2009年12月24日

続萬代の移籍

 ジュビロの萬代宏樹のサガン移籍が決定した。ジュビロがホーリーホックの荒田の獲得に成功した事での放出であり、事実上の解雇と言ってもよい移籍であろう。

 ベガルタサポータとしては、いやこの天賦の才に恵まれたFWびいきとしても、あまりに複雑な想いにとらわれる移籍劇である。
 個人的にこのFWについては、随分色々と書いてきた。デビュー直後にこんな評価をしたが、その後ベガルタの不定見な強化体制に、起用の機会が減り伸び悩んだ感もあった。しかし、07年シーズンは、完全ベガルタエースとして定着し、J1まであと一歩のところまでチームを引っ張ってくれた。そして、右足の振りの速いシュートにせよ、飛び込む位置取りが巧みな空中戦にせよ、J2であそこまでできただけに、J1でも存分に通用すると期待された。したがって、07年シーズンのオフには、存分に別離を悲しんで送り出す事になったのだが。

 ジュビロへの移籍直後は、大エースの前田が負傷で離脱していた事もあり、かなり出場機会に恵まれた。萬代が初得点を上げた試合では、ベテランの田中誠あたりが、大変喜んで祝福してくれていたのを見ても、相当な期待を持たれていたのがよく理解できた。
 けれども萬代はそのチャンスを活かす事ができなかった。要因は萬代が「自分が欲しいボール」を明快に要求しなかった事になると見ている。萬代は大柄な体躯を持つが、後方から高いボールを受けるのは細身のためかあまり巧くない。一方、足下へのボールは、少々ブレがあってもかなりの確度で収める事ができる。しかし、ジュビロでは萬代へ、そのような低いボールが入る事は少なかったように見えた。得意なボールを味方にしっかりと要求しない事は、ベガルタ時代から見受けられた萬代の悪癖だった。ベガルタでレギュラに定着するのに4年かかったのも、そのあたりにも問題があった(ベガルタの強化体制にも問題があったのだが)。

 もう1つ精神的な問題も気になっていた。昨年のあの入替戦、第2戦終了後。中山を中心としたジュビロイレブンが、我々ベガルタサポータ前に整列し挨拶をしてくれた場面。萬代は、堂々と前面に出てかつてのクラブのサポータ達に挨拶をすればよいのに、何かこそこそとした雰囲気で我々の前を去って行った。そのあたりの、何か弱々しい態度に「来期(つまり09年シーズン)も、ジュビロでの活躍は難しいのではないか」と危惧を抱いたものだった。どうやら、悪い予感は当たってしまったらしい。

 萬代は(前田は別格としても)ジウシーニョ、李根鎬と言った強烈なライバルに敗れたと言うよりは、己に敗れたように思えてならない。
 別離の際に述べたが、一昨年にジュビロからのオファーを受けなければ、ストライカとしての大成はなかった事は間違いない。しかし、萬代はそこからもう一皮むける事に失敗したと言う事だ。したがい、あの時ベガルタに萬代が残っていたらと言う事を考えるのは、皆にとって全く意味ののない事だ。

 しかし、萬代はサガンにチャンスをもらう事ができた。プロになって6年、この2月で24歳になる萬代はまだ若い。ここまでの失敗経験を糧に本格的なストライカに化ける可能性がまだまだある年齢だ。ベガルタの4年間で丹念に積み上げた能力と、中山、前田、ジウシーニョ、李根鎬と言ったプロフェッショナル中のプロフェッショナルのストライカと共に鍛錬した経験を忘れずに、天賦の才をどこまで磨く事ができるか。
 最後のチャンスに臨む萬代宏樹に期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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