高校選手権。今年は事情で帰省しなかったので、久々に生観戦できた。幸いな事に東北高校の2回戦が、自転車で行ける平塚競技場。宮城県のトップレベルのユースチームを見る事ができたのは久しぶりだったので、得難い機会となった。よりによって、対戦相手は隣県福島の尚志高校、東北勢同士の対戦となった。
驚いたのは東北の戦い方。
最前線は小柄だが瞬発力にすぐれるドリブラ千葉、後方に2シャドー主将の峰岸(1回戦でも2得点、左足の精度が抜群と言う)と柏崎は技巧と判断に優れる。1トップ2シャドーは、日本強会御用達の指導者が好むもののあまり機能しないやり方として定評のあるところだが、東北のそれは見事に機能している。しかも、過去の成功例の多くは、往時のセレッソ(西澤ー森島、古橋)のように、「前進できるポストプレイヤ」を使うのが常道。ところが、東北のトップ千葉はスリムで小柄、常に動き回って前向きにボールを受けてドリブルを仕掛けるタイプ。そして、峰岸からの高精度パスを千葉が受けるだけで好機を作ってしまう。その他にも球際に強くドリブルで抜け出せる選手が多く、少人数で最前線まで抜け出してしまう、まるでアルゼンチンのようなサッカーだ。正直言って、宮城県のユースクラスのチームが、このような技巧と判断で成立する攻撃をするとは思ってもいなかった。すばらしい。
ただ、守備は感心しなかった。2ストッパが敵2トップをマンマークし、スイーパの日野を余らせた3DF。それも日野が深〜〜い位置取りをする。90年代の韓国みたいな守備スタイル。もちろん最近でも1人余らせる守備網のチームは存在する、オシム爺さんのジェフとか、ブラジルのクラブチーム(たとえばこのチーム)とか、少々古いが98年フランス大会の井原とか。これらのチームの「スイーパ」は深いラインをとらず、マーカと同じライン、あるいは前に位置取りし、中盤のこぼれ球も拾いに行く。けれども、最終ラインで人を余らせるやり方そのものは否定しないが、あそこまで深くスイーパが引いてしまうと、どうしても中盤が粗になってしまう。
開始早々、峰岸の高精度FKから日野のヘディングで先制した東北は、その後も峰岸を起点にしたカウンタで再三好機を掴む。峰岸は、右でもボールを扱えるし、ヘッドも強く後方からのフィードを巧く受けて展開を図る。峰岸の好パスから、尚志DFの間隙を突いた千葉のシュートがポストを叩いた場面などは絶品だった。このペースを掴んでいた前半に2点差にできていればよかったのだが。
後半、尚志は負傷していたエースの渡部を起用、中盤でドリブルの巧い平野や古庄が強引に仕掛けてくる。こうなると深いラインを引いている分、中盤で劣勢になり最終ラインが脅かされ、さらにラインが深くなる悪循環に陥る。同点弾は右サイドバック田中の精度高いアーリークロスに渡部が飛び込み(マーカが振り切られ)ニアサイドでヘッドで決められたもの。ここでも、深すぎるラインによりチェックが甘くなっていた。このあたり、尚志の仲村監督の策が当たった感があった(仲村氏は、バルセロナ五輪代表候補選手、1次予選ホームのインドネシア戦、澤登、藤田と中盤を組み、精度の高いロングパスで中盤を作り将来を嘱望されたタレントだった。Jリーグを目指したものの、解散を余儀なくされた福島FCでプレイしていた)。その後は双方攻め合うが詰め切れずPK戦に、主将のGK菅野が2本止めた尚志の勝利となった。
おそらく手の内を知っている同士の戦い、監督同士の駆け引きに関しては、一見の私にはわからないものがあったのかもしれない。ただ、宮城県サッカー出身者としては、アルゼンチンばりの攻撃タレントを抱えていただけに、あのサッカーを上位に進出して全国に見せたかった想いがあるので残念と言う事だ。
ただ、峰岸、日野を含め、東北にはベガルタJY出身選手が相当数おり、ベガルタを軸にした宮城県の若年層のサッカーの質が相当上がっている事は実感できた。さらに、東北勢同士が全国の場で、技術に優れた選手を多数所有し、堂々たる勝負を演じるのを見る事もできた。そう考えると、実に満足できる試合だった。元日のガンバの華麗な攻撃に続き、このようなサッカーを見る事ができて、新年早々景気がいい。うん、満足。
2010年01月02日
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