2010年05月07日

結果は上々だが、内容は問題だった

 ベガルタは敵地でFC東京と0−0の引き分け。

 開始早々、見事な加速で石川直宏が朴柱成を振りちぎり、低く鋭いセンタリング、リカルジーニョにスルーされたボールは、ノーマークの平山に。PKよりも簡単そうなシュート。しかし、狙い済ました一撃は見事に枠を外れた。まあ、この試合の全てが、この場面に凝縮されていたのだろうな(全くの余談ながら、「この瞬間、石川の南アフリカ行きと平山の落選が決まった」と思ったのは、私だけだろうか)。もっとも、この場面を除くと、やはり平山は脅威、前半見事なターンでシュートを狙った場面にしても、後半再三ボールを収めて攻撃の起点となったあたりにしても、「並のJリーグFWではない」事は間違いない。間違いないのだし、私はベガルタサポータだからこの日平山が猛威を振るわなかった事そのものに不満はないのだが、う〜ん、まあいいや、今日は。

 序盤、FC東京は前半は引き気味に戦って来たように見えた。ベガルタを引き出して、逆襲を仕掛けようとしたのだろうか。ただ、久々に起用された永井が、老獪な位置取りで梶山にまとわりつく事で、逆襲のスピードを落とす事に成功。結果速攻の機会を逸して出しどころがなくなった東京の後方の選手が、単調なロングボールを狙ってくれた事で、それほど危ない場面は訪れなかった。しかし、石川が加速する、平山がターンする、長友が長駆する、それらだけで恐ろしい感がする「個の強さ」はやはり脅威だ。また厄介なのは森重と今野のCBコンビ。ベガルタのプレスが甘くなると、即攻撃の起点となってくる。最前線からの組織守備が定番となった最近のサッカーでは、CBが最もプレスを受けづらいので、CBが隙を見つけてドリブル前進して起点となるのは、非常に有効なやり方だが、このチームの2CBはその能力が非常に高い。特に森重は「前進できる」と言う判断が適切で、幾度か危ない場面を作られかけた。
 ともあれ、ベガルタも大きな揺さぶりから時に好機をつかむ。田村のクロスを起点とした大きなゆさぶりから、朴が強シュートを放ち権田に防がれたのは惜しかった。

 後半に入ると、予想通り東京が攻勢に立つ。ただ、東京ペナルティエリア内で梶山のミスを誘ってボールを奪い、中原がポストに当てた場面は惜しかった。けれども、以降は東京に攻勢を許す。好天に恵まれただけに、ピッチの気温は相当高かったのだろう。予想通りと言っては身も蓋もないが、永井の運動量が激減し、梶山に自由なプレイを許したのが痛かった。こうなると梶山が素早く入れてくる精度の高い縦のボールにベガルタは苦しむ。さらに悪い事に、完全に押し込まれているだけに、1度ボールを奪っても、前線につなげず、比較的簡単にボールを奪われる。無理な体勢からFWにフィードしても、質の悪いボールでは、中島にも中原にも、今野、森重にまったく勝ち目はない。かくして、東京の圧倒的攻勢下に襲われる事になってしまった。
 それでも失点しなかったのには4つ理由があったと思う。1に幸運、2に林の奇跡的ファインセーブ、3に広大、鎌田を中心とした最終ラインの選手の見事な敢闘精神、そして4に東京の攻撃が単調だった事。東京のサポータの友人が嘆いていたのだが「点が入る気がしない」印象は確かにあった。石川、平山、長友と圧倒的な大駒を持ち、梶山、森重、今野が起点となる攻撃が、弱いわけはない。わけはないのだが、連携と言うか、チームでどう崩すかと言うか、そのような意図があまり感じられない。もちろん、米本の不在は大きいのだが、(人様の事をどうこう言える立場ではないが)うまく行っていないチームとは、こう言うものかもしれない。たとえば、石川をはっきりと外側に開かせるとか、長友の前進スペースを作るための動きを鈴木達也や羽生が仕掛けるとか、色々やり方はあると思うのだが。
 ただし、ベガルタもあれだけ攻勢を許しているにもかかわらず、相変わらず遅い交代。68分に中島に代って起用された太田はよくボールを引き出し反転速攻の起点となっていたし、80分にようやく永井と代った富田も「崩壊していた中盤」をよく立て直した。そして、ロスタイム間近に中原に代えて平瀬。少々攻め疲れの感があった東京の隙を突き、終盤攻勢を取る事はできた。「だったら、もう少し早い時間帯か仕掛けた方が」と思うのだがね。
 あの最後の梁のシュートが決まって、勝ち点3が取れていれば、それこそ大喜びだったろうが、そう甘いものではないしな。

 試合終了後、東京サポータの友人達と一杯やったのだが、「よっしゃ、勝ち点獲得したっちゃ」モードの当方に対し、先方は重苦しい雰囲気。特に、試合終了後、サポータに挨拶する東京の選手達に大ブーイングがかけられたその瞬間に、当方は「いんゃあ、よんぐ引き分けたもんだねや」モードで大合唱などしたものだから、相当な敗北感にさいなまれたらしい。
 とは言え、上記の通り、結果は上々だったが、内容を考えたら、そう楽観などできはしない。幸か不幸か、ワールドカップ中断前の残り2試合は、グランパス、レッズと強豪クラブとのホームゲームが続く。もちろんホームゲームだから、「隙あれば勝つ」と言う姿勢は重要だが、それ以上に「強豪相手に守る」と言う意識が重要ではないか。
 敵のストロングポイントをよくつぶす事、押し込まれた状態でボールは奪った後の速攻を丁寧にしかける事、この2点をどこまで徹底できるか。考えてみれば、無失点の試合はリーグ戦では開幕のジュビロ戦以来。少なくとも守備は上向きと捉え、その守備の充実を図るべきだと思うのだが。

 全くの余談。東京ドロンパ君は、試合前に登場はしない方針との事で不在だった。ナビスコ決勝で見せてくれた一輪車乗りなど、大変みごとで愉しみにしていたのにちょっと残念。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
平山の過大評価っぷりは凄いな
これまで一度も年間5点以上取ったことがない、鈍足ノーゴーラーの中堅選手
確かに並のFWではないな
並より少し下だね
Posted by at 2010年05月08日 18:03
自分もこの試合見に行きました。
スタメン発表のときはF東京のタレント揃いに正直びびったです。
でも試合終了時には 勝てたんじゃなかったかなぁ〜と言う思いも少ししてたのも事実です。

あと試合内容と関係の無いことなのですが・・・
仙台のコールリーダがハンドメガホンを使ってハウリング音を出していました。
どうやらF東京側チャンスの時だけなので意図的に発した「ブーイング代わり」のものと思われましたが、これってどうなんでしょう??
はっきり言って仙台を応援する側としても相当耳障りでした。特に後半は点がはいらないじれったさも加わって不快感増大。
昨年末の天皇杯G大阪戦ではしてなかったと思いますので、J1に上がってからのことなのでしょうか?声でのブーイングではダメになったのでしょうか?
武藤さんご自身は、あの様な応援(応援なのでしょうか??)を どのように思われるでしょうか?
Posted by 武蔵野の佐藤 at 2010年05月09日 00:56
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