2009年12月29日

夢から覚めても

 友人達とため息を吐きながらも、何とも言えぬ悔しさと満足感を味わえた敗戦直後。夢のような1年が終わった。そして、この完敗の瞬間、我々ベガルタサポータは夢から覚めた。当たり前だが、目指すべき目標は遥か彼方上方にある。夢から覚めて、その当たり前の事を認識させられたのだ。
 けれども、夢から覚めはしたが、現実も素敵だ。だって、来期はJ1なのだから。

 ガンバ特有のいやらしいボール回し。ルーカスが後方に引き、山崎が右(ベガルタから見て、以降も同じ)に開く事ができたスペースに、二川と橋本が入り込む。ルーカスにはたいた遠藤がさらに前線に出てくる。この前進の仕方が実に巧妙で一拍おいてからいかにも遠藤らしくトロトロと前に出る。遠藤を見ていた千葉直樹はゾーンを維持するため付いて行かない事を選択。遠藤を含めて4枚が最前線に貼り付いた事で、ベガルタのDFと数が一緒になる。遠藤の前進と同期して橋本が右サイドに移動、この位置取りがまた絶妙で、右DFの田村とCB右のエリゼウの中間点。エリゼウは橋本の位置まで開くと、中央が薄い2対2になるので橋本に付き切れない。その橋本に、ルーカスからパスを受けていた高木が精度も強さも申し分ない縦パスを入れ、橋本がフリーで振り向く。
 この瞬間から今まで「緩」だったガンバが「急」に転換。橋本の仕掛けと同時に二川が(自ら見て)左斜め前方にスタート、ルーカスが最前線に。二川を木谷が、ルーカスを富田がマークする。中央に切れ込む橋本を田村とエリゼウが挟み込む。橋本は二川を選択、素早い振りから出したスルーパス。田村がカット、ボールは中央に流れる。ところが、橋本のスルーパスに呼応して、木谷のみならず富田までが二川に対応を開始していた。流れたボールは中央全くフリーのルーカスへ、ルーカスはPKのようなボールを落ちついてミート、反転した木谷と遠藤を打ち捨てた朴のスライディングは間に合わず。林も全く反応できずに決勝点が決まった。
 この失点場面、ベガルタはフィールドプレイヤ10人が整然とブロックを組み、ほぼ完璧にゾーンで守備ラインを固めていた。それが、完全に引きはがされたのだ。けれども、ベガルタのミスと言えば、しいて言えば富田がルーカスを捨てた事くらい。しかし、それにしても田村の足に引っかからず二川にボールが通っていた時の事を考えると何とも微妙。もし、富田が明神ばりの予測能力を持っていれば、木谷が往時の井原ばりの守備の引き出しを持っていれば、この攻撃を防ぐ事はできたかもしれない。言い換えれば、不可能に近かったのだ。
 むろん、このような攻撃が可能なチームはガンバくらいのものだろう。MF3人を含む4人が最前線に張り出し、両サイドバックも前進、もし僅かなつなぎのほころびがあれば、ベガルタの「湧き出す」速攻に対し、CB2人と明神だけで対応する事になる。それでも、悠々とボールを回され崩されてしまった。これがアジア最高峰の攻撃なのだ。
 J1で中位以上に進出し、残留しようとするならば、このような「抜群の遅攻」にも対応しなければならない。そして、そのためには、判断力を含めた守備の個人能力を高めて行くしかない。直接からんだ田村、富田、朴、ベンチにしりぞいていた菅井、控えに入っていた一柳、スタンドで観戦していた渡辺広大、細川、島川、ベガルタ入りを決心してくれた高橋義希、鎌田らは、理解してくれた事だろう。

 難しいタイトルマッチで、格上に序盤の猛攻を許し早々に失点をしてしまっては、番狂わせは難しい。しかも、立ち上がりとは言え、最もサイド突破を警戒すべき安田の縦突破を許してしまった。そこに守護神の林のパンチミスが加わってしまっては。林は、目が太陽にかかったとの事だがエンド選択も勝負の綾となった訳だ。もし来期、そう言った「駆け引き」で下回ってしまうと相当苦しい事になる。
 リードされて迎えた終盤、橋本を後方に下げて守備を固めてボールを回すガンバに対し、ほとんど有効な攻撃を仕掛ける事はできなかった。マルセロ・ソアレスを終盤投入した直後に、中原が負傷してしまった不運はあったのだが。ボールを回す事について格上が明らかな相手に対し、無理攻めなりの奇策は考える必要はあるだろう。
 得点場面は完璧だった。木谷の精度の高いロングボールを受けた田村が1つフェイントをはさんで前線の関口へ。関口が見事な個人技で、山口を抜き去ったセンタリングを中原が決めた。この場面前は、梁を軸に短いパスで人数をかけた速攻を再三かけていたが、それに加えてこのような長いボールを有効に使った攻撃を組み合わせる事ができれば、J1の守備の強いチームから得点を奪う頻度を増やす事ができるだろう。

 遠藤と明神が、淡々と時計を進め、刻々と夢が覚めようとしているのがわかった試合終盤。悔しかったよ、残念だったよ、次に我々にACLの機会はいつ訪れるかはわからない。何とかならないかと、必死に応援した。選手達も必死に闘った。でも、ダメだった。完敗だった。
 けれども、とてもよい試合だった。木谷公亮のベガルタ最後の試合が、ここまで見事だった事を素直に喜びたい。そして、完敗した今となっては、この愉しかった1試合の全てを、来年のために振り返る事ができる事がまた嬉しい。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今年もよろしくお願いします!
ベガルタ仙台にとっては、このガンバ戦は最高の教材になったと思います。
この教材からどれだけ学習が出来るか?
とても楽しみです。
補強も手堅く進んでいます。J1では厳しい戦いの連続となるでしょうけど、魂込めて応援していける喜びもまた感じています。
Posted by タカ at 2010年01月02日 02:07
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