2009年11月14日

ああミラン・マチャラ

 ワールドカップ予選プレイオフ、アジアオセアニアブロック、第2戦、ニュージーランド1−0バーレーン。第1戦の0−0の引き分けと合わせ、ニュージーランドが本大会出場権獲得。

 戦闘能力比較をすれば、バーレーンが明らかに優勢。第1戦でも幾度も決定機を作りながら決め切れず。この日も前半慎重に戦い過ぎているうちに、終了間際にCKから失点。後半立ち上がりから仕掛けてPKを獲得するも失敗、以降は自信を失ってしまったのか、無謀な縦攻撃に執着し、そのまま押し切られてしまった。バーレーン国民とミラン・マチャラの野望は水泡に帰したのだ。
 それにしても詰めの甘いオッサンだ。日本戦でバーレーンは常に集中した守備を見せ、俊輔や遠藤の悪魔のようなCKに中澤や闘莉王が飛び込んでも、我慢に我慢を重ねて来たではないか。それなのに、どうして前半終了間際の大事なCKでああも簡単に敵をフリーにしてしまったのか。豪州戦でバーレーンは再三見事な技巧と連携で、中盤の厳しいプレスを抜け出し好機を作って来たではないか。それなのに、どうしてああも単調な攻撃に終始したのか。サウジ戦でバーレーンは敵得意のカウンタを許さない丁寧なビルドアップを見せていたのではないか。それなのに、どうして縦ばかり急いでしまったのか。この一番肝心な試合で、今日の敵よりも格段に戦闘能力の高い相手に今まで存分に対抗してきた能力をほとんど発揮せずに敗れてしまった訳だ。まあ、このオッサンらしいと言えばらしいのだが。

 ニュージーランドは82年以来28年振りの出場となる。28年前は、最終予選はクウェート、中国、サウジの4国でのH&A総当たり(1次ラウンドで韓国はクウェートに、日本は中国に、豪州はニュージーランドに、それぞれ敗れた。また、イランはイランイラク戦争で辞退、イラクは戦争しながらも出場しサウジに敗れていた)。クウェートが早々に抜け出し、中国が2位に滑り込むと思われたが、ニュージーランドが最終戦敵地サウジ戦を5−0で完勝し、同勝ち点、同得失点差に追いつき、プレイオフに。プレイオフで中国を振り切り、初出場を決めたもの。後年、スイス、ドイツ、そして来日しジェフでも活躍した当時まだ10代だったストライカのウィントン・ルーファーの活躍が目立った。
 本大会では、ブラジル、ソ連、スコットランドに3連敗。けれども、あの黄金の4人のブラジルに「4点しか取られなかった」(0−4の敗戦)、スーネス、ダルグリッシュなどのイングランドのトップ選手が並ぶスコットランドから「2点取った」(2−5の敗戦)などは、健闘ではないかとの評価もあった。
 しかし、この大会以降はほとんどの大会で豪州の壁を破れず、目立った活躍はできなかった。前回のドイツ大会予選に至っては、ソロモン諸島の後塵を拝し、豪州とのオセアニア最終予選にすら進めなかった。
 久々の出場に祝意と敬意を表するものだが、果たして本大会でどこまでできるか。地元南アフリカと同グループに配されるのは確実だろうが、前回同様の存在と予想されたトリニダードトバゴ(こちらもプレイオフでバーレーンを下して出場だったのだが)は、大ベテランのヨークを軸に鮮やかなサッカーで大健闘を見せたが、ニュージーランドはどうなるだろうか。

 78年大会にイランが出場して以降のワールドカップに、いわゆる西アジアの国は最低1国は必ず出場していた。今回のバーレーンの敗退で、実に36年振りの西アジア国不出場のワールドカップとなる。これはこれでちょっと感慨深い。
 80年代半ば、アジアにおける戦闘能力バランスは西アジアが圧倒的で、東アジア側は唯一韓国が対抗できていたくらいだった。90年代前半、日本がアジアのトップに登場し、ここ約15年間は「西アジア(主にサウジ、イラン、イラク)対日本、韓国」が、アジアサッカーの基本構図だった。豪州のアジア参画でそのバランスが微妙に崩れて来た訳だが、北朝鮮の大健闘、サウジ、イランの失態、ミラン・マチャラ氏の詰めの甘さなどが錯綜し、とうとう西アジア国不在のワールドカップとなった訳だ。
 この結果がアジアサッカー界の潮流だとは言う気はない。この手の結果は運不運が左右するものだからだ。現に2年前のアジアカップでは、言わば中立地と言える東南アジアの大会で、イラクとサウジが準決勝で、それぞれ韓国、日本を下して決勝で覇を競っている。ただ、そうは言っても、オセアニアと合わせ合計5カ国の出場権があるワールドカップに、西アジア国が不在になる事態は、ほんの数年前、いや本予選さなかですら、ほとんど予想できなかった。やはり1つの事件と言えるだろう。
 確かにアジアの予選は、他地域と比較したゆるいとは思う。今日の試合を見ても、この2国いずれかが本大会でどこまでやれるのかは、かなり疑問に思った。けれども、そのゆるい予選を、サウジもイランもイラクも、そしてバーレーンも突破できなかったのだ。予選とはそういうものだ。そのような予選をしっかりと勝ち抜いた事そのものは、やはり素晴らしい事だと改めて思った次第。
posted by 武藤文雄 at 22:38| Comment(5) | TrackBack(1) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本サッカー協会はマチャラ氏にオファーすべきだ。
Posted by K at 2009年11月15日 13:12
>日本サッカー協会はマチャラ氏にオファーすべきだ。
いや、それをやったら、日本代表がもっと詰めの甘いチームに……
Posted by Dortmund06 at 2009年11月16日 14:33
>日本サッカー協会はマチャラ氏にオファーすべきだ。

ある意味日本を知り尽くしている男だからな。
どこぞの監督と比較して見劣りするところもないでしょ。

賛成。
Posted by at 2009年11月16日 18:19
サルミーンの劣化には、残念でした。
PKを外した16番のキャプテンも帰化した6番も振るわずじまい。
バーレ−ン サイドの使い方が下手でしたね。
力任せのサッカーのニュージーランドの出場はがっかりです。
 
Posted by at 2009年11月16日 22:41
マチャラ氏が相手方にいると不安で仕方がないのは、96年のクウェート戦後からですが、この敗退で14年大会予選がすこしゆるくなったと思っています。
バーレーンが本大会に出場してしまうと、サウジ・イランと最終予選前に当たる確率が高くなりますからねエ・・・
そう言った意味で今回はマチャラ氏に敬意を表したいと思います。
Posted by at 2009年11月23日 22:30
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