それはさておき、著者から強く「ブログで本書を紹介せよ」と命じられた次第。仕方がないので、先々週の週末、雨の中電車に乗って本書を購入に行った。某JRと私鉄が交差しているターミナル駅前の書店で、本書はサッカーコーナに平積みにはなっておらず、本棚の中から探さなければならなかった。著者にメールで「●●氏や△△氏の本は平積みだったが」と報告したところ、「それらの上に置いて平積に見せかけろ」と指示されたのは秘密だ。
で、本書。
「よくもまあ集めたものだ」と感心する、世界中の名選手、名伯楽の「代表チームに対する想い」を切り出した名文句の数々。具体例を挙げよう。
ダニエル・パサレラ(アルゼンチン代表監督)
「勝利はすべて国民のもの
敗戦は監督1人の責任。」
ライアン・ギグス(ウェールズ代表)サッカーに初めて触れるような友人に、「ワールドカップとは何か、サッカーの代表チームとは何か」を理解してもらおうとするならば、つまらないワールドカップ案内雑誌を読ませるよりも、この本を読んでもらうとよい。世界中の男達が何かに熱中する様を読んで気分を盛り上げてもらった上で、試合映像を見てもらえば十分ではないか。
「今までのすべてのトロフィーを
返上してもいいから、
ワールドカップに出たい」
注文もある。
それは日本代表に関する言及が少ない事。僅かにカズとラモスの中々素敵な一言が、それぞれ載せられている。でも、それでは少ない。日本代表に対する素敵な発言はもっともっとあるし、そこまで言及して欲しかったのだが。事前に相談してくれたら、いくらでも知恵を貸したのに(笑)。4年後への宿題としておこう。
けれども。
サッカー初心者向けと上記したが、本当は違う。この本は、私の講釈に飽きもせずに付き合って下さるようなサッカー狂のための本なのだ。上記2つの引用を再読して欲しい。著者はそれぞれに、パサレラとギグスの簡単な略歴と発言の背景を、それぞれ200字程度で述べている。しかし、これらの発言の背景を200字で説明できると思いますか?
パサレラが現役時代、代表選手としてどのように戦ったか。あの冷静極まりない守備。セットプレイの度に飛び出してくる攻撃参加。負けている試合でも、死ぬまで戦う闘魂。選手時代のあふれでる歓喜と堪え難い絶望。全く異なる3回のワールドカップ。そして監督としての経歴。ワールドカップでの悲劇的敗退。そして身内の悲劇。それらを存分に思い起こした上で、上記の発言を読む。
ギグスがいかにすばらしい選手であるか。幸い、我々はオールドトラフォードに行かずとも、トヨタカップで幾度もその妙技を堪能できた。ロイ・キーンへのアシスト、明神と山口を絶望の淵に突き落とす悪魔のようなコーナキック。そして無数に映像で見た栄冠の数々。そして、我々日本人が今まで体験できたワールドカップの歓喜。それら全てを反芻した後に、上記の発言を読む。
本書は、著者が我々サッカー狂に突き付けた挑戦状なのかもしれない。
> 「勝利はすべて国民のもの
> 敗戦は監督1人の責任。」
いい言葉だ。猛烈に感動する。
これと正反対の命題が大手を振って通用する国が、
'06年、あるいは'98年、東アジアのとある国に存在した。
> 「敗戦は監督のせいじゃない
> 敗戦はすべて国民のもの」(ただし約1名を除く)
いったい、どうなっているのだろう?
先日、この本を電車の中で読んでいる小学生の集団を見ました。
サッカーの試合(練習?)帰りだったようで、
ジャージ姿のまま「これは、誰の名言か」とクイズを出し合っていました。
ベンゲルは分かるけど、プラティニは分からないという彼らの世代に、
盛大なジェネレーションギャップを感じつつ、
自分にもこんな時代があったなぁと妙に懐かしく思ったり。
この子たちが、ここに書かれている言葉のひとつでも、
サッカーに取り組む上での糧にしてくれたらと思います。
長文失礼しました。