2009年10月11日

1人1人を語るしかない試合だったが

 香港戦後にも、2度に分けてしつこく文句を言ったが、ここまでメンバを総取っ替えされると、1人1人を語るしかなくなる。しかも、先方は先方で予選敗退が決まり、来日直前にメンバを大幅に落としてきた。先方に文句を言うのは簡単だし、本大会が近づきもっと歯ごたえのあるチームとやりたいのも山々だが、今の時点で贅沢言っても仕方がない。まずは与えられた環境で、粛々と強化に励むべきだろう。
 もっともジーコ時代と異なり、総取っ替えしても、相応に連携があり、試合になるのはさすがと言えばさすがだが。

 前半敵FWに身体を入れられ苦闘していた岩政が、後半に入ってほとんど空中戦を制するようになった。後半、憲剛の右からのクロスをほぼ完璧に合わせながら、僅かに押さえる事ができず決められなかった時の、地面を叩いての悔しがりようは面白かった。どうやら、この代表のデビュー戦当日は、奥様の誕生日だったとの事。そりゃ、悔しいわな。考えてみると、確かに中澤や闘莉王と一緒にプレイしていれば、自陣だろうが敵陣だろうが、岩政がここまでボカスカとヘディングする機会には恵まれなかった。そう考えると、香港戦でレギュラ2人を並べたのは岡田氏の策だっただろうか。う〜ん。
 岩政とコンビを組んだのは阿部だった。あの豪州戦を思い起こすと、阿部をこれ以上CBで試すのはいかがとも思うのだが。若い岩下よりも、現状では能力も高いかもしれないけれど、う〜ん。とは言え、この日はラインを高く保ち上々のプレイ振り。唯一対応を誤った決定的ピンチは川島が救ってくれた。
 プレイ機会が僅かだった川島は、唯一この場面で格を示した格好。果たしてトーゴ戦に若手の山本に機会は訪れるだろうか。

 試合前に懸念したように内田の不振は相当のようだ。序盤に石川と見せた即興の崩しにせよ、本田のFKをGKがこぼしたのを詰めた逸機にせよ、前に出た時の攻撃感覚そのものは見事なものだ。けれども、それにもかかわらず、前に出られずサポートが遅れるのは、よほど体調が悪いのだろう。アントラーズでも冴えないプレイが続いているが、どう立て直すか。代わって出た徳永の無難なプレイを見せたが、ここにはもちろん駒野もいるし、最近好調のベテラン市川(岡田氏とは浅からぬ縁あるタレントだ)もいる。稲本や今野を使って、長谷部や長友を右に使うカードもあるだろう。内田で決定、と思われていたポジションが全く予想できなくなってきた。
 逆サイドを務めた今野は無難な出来だったが、やはり終盤プレイした中盤の方が向いていそう。いずれのポジションでも器用にこなせるだけに、23人に残る事は間違いなかろうが、このままでは11人に入るのは難しい。終盤いつもと反対の左サイドに起用された駒野が見事に2アシストを決めて、サイドバックとしてのスペシャリティを見せたのと対照的だった。 

 腕章を巻いた稲本は、終始冷静なプレイで中盤を作った。約1年前のウズベク戦で、今一歩のプレイ振りだった稲本だったが、先日のガーナ戦で大活躍。代表においても一気に存在感を増してきた。この日も上々のでき。後は自分のチームでレギュラを確保してくれる事だ。かつてのような「強烈な前進」こそなくなったが、これだけ技巧にすぐれ、後方で的確な位置取りができ、頑健な体躯を持っていて、豊富な経験を誇るベテラン。貴重な戦力になってくれる事だろう。遠藤、長谷部不在だったために、稲本の存在感が際立った面もあろうが。
 後半、橋本に代わって憲剛がボランチに下がり、ようやく日本の攻撃が機能し始めた。そう言う意味で、この日の担当業務はやや橋本には酷な役どころだった。ただ、ガンバユース時代からの僚友である橋本、稲本が、共に代表の中盤を仕切った事は、別な意味で重要だったのかもしれない。
 憲剛か遠藤のいずれかが中盤後方でさばかないと、よいボールが出ない事は明らかになったが、これは仕方がない事。一部の強国を除いて、そのような中盤タレントが複数名いる事が珍しいと前向きに捉えるべきだろう。

 比較的早くお役御免となった前田と石川は、思うように中盤からボールが出ない状態ながら、それなりのプレイ。最前線で収める事ができる前田にせよ、少ないスペースで突破できる石川にせよ、使われ方はさておき、今後定着の可能性は高いように思う。
 一方で後半から入った大久保と松井は、香港戦で今一歩のできだった事もあり、必死の形相でのプレイとなった。2人共引き出し、突破、飛び込みいずれも精力的にがんばったのだが、直接的な結果が出なかったのは少々気の毒だった。たとえば、終盤森本のパスを受けて抜け出した松井の長駆、自殺点時の大久保の飛び込み、いずれも見事だったのだが。2人共、異なる個性による独特の突破に魅力があるのだが、どうなるか。
 考えてみれば、前田、石川、松井、大久保、寿人、玉田、そして達也。それぞれのタレントが魅力的な個性を持つだけに、23人枠をめぐっての争いが、いっそうのレベルアップにつながる事が期待できるように思えてきた。

 さて、本田と森本だ。

 本田はスタメンから起用されれば、能力が発揮できるのはキリンカップのチリ戦でもわかっていた事。この日も序盤に思い切りのよいミドルシュートを放った以降、よくボールにも触り機能していた。日本ペースでボールが回っていれば、運動量も多いし、攻めから守りへの切り替えも悪くなく、ボールを受ける際の身体の向きなどの課題が目立たない。
 「一撃の魅力」もあるが、突破も組み立てもできる。パスの精度やタイミングは、俊輔、遠藤、憲剛と比較するのはまだ気の毒だが、とにかく伸び盛りのタレント。前半に憲剛に出したラストパスなど、見事なものだった。オランダリーグでも、どんどんと経験を積んで行く事ができるし、代表でも使い続けたいところだ。いざとなったら、(長友を右に回して)左サイドバックと言う奥の手もあるように思えるし(本田の守備能力は、一歩目の出足を間違えなければ、悪くない)
 ただし、交代では中々機能しないところが、起用の間口を狭める事になるのが悩ましいところだが。岡田氏がどうさばくか。

 森本はボールの受け方の向上が嬉しいところだ。昨年の五輪代表時代は、ワントップに起用されても、後方からのフィードの受け方が下手でどうしようもなかった。しかし、この日は憲剛のロングボールを受け、松井に打たせた場面に代表されるように、受け方が格段に向上しているのがよくわかった。しかも、常に敵DFと駆け引きし、オフサイドぎりぎりで飛び出す工夫も抜群。
 1点目は、ゴールに向かい、森本と本田が強引執拗にシュートを狙おうとした事で、完全にサイドが空いたところに、駒野が進出したところで勝負あり。森本と大久保と2人飛び込んでいたので、自殺点にならなければ、どちらかが決めていた可能性が高いはず。
 2点目は、森本の強引だが正確な技術による反転シュートが見事だったのは言うまでもない。詰めた本田の冷静さと精度も評価される(本田の場合、プレッシャのかかる場面で、同じプレイができるかどうかが課題なのだが)。
 あの受け方の成長を見ると、岡崎と並べ、俊輔、遠藤、憲剛のパスを受けさせてみたくなる。

 各選手の判断力、技巧、俊敏性をベースに組織化されたチームに、岡崎と言う攻撃の軸が確立。さらに、その周囲で手練手管を発揮し得る、多様なよい攻撃タレントが揃ってきた。大変結構な事だ。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(13) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>香港戦後にも、2度に分けてしつこく文句を言ったが、

→それが通じないのが青メガネの石頭。

>あの豪州戦を思い起こすと、阿部をこれ以上CBで試すのはいかがとも思うのだが。

→それが通じないのが青メガネの石頭。

>内田で決定、と思われていたポジションが全く予想できなくなってきた。

→守備のできないディフェンダーは我が日本代表チームにはいりません。
(内田が跳ね返された相手を、徳永は跳ね返しておりましたなあw)

やっとここへ来て、青メガネの能力の低さがご理解いただきつつあるようで、喜ばしいことです。はい。
Posted by at 2009年10月12日 01:33
10月14日のトーゴ戦で新戦力がどう融合するのかが楽しみですね。
森本は楽しみです。岡崎とコンビでプレーしたら面白いと思います。
Posted by A at 2009年10月12日 02:59
戦略がダメだと、どんな優秀な戦術を取っても優勢にはならない。
戦術もダメだと「個人の圧倒的な力量」が必要になる・・・のは
サッカーに限ったことではない様に思います。

岡崎のがんばり、
長友のがんばり、
稲本のがんばり、

皆、「日本代表でワールドカップに出だい」という思いで戦っていいますが、
選手を選考する方に問題があるのが困りモノです。
岡田さんの意向が選手選考に反映するわけですから、氏の「ベスト4」を目指す
戦略・戦術が欠陥品であれば、「日本代表という組織」はどうなりますかね?

これまで、不入りを囲ってきた代表戦、今回のスコットランド戦には
6万の観衆が集まったのは、「森本」という、従来の「岡田ジャパン」に無かった
何かを、多くのファンは期待してたのではないでしょうか?

個々のがんばりを無にしてしまう判断を下すリーダーが居る事を、僕らはドイツで
知っているではないですか?

それでも、「1人1人を語るしかない試合だった」と武藤さんが題する事が
とても心配ですが、杞憂に終わることを切に願います。
Posted by 吉田@仙台 at 2009年10月12日 07:04
岡田監督の強化は思ったより、順調にいっていると思うのですが、メディアとの関係がよくないせいか、真意が伝わりづらいような気がします。

選手や監督の熱意というものを上手く読者に伝えることができる記者がいれば、世間の評価が今よりももう少し肯定的になると思うのですが・・・。

日本人に対しては、同じ言葉を言っても、外国人のほうが日本人指導者よりも説得力持つと、岡田監督自身が言っていましたが、今、そのような状況なのかと思っています。
Posted by aruto at 2009年10月12日 14:12
とにかく、森本・本田を今のチームにうまく融合してほしい。
長年ストライカー待望論があり、やっとその資格をもつ選手が現れたというのに、使いこなせないとは何事か。
もしマラドーナが日本人にいたとして、「守備をしない」「戦術に合わない」等の理由で使わなかったとしたら、それは監督が無能だということだ。
Posted by 受験生 at 2009年10月12日 15:57
>岡田監督の強化は思ったより、順調にいっていると思うのですが

得点力不足を指摘され続ける我が代表チーム。
かのイタリアリーグでFWのレギュラーを張る選手。
オランダリーグで開幕連続得点、2部とはいえ去年の得点王。
Jリーグ得点王と得点第二位の選手。

このような選手が「やっと」「国際試合に」「出場」できたということだけでも、例の監督の下ではうれしい珍事なのである。

一体、どの水準と比較して「順調」というのだろうか?
アジア杯ベスト4でも目指しているのか?w
Posted by at 2009年10月12日 19:26
内田は武藤さんのいう「破綻した日程」の犠牲者の気がします。思い切って代表に呼ばないって判断はないんでしょうか。
Posted by コー爺 at 2009年10月12日 20:27
>名無しさん

本田と森本に期待をかけすぎなのでは。本田は監督の助言を受け入れコンセプトに合わせようと努力し始めたところ。森本は代表にまだ入ったばかり。

組織の中で個性を発揮することが重要であれば、例えカントナほどの有能な選手であっても、代表で実績のない選手に、過大な評価はまだ下すべきではないかと。日本人では1人で局面を打開できるような選手はいないのはご承知でしょう。軸とされる選手はいれども、今のチームに代替不可能な選手はいないと思います。

順調と申し上げたのは、この試合で、欧州遠征での課題の1つであるサブの洗い出しができたこと。今後、主力選手との融合をはかればいいのではないでしょうか。ただし、あくまでも連携を阻害すればリストから外れるのでしょうが。

ちなみにグループリーグ1勝がノルマと考えています。ホームを除く、過去の実績から言って妥当ではないでしょうか。現在の日本の実力では、1勝でさえ難しいと思うので。
Posted by aruto at 2009年10月12日 20:40
ベスト4は目標であって結果じゃないです。
その話を始めるとインチキ臭くなるので
友達とでも話してください。

今どうなっているか?という面では順調でしょ。
組織も固まってきたし、点も取れてる。
サブをどうするか?という所になってきてるし。
Posted by    at 2009年10月12日 20:43
疲労なのかサイド意識しすぎなのか前田と合わないのかわからないが、憲剛がフリーで持った時に前田がかなりいい動き出ししてるのにパスがでなかったのが2、3回あった。
内田より憲剛の出来にガッカリした試合。休ましたほうがいいんじゃないの?
Posted by at 2009年10月12日 21:04
同じく私も憲剛は疲れが相当溜まってると感じました。
内田と憲剛は少し休んだほうがいい。
啓太や一時期体調を崩した遠藤の二の舞になるかと・・・
Posted by A at 2009年10月13日 02:06
>本田は監督の助言を受け入れコンセプトに合わせようと努力し始めたところ。
>森本は代表にまだ入ったばかり。

それがおかしいと指摘していることは理解できますか?

>代表で実績のない選手に

それがおかしい!と指摘していることは理解できますよね?

>順調と申し上げたのは

ですから何に比べて順調であるのか。
あと8ヵ月というこの時期に,公式戦にもデビューしていないというこの事態に・・・。(a sigh)

Posted by at 2009年10月13日 21:25
ネットでは中村俊輔不要論が渦巻いてますね。
パスFKの担い手は他にもいるし、似たタイプばかり揃えても効果は薄まるのではというのは感じます。
Posted by sweet at 2009年10月14日 10:51
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