14日目に優勝を決めた一番の日馬富士戦は見事だった。がっぷり四つで胸が合うも、体力的にも不安がある朝青龍としては、難しい状態になってしまっていた。しかし、日馬富士が攻めに出てきたタイミングで下手から仕掛け、逆に日馬富士の体勢を崩してから攻め続け、最後は鮮やかな下手投げで仕留めた。
日馬富士の攻め込みのタイミングギリギリで見事に仕掛け返した判断の見事さに感心したのだが、取組後のインタビューで「下手からの仕掛けは狙っていた」との趣旨の発言。冷静な判断と、敵の動きを利用しての技の冴えの、見事な連携による攻撃だった訳だ。
この手の鮮やかな攻撃について、よく「相撲勘」とか「勝負勘」と言う表現が採られる事が多いが、実際には「勘」と言うよりは、やはり「知性」と「技巧」の組み合わせによるものだろう。稽古が足りないとか、横綱としての品格に欠けるなどの話は別として、完璧な攻撃の冴えは本当にすばらしい。
で。この朝青龍の見事な攻撃と、取組後のインタビューをテレビで見ていて、天皇杯決勝の遠藤の舞いを思い出したのだ。
決勝点となった2点目。二川のパスが完璧で、吉田麻也のプレイイングディスタンス外ギリギリで、トップスピードに乗った状態でボールを受ける事ができた所からスタート。ために、吉田を打ち破るのは比較的容易だったが、その後のバエリッツァの飛び出しをよく見てのドリブルのコースと、タッチの大きさの的確な事。さらに、バエリッツァを抜き去った後、利き足でない左足で強いボールを蹴る事ができるポイントに持ち出す精度の高さ。
3点目のアシストもすごかったけれど、あれは明神と二川の演出でフリー過ぎたので、まあいいか。
4点目、加地の好クロスを胸で受けながら、後方のバエリッツァとの入れ代わり反転し、強烈な一撃。これは、バエリッツァの当たりを察知して、ボールをトラップする場所を微調整するだけで、入れ代わりを成功させた。2点目にしても、4点目にしても、バエリッツァの動きを理解し、陽動動作で誘い出し、僅かな隙を突いてその攻撃を無効化し、最後強いシュートにつなげるべく正確にボールを起き直した。
「何と強引な」と笑われるかもしれないが、朝青龍が日馬富士の仕掛けを逆利用したのと、遠藤がバエリッツァのアプローチを誘い出したのと、何か共通性を感じたのだ。この2人の類似性など、生まれた年が同じなのと、ヒゲが似合わない事くらいだ。しかし、飛び切りの判断力と技巧の冴えの連携による鮮やかな攻撃について、何とも言えない共通性があるではないか。
それにしても遠藤は年々向上する。たとえば、ほんの2シーズン前遠藤は代表の中核選手ではあったが、シュートへのアプローチに課題があったのだ。あの2年半前の遠藤を見ていて、誰がこの天皇杯決勝の遠藤を想像できただろうか。
【関連する記事】
武藤さんは、遠藤保仁著書の『自然体』はお読みになりましたか?
彼が、どういった経緯を得ていまのプレースタイルを確立し、そして今も尚、成長し続けられているのか、その秘密が綴られております。本の中でも書いておりましたが、イビチャ・オシムさんから受けた刺激は、彼のサッカー人生おいて多大な影響を及ぼしたようです。
長年ガンバサポーターをされている方のブログに、この本について興味深いレビューを書かれているので、参考までにご紹介いたします。
http://www.motoko3.com/2009/02/post-220.html
しかしほんうとに、ここ数年で見違えるように進化したヤット。なかなか世界大会に縁のなかった彼に、脂の乗った今、心からW杯で活躍してほしいと願うばかりです!!
遠藤しかり、明神しかり、まだまだ30代プレイヤーも成長できるということを、自らがハイレベルなサッカーをピッチで魅せることで証明していると思います。
サッカー少年少女にも、お手本になるような2人ですね。
あの独特なゆっくとした間合いは、遠藤ならでは。MADE IN 桜島って、感じです 笑
周りが良く見えているんでしょうね。
プレーを見ていても、日々進化しているので飽きないないです。
関係ない話でごめんなさい。(笑)
ただ、ひらめきのあるプレーを代表でみせているでしょうか?
相手をいなして一瞬で数的優位を作るプレーはみたことがありません。
バイタルエリアでボールを奪えている代表が、何故点をとる形が出来ないのか?
ボールをさげる。ポゼッションが高いでは、相手に休憩を与えているだけですよね。
それが代表のつまらなさに繋がっているとおもいます。