2009年11月03日

米本のはじまり

 前半20分過ぎだっただろうか、攻撃の起点となった米本がハーフウェイライン手前より前進を始めた。この労をいとわぬ知的な若者のここぞと言う時の前進の判断は、常に的確だ。センターサークル後方やや右寄りから左方向に斜行した距離は40mくらいだったろうか、その米本に平山がいかにも彼らしい柔らかな落とし。うまくフリーでボールを受けた米本は急停止後右斜めに方向を変えながら1度ボールを持ち出し、浮かさぬようによく腰を落として、ミドルシュートを放つ。反対側のゴール裏で見ていた私からは、ボールが枠に飛ぶのはわかったが、距離も相当だし、GK川島を破るのは難しいと思った。
 けれども、ボールは川島の手をはじきネットを揺らした。周辺のFC東京サポータの方々も、入るとまでは思わなかったのだろう、一拍おいて歓喜の絶叫とあいなった。
 距離が遠かったせいもあり、最初は川島の判断ミスによる得点かと思った。でも私は間違えていた。振り向いて見たオーロラビジョン、米本の放ったシュートは全くの無回転弾だったのだ、あのコースに飛んだ無回転弾をGKが止めるのは至難の技だ。
 もう1度整理しよう。米本は攻撃の起点となった後、約40m長駆し、ボールを自分が蹴るポイントに正確に止めながら身体の方向を変え、サイドネットぎりぎりに約30mの無回転シュートを放ったのだ。判断、技術、フィジカルいずれも極めて難度の高い決定的なプレイを、これだけのビッグゲームと言う場で、まだ18歳の若者が演じてくれたのだ。

 試合は序盤からFC東京の最終ラインが非常に厳しく守備を固める展開。ただし、憲剛のマークが曖昧なため、フロンターレが幾度か好機をつかむ。ジュニーニョが外した決定機などもあり、フロターレがもう1段くらいギアを上げようとした矢先の、ある種唐突な失点だっただけに大きかった。
 以降、フロンターレは最終ラインが単調に長いボールを蹴る事が多くなり、憲剛を経由した攻撃が少なくなってしまう。攻撃が単調になれば今野を軸にしたFC東京守備陣は守りやすくなる。後知恵だが、前半の残り時間の攻めあぐみはフロンターレの失態となる。

 後半に入り、フロターレの猛攻がスタート。以降は、憲剛が工夫を凝らして米本を軸にした中盤を抜け出し、ジュニーニョと鄭大世は強引に裏を狙い今野とブルーノがギリギリで読み、梶山が中盤でボールを回し平山が前線で持ちこたえて時間を稼ぎ、と時間が経過する。
 FC東京の2点目の逆襲速攻だが、フロンターレがCK後の執拗な連続攻撃でボールを複数回拾った直後で残っている選手のバランスが崩れたのを突いたもの。何かフロンターレはとことんツキがない感じがした。もちろん、鈴木の視野の広さと平山がマークしていた菊地の視野から消えた動きなど見事なものだったのだが。

 2点差になっても、憲剛もジュニーニョも諦めない。幾度も幾度もFC東京ゴールを襲うが、最後権田とバーが立ち塞がる。権田の飛び出しのよさは秀逸でセンタリングへの反応も抜群。憲剛は権田の前への飛び出しが好調なのを見て取り、頭越しのファーのクロスを狙うなどするが、それにも権田はしっかりと対応していた。75分過ぎだったか完全に揺さぶって最後憲剛がフリーで狙ったグラウンダのシュートにまで権田が反応した場面で、何か「勝負あり」との雰囲気が漂い始める。
 それでも憲剛もジュニーニョも諦めない。ただ、このあたりから、この諦めない2人ががんばり過ぎるものだから、肝心の敵陣前に思うように入り込めなくなり、結果的に今野と権田を楽にした印象もあった。

 いい試合だった。
 「あの米本がビッグゲームを決めた最初の試合」と、長きに渡り記憶される試合となる事だろう。
posted by 武藤文雄 at 21:28| Comment(16) | TrackBack(2) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これでJリーグ新人王に近づいたのではないでしょうか。
これまでは「新人で2桁得点」という衝撃の大きさから、渡邉千真(横浜Fマリノス)が有利かと思っていましたが、「ナビスコMVP」で米本が逆転した感じです。
本来ならば「Jリーグ」の新人王であってナビスコや代表の活躍は関係ないはずなのですが、過去を振り返ると結構反映されていますからね。
「新人で2桁得点」ということでは、長谷川悠(モンテディオ山形)もいますし、新人王争いも目が離せませんね。
Posted by Jリーグ新人王争い at 2009年11月03日 22:51
今まで「ムービングフットボール」とか「人もボールも動くサッカー」というのが具体的にどういうものなのかよく分かっていなかったのですが、
昨日の試合で、つまりは攻守に11人が高い連動性をもってプレーするということなのかなと感じました。
東京も個の能力は悪くないはずだし、川崎も連動性は十分なのかもしれなせんが東京の方が攻撃時や守備時の意思統一が良かったように見えました。
川崎が一対一でボールに対している時間が多めなのに対して東京は常にチーム全体でボールに対しているように感じられました。
「人もボールもよく動く」というのは戦術じゃなくて前提だろと思っていたのですが、昨日の試合を見て城福監督はサイドやFWやらポゼッションが云々ではなくて
サッカーやチームの基本を最重視したチーム作りをしているのだと感じ今までよく分かっていなかったのですがやっと評価できるようになりました。
Posted by ライトな東京ファン at 2009年11月04日 14:28
米本のはじまりじゃなくて
毎年、カップ戦制覇しているチームにありがちな
FC東京・斜陽のはじまりにならないようにしないといけませんね。
Posted by at 2009年11月04日 16:31
昨日は狂会のTさんと見てました。
オイラは米本10年のW杯以降の代表のボランチですね。と振ると、いやまだ分らないよ!10年南アフリカあるかも!!とおっしゃってました。

Posted by 蹴球亭 at 2009年11月04日 18:22
めでたい話をしているところで混ぜ返すようで申し訳ないですが、
これって怒ることなんでしょうか。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/headlines/20091104-00000230-jij-spo.html

「銀メダルや銅メダルを掛けられた直後に外してしまう」
なんてインカレやクラ選でもよく見かける光景で、
いまさら文句を言われても……少なくとも、学生サッカーでも
文句を言われていない行為を咎めるってのは違和感が。

プレゼンターの前でメダルを投げ捨てたってのなら話は
別ですが、そうではないんでしょうし。かつて日産が
やった「天皇杯表彰式ボイコット」とは異質のものと
思うんですけどねぇ。

まぁ、いつもの「Jリーグは川崎にJクラブが存在すること
自体を汚点と捉えている」のパターンなのかもしれませんが。
Posted by masuda at 2009年11月04日 21:15
>これって怒ることなんでしょうか。

メダルを外すだけならばともかく、ガムをくちゃくちゃしながらダラダラ歩くとか、「どう贔屓目にみても、擁護のしようがない。」映像がYOU TUBE等で多数見受けられます。

もし映像をみたら「そりゃ、チェアマンも激怒するわな。」と納得されると思います。
Posted by ロビン at 2009年11月05日 00:31
特に握手拒否するのっては、、、

それと、
他のクラブチームや
特にサッカーの場合、”海外ではよく見る光景”というのを言い訳の材料に使われるのですが
悪いところまで真似する必要はない!です

銀メダルがいらないなら、
家族、親戚などにあげればいい
喜びますよ
銀メダル以下は親族に感謝の念をこめて
プレゼントすればいい
そういう文化を創ればいい
日本のサッカー界がね
Posted by あつし at 2009年11月05日 05:52
>まぁ、いつもの「Jリーグは川崎にJクラブが存在すること
>自体を汚点と捉えている」のパターンなのかもしれませんが。

妄想全快の被害者面ですね。

学生が怒られないからプロが怒られるのに違和感とか正気ですか?
インカレやクラ選でよく見かけるなら、なおさらプロは模範をしめしてほしいと思うのが普通だとおもうけどね。
Posted by at 2009年11月05日 09:43
ほっといたら

サッカー選手ってのはちゃらちゃらしてて礼儀もなってないんだな

って思われるだけ。
Posted by at 2009年11月05日 14:45
masuda さん

ご自身の投稿をよく見返してください。

プロと学生は違うのです。
日本と世界は違うのです。
ことの良し悪しは大人が示していくのです。
サッカーに限らず、スポーツから学べるものは無限です。

お忘れなく。
Posted by my at 2009年11月05日 18:15
小生は川崎FのサポでもなくFC東京のサポでもございませんが、準優勝チームを貴賓席に上らせて、名誉総裁からメダルを戴くという演出自体がまるで罰ゲームのようで、なじめませんでした。憲剛や川島のような優等生でさえ、あの表情ですから、同情を禁じえません。

川崎Fの選手達だったからという話では無いと思います。タイトル手前で何度も苦杯を舐めたチームが、あのような演出に参加することを強いられたら、同じような態度・気持ちになっても仕方が無いのかな?と。。。。。
Posted by 罰ゲーム at 2009年11月05日 20:48
>握手拒否

あぁ、そりゃまずい。そりゃ怒られるわ。
youtubeではメダルを持って階段下りてくるシーンしか
見てなかったんで。(←これについて怒るのはどうかしている。
「メダルは首に掛けなければいけない」なんて誰が決めた?)
勇介のガムくちゃくちゃは勝ってもそういうことをする男なんで、
切り離して考えるべきだと思いますがね。

あつし様
>”海外ではよく見る光景”というのを言い訳の材料に使われるのですが
>悪いところまで真似する必要はない!です

海外云々の問題ではありませんよ。アスリートの本能の問題。

罰ゲーム様
>誉総裁からメダルを戴くという演出自体がまるで罰ゲームのようで、なじめませんでした。

いや、総額10数億のスポンサー料をかけて国立競技場まで
借りて決勝に至るまで何百人の人手を借りて実現
している大会なんですから、こういった儀式に参加するのは
アスリートの義務です。後は本能の部分とどう折り合いを
つけるかって問題。本当は出たくないことくらい
プレゼンターは分かっている(分かっていない
プレゼンターには説明するのが関係者の仕事です)し、
最低限のことさえしておけば文句を言われませんよ。

アスリートではなく将棋の棋士なんですが、こんな時に
どんなことを考えるかを知るうえで「将棋世界」誌の
今月号(12月号。2日発売だから雑誌コーナーにまだありはず)の
19ページは面白いですよ。勝負とは本来個人的なものの
はずですが、沢山の人の期待を背負いながら戦うってのは……大変だわね。
Posted by masuda at 2009年11月05日 23:56
Good Loser という言葉があります。

以上。
Posted by at 2009年11月06日 00:18
誰であろうが行動そのものが問題になってるのに、○○だから切り離して考えるべきとか意味不明。
さすが子供が怒られないんだから大人もやってもいいって発想の人の発言は一味違う。
Posted by at 2009年11月06日 10:28
本来は皆でリーグやスポンサー、貴賓の皆様に謝ればOKてな感じでしょうが、今回のはMQNにお灸を据えるためのリーグ側の猿芝居の意味も大きいのではないでしょうか。
川崎にとっては高くついてしまいましたが
Posted by at 2009年11月06日 22:40

「子供(川崎イレブン)の悪ふざけを指導する教師(チェアマン)の振舞」に例えるなら、今回のチェアマンの初動対応には大きな疑問を感じました。

http://www.daily.co.jp/soccer/2009/11/04/0002491637.shtml



しかし、落としどころは流石ですね(この件に関しては)。

http://www.daily.co.jp/newsflash/2009/11/10/0002506717.shtml
Posted by 木村カズ at 2009年11月11日 00:13
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