2010年06月26日

2次トーナメントを前に

 欧州6国。南米5国。アジア2国。北中米2国。アフリカ1国。正にワールドカップ、世界中に上位進出国が分散した。

 欧州はイタリア、フランスの2大国の敗退を代表的に、いつになく不振の様相。さらに、セルビア、デンマーク、スイスと言ったいわゆる2番手国が、スロバキアがイタリアを脱落させたのを除き、軒並みこけてしまった。やはり、時差はないとは言え、欧州の「乾いた夏」でないと、強みを発揮できないと言う事なのだろうか。フランスは、結局プラティニかジダンがいなければ、と言う事だろう。チーム内紛の自滅は、「戦闘能力不足をチーム全体が自覚できなかった現れ」と見た。イタリアの敗退は常に美しいが、まあさじ加減のミスなのだろう。1次リーグ敗退は74年以来36年振り、私がはじめて真剣に愉しんだ大会以来で、それはそれで感慨深い。
 南米は全5国が進出。南米勢全チーム2次ラウンド進出は78年以来か(地元アルゼンチン、ブラジル、ペルーが進出)。「冬の大会」は南米勢に有利と言う事なのだろうか。ウルグアイ、チリ、パラグアイいずれも、南米独特の技巧、助走が少なくても加速したり高く飛べる体質に加えて、非常に組織的な攻守を誇る。
 日本のみならず、韓国のトーナメント進出成功は別な意味で我々のランクが高い事を示している事となる。互角のライバル(と言うには、今年の対戦成績は、代表のみならずAFCでも芳しくないが)も、列強と互角以上に戦っていると言う事は、我々の成功がフロックでない事の裏付けとなる。活動量が落ちづらい「冬の大会」が、日本と韓国に有利に働いているのではないか、と言う論調があるが、逆に「蒸し暑い8年前」も(地元とは言え)両国に有利に働いた。共に中立地でのトーナメントは初体験となるが、持ち味を前面に発揮したいところだ。豪州は初戦の0−4が全て、負けても大差にしないと言う鉄則を、この経験豊富なチームが失念してしまうとは。ニュージーランドの大健闘は驚き。いずれの対戦国も、押し込めるものだからつい単調な攻撃に終始し、最終ラインのフィジカル勝負に落ち込んでしまった。距離は遠いが、時差が非常に少ないこの国の向上は日本サッカーにとってもプラスになるだろう。北朝鮮はよく頑張ったが、ポルトガル相手にあそこまで前半から互角に戦おうとしては...国際経験の少なさと言う事だろうか。
 メキシコとUSAは、既に列強の一員と言ってよい実績のある国だけに、ここまでの進出は驚きではないか。メキシコは初戦の南アフリカ戦の劣勢からの立て直しにせよ、フランス戦の勝負ところの集中力にせよ、強国のそれだ。USAの勝負強さは、往時の西ドイツを彷彿させるほど。どこからあの粘りが出てくるのだろうか。
 アフリカの大会ながら、アフリカ勢には寂しい大会となってしまった。地元南アフリカは、組み分け抽選にも、審判判定にも、保護がなく、戦闘能力差でウルグアイ、メキシコの後塵を拝したと言う事だろう。まあ、FIFAは「南アフリカで大会を開く」事で目的を達したと言う事なのだろう。コートジボワールは組み合わせの不運に泣いた(あと、ドログバの負傷と...)が、その他のアフリカ国は選手の能力はさておき、組織力や大会準備の点で他大陸国と比べて差が目立った。デンマーク戦のカメルーン、ギリシャ戦のナイジェリア、スロベニア戦のアルジェリア、いずれも不甲斐なさが目立った。アフリカ大陸は広いので、最南端のこの国での開催は、他国には有利にはたらかなかったと言う事か。一方で、ガーナはエシアンの離脱と言う不運を乗り越えての、連続トーナメント出場、さらなる上位進出も考えられる。ここは純粋にチーム力が高いと理解すべきか。

 おもしろいのは、欧州6国が皆1/16ファイナルで直接対決する事。特にドイツーイングランド、スペインーポルトガルはいずれも重厚な対決となる。そう言えばブラジルーチリも南米同士か。8試合中、同大陸戦が4試合、異大陸戦が4試合となった。
 ウルグアイのブロックは、欧州勢がおらず各大陸の強者がこの古豪に挑む形となる。ウルグアイは久々(40年振り!)の上位進出の絶好機。韓国はやや甘い守備ラインを李榮杓がどう引き締めるか、ルガノを軸にした守備に朴智星がどう崩しにかかるか。ガーナは上記の通り、安定したバランスを誇るし、ギャンとかアサモアとか強烈なタレントを抱える。。セルビア戦の勝ち切り方など実に見事だった。一方のUSAは戦闘能力も抜群だが、恐ろしい程の粘りがすごい。ドノバン(もう代表戦120越えているのね、まだ28歳なのに)と言う精神的支柱もしっかりしているし。
 FCディエゴは32国中、1次リーグで出来が一番よかったのように思う。そして、チームにさらなる向上余地が多数あるのがまた凄い。やはり本命はここだろう。イングランドにせよ、ドイツにせよ、因縁ある欧州強国との準々決勝だが、両国は直接対決で消耗しちゃうからなあ。とは言え、この直接対決はおもしろいだろうな。ともあれ、この両国戦と言うと、ドイツが勝つのに決まっていると考えてしまうのは私だけかしらん。メキシコは前回に続いて1/16ファイナルでアルゼンチンと。何かついてない気がする。速攻から先制し、ディエゴの焦りを誘いたいが、選手達がしっかりしているからなあ。
 ブラジルに挑戦するチリだが、おもしろい試合になるとは思う。ただ、ビエルサ氏はひたすら前に行こうとさせると思うので、勝負どころでブラジルのカウンタが奏功するような気がしてならない。つけ込むとしたら、カカーが本調子ではないと言う事くらいか。でも、何となく、カカー自身(退場で1試合休養して)そろそろ上げて来るように思うし。オランダもいつになく、ゆっくりとペースを上げているような気がするので、ブラジルーオランダはすごい準々決勝となりそう。
 そして、日本のブロック。まずはパラグアイに勝つ事のみ考えよう。重厚なスペインーポルトガル、隣国同士の意地をぶつけ、大量の出場停止者が出て疲弊する事をとりあえず期待するのは当然として(笑)。
 まあ、こうやって、列強の間に我々が当然のように収まっている現状を素直に喜びたい。

 さて、このような大会ではベスト11を選ぶのが愉しい遊びとなる。
 GK、ナイジェリアのエニェアマの素早い反応、スロベニアのハンダノビッチの安定感など、あまり馴染みのない選手に感心。
 サイドバック、マイコンの北朝鮮戦の先生弾の鮮やかさ。李榮杓のサイドから守備を組織化する知性。コエントランとフェレイラのいやらしい攻撃参加。賛否両論あろうがエインセは頭がやはり頭がいい。ラームのドイツ人らしい知的な位置取り。
 センタバック、いつのまにかルッシオの対人能力が格段になっている。サムエルの1対1の強さと位置取り。ルガノの強さは相変わらず。シュクルテルはスロバキアのトーナメント進出の最大のヒーローだろう。スロベニア戦のテリーはすごかったな。パラグアイのダシルバは1/16ファイナルで厄介な存在になりそうな気がする。
 ボランチ、やはりマスケラーノがすばらしい。オランダのデ・ヨングとファン・ボメルは本当に忌々しかった。パラグアイのリベロスのいやらしい位置取りとスロバキア戦の得点時のトラップはすごかったな。エジルはバラック不在を忘れさせる出来、久々にドイツに登場した柔らかい指揮官。
 中盤の前なりFWはキリがない。フォルラン、メッシ、イグアイン、朴智星、ルーニー、ドノバン、ロビーニョ、アサモア、ギャン、ケーヒル、スナイデル、トマソン、エトー、バルデス、C・ロナウド、ビジャ、鄭大世、キリがないな。

そうこう考えて厳選したのが以下。












GK 川島
DF 駒野、中澤、闘莉王、長友
MF 阿部、長谷部、遠藤、松井、大久保
FW 本田
posted by 武藤文雄 at 23:01| Comment(31) | TrackBack(0) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最高のヲチ!

ちょいと泣けて来ました。
Posted by ワン at 2010年06月26日 23:04
素晴らしいフリとオチw

めっちゃ笑いましたwww
「おっさんwww」って
Posted by りんご at 2010年06月26日 23:46
「なぜGKで川島に言及しなかった??」
と思った自分の読みの甘さに反省(汗
Posted by ttt at 2010年06月27日 00:01
笑わせてくれます(笑)
このように明るい講釈は久しぶりで嬉しいです。
Posted by オムレツ at 2010年06月27日 01:23
> マイコンの北朝鮮戦の先生弾

うん、たしかに「先生」にしたくなるようなマイコンの一発でした;-)
Posted by 神社米価 at 2010年06月27日 01:37
笑わせていただきました!
そりゃ当然、彼らがベストに決まってますわな!
Posted by 白谷 at 2010年06月27日 01:38
日本がベストだ。って言いたくなるWCって幸せですね。
Posted by 一読者 at 2010年06月27日 02:18
ありがとうございます。ホントにありがとうございます。
武藤さん、サイコーです。
我らがベストイレブンですよ。そりゃ。
こんな幸せ、過去ないです。
一緒にいくとこまでいきましょう。
Posted by 4年に1度のコメンティスト at 2010年06月27日 02:39
最後のオチに脱帽です。
デンマーク戦3点目の本田の切り込み&ラストパス以上の切れ味。
Posted by leftfoot at 2010年06月27日 02:39
2002年も似たようなこと書いてましたねw
Posted by at 2010年06月27日 03:12
ベストイレブンのオチ、笑わせて頂きました。
僕が観たい試合はやはり「アルゼンチンvs.イングランド」ですんでドイツにはゴメンなさい、お帰りなさってもらいますw
Posted by at 2010年06月27日 10:02
まずいな。
パラグアイの選手を褒め殺ししてもらわないと・・・。
これはまずいな。
Posted by at 2010年06月27日 10:41
結局最後が本題で、あとはながーい前フリだったんですね。(笑)
ベストイレブンの選定まったく異存ございません。
楽しみだな、次の試合。
Posted by at 2010年06月27日 11:16
ブログ主ご推奨の中村俊が入っていないのはどうして?
ブログ主ご推奨の岡崎が入っていないのはどうして?
ブログ主ご推奨の内田が入ってiないのはどうして?

あっ、そうそう。過去じゃなくて未来見てるんだったね。言いっこ無しだったね。

パラグアイかぁ・・・。
どうやって点取るんだろう。
やっぱ闘莉王の1トップかな。
どんな作戦思いついてくれるんだろう。
楽しみだね。
Posted by at 2010年06月27日 12:51
ふふふ。最高じゃないですか。
一緒に勝って、決勝ラウンドのベストイレブンも選びましょう!
Posted by とんちゃん at 2010年06月27日 14:22
12:51のコメントを見て思ったこと。

たいていのサッカー好きが(程度の差こそあれ多かれ少なかれ)楽しい気分で過ごしているであろうこんな日曜の昼下がりを、こんなコメントを書くのに費やしてるこの人は、きっとサッカーなんて好きじゃないんだろうな。

もしもそうでなければ、あまりにも哀れすぎる。
ま、放っておいてあげることしかできないんだが。
サッカーが好きではないのなら、武藤さんのblogを読みにくる意味なんて無いんじゃないかな、と僕は思います。
Posted by at 2010年06月27日 14:46
最後、サイコーです。
このblogの「心」を満喫しました。
これからも素敵な講釈、楽しみにしています。
Posted by goujiro at 2010年06月27日 15:34
14:46のコメントを見て思ったこと。

何回同じことを書いているのだろう。
どうしてサッカーの話をしないで、こんなこと書くんだろう。

そんなにサッカーの話がしたくないのなら、武藤さんのblogを読みにくる意味なんかないし、ましてや、サッカーになんの関係もない投稿を、こんなに何度も何度も書くことないのに。

この人にとって、サッカーの内容なんてどうでもよいのですね。

もしもそうでなければ、あまりにも哀れすぎる。
ま、放っておいてあげることしかできないんだが。

サッカーで反論できないのならば罵倒レスなんたするな、と僕は思います。

Posted by at 2010年06月27日 15:36
ベストイレブンに
>ブログ主ご推奨の中村俊が入っていないのはどうして?
>ブログ主ご推奨の岡崎が入っていないのはどうして?
>ブログ主ご推奨の内田が入っていないのはどうして?

素朴な疑問だと思うんだがねえ。
いかんのか?
Posted by at 2010年06月27日 15:40
喜ばせちゃうだけなんだからさー。
スルーですよ、スルー
Posted by at 2010年06月27日 16:55
オチに笑うと共に
WCでこんな冗談を笑える幸福にやや涙が。
Posted by at 2010年06月27日 17:02
スルーだよ!
お願いだからスルーして!
と必死にかまってる人にお願いします。

同じこと何回カキコすれば満足するんでしょうか?
自分で必死に絡んでいることを自覚していますか?
そういうレスを見るほうが気分を悪くします。

ところで、どうして「ベストイレブンに入れない理由」を聞いてはいけないんですか???

それを聞くと「誣告罪!?w」になるからですか?
Posted by at 2010年06月27日 17:49
オチに笑うというより、感動してうるっと来てしまいました。

確かに彼らがベストイレブンだ!
Posted by 通りすがりのサッカーファン at 2010年06月27日 20:44
他の方でも涙がというコメントが多数ありましたが、私もオチにおおいに笑った後に涙が…なんなんでしょうね、これ。
Posted by いつも拝見しています at 2010年06月27日 20:54
ごめんなさい、私は面白くもなんともありませんでした。
なにをこの時点で浮かれてるのかと。
改めてトルコ戦前夜の講釈師のブログを読み返し、8年間の師匠の不進歩を嘆いた次第。

いつまでも浮かれることなかれ、師匠。
Posted by 残念 at 2010年06月27日 22:06
浮かれるなという気持ちも分かるけど、なにしろ最高峰の悦楽でもありますからねー。
英独戦、西葡戦、阿墨戦と同じ列にいるんですからねー。信じられん。

英独戦の雰囲気すごいなー。
Posted by とし at 2010年06月27日 23:15
落ち前の行間で「これはもしかして…」と思いました(笑)
自分はこういう人間味が感じられるblogだから読ませてもらっています。
プレーするのも見るのも人間ですからね。
テレビやネットを通してるそういう実感が薄くなりがちですが。
Posted by あお at 2010年06月27日 23:43
空気読めない奴ってどこにでもいるよね。
洒落がわからないのって最悪だ。
Posted by at 2010年06月27日 23:51
Posted by at 2010年06月28日 11:46
ブログ主のジンクスは恐いぞ。
なんでこの重要な時期にベストイレブンなどと。(涙)

いつものごとく
「中村俊すごい!」
ってボケかましてくれてたほうがまだましだった。
Posted by at 2010年06月28日 12:20
講釈師
 いつのまにやら
  漫才師

都合の悪い過去ログはないことにしませう。
未来だけを語りませう。
協会やら職員の悪口を書くのはOKね。

ほんと、「冗談の好きな監督」が好きなだけはある。
Posted by at 2010年06月28日 13:00
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