2009年10月05日

東京五輪失敗から見たワールドカップ招致について

 東京五輪招致失敗をきっかけに、ワールドカップ招致について色々考えた事について、講釈を垂れたい。

 私は五輪招致に否定的だったし、ワールドカップ招致にも賛成していない。もっとも反対している理由は、高邁なものではないのだが。
 五輪については、都内勤務者としてあんな都心で五輪を開催されたら、経済活動が停滞する事を懸念するから。いや、もっと平たく言えば、道路や鉄道が混んで鬱陶しいだろうと思うから。都心でコンパクトな開催を訴求していたようだが、どうして異なる競技を狭い所でやる必要があるのか。サッカーを(私を含む)数万人が見に行って、さらに他競技の観戦者とバッティングしたら混雑するだけではないか。むしろ、広域で分散開催し、最先端のネットワーク技術(大昔、どこかで誰かが提案していたバーチャルスタジアムとかさ)やロボット技術を駆使して、リアルタイムで様々な競技を愉しむような五輪ならば、我が国にしかできないだろうし、単純な箱モノ行政とは異なるので、意味があるとは思うが。
 ワールドカップについては、もっと私的かつ深刻な理由だ。まず地元開催となると予選がなくなってつまらない。どうして人生最大の娯楽を02年に続いて取り上げられなくてはならないのか。また本大会の日本戦のチケットが手に入りにくくなるから。下手をすると、海外にワールドカップを見に行くよりもカネを準備する必要があるかもしれなくなるではないか。

 本件について、友人が興味深い意見を述べてくれた。要約すると「ワールドカップ招致そのもの、あるいは招致活動を通じてのサッカー界の盛り上がりの重要性、そしてワールドカップ招致とスタジアムなどのインフラ建設において連動していた五輪招致失敗の悪影響への懸念」と言う内容だった。
 これは正論である。箱モノ行政面を除いても、ワールドカップ招致活動は、一般の方々やマスコミの注目をサッカーに集める事になる。それにより、Jリーグや日本代表にも注目が集まり、サッカーを語る媒体も増えと、サッカー自体にも好影響が期待できる。したがい、私のような私的かつ偏屈な思いから、ワールドカップ招致に反対ばかりしていても仕方がないのも確かだ。
 ただし、五輪に頼らなければW杯を開けないならば情けない事だ。サッカーはサッカーで完結しなければワールドカップ招致も何もないだろう。また、手段として(主にインフラ面での環境を充実させるために)W杯を招致しようとするのは本末転倒なのは言うまでもない。ワールドカップ招致活動と言うのは、サッカー界にとって、一種のカンフル剤のようなものなのだ。劇的な刺激がなければ、維持できないサッカー界ならば、それは正常なものではなく、背伸びし過ぎと言う事になる。
 実際、カンフル剤を打たない事で失う何かが出てくる事はあるかもしれない。たとえば、経営破綻するクラブが出たり、代表が思うような成績を残せなくなるなど。それでも、(Jのトップクラブを不自然に消失させると言う論外の意思決定を行わず)経営破綻したクラブは活動を縮小すればよい。代表が少々弱くなっても、その国のサッカーは死なないのは言うまでもない。海外の3部リーグのクラブにホームで惨敗した代表チームが20年経てばワールドカップに出場する事もあるのだし。
 長期的な視野を持ち、近視眼的な思いつきの策を採らずに悠々とサッカー力を上げて行く事が、ブラジルやアルゼンチンに近付き、いつかワールドカップで優勝する唯一の道だろう。そして、その長期的視野を見失わない範囲で、カンフル剤を用いる事まで全否定しては道を狭めるかもしれないとは思う。要はバランスなのだ。

 ただし、新たにワールドカップを招致しようと言うならば、2002年をしっかり振り返り、成功した事、失敗した事を、それぞれ認識するのが重要ではなかろうか。それには色々な切り口がある。
 たとえば、あの愉しかった4試合。試合そのものの重厚な駆け引き。現在ではとても難しいのだが、長期に渡る代表強化の成功。あの時活躍した若手選手の伸び悩み。逆にメンバ落ちした選手の大成長。
 たとえば、我が国(共同開催した相方もそうだが)独特の高温多湿の環境。列強が次々に消えたのは、相方国のナニが主因ではあったが、やはり不思議な大会だった。もっとも、少々天候がサッカーに不向きの方が、フィジカル重視の国が落ちるのでよいと言う説もあるけれど。
 たとえばチケッティング。世界最高レベルのチケッティング企業がありながら、あのような無能なチケッティング企業のために散見された空席。チケット入手のための効率悪い事この上ない無駄な努力。それに対して、今度はヘマをせずに、FIFA胴元も我々も幸せになる方法を提案したい。
 たとえば、マスコット。世界最高レベルのマンガ大国が、あのような今では誰も覚えていない陳腐で格好悪くみっともないマスコットを受け入れなければならなかった屈辱。
 たとえば、各地での触れ合い。カメルーン代表と中津江村の触れ合い、デンマーク代表が残してくれたエピソード、イングランドのサポータ達が出した日本語のダンマク、「フーリガン」と誤解され逮捕されそうになった普通のアルゼンチンサポータ。そして、超一流選手たちの少年指導や高校生との練習試合。このような交流は、我が国が最も得意とするところではないか。
 たとえば、作られた競技場。宮城、静岡の大失敗は論外だが、横浜、鹿島、大阪、大分などは利用率こそ悪くないもの、様々な問題を抱えている。成功したと言えそうなのは埼玉、新潟、札幌(野球利用が本命なのが悔しいけれど)、神戸(大会前から将来を見越して収容人員削減の改造をする視点がすばらしい)。何がうまく行き、何が失敗だったか、それは次大会の運営計画そのものにつながるはずだ。
 たとえば、各国の練習場のために整備された各地の施設。私の在住地近傍の平塚は、ナイジェリア代表の招聘に成功、市内一等地の相模川河川敷にグラウンドを整備した。爾後、色々な経緯があり、今そこはは天然芝2面、人工芝1面のグラウンドが整備され、ベルマーレの練習場となっているのみならず、近隣の中学、高校の公式戦会場として頻繁に使われている。また天然芝グラウンドは稀にだが、我々の草サッカーでの利用も可能だ。ここまで、充実した利用がなされれば、オコチャやカヌーの妙技の記憶と共に完璧ではないか。
 いや、もっと色々あるだろう。とにかく、僅か16年サイクルでの同一国開催は、86年にコロンビアが開催辞退してメキシコが代替開催を行った時しかない。そのくらい、前代未聞の短サイクルでの招致活動なのだ。異例ではあるが、せっかくなのだから、記憶新しい前回の成功、失敗をしっかりと整理し、今度こそ史上最高のワールドカップを主管するくらいの気持ちで、招致活動を行うべきではないかと考えた次第。

 本エントリは、東京五輪失敗直後、友人のHさんとTwitterで交わした議論を起点にまとめたものです。Hさん、格好の議題を提示いただき、ありがとうございました。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(9) | TrackBack(1) | サッカー一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
結局自国では観戦出来なかったこと
(お隣へ行って見ました)


W杯開催しときながらまともなサッカー場が造られなかったこと


お隣に成績で負けたこと
(良い目標が出来たじゃないかと強がってはみたけれど、でも正直ベスト4なんて大気圏外なほどに絶望的で悔しかったなぁ、今でも考えると悔しいですが、当時と違って“それを期待させてくれる人”が居る)




そんなこんなで、自国開催にはどうもトラウマがあるんですが。。


五輪招致に対しても、初代東京五輪のイメージが強くて、あまり気乗りはしません。
がしかし、五輪かW杯でも招致しない限りは、『首都(欲を言えばなんとか山手内)にサッカースタジアム』は実現しなさそうですしね…。
Posted by 木村カズ at 2009年10月06日 01:33
五輪招致の尻の穴の小さい反対理由にびっくりしています。

>道路や鉄道が混んで鬱陶しいだろうと思うから

あなたはイベント楽しむくせに、イベントを行う場所の近隣の住民の意見のようなことを反対理由にしているんですね。

Posted by at 2009年10月06日 11:27
別に武藤さんをかばうわけではないが、一言。

>あなたはイベント楽しむくせに、イベントを行
>う場所の近隣の住民の意見のようなことを反対
>理由にしているんですね。

「都心でコンパクトな開催を訴求していたようだが、どうして異なる競技を狭い所でやる必要があるのか。」

これについて納得行く理由を誰かがちゃんと説明できてたら「混むからイヤ」とかいう超単純な反対理由はすぐひっこめるんじゃないですかね。

ていうか個人BLOGでのこの程度の意思表示にいちいちケチつけられてたら、もう何もかけなくなっちゃいませんか?
Posted by ロビン at 2009年10月07日 00:02
>「都心でコンパクトな開催を訴求していたようだが、どうして異なる競技を狭い所でやる必要があるのか。」

オリンピックを見に来る観客は複数の競技を(場合に
よっては同日に)観戦する事が前提なんで、武藤さんの
ようにサッカー以外を見る気が無い人は相手にしていないって
ことなんですけどね。水泳と陸上競技を同時に見ようとしたら、
辰巳と有明みたいに隣接した地域で開催されるのは
確かに便利なことです。

チケットがバカ高くなるので、現実問題として複数競技の
観戦は不可能に近いなんてことは言いっこなし。
ロゲ会長を初めとするIOC委員はいくつも見るんだし、
爺さん婆さんばっかりだから近くでやってもらえるのは
助かるでしょう。

オリンピック憲章の精神からすれば、狭い地域での開催は
非常に有意義です。
Posted by masuda at 2009年10月07日 01:49
世界有数の過密都市をさらに過密にしてどうするって思いますね。
交通機関マヒしそう。誘致失敗でホッとしてます。都税はドブですが。
Posted by アブラヒモビッチ at 2009年10月07日 03:50
>お隣に成績で負けたこと
その1
日本は正当なゴールなのにオフサイドに見えたが線審は(あえて?)旗を揚げなかったとのたまう人が「カリスマライター」(笑)になってしまうほど懐疑的な国だが、翻っていたいけなウリナラさんたちはアレだけご厚意を何も懐疑的に思わないのだろうか?
その2
日本人で「唯一世界を知る厳しさ」を持つとされてやたら過大評価をされる人が、予選リーグ突破して「楽しみたい」などとまるで80年代の浮ついたスポーツライティングみたいなことを言い出して精神の弛緩から案の定負けた。
・・・などという、雑感はさておき、

>インフラ建設において連動
・・・というなら、2019年のラグビーW杯は決まっているから、恩讐を超えてそちらに最大限協力してあげるのは手かもしれない。

ただし、先方が本気で「ジャパン」を強くする気がなさそうだというのが以下のリンク先で知れてしまうのも悲しい・・・。
http://www.rugbyeye.net/cgi-bin/lounge.cgi?bbs=daigaku&vew=2693
Posted by 五反田西口 at 2009年10月08日 02:32
武藤さん。この記事を読んでも危機感を持たれませんか?
http://www.asahi.com/sports/column/TKY200910050292.html
『「Jリーグってなに? ガンバ大阪がいるリーグなの?」

 「日本代表の川口って、どこのチームでプレーしているの?」

 この何げない疑問のひと言。日本サッカー協会が全国の小学校で実施している「こころのプロジェクト」の授業で、スタッフをしている元選手の安永聡太郎さんが小学生から聞いたものだ。

 最初のひと言は、福井県の小学生のひと言だった。Jリーグのクラブのない県だから、まだわからないでもない。でも、二つ目は、サッカーどころの静岡県藤枝市の小学生のもの。藤枝市はGK川口能活の所属するジュビロ磐田はすぐそばの場所なのに、こんなひと言が小学生から出たという。「もっと選手たちが地元に積極的に出て、ボランティアして交流すべきだ」

 終盤戦を迎えたJリーグ。混戦で盛り上がりを見せる。ただ、私がいまの同僚や取材先と雑談でサッカーの話をしても、混戦になっていることすら知られていないのが現実だ。Jリーグやサッカー関係者に危機感がないわけではないだろう。ただ、安永さんも言っている。「このままではサッカー界は10年後、本当にやばいっすよ」』


確かにJは地域密着で地元のサポが定着し、堅調な人気ですが、新規ファン特に若年層を獲得できていません。
スカパーとJ中継独占契約の結果、地上波でJを見る機会がほとんどなくなり、さらにニュースでも取り上げません。
ネットやスカパーなどの衛星放送でJの情報は手に入りますが、結局、Jに以前から興味がある層にしかアピールできないわけです。

これでは新規ファンが獲得できるわけがありません。
Jの地上波での露出を増やすのが最優先事項だと思います(Jリーグが金を支払ってでも)。

そういったJの危機打開策の一つとして、W杯日本開催も有効だと思います(日本代表選手が所属するJリーグクラブに興味を持つ人が少し入るかもしれないから)。


日本代表人気が日本のライト層のサッカー人気を支えていることは紛れもない事実です。そして、日本国民の多くがそのライト層です。


近視眼云々と悠長なことを言っている場合ではありません。武藤さんの意見はサッカーを良く知っている人、サッカー界にどっぷりつかっている人(いずれ、日本国民全体がそうなって欲しいが)の意見であって、ライト層の意識からはかけ離れていると思います。


日本のサッカー人気、J人気が最低3世代以上の年月を経て根強いものにならない限り、日本のサッカーファン、クラブ関係者、協会など日本サッカー界は、常に危機感を持つ必要があると思います。


ぜひ、この記事に対する反論・意見を記事にして欲しいと思います(日本代表試合後論評の記事の次の記事にでも)。もちろん、私に対して反論なさっても結構です。


偉そうなことを言ってすみません。ですが、私は日本にサッカー人気が根付いて欲しいだけなのです。日本古参のサッカーファンの一人である武藤さんがこういう記事を書かれたのが気になって書きました。
Posted by 大変失礼ですが at 2009年10月08日 09:36
私は地域スポーツの指導に、現場に携わるものとしてワールドカップ招致には反対です。五輪招致も反対でした。詳しくはホームページにコラムがありますのでそちらを。

>予選がなくなる。楽しみが減る。
確かに。しかし、ドイツ大会と今回の南ア大会の最終予選はあまりドキドキしませんでした。燃えませんでした。アメリカやフランスのときより。

>そういったJの危機打開策の一つとして、W杯日本開催も有効だと思います(日本代表選手が所属するJリーグクラブに興味を持つ人が少し入るかもしれないから)。
短期的には効果あるかもしれませんね。でも、ブームや人気はいずれ下火になるものでは?
地域のスポーツ振興、文化として根付かせることとか、怠慢しているマスコミの改革をサッカー(スポーツ)ファンで呼びかけるとか。現在マスコミの実力ではW杯を呼んでも代表にスポットが当てるだけでしょう。それもNHK以外はミーハー的視点で。

校庭の芝生化とか気兼ねなくボール遊びの出来る芝の公園(住宅街とかのなかに)の整備とかはしなくていいのかな?

「スポーツでもっと幸せな国に」とかいいながら、Jクラブはほとんど男子のプロ・サッカーを目指すカテゴリーしかないし。クラブハウスもなければ、専用の練習場もないクラブも多いではないか。
こんなことで地域のスポーツ振興が出来るのかな。

もっと言えば、スポーツって何よ?運動?体育?
囲碁や将棋やチェス、トランプ、麻雀、たこ揚げ、カルタ、能・狂言などはスポーツじゃない? 

サッカー専用スタジアムを造るなら地方のクラブ用に規模の小さなのにしたらどうでしょう?


あと余談ですが、大阪府枚方市の教育委員会は校庭の芝生化部分では、学校開放で野球やサッカーをさせないらしい。一部芝生なので使用範囲が若干狭くなっています。

www.kcat.zaq.ne.jp/aaals405「Sports is culture!」
Posted by アリエス陸奥 at 2009年10月09日 22:24
私は地域スポーツの指導に、現場に携わるものとしてワールドカップ招致には反対です。五輪招致も反対でした。詳しくはホームページ「Sports is culture!」にコラムがありますのでそちらを。

>予選がなくなる。楽しみが減る。
確かに。しかし、ドイツ大会と今回の南ア大会の最終予選はあまりドキドキしませんでした。燃えませんでした。アメリカやフランスのときより。

>そういったJの危機打開策の一つとして、W杯日本開催も有効だと思います(日本代表選手が所属するJリーグクラブに興味を持つ人が少し入るかもしれないから)。
短期的には効果あるかもしれませんね。でも、ブームや人気はいずれ下火になるものでは?
地域のスポーツ振興、文化として根付かせることとか、怠慢しているマスコミの改革をサッカー(スポーツ)ファンで呼びかけるとか。現在マスコミの実力ではW杯を呼んでも代表にスポットが当てるだけでしょう。それもNHK以外はミーハー的視点で。

校庭の芝生化とか気兼ねなくボール遊びの出来る芝の公園(住宅街とかのなかに)の整備とかはしなくていいのかな?

「スポーツでもっと幸せな国に」とかいいながら、Jクラブはほとんど男子のプロ・サッカーを目指すカテゴリーしかないし。クラブハウスもなければ、専用の練習場もないクラブも多いではないか。
こんなことで地域のスポーツ振興が出来るのかな。

もっと言えば、スポーツって何よ?運動?体育?
囲碁や将棋やチェス、トランプ、麻雀、たこ揚げ、カルタ、能・狂言などはスポーツじゃない? 

サッカー専用スタジアムを造るなら地方のクラブ用に規模の小さなのにしたらどうでしょう?


あと余談ですが、大阪府枚方市の教育委員会は校庭の芝生化部分では、学校開放で野球やサッカーをさせないらしい。一部芝生なので使用範囲が若干狭くなっています。
Posted by アリエス陸奥 at 2009年10月09日 22:56
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