石崎氏の手腕に恐れ入った試合だった。昨期、J1各クラブから完全に勝ち点確保の草刈場として集中攻撃され、ほとんど有効な抵抗できずにJ2に陥落したクラブを、ここまでの短期間で立て直した手腕には、改めて驚かされた。それほど、コンサドーレのサッカーの質が見事だったのだ。
開始早々からコンサドーレの厳しいプレスで、ベガルタの中盤は自由にボールキープがかなわない。特に若き主将の上里とコロンビア代表経験があると言うダニルソンの運動量がすばらしい。加えて、ベガルタがボールを奪っても、直後の切替が早く、再三取り返される。ボールを奪われるや、クライトンを軸に、両サイドの崩しから分厚い連続攻撃を継続され、再三の好機をつかまれた。
僅かな期間のオフにもかかわらず、コンサドーレは、昨期までの比較的守備的なやり方とは違った攻撃的サッカーのチームに転進していた。外国人選手4人を縦の軸にして、その周囲に伸び盛りの若い選手を登用しており、まだ伸び代もありそう。無論、若いチームが過酷な日程で走り続ける事ができるかなど、長丁場がゆえの問題点もあろう。けれども、厄介なクラブが、強力な指導者と共にJ1昇格争いの中核に入り込んできた事だけは間違いない。
ではベガルタはどうだったか。
残念ながら、褒められた内容ではなかった。最大の問題は、中盤の運動量と出足で劣勢に立った事。運動量の方は、敵地だし先方がかなり若い選手も多く仕方がない部分がある(だからと言って、構わないと言ってよいかは別な話だが)。しかし、動き出しの早さで負けていたのは残念だった。ベガルタの狙いは、連動性と相互の信頼感の高さから、早い動き出しにあるはず。
ベテランを重視する手倉森氏らしく、平瀬と千葉直樹をスタメン起用。千葉が守備ラインの1つ手前で、クライトンを見張る役どころを務めたため、全体的に引き気味になったのも仇になったか。もしかしたら、スカウティングでコンサドーレの充実を把握しており、「守備的」に入ったのかもしれない。とにかく、全体が引き気味なので、両サイドバックの菅井も田村も、上がりが遅かった。しかも、上がりが遅いだけでなく、再三敵のウィンガに突破を許す場面もあり、「能動的に引いていた」と言うよりは「押し込まれて上がれなかった」ように見えたやはり、腰の引いた試合をせずに、中盤で前に出て刈り取りにいき、後方は相互の連携とバランスで網を張るやり方がよいと思うのだが。
いずれにしても、中盤の活性化が必要。次節は、富田の起用がカギになりそうだし、最前線も中島と誰が組むのか注目したい。
もちろん、よかった点もあった。エリゼウの強さもすばらしかったし、林の再三のファインセーブには幾度も助けられた。この2人だけでなく、渡辺広大の充実がまた嬉しかった。ペナルティエリアに進出してくる敵に、エリゼウが積極的に飛び出して対応し、その後方を広大がカバーするのが、基本的なやり方だったが、これが非常に巧くいっていた。中央の2人が、連動しあれだけ粘り強く守れるのは非常に明るい話題だ。これで、上記した中盤の守備の問題が改善されれば、非常に固い守備網が築けそうだ。
中盤が劣勢でも、中島、関口の突破力を軸に、そこそこの数の好機をつかんだのも明るい話題だ。中盤が悪いなら悪いなりに、この2人の個人能力で格好をつけたのだから、それはそれでよかった。
そう考えると、悪いならば悪いなりに、攻守ともに機能したのだから、文句を言ったらバチが当たるのかもしれない。と、言ってあの内容で満足しちゃいかんだろうし。と、ああでもないこうでもないと悩む愉しい日々が、また始まったと言う事だな。
映像が無くてぶっつけ本番に近かったらしいっす。
ただご指摘の通りだいぶ守備的に試合をする…
というイメージはあったようですね。