けた。そして、試合前日も「攻撃から守備への切替」を強調し「最後の指導」を終えた。
1試合前がJリーグ下部組織の試合だった。ところがPK戦で(我々とやる前に?!)敗退してしまった。開始早々に、ナショナルトレセン選手だと言う10番が、ひざがよく曲がり、ボールタッチが非常に細かいドリブルでペナルティエリアに進出、3人を抜き去り、そのこぼれ球からJリーグが先制。その後もJリーグペースで試合は進むが、相手チームもよく守り、時には人数をかけた速攻をかける。Jリーグもリードはしているから無理をしないまま時計は進んだ。そして、後半終了間際Jリーグのちょっとしたミスもあり、相手チームが同点に追いつきPK戦に持ち込んだのだ。そのPK戦ではJリーグは凝り過ぎたキックでミスを連発し敗退。相手チームもレベルは相当高かったのは間違いないが、子ども達、親御さん達の喜びようはすごかった。いや、羨ましい。お見事でした。
さて我々の試合。
序盤から押し込まれるが守備陣がすばらしかった。頑健俊足が大声で指示を飛ばし、沈着冷静が見事な出足で敵の攻撃に対応する。度胸坊主と猪突猛進の位置取りがまた見事。相手ボールならば絞り、マイボールになるや必ずMFのサポートに入る。三男坊GKがまた落ち着いており、DFラインの裏へのボールは判断よく飛び出して押さえるし、捕球も安定。
しかし、相手も中々強いのでせっかくボールを奪っても、中々トップには収まらない。そこで光ったのが、センス抜群と中盤将軍だった。上記した通り攻撃から守備への「切替」がとにかく早い。ボールを奪われるや、見事な集中で位置取りを修正、敵の仕掛けに絡み、頑健俊足と沈着冷静と声をかけあう。速攻によるピンチはほとんどなかった。
守備が落ち着けば少しずつ反攻できるようにもなる。中盤将軍が結構厳しいプレスでも持ち出せるのは期待していたが、驚いたのはセンス抜群。小柄な子で今までは相手の当たりに飛ばされる事が多かった。しかし、どうやらブロック大会で自分の間合いを完全につかんだようで、相手のすばやいプレスを落ち着いてかわし、左右に丁寧にさばく。自分の間合いをつかんでくれた上で中学校に渡せるのは嬉しい。そして、無口強気とラガー坊主が上下に、前進意欲と大柄主将が左右に、それぞれよく動く事で少しずつボールが収まるようになり、当方の有効な攻め込み頻度が増えてくる。特に戦う姿勢あふれる前進意欲が豊富な運動量で前線をかき回し、再三猪突猛進が判断のよい攻撃参加をする事で厚い攻めを展開する。
そして前半半ば、丁寧につないだ攻め込みから、中盤将軍が浮き球で敵DFを飛ばす好パス(こいつは本当に周りが見られるようになってきた)を左サイドの無口強気に。無口強気はGKとDFの間に正確なスルーパス(これまで再三縦に抜きに行くプレイを見せていただけに、この場面の変化が利いた、正に強気の突破狙いの面目躍如)。的確な走り込みをした大柄主将が敵DFともつれながら抜け出し、正確なボールコントロールから落ち着いて流し込み先制に成功!
前半それ以降は先制して焦る相手の攻撃を、頑健俊足を軸によくラインを上げる事で防ぎ、裏を狙うロングボールは三男坊が相変わらず的確に対応。1−0で前半を終えた。
後半に入っても相手の攻撃は焦りからか単調。相手のボール保持時間は長いが、むしろペースは当方。相手陣のスローインを、大柄主将がロングスローで狙おうとするや、最後尾から沈着冷静が判断よくトップスピードで最前線に飛び出し空中戦を狙う。前進意欲がボールをキープし、その大外に中盤将軍が絶妙なフリーランを見せ、相手守備陣を引き付けたところで、前進意欲が中央にドリブル突破を狙うと言うアイデアあふれる攻撃。そして、センス抜群の縦パスが相手DFと交錯したところを巧みに抜け出した大柄主将が、落ち着いて持ち直し狙い済ましたシュートを左足で放つが惜しくもポストを叩く、惜しい(この子が、冷静にGKを見て狙ったシュートを打てるようになったのはすばらしい)。
と、よいペースで試合をしていのだが、好事魔多し。後半半ば、相手の右サイドからの攻め込み、苦し紛れのセンタリングで、うまく絞っていた度胸坊主がクリア、と思ったらコントロールミスから自殺点。同点に追いつかれてしまった。
以降、落ち着きを取り戻した相手と、全く気を落としていない当方がガップリ四つの戦い。そして終盤、CKを与える。これまでニア狙いできていた相手が、初めてファーに蹴ってきて飛び込んできたCBに見事なヘディングシュートを許してしまった。敵ながら見事なアイデアだった。
それでも当方の選手たちはあきらめない。幾度となく攻め込み好機を作るが攻めきれず、悔しい敗退となった。
次の試合の副審を行う必要があったため、試合直後は彼らと会話は叶わなかった。しかし、副審をしながら、改めて感慨にふけった。目の前の攻防はまごう事なき県のトップレベルの少年サッカー。そして、うちの子ども達の試合振りは、これらのチームと何ら遜色のないものだったのだ。彼らがここまで育ってくれたのだと思いながらの副審は心地よい快感だった。
帰りの車はコーチ陣と度胸坊主とラガー息子が一緒だった。度胸坊主が振り返る。「う〜ん。つなぐのは危ないと思ったからクリアしようとしたのだけれど、軸足に当たっちゃったんだ」これだけ冷静に自分のプレイを説明できるのだから、たいしたものだ。一方のラガー坊主はおとなしかった。ブロック大会では好プレイで危機を救ってくれたのだが、この日は相手の厳しい守備にほとんど何もできなかった。2人はこの悔しさを糧に、同級生や下級生を引っ張り、再びこの地に立つ努力をしなければならない。
時間を戻す。副審を終えて皆のところに戻る。多くの連中はまだ目を真っ赤にしている。自分達の努力でここまで来られたからこそ流せる涙だ。これだけの悔しさを味わってくれたのだ、もう私達の仕事はおしまい。後は、彼らはこの悔しさを糧に、勝手にサッカーと言う比類ない玩具と戯れ続けてくれる事だろう。
と思っていたら、終わりませんでした。続きます。
代表や仙台が敗れた記事と比較しても、悔しさがリアルです。続きが待ち遠しいですね…!