2009年11月23日

祝祭は継続された

 第4審が提示したロスタイムは4分、手元の時計は49分を回ろうとしていた。千葉直樹の右サイドからのクロスを、マルシオ・ソアレスが折り返すが、セレッソ守備網にはね返される。そのクリアは1つ前のクロスを上げた直樹の足下に飛んできた。
 その時、左サイドから朴がゴール前に進出するのが見えた。第3列からの前進に、対応しマークにつくセレッソ選手はいない。私は思わず叫んだ「なおき!ファーのパクだ!」。「せん!だい!れっつ!ごー!」と皆が絶叫しているその最中に聞こえる訳がないのだが。もちろん、老獪で冷静な直樹である。逆サイドまで、しっかりとルックアップできていた。そして、決して処理が簡単ではない浮き球を落ち着いてトラップ、敵DFが寄せてくる直前、(時間的にも空間的にも)ほんの僅かなスペースだったが、丁寧によく腰を入れたクロス。そのクロスの軌跡と朴のドカドカとした前進が、ほんのコンマ何秒後かに一致するのがわかった瞬間、私は約94分間待ち望んでいた歓喜の瞬間が近づいた事を確信した。そして、「パ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ク」と絶叫しながら、その確信が現実になる最高の瞬間を満喫した。
 阿鼻叫喚、弐萬絶叫、金色覇者、全員狂乱、香川呆然、黄金爆発、誰彼抱合、人々混乱、試合終了。

 試合前、会う人、会う人皆と「いやあ、えがった、えがった」と、満面の笑みで握手、抱擁(いや、仙台弁で歓喜し合ったのは1人だけで、他の人とは共通語で会話したのですが)。「んでは、終わってから」と、右手をクイッとやるのが嬉しい。
 水戸にちゃんと行っていた先見の明がある人から「歓喜の自慢」を聞き、行きそびれた(私を含む)間抜けが「反省の弁」を語る。で、必ず結論が「いやあ、えがった、えがった」で終わる。
 何かユアテックスタジアム中が、試合前から祝祭ムードに包まれている。
 しかし、試合前にも書いた通り、ベガルタとしては「何があっても勝ち点3」と言う試合だ。もしこの試合が引き分け以下ならば、昇格決定してホームスタジアムに帰還した最初の試合にもかかわらず、大歓喜の渦とはならず、祝祭ムードに水が差されてしまう。サッカー後の自棄酒は過去何回も何回も何回も何回も愉しんできたが、たまには「完璧な歓喜」を肴に飲みたいし。うん、そうだ。判断力が低くて水戸に行かれなかった私や、職務の都合上水戸に行かれなかったベガッ太君などが「完璧な歓喜」を肴に飲むためにも、勝って欲しい(まったく己の身勝手さにはあきれるが、サポータとは本来身勝手なものだ)。

 当方は、負傷癒えた平瀬がスタメンに戻り、中島と2トップ。中原とサーレスは負傷との事でベンチからも外れ、控えの攻撃的選手マルセロ・ソアレスだけなのは、少々不安材料。一方のセレッソは負傷との事で香川がベンチスタート。小松のワントップでカイオと乾がいわゆる2シャドー。ベンチには香川の他に黒木、西澤が控えるさすがのメンバ構成。
 それでも、双方ともに、いずれも中盤より後ろは、ほぼ開幕当初から想定されたベストの布陣。両軍ともに第3クールにしっかりと勝ち点を積み上げ、4チームでの混戦から抜け出しただけに、組織的な熟成レベルも相当。その2チームが誇りを賭けてガップリ四つに戦う試合が、おもしろくならない訳がない。
 開始早々から千葉直樹が激しいプレッシャをカイオにかける。カイオが千葉を避けるように位置取りを後方にする事で、小松が孤立。さらにカイオとマルチネスの距離が(セレッソにとって悪い意味で)近付いたため、マルチネスを当方の2トップとドイスボランチがはさむのが容易になり、マルチネスの展開の幅が狭まる。かくして、ベガルタが攻勢を取る。朴のクロスに菅井のヘッドがサイドネットを揺らした場面、千葉のボール奪取から始まったカウンタで梁が関口へ好パスし関口のループシュートがゴール上に僅かに外れた場面、富田の好パスから関口のシュートがポスト、跳ね返りを梁が狙うも敵GK金が候補した場面、と3回決定機を掴んだ。後から考えるとセレッソは、前半守備的に戦う策だったのだろうが、これだけベガルタに決定機を許すのでは守備的に戦ったの失敗だったのではないか。もっとも、それらがいずれも入らないところが、まあベガルタらしいとも言うのだけれども。
 後半、香川を起用したセレッソが前に出てくる。さすがに富田が後方に引かざるを得なくなり、羽田のサポートを受けたマルチネスが展開を許し押し気味の展開を許す(羽田の位置取りの巧みさは実に忌々しい)。それでも、富田は判断よく香川を止め、菅井と朴はマルチネスの展開をよく読んで両翼を押さえ、エリゼウはカイオを吹き飛ばし、千葉は乾に執拗に絡み、広大が危ない地域を押さえ、ベガルタ守備陣は破綻を見せない。一方でセレッソの守備陣も強い。特に藤本は心憎いばかりの1対1の強さを見せ、ベガルタ攻撃陣は前線に起点を作れないので、押し上げが間に合わず攻め込めない(セレッソがまだJ1にいる折に、この選手の将来性に非常に大きな期待を抱いたのだが、この日のプレイ振りを見るとようやく復調してくれたようだ)。かくして、沈滞ムードの展開だが、両軍の中盤のバランス、最終ラインの強さ、いずれもJ1レベルの好試合。実にハイレベルの緊張感の高い試合となった。
 80分あたり、香川が負傷でピッチを去る。この幸運にベガルタのスイッチが入る。何かピッチの戦士達の雰囲気が変わった、「後半我慢していた俺たちが再び攻める時間帯が来た」と言う意思が、スタンドの我々に伝わって来た。選手達に勇気づけられたサポータの声援が一段も二段も上がる。何か形容しようがない雰囲気、サポータの声援がさらに選手達を勇気づける。あれだけ走っていた選手達の運動量が一層上がる。正にポジティブフィードバック。チアゴは「守ろう」と言う意思で逃げのクリアをするが、マルチネスや乾は得点の意欲がある、とセレッソの意図がバラバラになってきたのがわかる。チャンスだ。「せん!だい!れっつ!ごー!」のボルテージが上がり、さらにベガルタの選手が前に出る。
 実は年甲斐無く試合前からジャンプを継続していた事もあり、75分あたりから右足のふくらはぎが吊りかけていた。ところが、横で絶叫している4歳年上の友人は、まだ跳び続けている。菅井も富田も梁も関口も走り続けている。おお、朴までも上下動しているではないか。負けられない(誰に負けられないのだ?!)、やはり俺も跳ばなければ、左足の片足ジャンプを繰り返しながら、「せん!だい!れっつ!ごー!」、そして「パ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ク」へと。

 試合前の杞憂は全く無意味だった。試合後、ユアテックの祝祭ムードは最高潮になった。いや、これを最高と呼んではいけないな。この日我々は1000万円の獲得を確定した。2週後、もう1000万円を獲得し一層の祝祭を行い、さらにその1週後もう2000万円を獲得し今年最高の祝祭を行わなければならない。
posted by 武藤文雄 at 23:10| Comment(6) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも、楽しく拝見させて頂いてます。
昨日は夢の様な瞬間でしたね。

で…千葉直樹の右サイドからのクロスを、マルシオ・ソアレスが折り返す…ですが、ソアレスじゃなくて、朴でしたよ。

武藤さんの興奮がまだ冷め遣らぬ、影響でしょうか。
Posted by 通りすがり at 2009年11月23日 23:55
昨年の広島、山形と比べると両チームとももう一歩ずつ足りないかなという感じですね。

セレッソは香川の有無でガラッと変わってしまう。
ベガルタも山形ほど研ぎ澄まされた守備と攻撃がない…。
Posted by gpjt at 2009年11月24日 02:49
いつも楽しく拝見しております。
今でも夢だったんではないかと不安になるくらい劇的なゴールでしたね。
私もサポのコールがシフトチェンジした辺りから何かが起こりそうな雰囲気を感じました。

ちなみに最後の千葉からのクロスの前に朴の折り返しからリャンの頭を経由してましたよ。


>gpjt
不粋なレスご苦労さま。
時間軸の異なるリーグ・チームを比較することに何の意味があるのか分かりませんが、あなたの主観が間違っていることは来年証明されますので。「研ぎ澄まされた」とか書いてるあたりどちらのサポかは見当つきますが。
Posted by at 2009年11月24日 13:38
なんでも先日の勝利で様々な記録が出たそうです〜

圧倒的な強さはあまり感じないんですけども
どこかに安定した強さは感じますねぇ〜
特に香川不在とは言え、セレッソのアタッカーを
「守備的」と思うくらいにしっかりと防いだって
いうのは、仙台の整備された守備っていうものを
改めて感じる事ができたような気がします。

しっかりとしたポゼッション、そして縦に速い
攻撃、整備された守備…
チームとしての熟成度を堪能できる日が来るとは
数年前までは思いませんでした(笑)
Posted by 近会 at 2009年11月24日 14:03

ロスタイムの得点シーンをスタンドからの映像で撮った動画がUPされていましたよ!
Posted by ランキン at 2009年11月25日 20:48
決勝、国立にベガルタが上がってくることを楽しみにしています。

極寒、ホームでの川崎(優勝争い疲れ)
鹿島かG大阪(共に優勝争い疲れ、G大阪の出場停止リーチ者の当然多さ知ってますよね。)
流れは仙台な気がします。
Posted by 天皇杯、別の山のJ1他サポ at 2009年11月28日 10:20
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