優勝の予想くらいはしておこう。
よく「南半球の大会は南米勢が優勝する」とか言われるが、これらの「過去」実績は、結構N数が少ない事に注意する必要がある。90年以前はワールドカップは、欧州と中南米でしか開催されなかった。そして、58年のブラジルを除いては、欧州の大会では欧州国が、中南米の大会では南米国がそれぞれ優勝していた。そして、94年の合衆国と02年の日韓と言う中立地では「常に世界最高レベルの戦闘能力を持つブラジル」が優勝したと言うことだ。
いずれにしても、気候を含めた環境面から「欧州ではブラジル(あるいはアルゼンチン)でさえも、勝つのは非常に難しかった」、「欧州外では欧州国はブラジル(あるいはアルゼンチン)に勝った事がない」と言う事は言えるのだろう。
ただし、今回の大会はなるほど欧州外ではあるが、時差的には欧州と同じ南アフリカでの開催。その地域性が、欧州勢、南米勢いずれに吉とでるのか。
「優勝国は過去の優勝国から出る」と言う論理的には明らかに間違えた事も、またよく言われる。この非論理性はさておき、私は優勝経験国も少し分けて考える必要があると思っている。ブラジルとアルゼンチンは、常に世界最高レベルの戦闘能力を持っている(もっともアルゼンチンは94年大会以降、常に「最強戦闘能力」とも思えるチームを作りながら、敢えなくベスト8以下での敗戦が継続しているのだが)。また、イタリアとドイツは、「よくわからないが、勝ち残る」事が多い。ところが、この4国と比較すると、他の優勝経験国は長い歴史で見てみると1段落ちる感がある(ドイツは今世紀に入ってから「弱くなった、弱くなった」と言われつつ、準優勝、ベスト4と続けているのだから恐れ入る)。言わば、この4国は4伝統国として、他国とは別に考えた方がよいと思っている。この4伝統国は、何があっても優勝予想から外せないし、決勝までの7試合全てを戦い抜く精神的スタミナも持っている。
イングランドは66年に優勝して以降、ベスト4に残ったは90年大会のみ。フランスは98年に初優勝した後、安定した成績は残してきているが、ここは「プラティニかジダンありき」と言う印象が強い。そして、ウルグアイがここ最近強い代表チームを作り得てないのは言うまでもない。
むしろ、最近のワールドカップは上記の4伝統国を軸に、イングランド、フランス、そしてその時好調な欧州国(最近ではオランダ、ポルトガル、そして今大会はスペイン)が絡む構図と見るべきなのだと思っている(この調和が唯一崩れたのが、02年大会だったが、まああれなナニだった訳だ)。
と、まあ俯瞰というかどうでもよい講釈を垂れた上で、優勝を予想してみよう。
まず、多くの方がブラジルと並んで優勝候補に揚げているスペイン。どうなんだろう?78年から9回連続出場しているスペインだが、大会前に「強そう」と言われたのは98年くらい、しかしこの時はいきなり初戦でナイジェリアに完敗して1次リーグ敗退。78年とこの時を除くと、1次ラウンドは突破するが、ほとんど印象を残さずに消えている。欧州選手権の優勝は実に見事で、かつこれにより過去のトラウマから抜けたとも言えるかもしれないし、強くなったには相応の原因があるとは見ている。まず、欧州連合が定着し、スペイン国内の地域対立がなくなってはいないもの、過去ほどは一般国民になくなっている事。またほんの15年前くらいは「無駄に金を使う事では世界最高」だったバルセロナと言うクラブが、質的に非常に高いサッカーを行うと共に、抜群の選手を次々と育成するようになってきて、「世界最高」のクラブとまで言われるに至っている事。しかし、1950年ブラジル大会に唯一ベスト4に残った事があるだけの国が、ここまで厳しくマークされて優勝できるだろうか。
第2戦で我々と手合わせするオランダ。クライフを軸に栄華を誇った70年代以降、1時低迷したもののファン・バステンやライカールトらで88年の欧州選手権を制覇して以降は、ワールドカップでも毎回優勝候補と言われ(そう言えば日韓大会は来損ねたが)、大会に入っても見事なサッカーを見せ、肝心なところで負ける事を繰り返している。前大会は、ポルトガルに対し、クリスチャン・ロナウドを削る事で大乱戦を演出、9対9で戦うと言うワールドカップ史に悪い面で残る試合で大会を終えた。そろそろ、「来てもよい」気もするのだが、先日のハンガリー戦の大勝の報を聞く限りでは、またペース配分を過ち、どこかでこけるような気がする。
フィーゴやルイ・コスタが出てきた時、ポルトガルはエウゼビオの66年以来久々に強い代表チームを持つ事ができた。そして、フィーゴらが去ったら、また30年くらい待たなければならないのかと思っていたら、そうはならなかった。クリスチャン・ロナウドを軸に、次々とタレントが登場してきたのだ。これは、若年層育成の仕組みが完全に機能してきたと言う事だろう。すごい監督も輩出しているけれど。予選はもたついたが、逆に予選終盤の逆転劇振りは「強さ」の証明とも言える。ただ、私はクリスチャン・ロナウドが、何か信用しかねるのだ。4年前のイングランド戦で最後のPKを決めた時の風格など中々のものだと思ったし、ユナイテッドでの順調な進歩もよかったのだが。しかし、どうもユナイテッド末期となると、肝心なところでルーニーの方が格段に頼りになるプレイを見せていた。
で、ルーニーのイングランド。毎回毎回、微妙に強くて、絶妙な勝負弱さを見せるサッカーの母国。ただこの勝負弱さは、オランダとは異なる。オランダのそれは「準備やコンディショニングや敵への対策などを、もっとうまくやっていれば」と言うものなのに対し、イングランドのそれは「同格の相手ともつれると、最後必ず負ける」と言うもの。どうしても日本で見る外電報道は英語版が多いので、英国人が書いたそれが多い訳だが、ワールドカップでイングランドが負ける度の嘆きっぷりを、たくさん読む事ができて、いつも愉しい。けれども、今回のイングランドはよいと思う。何より最前線に苦しい時にかなりの確率で得点が期待できるルーニーがいる事が大きい。そして、カペロ氏によりジェラードとランパードの業務整理も的確に行われている模様。先日の日本戦のグタグタぶりもコンディショニングと言う意味ではよさそうな印象を持った。唯一ファーディナンドの離脱が痛いのだが。上位に行く可能性は高いと思う。
ウルグアイと引き分けスタートしたフランス。私は4年前のドメネク氏の手腕はワールドカップ史に残る鮮やかなものだったと評価している。序盤戦、グダグダで戦っておきながら、準々決勝ブラジル戦に完全に調子を合わせて来たジダンを軸にブラジルに完勝。以降、決勝の「あの瞬間」までは完璧だった。今回もインチキ臭い予選突破(いや「臭い」はなしだったな)、直前のグダグダなど、前回を彷彿させる雰囲気もある...が、やはり今回は厳しいのではないか。上述したが、この国は「プラティニかジダン」がいなければ難しいと思うからだ。
ドイツ。この国が常にワールドカップの上位に絡んでくるのは、2つ理由があると思う。1つはいわゆるゲルマン魂、あきらめの悪さと言うか、最後の最後笛がなるまで戦い続ける伝統的なもの。そして、もう1つは、毎回毎回堅実なストライカがいる事だと思う。大昔のウーベ・ゼーラーやゲルト・ミュラーは別格として、ここ30年のドイツ(西ドイツ)のストライカを回顧すると、フィッシャー、ルベッシュ、フェラー、クリンスマン、ビアホフ、クローゼ、ポドルスキーと、「世界最高とは言われないが、相応に必ず活躍する」選手が必ずいる。おそらく、今大会もポドルスキーあたりが、そこそこ点を取り上位には上がってくるだろう。ただし、バラックの負傷離脱などを考えると、ベスト4に入れれば成功だろう。
イタリア。この国が常にワールドカップの上位に絡んでくるのは、2つ理由があると思う。1つは、伝統的に「どうやったら世界一になれるのか」をチームとして突き詰め、笛がなるまでそれを狙い続ける執念。たとえ、戦闘能力がブラジルより劣っていようとも アズーリに選ばれ、本大会に挑戦する時から23人全員が「世界一」を狙って戦おうとする。ドイツが1試合1試合を諦めないのに対し、イタリアは「世界一」を諦めない。そして、今1つは几帳面に几帳面に90分間(120分間)戦い続ける格段の守備技術。守備のやり方は変わっても、常に世界の守備戦術をリードしてきた矜持とでも言うのだろうか。今大会のイタリアは非常に難解なチームだ。ベテランを中心にリッピ氏がまとめる訳だが、どんなチームが来るのかさっぱりわからない(笑)。まあ、この国は「ダメと思われている時は強い」事になっている(唯一予想通り弱かったのは86年くらい、あの時は1/16ファイナルでフランスに完敗したが、ユベントスのDF達がチームメートのプラティニを削れないと言う「事情」があった時だ)。早期敗退もあるかもしれないが、もしベスト4くらいまで残ってくれば、そこ以降でブラジルをも下す可能性があるのはイタリアとアルゼンチンくらいだろう。
ディエゴ率いるアルゼンチン。正気なのか理解に苦しむ監督で大会に臨む(どうせならば、選手登録すればよいと思うのだが)。上記したが、この国は94年以降毎回、規律に厳しく理論的な監督とすばらしいスター選手を並べ「最強ではないか」と言うチームを送り込んでは、早期敗退を繰り返している。早期敗退が続いたので、従来を反省し、監督を全く異なるタイプに切り換えてみたのかもしれないが。まあ、ディエゴが「よし、マスケラーノに代えてパレルモ投入だ!」と発言し、周囲のスタッフが「了解」と口だけはそう言って、実際にはテベスに代えてミリートが投入され、結果アルゼンチンが勝利して、ディエゴも自分の発言と異なる交代が行われたのに気がつかない、なーんて愉しい場面があるかもしれないし。冗談はさておき、実質的な采配を他の人が採っているなどは、あり得るかもしれないが。ただ、監督はさておき、選手は間違いなく超一流、そして何よりもメッシがいる。どんな敵でも打ち破れる戦闘能力なのだ。ただ、問題はメッシがまだ、あまりに若い事。「バルセロナでのプレイ程、代表では輝かない」のも、若さゆえ周囲との精緻な連携を短時間で作れないと言うのが要因なのかもしれない。
で、ブラジル。やはり、ここが本命だろう。就任直後ちょっと勝てない時期は、洋服のセンスにまで文句を言われたと言うドゥンガ氏だが、選手時代同様の情熱と信念でチームを作って来ている。守備的だと評判悪いらしいが、90年や94年よりは格段に攻撃の質は高い。カカはすっかりと経験を積み、年齢的にも最高潮。前大会も経験した(冴え渡ったのは日本戦だけだったが)ロビーニョと言う副官も良好。唯一の不安は、グループリーグ日程が後半なため、トーナメントに入ってからの試合感覚が短い事か(実際、32国になった以降、G組、H組からの決勝進出国はないのだが)。ただ、現実的にブラジルがこけるとしたら、カカが壊れた時か、1/16ファイナルなり準々決勝で、スペインなりオランダと正面対決をした場合くらいではないか。ベスト4より先で、ブラジルを止め得るとしたら、イタリアとアルゼンチンだろうが、彼らはそこまで残れるかどうかがむしろ問題だろう。
まとめよう。
本命はブラジル、対抗はイングランド。ただし、イングランドの優勝はブラジルが戦う前にこけた時のみ、またイングランドは準決勝より上でイタリア、アルゼンチンと戦った場合も難しかろう。優勝は70%ブラジル、20%イングランド、5%ずつイタリアとアルゼンチン。あとの国の優勝はない。月並みな予想ですみません。まあ、私の予想は当たった試しがないのですけれど。
2010年06月12日
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南アW杯、優勝予想
Excerpt: 南アでのワールドカップが開幕した。私なりに優勝を予想してみたい。 まず、各グループの勝ち抜けから。Aグループは開催国である南ア、メキシコ、ウルグアイ、フランス。なん...
Weblog: りゅうちゃんミストラル
Tracked: 2010-06-14 20:38
クローゼ 通算
Excerpt: へぇ〜〜〜〜、こんな事になってたんですか。。。。しらなかったです〜( ..)φメモメモさらに( ..)φメモメモ【南アW杯】ドイツとガーナが決勝トーナメント進出 だと敗退の可能性もあるだけに、何として..
Weblog: ライブハウスは狭いね
Tracked: 2010-07-06 03:02
個人的にはやはりスペイン・ブラジルが本命です。
スペインのサッカーは本当に魅力的で、そろそろ初優勝してほしいなあと期待しています。
アルゼンチンは、まだ組織としてうまく機能してないというか、メッシに頼りすぎだろうと気の毒に見えた。もっと周りがサポートしてあげないと。
韓国はいいスタートをきりましたね。何か悔しいですが(苦笑)
日本もカメルーン相手に悔いのない戦いをしてもらいたいものです。正直不安が大きいですが。
メキシコレベルは超えたね
チョン羨ましい
さて小バエジャパンは…
そんな無理しなくてもいいのに。w
予選リーグ突破!ってどこかのローカル話で盛り上がってれば幸せでしょう。ジンクスの話しに論理性を持ち出してどうするんですかねえ。(笑)
しかもいまごろ優勝チームを「講釈してやる」なんてすごいですよね。こんなことが堂々と言えるのは、『控えの控えで調子を落としている選手に向かって「エースを押しのけてFK打て!!!」と言い出す』強力な精神力から来るものなのでしょう。(感心)
ところで・・・。
韓国戦、見てないんですかぁ? 北と日本が全敗するかもという中で、見事にアジアの矜持を見せてくれましたね。アジアを舐めたギリシヤをよく叩いてくれました。
南アフリカはすばらしかったですよね。素晴らしい速効と頑張りでした。
フランス戦は見ましたか?感想もないのですか?
アルゼンチンがこれほど一人の個人に頼るとは。マラドーナもスーツ着ればみられるし。w
ところで、「ブログ主に推薦された選手は大成しない。」と以前に誰かが投稿していましたね。
イングランド、今現在・・・。w
名前をあげられちゃいましたが、大丈夫でしょうか。可哀そう・・・。
しかし本大会を前にこのようなことを考えることのできる幸せ。長らく場に立つことすら夢物語であったのだから。え、もう4回目?まだ4回目でしょ。
やはり、欧州のリーグで、このクラスの相手と日常的にやりあう関係の中で揉まれた選手が絶対的に少ないのが現実だ。まだまだ多くの現実と歴史の蓄積をしていかなくてはならない。今大会もその一つ。
しかしだからこそ勝点がほしい。特に、子どもたちに肯定的な記憶を授けてやってほしい。ドイツの記憶と真逆のそれを。おそらくオーストラリアの子どもたちの深いところに刻まれた「ニホンニハカテル」
初戦を、まさに勘違いしてしまうくらいの勝ちっぷりをした隣国。まずは寿ごう。そこに別段の思いはないものの、心底羨ましいのは、隣国の多くの子どもたちが、その「勘違い」をしてしまったことだ。「ボクタチハヤレルンダ」、という思い。「勘違い」の蓄積。
「勘違い」をさせてほしい
過去の歴史から傾向を分析されて、予想されるのはさすが武藤さんという感じです。
「ブラジル、ドイツ、アルゼンチン、イタリアと他の優勝国を分けて考えるべき」というお考えには同意します。
残りの国はウルグアイを除き、自国開催でしか優勝できていませんから、「地の利」というのは我々が想像する以上に大きいのかもしれません。
個人的には「新勢力が優勝を果たすのは自国開催に限る」と考えていますので、スペインやオランダは厳しいと考えます。
やはり本命はブラジル。どこが止めるかが見所だと思います。
あっ、ごめんなさい。
当然「WCベスト4!」でしたっけ。(笑)
選手にはがんばってほしいです。
直前に、FWなしの布陣なんか試されちゃったFW陣なんかには特に奮起を期待してます。
岡田ファンって大変ですね。
ところで「論理性」なんて言葉を持ち出さないでくださいね。ついイジメたくなりますから。w
今回の優勝は選手の充実から、ブラジル以外考えにくいな。(第3国だしね。)
対抗にドイツ、スペイン?
ずいぶん前から幼稚園児がまぎれていますね。
冷笑されるのが好きなようですから、
静かに笑いものにしておきましょう。
次点でドイツ
と思っています。
でも一番優勝して欲しい国はアルゼンチンです。
強豪国のサッカーは見ていて楽しいものですが、しょせんは高嶺の花というか叶わぬ夢というか、日本には現実身がなく、あれはあくまでも見て楽しむものという感じがします。
そんな中メキシコにはがんばって欲しいと思っています。あの国のスタイルこそ日本の目指すべきスタイルだと思うんです。ベスト8くらいに行って夢を見せて欲しいです。
ところで優勝国予想も楽しいですが、武藤さんは日本の成績はどのあたりと予想してらっしゃいますか?
私は初戦を引き分けることができれば勝ち点4もいけるかもしれない、初戦に負ければ勝ち点0、運が良くても勝ち点1だろうと思っているんですが。
(「自分に正直」と「方向性は間違っていない」って便利な言葉だな)
ほんと選手にはガンバレと言いたい。
自分のチームが参加していない大会ならば「優勝予測」でもして遊ぶしかないけど、我が代表チームが参加している大会では、なんといっても、グループDが第一でしょう。っていうか、ブラジル、スペイン、って言ってれば終りってのもね。(笑)
そこで、グループDのオランダが優勝候補。なんといってもWCベスト4の力のある日本を破って決勝トーナメントに進出するのですから。(あれ?)
FWを一人も使わない!なんていう岡田監督のいつもの「非人道的」な「ひどい仕打ち」にも耐え、是非FWには点を取って欲しい。すると、「武藤氏が推薦しない森本」が点を取るというジンクスに期待しましょう。
えっ? 出場しないのに点が取れるか?
いくら馬鹿でも森本を出さないほど馬鹿じゃないでしょう。甘くみてるかな、馬鹿さ加減を・・・。
オーストラリアがドイツに粉砕されてしまった・・・。ケーヒルも退場で、次の試合もダメだし・・・。アジア、大丈夫かな(不安)。
スイマセン(>_<)
本命はブラジルですか
なんかドイツが凄いような感じです
でも長丁場ですからヨタヨタしたイングランドも可能性ありと見ます
でも心から願っているのはアルゼンチンの優勝と日本の決勝T進出です
今晩が気になって仕事が手につきません
アフリカ勢もベスト4にくると予想(特に英語圏のチーム)。スペインはマルコスセナ切ったのが失敗だと思うので優勝はなしかなって感じですかね。